異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第8話 邪悪な者は、闇で蠢く

異世界勇者ロボ 第8話

邪悪な者は、闇で蠢く

 

 

 

 

 

「後十分くらいで、王都に到着するぞ。」

「もう着くのか……デュランカーよりも早いな………」

「ほあ~………すごいだなぁ~………!」

 

バトルトレインがホパクの街を発車してからおよそ2時間後、自動操縦に切り替えたらしいニールが客車で報告をすると、フローとシャスティは感心と感動の声を出した。

 

「こう言っちゃなんだけど、デュランカーより広いし、この人数で旅をするには最適かもなー」

「ああ、早い段階でバトルトレインを見つけることができたのは良かったかもな。」

「今後、ハバキリさんたちも合流するでありますしね。」

 

草介とデュランも、バトルトレインの利点に感心していた。

 

「今回は色々疲れたけれど、デュラン達の仲間の情報が分かっただけでも良かったな。」

「ああ。それに、『聖なる石』があのポーラって子が持っている事が分かったのも、十分な収穫と言えるね。」

 

草介とフローが言うと、デュランとニールも頷いた。

 

「さてと、そろそろ到着だな。停車はブレイベースでいいな。」

「ああ、頼む。」

 

ニールはそう言うと、運転席に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別荘に帰還後、モルデュア城に呼ばれたデュラン、ニール、アルスの3人は―――正座をしていた。

 

「まったく!何てことをしてくれたのだ!お主らは!!」

 

3人の目の前には、腰に手を当てて怒るクリセイ王がおり、怒鳴り声にデュランとアルスは肩を震わせ、ニールは気まずそうにしていた。

 

「えーと………」

「何があったんだろう?父上があんなに怒るなんて………?」

 

後ろで説教される警官3人の様子を見ていた草介とフローは、何があったのか分からず首を傾げていた。シャスティは怒る王に怯えていたが、そこにリジルがこっそり話しかけて来た。

 

「実は………先ほどこの城が変形して、デュラン殿のブレイバードが飛び立ちまして………」

「何それワクワクする。」

「見たかったべ、それ……」

「かっこよかったんだろうなー………」

 

城が秘密基地みたいに変形してブレイバードが飛び立つ姿を想像してワクワクした様子で目を輝かせる草介たち。それが聞こえたのか、王がこちらに話しかけて来た。

 

「いや、確かに端から見たらワクワクするしかっこいいと思うよ?でもよく考えてフローレント?実家勝手に改造されてるんだよ?怒らずにいられる?」

「………言われてみればそうだ。何してくれてるのデュランさん?」

 

王に言われてあっさり手のひらを返し問い詰めるフロー。草介とシャスティも「それもそうだ」と考え直した。

 

「い、いやあ………私もそんな風になるなんて思ってなくて………」

「お兄ちゃん、ブレイバーになってから初めて自分の隊を持ったであります………」

「ま、まあ………そういう事なら………」

「「本当に、申し訳ありませんでした………」」

 

デュランとアルスは、座ったまま頭を下げて謝罪をした。

 

「あの、こんな時に言うのもなんですが………」

「どうした?」

 

すると、ニールは気まずそうにおそるおそる手を上げた。

 

 

 

 

 

「あんな感じの発進地点が、城や街に複数箇所あります………」

「マジで何やってくれてるんだお前らああああああ!?」

 

 

 

 

 

モルデュア城に、クリセイ王の怒号が響き渡った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星シンナセンの地上500kmの上空。

地上からは誰も感付かれない高度に、直径660mのリングを持った巨大な建造物が誰にも、銀河連邦警察のレーダーにさえ知られずに浮かんでいた。

 

『マッドアドワーズ』

ワルンダイツの拠点であり、機怪魔獣の生産工場も備えた巨大な宇宙船である。

 

その艦内を、2人の男が歩いていた。

 

1人は、オレンジ色のモヒカンの2m以上もあるマッチョな大男で、迷彩柄のシャツにバギーパンツ、ブーツを履いている。

 

