士道「妹の琴里を探す最中、俺たちは謎の災害空間震に巻き込まれ、その爆心地で謎の少女、そして謎の怪物と出会う」
戦兎「絶体絶命のピンチの中、てぇーんさいっ!物理学者の桐生戦兎は、仮面ライダービルドに変身!謎の怪物を難なく撃退するのだった。
それを見ていた五河少年は、ショックでチビって気絶してしまう!」
士道「チビってはねえよ!てか、その後に出てきてるこの黄色いやつは何なんだ?」
戦兎「それは………
______さて!そんなこんなありまして、怪物を倒した俺たちは、謎の艦になんとテレポート!そこで司令官と名乗る謎の少女、五河琴里と出会うのであった!」
士道「誤魔化したな……てか琴里!?お前何してんだよそんなとこで!」
琴里「それはこれから知る事になるわ!さあ、第四話を始めましょう」
戦兎「シレっと登場して締めのセリフ掻っ攫うんじゃないよ!
俺主役なのに………もう早く行っちゃって!」
空中艦フラクシナス____俄かには信じがたいその場所へ転移させられ、ひと悶着の後。
琴里と呼ばれた少女に連れられ、戦兎は艦内を歩いていた。傍らには金髪の美丈夫が、微笑みを浮かべながらともに歩いている。
「___ウオォォォォッ!!ここが空中艦の内部!一体どういう仕組みで空を飛んでるんだ……!?この鋼材は何で出来てるんだ……!?このこれは_____」
「ッああァァァァもううっさいッ!歩く時くらい静かにしなさいよ!」
「いやーだって空飛ぶ船だぜ?好奇心そそられまくりでしょーが!」
ギャーギャーと言い合いながら、艦内を歩いていく。戦兎は髪をぴょこん!とさせ、目はキラキラしながら、フラクシナスの艦内を舐め回すように見ていた。
やがて、一つの部屋にたどり着く。
「___なんで和室?」
「少しはリラックスして貰おうと思って。あんた日本人でしょ?」
そこはガラス壁に覆われた、日本の六畳一間の和室であった。中央にはちゃぶ台が置かれ、向かい合うようにしてふかふかとした座布団が置かれている。
部屋に入った瞬間、壁がガラス張りから木の仕切りに変わり、中から外の様子が見えないようになった。
「マジックミラーならぬ、マジック鉄格子ってとこか」
「さ、ここに座んなさい」
琴里は何事もなかったかのように、上座の座布団にすとんと座る。口調に似合わず育ちは良いのか、綺麗な正座だった。傍らの男は、琴里の後ろで休めの姿勢をとっている。
「…はいはい」
「
「オカンかよ」
「は?」
「……いや、なんでもないっす」
琴里の空気に押され、おとなしく向かいの座布団に座る。座った瞬間、干したてのようにふかふかな感触が足を包み込んだ。
口に咥えた飴の位置をずらしながら、琴里は口を開く。
「____じゃあ改めて、自己紹介と行きましょうか。私は五河琴里。【ラタトスク】の司令官で、さっきも言った通り、五河士道の妹よ。で、ここで案山子みたいに突っ立ってるのが___」
「ここの副司令の、
案山子と呼ばれたことには特に異論はないらしい。
「……」
聞きたいこと、気になること、ツッコみたいこと、その他諸々の情報が一気に浴びせられたが、グッと堪えて戦兎は立ち上がり、笑って答えた。
「____初めまして。天っ才物理学者の桐生戦兎ですっ!」
ここぞとばかりに、『天才』という点をプッシュする。
「…何あんた、その年で自分で天才とか言っちゃう系の痛い奴?」
「それはいずれ分かるさ」
胡乱げな琴里と神無月の視線などどこ吹く風、と言わんばかりに戦兎は余裕たっぷりに言い切った。
座布団に座り直し、改めて琴里と向かい合う。
「それじゃあ、話に入る____その前に」
一息置くと、琴里は口に咥えていた柄付きのキャンディを取り、差し棒のように戦兎にピッ!と向けた。
「単刀直入に聞くわ。____あんた、何者?」
「……」
部屋に流れる空気が、ピシと固まる。
「兄を助けてくれたことには感謝してるわ。それは間違いない。でも、それを差し引いても今の私たちにとって、あなたは正体不明の超人に他ならない。だからこそ、私たちは知りたいのよ」
「……当然のことだな」
ここに来た時の反応で、この好奇心を大いに刺激される未知の技術力を持つ彼らにとっても、ライダーシステムは未知のものであることは予想できた。恐らくはエグゼイドのように、似て非なるシステムも存在しえないのだろう。
「なら。取り敢えず君たちの事や、あの謎の少女の事____教えてくれ。そうすりゃ、俺のこの力の事も教える。これでイーヴン。等価交換てやつさ」
戦兎は、口調はあくまでも軽く___ただし、その目は絶対に油断を許さないという、強い目つきでそう告げた。
琴里もそれを見て、目つきを鋭くする。
「……話が速くて助かるわね。けど、話の前にまず、あなたが持ってたそのヘンな……何て言えばいいのかしら。ベルト?バックル?と、小瓶みたいなもの、ここに出しなさい。どちらから話すにしても、そこからよ」
話の主導権は渡さない、という意思を込めながら琴里が言う。
これ以上は平行線だと判断し、戦兎は懐に手を入れた。
「……出すだけだ」
「話が終わるまでは何もしないわ。こればっかりは信じてもらうしかないわね」
「……分かった。信じるよ、
そう言って戦兎は、ビルドドライバーを取り出し、続けてラビットフルボトル、タンクフルボトルを机の上に出す。
「これでいいか?」
「全部よ。さっきの戦いは見てたわ。まだあるんでしょう?」
「……最っ悪だ。分かったよ」
しぶしぶ、とばかりにポケットから、ゴリラボトル、ダイヤボトルを取り出し、続けてタカボトル、ガトリングボトルを並べる。
「ふーん、色々あるの……」
続いて忍者フルボトル、コミックフルボトル、ハリネズミボトル、消防車ボトル……
「_____ね?」
パンダボトル、ロケットボトル、ライオンボトル、掃除機ボトル、海賊ボトル、電車ボトル______
「………………」
______
______三分後。
ちゃぶ台の上にはビルドドライバーを中心に、色とりどりの数十本のボトルが所狭しと並べられていた。
「要求には従ったぞ」
「どこに入ってたのよそれッ!?」
堪らず琴里がシャウトする。傍らに立っていた神無月も、顔が引き攣っていた。
どう見てもポケットや服の中では収まり切らない量のボトルである。
「……まあいいわ。前提が揃ったところで、本題に入りましょう」
強引に何か硬いものを飲み込んだような表情で、溜息を付きながら琴里がパチンッ!と指を鳴らした。
すると二人の間の空中に、ホログラム映像が映し出される。そこに映っていたのは、先刻戦兎達の前に姿を現した、剣の少女の姿だった。
「___これが【精霊】。コードネーム【プリンセス】よ」
「……精霊?」
急に出てきたファンシーな単語に思わず眉を顰める。しかし少女の纏っていた不思議な装いを考えると、意外としっくり来たのも事実だった。
「そう。この世界に本来存在しないもの。言っちゃえば
琴里の言葉に、戦兎は真剣な眼差しでホログラムを見つめる。異世界、という言葉に少し思うところがありながらも、先ほどの出来事が、頭の中でパズルのピースのように組み上がる。
「……成程ね。要するに、彼女が空間震の原因なわけだ」
「ふうん。自分で言うだけあって、頭の回転は悪くないのね。……そうよ。彼女がこの世界に現れたときに発生するエネルギーの余波。それが人が空間震と呼ぶものよ。
そしてそれを武力で殺そうとするのが彼女ら___
琴里が言うとホログラムの映像が切り替わり、先の少女に向かって飛んでいく一団____先ほど現れた機械のスーツの少女たちが映し出される。
「彼女たちは自衛隊陸軍直属の、対精霊部隊。極秘に作られた組織で、武力で空間震、ひいては精霊に対処しようとしてる」
「___自分の意思に関わりなく、この世界に厄災を齎す核みたいなもん。だとすれば当然、それを武力でねじ伏せようって考えるわな」
ちゃぶ台の上のボトルを弄りながら戦兎が呟く。至極当然の帰結。正論以外の何物でもない。
だからこそ____気に入らない。
「それで___君たち【ラタトスク】は、それ以外の対処を何か考えている。違うか?」
「……本当に話が早いわね。その通りよ。私たちの目的は精霊を倒すことじゃない。
舌を巻いたような様子で琴里が言いながら、人差し指と中指を立てる。そして人差し指を得意げにクイっクイっ、と動かした。