もう1人は、黒っぽい藍色の短い髪に黒いマスクで口元を隠し、黒いアンダースーツの上から緑色のジャケットを着た、忍者めいた服装の男だ。

 

「なあ、ウルフ?」

「何だ、バッファロー?」

 

バッファローというらしいモヒカンの男が、ウルフというらしい忍者めいた男に聞いた。

 

「何でオレたち、呼ばれたんだ?」

「さあな?だが、聞いた話では、我ら以外の六魔獣将も呼ばれているらしい………」

「何で?」

「だから知らん。」

 

バッファローの質問に、ウルフは呆れたように切り捨てた。

 

2人がある部屋に入ると、そこは天井の高さが50メートルを超える、まるで体育館のように広大な部屋だった。その巨大な空間の壁面、およそ10メートルの高さの位置からせり出すようにして、半球型の台座が設けられている。その上には、人間のサイズに合わせた円卓と椅子が並べられていた。あえてたとえるならば、巨人の住まう部屋の中に設けられた「等身大の人間用スペース」と言えば分かりやすいだろうか。

 

「おや、遅れずに来たようだな。」

 

円卓には、1人の男が既に座っていた。青と緑の混じったくせ毛を肩まで伸ばした青年で、カッターシャツの上から黒いジャケットとスラックスを着用し、傍らにはサーベルが置かれていた。

 

「相変わらず早いな、イーグル。」

「私が遅刻などという、醜い真似をすると思うかね?」

「なあウルフ、遅刻って醜いのか?」

「知らん。」

 

イーグルというらしい青年が髪をかき上げながら言う。バッファローの質問をウルフがバッサリ斬り捨てると、再度ドアが開いて緑と青の髪の双子、シャークとポーラが入って来た。

 

「あ、みんなもう集まってるのか。」

「おひさ~」

「む、お前たちか………」

 

ポーラが軽く挨拶をすると、ウルフが振り返って頷いた。バッファローが2人の顔を見て、気さくに話しかけた。

 

「おー、元気そうだな!そっちは最近どうだ?」

「ま、色々とね。魔王軍のお姫様と、仲良くやってるわ。」

 

バッファローに適当に答えながら席に着く双子。ポーラの話を聞いて、ウルフが口を開いた。

 

「ふ、あの高飛車姫のお守りとは、貴様らも苦労するなぁ………」

「あー………」

「ウルフ、同盟相手なんだから、そんな事言っちゃだめだぞ?」

 

ウルフの言葉にポーラとシャークは微妙な表情となる。一方のバッファローは、ウルフの言い方が引っかかったのか注意をしていた。

イーグルはそんな様子にため息をつくが、そこで、ポーラが首からかけたペンダントに気が付いた。

 

「そういえばポーラ、随分と美しいペンダントを持っているな?」

「ああ、これ?この間、人間のお姫様が落としたのを拾ってさ♪」

「勝手に持ってって良いのか?」

 

自慢げにペンダントを見せるポーラに対して、ウルフは呆れたように言う。しかし、ポーラはうっとりとした顔で応えた。

 

「でも、これの持ち主のフローレントってお姫様がイケメン女子で、マジ私のタイプなのよ♡このペンダントを使えば、ずっと私の事追いかけてくれるからさぁ♡」

「その方法はどうなんだ?」

「ポーラ、落し物は返さなきゃダメなんだぞ?」

「恋は美しいが、その手段は醜いぞ?」

 

ウルフ、バッファロー、イーグルの順にツッコミをするが、ポーラはその姫、フローレントの事を想ってか顔を赤らめており、自分の世界に入ってしまっているようだった。隣に座るシャークは、妹の惚れっぽさに呆れ返った様子であった。

 

「揃ったみたいだな、お前ら。」

 

その時、再度ドアが開いて赤いジャケットを着て赤とオレンジの混じった短髪の、軽薄な印象の青年が入って来た。青年は既に揃っている5人を見渡して、フッと笑った。

 

「全員揃うのは、1ヶ月ぶりくらいか?」

「そうだな、ティラノ。」

 

ティラノと呼ばれた青年は、笑いながら席に着いた。ポーラはティラノの声に気が削がれたのか、不機嫌そうな顔で席に着いた。

 

「俺たちを呼んだのは、デスダイト様だ。間もなくいらっしゃる。」

 

席に腰かけたティラノがそう言うと、イーグル達は一斉に驚愕の顔となる。

 

「デスダイト様が………!?」

「あのお方が直接お呼びとは………」

「それほどの事態が……!?」

『まあ、そう言う事だ。』

 

驚きの声を上げる中、部屋に低く響く声がした。振り返れば、こちらを見下ろすように全身を黒のマントに包み、顔を一つ目めいた赤いバイザーと牙のようなモールドの入った禍々しい金属仮面で隠した巨大な男―――デスダイトの姿がそこにはあった。

 

「デスダイト様!!」

 

デスダイトの姿を見たティラノたちは、一斉に立ち上がって頭を垂れた。デスダイトはそれを見ると、右手を上げた。

 

『いや、そんな畏まらなくていいよ。いやあ、わざわざ集まってもらって悪いね、「炎のティラノ」、』

「はい。」

 

名前を呼ばれたティラノがお辞儀をした。

 

『「海のシャーク」、』

「うす。」

 

シャークは返事と共に頷く。

 

『「氷のポーラ」、』

「はぁい♪」

 

ポーラは片手を上げて、軽く返事をする。

 

『「空のイーグル」、』

「はっ。」

 

イーグルが恭しくお辞儀をした。

 

『「(つち)のバッファロー」、』

「オス!」

 

バッファローは、両拳を打ち合わせて返事をする。

 

『「影のウルフ」、』

「ドーモ。」

 

ウルフが、両手の平を合わせてお辞儀をした。

 

『六魔獣将、全員、遠路ご苦労だったね。』

「いえ、デスダイト様のためならば、この程度の距離など。」

『いや~助かるよ……じゃ、早速だけど本題に入ろうか。座ってていいよ。』

 

ティラノが礼を言ったのを気に留める様子もなく、デスダイトは話を始める。六魔獣将は席に座った。

 

『知ってる人もいるだろうけど、銀河連邦警察のブレイバーがこの星に来ている。』

「連中め、もう嗅ぎつけたか………!」

 

デスダイトから話を聞いたウルフが、忌々し気に呟いた。

 

『既に、シャークとポーラは交戦していたね。その時の状況は?』

「あのデュランってブレイバーは、なかなかの腕前だった………それに、ヤツの隊には『ニール』がいた………」

「ニール?あの『宇宙の黒豹(スペースパンサー)』か!?」

 

ニールの名前を聞いたティラノが声を上げた。バッファローが「えーっと」と考えていた。

 

「確かそいつって、有名な賞金稼ぎだったよな?」

「ああ。その実力を警察長官のエクスロードに見込まれてスカウトを受けたという話だ。」

 

バッファローの問いにウルフが答える。デスダイトは続けた。

 

『流石にその2人だけってわけはないだろうね。恐らくは、まだ仲間がいるんだろう。どういう訳か、彼らはこのシンナセンでバラバラになっているみたいだ………』

「合流されたら、厄介ですな………」

 

イーグルがそう言うと、バッファローが挙手をして進言した。

 

「それなら、合流される前にブレイバー共をやっちまうのが一番だな!」

「それができれば、苦労はしない………」

 

バッファローの言葉に呆れるウルフ。だが、ティラノが何か思いついたのか進言をした。

 

「いや、それならいい手がある。連中をおびき寄せて、罠に嵌める。」

「何か策があるのか?」

 

ティラノに対して、ウルフが問う。ティラノはニヤリと笑って答えた。

 

「ああ。こういう時のために、色々下ごしらえをしておいたからな。そうだな……作戦の内容的に、イーグルが適任だろう。」

 

ティラノが指名をすると、イーグルは一瞬キョトンとした表情になったが、すぐに笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「良いだろう、この空のイーグルにお任せあれ。」