「その鍵になるのが、士道よ」
「___何だって?」
「対話による平和的解決____これは五河士道でしか為し得ないわ。詳しい話は士道が目覚めたときに一緒にするけど、彼にはそういう力があるのよ。……本人も気付いていないようだけど」
何故か僅かに目を伏せた琴里の言葉に、戦兎の中の疑念が強まる。
「さて、大まかな説明はこんなところだけど、何か質問は?」
「……両手の指じゃあ数えきれないくらいあるけど。取り敢えず一つ。いや二つ聞かせてくれ。
第一に、そもそも精霊ってのはどういう存在なのか。少女の姿をしていて、まるで怪獣のように巨大な力を持っている。曖昧すぎだし、合理性に欠ける。
次にこの【ラタトスク】なる組織は何なのか。さっき言ってたASTが自衛隊ってことは、日本国営の組織って訳じゃあなさそうだな。余所の国の組織か、軍隊か、或いは民間の特務組織か。こんな空飛ぶ戦艦まで持ってるんだ。並大抵の物じゃねーんだろ?」
淡々とした戦兎の語りに、琴里が口の飴を転がしながら答えた。
「最もな質問ね。一つずつ答えるわ。精霊の正体については現状、具体的なことは何もわかってないわ。仮説の域を出ないってのが現状ね。唯一分かるのはさっき説明したことと、少なくともこちらの意思や言語には対応してる、てことね」
「なるほど。この世界に出現するだけで、意志に関係なく大爆発。ヘタすりゃ核爆弾なんて比じゃないくらいの被害を出す女の子ね。……完全に物理法則を無視してんなー」
「ええ。私たちの想像や常識の埒外にある存在。それが【精霊】よ」
「原因不明、法則無視、観測不能な存在ね____」
そこまで呟いた途端、戦兎の髪がピンッと跳ねた。
「_____最っ高だな」
そしてニヤリと笑い、跳ねた髪を掻く。
「……は?」
そんな戦兎の様子に、琴里は初めて呆然とした顔を見せた。
「だってそうだろ!?
今の今まで、この世界の現代科学じゃ解明されてない謎!
オカルトやファンタジーじゃなく、確かに世界に存在してる!!
だのに!既存の法則から外れた力を発揮する未知の異世界の知的生命体!!!
___最っっっ高でしょっ!!」
戦兎はまるで新しい玩具を前にした、いや、それどころか玩具屋さんで走り回る子供のように、目をキラキラと輝かせながらまくし立てた。
そんな戦兎の様子に、琴里は呆れたような、半ば驚いたような声音で話す。
「……あんたって相当な変わり者ね。普通こんな話を聞いたら、そんなバカな、って理解を拒むものだと思うけど」
「未知なるものを探求するのが科学者の使命だ。どんなものにも法則は存在する。つまり精霊の存在や力には、まだ誰も知らないだけの未知の法則が働いてるってことだ。
それを解明する喜び_____ンゥンンンエクスタスィーィィッ!!」イェーイッ!!
ハイテンションをジェットコースターの如く疾走させながら、両手を掲げて高らかに叫ぶ。胡坐を掻いてる姿勢も相まって、危ない新興宗教の教祖染みていた。
「……危なっかしい奴ね、アンタ」
「誉め言葉と受け取っておくよ」
冷や汗をかいている琴里の言葉を、戦兎は笑って受け流す。
両手を下し調子が落ち着いたのか、一つ咳払いをして再び切り出した。
「さて!そんな天ン~才物理学者の俺が、安心して研究に取り組む為にも、
今度は戦兎が指を鳴らし、琴里を指す。ちゃぶ台に肘を置きながら、試すような微笑みを浮かべていた。
琴里が溜息を付き、飴の棒をいじる。
「……はいはい、二つ目___私達についてね」
「『ハイは一回』、だろ?」
皮肉気に返した戦兎にムッとしながらも、続ける。
「___ラタトスクは一応、民営の秘密組織よ。精霊の保護を名目に、様々な有志が集まって出来上がっていったわ」
「秘密組織、ね……」
戦兎の脳裏に、かつての自分____今は戦兎の中でじっと黙って、様子をうかがっている巧たちが作った【ファウスト】の名前が浮かび上がる。
「ええ。……正直、今の段階じゃ話せないことも多いわ。機密ってことで、勘弁してほしいわね。一つだけ分かって欲しいのは、少なくともこの【フラクシナス】のメンバーは、精霊の保護と空間震の解決に、全てを賭けてる、ってことよ」