『決まりだね。ああ、例のお姫様が行きたいって言うなら連れてってね。一応『同盟』相手だし、ご機嫌取っとかないと。』

「承知いたしました。」

 

イーグルはサーベルを手にお辞儀をした。

 

『さて、邪魔なGP連中を片付けたら、我々の計画も順調に進められるだろうね。』

「カマリサ帝国が機怪魔獣の残骸調べて、対抗しようとしているみたいですけど?」

『そちらはバッファローとウルフに任せるよ。キミらなら、何の問題もないだろう?』

「まあ、そうですが………」

「ウス!頑張るっス!!」

 

ウルフやティラノ達は彼の態度に呆れていたが、デスダイトは気にも留めずに話を進めた。

 

『それじゃあ、魔王軍には早くシンナセンを侵略してもらうためにも、手助けをしてあげようか。我々の『計画』のためにも、ね………』

 

デスダイトのその言葉は仮面を被っているにも関わらず、不気味な笑みを浮かべているようにも思えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホパクの街から帰還した翌日。

結局あの後、クリセイ王の「協力するとは言ったが、城が変形するなんて聞いてない」というお説教は、深夜になるまで続いた。

ブレイベースではマシンメイルのメンテナンスが行われており、デュランカーとブレイバードは特に念入りに整備がされていた。

 

「損傷率52%………またボロボロにしてしまったな………」

「これまでは、お前にばかり無理をさせてしまったからな………これからは私も機怪魔獣の対処に当たるから、ここまでの損傷にはならないだろう。」

「ありがとう。」

 

コーヒーの入ったカップを片手に修復されているデュランカーを見ながら、デュランとニールは話し合っていた。

 

「ソウスケ達の方はどうだ?」

「今は訓練後で、シャワーを浴びさせに行った。フローは公務だそうだ。」

「そうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ブレイベース内のシャワールームで汗を流した草介とシャスティは、タオルで髪を拭いて着替えを終えていた。

 

「悪いなシャスティ、特訓に付き合ってもらって。」

「ええだよ。にしても、ここのもん、便利でええなぁ………」

「シャワールームとか洗濯機とかあったのは色々助かったなぁ。シャワールームとか広いのに、何故か1つしかないけど………」

 

シャワールームから出た草介が小さく呟く。デュランたちが地球よりも進んだ文明技術を持っていたおかげで不便がないのは、彼にとって幸いであった。

 

「さて、ランドリーはどこだっけかな?」

 

洗濯物の入った籠を持って、キョロキョロと廊下を見渡した。

 

「ここって似たような部屋が多いし、書いてはあるけど宇宙語なのか読めないんだよなー………」

 

そう言いながら、ここだったかと思い辿り着いたドアを開けた。

 

「………んん?」

「何だべ、この部屋………?」

 

入った部屋は、今まで見たものとは異なる部屋であった。

壁の一面に人が1人入れるほどの円筒型のカプセルが、反対側には昔のコンピューターを思わせる大きな機械がいくつも並び、少し異様な雰囲気を醸し出していた。

 

「見た事ねーもんが、いっぱいだべ………」

「何か、昔見た映画でこんな場面あったなぁ……何かの実験室みたいだな………」

 

シャスティが興味深そうに部屋を見回している中、草介は少し不安そうな様子で部屋を見渡していた。

 

「ん?」

 

その時、草介は円筒状のカプセルの1つに目が留まった。そこには、見覚えのある人物が入っていた。

 

「え?……うぇええ!?」

 

思わず後ずさりする草介。そのカプセルは薄い黄緑色の液体で満たされており、中にはピンクの髪の少女・アルスが眠っていたのだ。

しかも、裸で。

 

「は、はだかぁ!?」

「な、何でアルスが!?」

『ん………?ふえええええ!?』

 

裸のアルスに草介とシャスティが困惑して素っ頓狂な声を上げていると、カプセルの反対側から声がした。そちらに目を向ければ、オレンジ色の光に満ちた別の小さいカプセルが立っており、中にはピンク色の直径15cm程の光の球が浮かんでいた。声は、そのカプセルから聞こえていた。

 

『な、何でソウスケさんとシャスティくんが!?や、ダメ!!そっちは見ちゃダメでありますぅ~~~!!』

「え!?アルス!?ええ!?」

 

光の球からアルスの声が聞こえ、2人は更に混乱した。

 

「どうした!?悲鳴が聞こえたが………って………」

 

その時、悲鳴を聞きつけて来たらしいデュランとニールが部屋に入ってくるが、カプセルに入ったアルスと困惑した様子の草介とシャスティを見て、大体の状況を察したのか苦笑いをした。

 

「あー………」

「そう言えば、『そっち』の説明をしていなかったな………」

 

デュランとニールは、「あちゃー」と頭を抱えた。

 

 

 

 

 

数分後、草介とシャスティを落ち着かせると、説明を始めた。

アルスの身体の入っているカプセルは、ニールが機器を操作して表面のガラスが曇りガラスのようになって見えなくなった。

 

「―――要するに、その光の球みたいなのが、アルスの本来の姿なのか?」

「ああ。我々フューゾニアは本来エネルギー生命体でな。この身体は『有機アバター』と言って、有機生命体のいる惑星で活動をするための人造の肉体なんだ。」

「エネルギー、生命体………?」

 

草介にデュランが説明をするが、シャスティには難しかったのか不思議そうに首を傾げていた。

 

「つまり、物質的な肉体を持たず、エネルギーに意思が宿った生き物、と言ったら分かるかな?」

「んー………まあ、何となく………」

 

シャスティの反応に、デュランは苦笑いを浮かべた。すると、草介が少し考えながらもシャスティに教えた。

 

「たとえるなら、光の球が魂とか精霊みたいなもので、肉体が着ぐるみとか甲冑で、それに入り込んで動いてるって事か?」

「まあ、その認識で間違いはないな………」

「なるほどなぁ………」

 

草介のたとえを聞いて、大分分かりやすいなと感心するデュランと、想像しやすかったらしいシャスティ。

 

『私たちは本体であるエネルギー体を維持するのに、『ベータプラズマ線』という宇宙線を定期的に浴びる必要があるのであります。』

「有機アバターも、マシンメイルと同じでメンテナンスが必要だしな。」

「この部屋『チャージルーム』は、そのためのものってことか………」

『うう……誰も来ないだろうと思って、向こうが風の街、あ、間違えた……向こうが見えない曇りガラスモードにするの忘れてたであります………』

「いや、俺たちも勝手に入ったのが悪かったし………何で宇宙人なのに地球の昭和の名曲知ってるの?」

 

恥ずかしがるアルスに対して、思わずツッコミを入れる草介。だが、そこでふとある事に気が付いた。

 

「もしかして、デュランの仲間たちもチャージが必要なんじゃないのか?」

「………ああ。そのはずだ………」

「早く見つけないと、大変だべ………どこかで行き倒れてるかもしれねーだよ………!」

「GP本部を出る前にチャージはしたから、よほど大きな戦いでもしない限りエネルギー切れを起こす事はないだろうが………心配ではあるな………」

 

少し焦った様子のデュランとニール。草介とシャスティも、今の話と2人の顔を見て、同じように心配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロコロ王国の、とある森の中。

木の上に作られた鳥の巣では、雛鳥達が親鳥の帰りを今か今かと待っていた。

 

「おじゃましますヨー」

 

しかし、現れたのは親鳥ではなく、黄色い髪を左右でシニヨンにし、功夫服を着た女性であった。雛鳥たちは突然の侵入者に驚き、けたたましく鳴き始めた。

 

「アイヤー!待ってヨ!君たちを食べたりしないネ!ちょっとこの巣にある『ソレ』、アタシのだから返してほしいだけアル!だから、大人しくしてネ!」

 

女性は両手を前に出して雛鳥達を落ち着かせようとする。巣をよく見れば、雛鳥の間に銀色に光る小さなプレートのようなものが見えていた。女性は雛たちを宥めつつ、そのプレートを取ろうと手を伸ばすが、雛鳥たちが一斉に嘴を突き刺してきた。