琴里が遠慮がちに目を伏せがちにしつつも、最後の言葉だけは目を逸らさずにハッキリと答える。
『___中学生と侮っていたが、中々堂に入った振舞じゃないか』
ようやく心の中の巧が口を開く。元々口数の少ないタイプなので、これが自然と言えば自然なのだが。
「なるほどね。
「……正解。よく知ってるわね」
「天っ才ですから?」
キリッ、とドヤ顔を崩さない戦兎に琴里は露骨に眉をひそめたが、もうそのテンションに慣れたのか何も言わなかった。
「その通り。私たちは精霊に、この世界を好きになってもらうために行動してる。そのために、士道が必要なのよ」
「………」
医務室で今も寝てるだろう、あの少年の姿を思い浮かべる。
数時間にも満たない程度の付き合い。
それでもあの少年の持つ優しさ、無鉄砲さ、見ず知らずの相手____しかも一歩間違えれば殺されたかもしれない相手____の為にすら、命を張れる程の度を超えたお人好し。
「(あいつにそんな力が……)」
全ては彼が目を覚ました時、明かされるだろう。
「さて。私達の今話せる話は以上。______次は、貴方の番よ。自称天才物理学者さん?」
琴里の言葉に、戦兎は深く呼吸を整える。
「_____分かった、話すよ。俺が何者で、どこから来たのか。この力のことを………」
ちゃぶ台の上のビルドドライバーを握り締め、戦兎は語り始めた。
自分がいた世界のこと、仮面ライダーのことを_______
◆
頭の中で声が響く。
______久しぶり。やっと、やっと会えたね、■■■■
記憶にない。なのに懐かしく、愛おしい声。
______嬉しいよ。でも少し、もう少しだけ待ってて
君は誰だ、誰なんだ
_______もう決して離さないから。貴方を思い出にしないから
声が徐々に薄らいで、光が広がっていった…………
「________はっ!」
五河士道は、微睡の光から目を覚ました。
「ウワッ!?」
目を覚ました瞬間、見知らぬ女性が向けていたペンライトの光に叫んだ。
「……ん?目覚めたね」
眠た気な目つきにボサボサとした髪。
両目の隈、そしてポケットのぬいぐるみの熊………クマ×2。
爽やかなシャンプーの香りと、その不健康そうな様子を補って余りある大人の静かな美貌が、思春期の少年の心臓をだらしなく踊らせた。
「だ、誰ですか!?」
「……ん?ああ。
ここで解析官をしている、
______
村雨令音と名乗った女性の聞き慣れない肩書きへの疑問と共に、士道は自分が寝ていたベッドの周囲を見渡す。
無骨なパイプベッドの周囲はシミ一つない白いカーテンに覆われ、天井には無数の配管や鉄骨が通っている。
知らない天井だ。_____と、どこぞのアニメで聞いたセリフが脳裏をよぎった。
「こ、ここは、どこですか……?」
「……ああ、フラクシナスの医務室だ。気絶していたので、運ばせてもらったよ」
「ふらくし……気絶?____あっ!」
そこで士道は、先ほどまで自分が巻きこまれていた出来事を思い出した。
「す、すいません!琴里____妹を探してるんです!ファミレスの前で避難もしないで……!
あと、俺と一緒にいた、大人の人は無事ですか!?えと、背が高くて、ゆったりした服を着た、自分を天才物理学者と言ってる___」
「……落ち着き給え。二人とも無事だ」
令音はどこか淡白な声音で、士道を宥める。
「え……!?で、でも__」
「……気になることは色々あるだろうが、どうにも私は説明下手でね。
___君に合わせたい人がいる。詳しい話は
そういって令音はカーテンを開け、部屋の出入り口へフラフラと歩いていく。
途中、何かを思い出したように、ポケットからスマホを取り出した。……普通のスマホである。
「……私だ、彼の目が覚めたよ。今ブリッジに向かうところだが、そちらはどうかな?
……そうか。分かった。ああ、詳しい話はあとで聞くよ。では」
連絡を終えると、令音は士道の方へ顔を向けた。
「……私に付いて来たまえ」
士道は息を呑み、彼女の後をついていくのだった。
琴里と戦兎主導だと会話内でギャグ挟むのがムズイのじゃ。説明パート多くてごめんネ。
原作読みゃ一発でわかるんだからもっとスナック感覚でサクサク進めたい。
赤バーありがとね!