 

「あ痛ッ!アタタタタタタタ!?痛いヨ!やめてヨ~~~!!」

 

女性は雛鳥たちに襲われ、木の上から転げ落ちた。

 

「ア、アイヤぁ~~~………」

「大丈夫か、レイェン?」

 

転げ落ちた女性を、筋肉質の体を黒いタンクトップとジーンズで包み、明るいオレンジの短髪とトライバルパターンのような黒いタトゥーがワンポイントで刻まれた右腕が目を引く少女が話しかけた。武器なのか、手斧と盾を背負っていた。

レイェンと呼ばれた女性は、倒れながらも話しかけた少女にニッと笑いながら右手に持った戦利品を見せた。

 

「ナハハ………痛かったけど、何とか取り返せたアル!」

「ったく………まさか、鳥に持ってかれてたなんてな………」

 

少女は呆れながらも、ほっとしたような笑みを浮かべた。少女は右手でポケットを漁ると、同じプレートを取り出した。ホパクの街の近くで回収したものだ。

 

「これで、アタシとレピオのマシンは見つかったアルな!」

「おう!」

 

レピオと呼ばれた少女は、立ち上がったレイェンに屈託のない笑顔で答える。

 

レピオ達がこのシンナセンにたどり着いてから1週間ほど。『隊長』と合流する前に、バラバラになったジップレート、特に自身のマシンメイルのものを回収しようと考え、反応のあった地点をくまなく探していたところであった。

 

「それで、ハバキリはどこネ?」

「向こうにいると思うぞ?」

「ホウ?」

 

そう言って、レピオは背後の方を親指で指した。そちらは、森の道の方向であった。そちらに目を向けたその時、そちらの方から『戦闘』の気配と音を感じ取った。

 

「ん!?」

「誰か戦ってるアル………気配は魔物と人ネ!」

「ハバキリか?とにかく行くぞ!」

「あいあい~♪」

 

レピオとレイェンが走り出した。数分もしない内に、争う音が聞こえてくると、木々の向こうで刀を手にゴブリンと戦う着物姿の少女の姿が見えた。

 

「はぁあっ!!」

「ぐぇっ………」

 

藍色の長い髪を後ろで束ねた小柄な少女はゴブリンに一太刀浴びせると、ゴブリンは血を噴き出しながら倒れた。

 

「ハバキリ!」

「む、レピオにレイェンか。」

 

ハバキリと呼ばれた少女は血振るいをすると、レピオ達に振り返った。周囲にはゴブリンが数匹倒れており、離れた場所には家族と思われる男女と女の子がいた。

 

「そちらの者たちがゴブリンに襲われていたのでな。助太刀に入ったのでござる。」

「そうだったのか。」

 

ハバキリが説明をしたその時、周囲のゴブリンがフラフラと立ち上がりはじめた。斬られた傷を手で押さえ痛みに耐えていると、ハバキリの刀の切っ先が目の前に突きつけられていた。

 

「ヒッ!?」

「浅く斬っておいた。すぐに手当てをすれば治るだろう。この場を直ぐに立ち去り、二度と人に危害を加えないと誓うのであれば見逃そう。誓うか?」

「ち、誓う誓う!みんな行くぞ!!」

 

ゴブリンは怯えた様子でコクコクと頷き、そそくさとその場から逃げて行った。ハバキリが刀を鞘に納めると、助けた内の女性が話しかけてきた。

 

「あ、あの……助けていただきありがとうございます!」

「いや、礼には及ばぬでござる。拙者は、当然の事をしたまででござる。」

「でも、本当に助かりました!」

 

女性だけではなく、女の子も礼を言って来る。男性も、頭を掻きながら近づいてきた。

 

「ありがとうございました。恥ずかしながら、私は何もできませんでした………」

「せっかく街から夜逃げしてきたのに、まさかゴブリンに見つかるなんて……」

「夜逃げ?」

 

穏やかではない単語にレイェンが聞き返せば、男性は頷いて少し気まずそうな表情を浮かべた。

 

「実は、私たちはここから西にあるベロースリットという領地に住んでいたのですが、元々重かった税が、先日、魔王軍の襲撃に備えての資金といって更に多くなってしまって………」

「そんなことが………?」

 

男性の話に、ハバキリは驚いたように目を見開いた。

 

「元々、重い税で生活がキツかったのですが、さらに重くなっては生活できないと言ったのですが、聞き入れてもらえず………」

「それで夜逃げして来たのか………」

 

男女が話した事情に、レピオは納得したような表情を浮かべた。ハバキリとレイェンも神妙な面持ちで話を聞いていた。

 

「では、私たちはこれで………」

 

3人はそう言ってお礼を言うと、荷物を抱えてハバキリ達と別れた。残された3人は、彼らの後ろ姿を見送っていた。

 

「………で、どーする?」

「さっきの話、ちょっと気になるアルね………」

「確かに気になるが………拙者たちのエネルギーも大分減ってきている、今は残りのジップレートを探すのが先決でござる。」

 

話し合うレピオとレイェンに対して、ハバキリはきっぱりと言い切った。何か言いたげな2人に対して、ハバキリは手にしたGPデバイスの画面を2人に見せた。画面には地図のような物が表示されており、ジップレートの位置が示されていた。

 

「ちょうどここから『西』の方に、拙者のジップレートの反応があった。回収のついでに、その領地の様子を探っても良かろう。」

「は!そう来なくっちゃな!!」

「さすがハバキリ!話が分かるアル!」

 

2人の反応にハバキリは口角を上げると、西に向かい歩きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー………」

 

窓の外から夕陽が差し込むモルデュア城の執務室。一通りの書類を片付けたフローは、一息ついて伸びをした。

 

「やっぱり、机での仕事は慣れないなぁ………」

「そう言わずに。これも姫の務めですよ。」

「それは分かっているんだけどね………」

 

書類を持ってきたリジルに苦笑交じりに答えるフロー。机の上には、リジルが持ってきた書類の他に、確認やサインを待っている報告書や申請書が積まれていた。

 

「でも、大分片付いてきたな………そういえば、騎士団の方では何かあったかい?」

「はい。ガラティン団長の療養も大分良くなっていると聞いています。デュラン殿達を警戒してか、国内の魔王軍の侵攻も少し収まっているようです。」

「それは良かった……」

「ですが………」

 

リジルの話を聞いて、フローは安心した表情を浮かべた。しかし、リジルは少し不安そうな顔をしていた。

 

「ですが、それとは別に、少し気になる事がありまして………」

「?」

 

リジルはそう言うと、1冊の報告書をフローに渡してきた。報告書の表紙には、『ベロースリット領定期監査報告書』と銘打たれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベロースリット領?」

「うむ。」

 

翌日、王からモルデュア城の執務室に呼ばれ話を切り出されたデュランが、そう聞き返した。

 

「王都から東にある領地なのだが、前々から良い噂を聞かない土地でのぉ。前々から王都から定期監査をするようにしていたのだ。」

 

クリセイ王が、机の上で手を組んで説明をする。フローとリジルがそれに続いた。

 

「監査の際は特に変わった様子はなかったそうなんだけど、最近、領地から離れる人が増えていると聞いてね。理由までは分からないけれど………」

「それに、領地を巡回する兵士の数が増えていまして。領民によれば、魔王軍の侵攻に備えて王都から派遣されたとのことでしたが、こちらにはそのような記録がなく………」

「それは妙だな………理由はともかく、兵士の出所が分からないとは………」

 

2人の話を聞いたデュランが、顎に手を当てて考え込む。草介とシャスティも、不思議そうにしていた。

 

「おまけに、領主のクシーフが他所から来たらしい怪しい人物と話しているのを見たという話や、大きな荷物が領主の屋敷に運ばれて行くのを見たという報告もあってね。流石に怪しいって事で、密かに再調査をしようって話が出たそうなんだ。」

「なるほど………」

「それで、俺たちは何をすればいいんですか?」

 

ニールが頷くと、草介が王に聞いた。

 

「うむ、調査員が正式に向かう前に、事前に内密な調査をしようと思ってな。そこで、君たちには事前調査に同行してほしいと思うのだ。」

「私たちに?」

 

デュランが聞くと、王はそうだと言って頷いた。

 

「再調査の旨は向こうには伝えてある。仮に何かを隠そうとしていたとしても、君たちであれば、隠す前に現地に着いて調査が出来るだろう?」

「なるほどね。」

 

王がニヤリと笑みを浮かべながら言うと、デュランやニールは頷いた。

ベロースリット領は王都から馬車でも2日ほどかかるそうであるが、デュランカーやバトルトレインであれば長くても数時間で到着できる。何かを隠す間もないだろうと、王は考えたのだ。

 

「本来であれば、王族であっても領地を裁くことは難しいが、不穏分子は無いに越したことはない。すまないが、引き受けてくれないだろうか?」

「王から直々の依頼だ。この間の件もあるし、受けさせていただきます。」

「感謝するぞ。」

 

デュランと草介が依頼を受けると、王は感謝をした。すると、そんな王に向けてフローが進言してきた。

 

「父上、私も行かせてください。」

「フロー………」

「しかし、王族が自ら向かうなんて………」

 

心配してか、渋る王。しかし、フローは真っ直ぐな目で王を見て訴えて来た。

 

「確かに、父上の言う通り他の領地の事は王族が裁くことはありません。ですが、この国の民が不安になるような事を見過ごす事は出来ません。お願いします!」

 

フローは頭を下げると、王に向かって頼み込んだ。王は暫く考えていたが、顔を上げて口を開いた。

 

「……分かった。だが、相手は領主だ。王族であるお前が来たとなれば、警戒をするだろう。」

 

そう言いながら、机に備え付けられた引き出しを開けて中を漁る。

 

「そこでだ、これをお前に渡しておく。」

 

そう言って引き出しから、『ある物』を取り出してフローに手渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、ブレイベース内の格納庫では、出発の準備がされていた。

バトルトレインの客車に荷物を詰め込みながら、草介がデュランに話しかけた。

 

「バトルトレインで行くのか?」

「ああ。これならデュランカーをキャリアに格納できるしね。」

「ハバキリさんたちと会った時に備えて、念のために簡易型のチャージマシンも詰め込んでおくであります。」

 

アルスはそう言いながら、別の客車にカプセルのような物を詰め込んでいた。草介はなるほど頷くと、そんな彼らの後ろに、1人の人物が歩いてくる。

 

「………準備は出来たか?『ドン・エルティゴ』?」

「まあね………この格好、変じゃないかな………?」

 

それに気付いた草介が振り返って話しかけると、その人物は少し困ったように聞いてきた。

 

そこには、短い金髪の上から顔の上半分を白い仮面で覆い、濃いクリーム色の服に黒いズボン、肩に紫色の短いマントを羽織った騎士風の男性―――『謎の冒険者』ドン・エルティゴ・ティリメンヤーの姿があった。

 

………勘の良い方にはバレバレであろうが、彼は変装したフローレント姫その人である。王に渡された白い仮面を被って名前を偽り、調査に同行する事になったのだ。なお、偽名は王直々の命名である。

 

「いや、十分似合ってるよ。」

「あ、ありがとう………」

 

草介に褒められて少し戸惑うフローレントことドン・エルティゴ。そこへ、ニールがやって来た。

 

「準備は出来たか?」

「ああ、こっちは大丈夫だ。」

 

草介とデュランが目配せをして答えた。ドン・エルティゴも頷くと、ニールは頷いた。

 

「では、早速出発しようか。」

「ああ。」

 

デュランの言葉に、一同は頷いてバトルトレインの客車に乗る。ニールが運転席に乗り込むと、バトルトレインは発進地点に向かって移動を開始した。

 

 

 

 

 

【つづく】




暗躍&衝撃の事実&新キャラ登場回。次回から新章です。
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