「……道理でござるな」
天界。
聖なる心を宿す者達が暮らすそこにて、1人の天使が誰にも届かぬであろう呟きを零した。
純白の忍者装束を纏い、独特の口調でありながら確かな威厳を感じさせる天使の顔には喜色も不安の色もない。どこか諦めたかのような、まるで裁かれることを待つ罪人のような……そんな雰囲気を漂わせながら、
「誰よりも公平であることを求め、望まれ、押し付けておきながら拙者はその在り方を放棄し、心のままに生きた。完璧な天使であることよりも、人間に寄り添うことに固執した。ならば、それは罪であろう」
視認できない何かを前に、天使は両腕を大きく広げる。抵抗するつもりはない。そう宣言しているようだった。
「さあ、拙者の肉体が、力が欲しいのだろう? 好きに持っていけ。他の誰でもない
恨みや怒り、憐みでも歓喜でもない。ただただ機械的な冷たい感情を天使は肌で感じ取る。僅か数秒後、自分は死ぬ。それを確信した天使は瞼を閉じ、脳裏を過った唯一の心残りへと最期に言葉を贈る。
(すまない。サンダルフォン……)
直後、天使の体は眩いばかりに極光に包まれ、消失した。
それは破滅の前触れか。それとも奇跡を告げる祝福か。誰にも分からない。【天使長】ミカエルも【天界最強】であるガブリエルも、ラファエルもウリエルも、【奇跡の子】と呼ばれたテオドロ・レグレンツィや【現代の英雄】ヴァスコ・ストラーダも……誰もが理解できず、理解を拒んだ。
もしかしたら生前の【聖書の神】でさえ、全容を把握しきることは不可能であったかもしれない。
その日、天界全体を眩いばかりの光が包み込んだ。
前触れはなく、理由も分からず、天界に住まう彼ら彼女らは害も益も与えないただ眩しいだけの神々しい光に突発的に視界を覆われたのだ。
ある者は悪魔や堕天使、あるいは最近世間を騒がせている【
そんな中、誰よりも早く原因究明に乗り出したのは熾天使の1人――サンダルフォンであった。勘や本能に近い直感的なものから、サンダルフォンは天界を包んでいた光の正体を誰よりも早く察していたからだ。
それが……己の片割れ、もしくはそれに連なるものに関連していることを。
サンダルフォンの要求を天使長であるミカエルは聞き届け、調査はすぐに開始された。"もしもの場合"も想定し、悪魔や堕天使陣営への連絡は取らず、あくまで天界陣営だけでの解決を目指して。
「嘘だ……ありえない……」
結果は、驚くほどあっけなく判明した。だがサンダルフォンはその事実を思考よりも先に感情が否定する。天使としても、親愛の感情を持つ1つの生物としても、認めたくない非情な現実。しかし目の前に並べられた証拠はそれが事実であると物語っていた。
天使の自壊。それによる余波。
天界を包んだ光の正体はそう結論づけられた。特定の天使が肉体を崩壊させるまでの力を行使したことによって発生した波状光。だがミカエルやガブリエルすら想定していなかったその調査結果は現在の三大勢力のバランスを崩しかねないことから、公表されることはなく熾天使内だけで処理された。
故に、天界に暮らす者の多くは、その日の出来事を原因不明の異変として過去の出来事にしていく。しかし神の死が時に流れによって知れ渡ったように、いくら隠し通そうとも真実はいつの日か明るみに出ることだろう。
変わり者ではあったものの、確かに天界のバランサーであった天使の死。
――すなわち、熾天使メタトロンの消滅を。
〇
天界にて、メタトロンと呼ばれる熾天使の消滅が発生したのと同時刻。渦の団【英雄派】、そのアジトでも異常が発生していた。
「はーっ……はーっ……ふざけ、ないで……」
胸を抑え、蹲りながら苦しそうに荒い息を繰り返す金髪の女性がそこにはいた。
彼女の名はジャンヌ・ダルク。
【英雄派】幹部の1人であり、フランスの聖女ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ女性。普段は個性的過ぎる英雄派メンバーの中でも落ち着いた雰囲気を見せる彼女だったが、どういうわけかジャンヌは自室で痛みに苦しむように、
「私の体は、心は、力は……私だけものよ。絶対にくれてなんかやるか……。今更……今更私に
ジャンヌの体。その内側から光が溢れ出す。それをどうにか抑え込もうと彼女は自分の体を強く抱き締めるも、それで光が収まることはない。
「顔も知らない他人に奪われるくらいだったらッ!」
やがてジャンヌは己が神器である【聖剣創造】を起動。自身の手の内に一振りの聖剣を生み出し、それを逆手に握った。剣先を己の胸――心臓へと向けて。
「ジャンヌ、何があった!」
【聖剣創造】を使ったことで、ようやく異常事態を気づきジャンヌの自室へ入ってきたのは、【英雄派リーダー】曹操だった。彼は冷徹な人間ではあるが、最低限の仲間意識は存在する。自分達のアジトで仲間が神器を起動したのだ。例え場所が乙女のプライベートルームであったとしても駆けつけるに決まっているだろう。
勢いよく扉を開け放った曹操は、部屋の中央で全身から光を放つジャンヌに唖然とする。
「そ、うそう……た、すけ……」
しかし彼に出来ることは何もない。今にも自身の胸へ聖剣を突き立てようとする体勢で、涙を流して助けを求めるジャンヌへ曹操は手を伸ばしたが……それも、もう遅い。
「ぁ……」
次の瞬間、天界で発生したものと同規模の光の爆発がジャンヌを中心に発生する。曹操は咄嗟に目を庇うも、僅かに反応は遅れ、一時的に視界が潰された。だがそれでも彼は実在した英雄の子孫。冷静に落ち着きを保ちながら、迅速に視界を復活させていく。
数秒もの時間で視力を復活させた曹操は、瞼を開ける。
しかし先程まで目の前にいたジャンヌの姿はもう、そこにはなかった。
「一体、何が起きた……」
曹操は分からない。今何が起きて、誰が元凶なのか。真相に辿り着くための情報が圧倒的に足りていない。それでもただ1つだけ、これだけは確信を持って言えるだろう。
――ジャンヌ・ダルクと呼ばれる少女が消失したという事実を。
〇
1体の天使と1人の聖女であった人間が同時に姿を消した。しかし、異変は未だ序曲にすら至っていない。始まりは、誕生は……今この時より迎えようとしていた。
場所はフランス。自然に囲まれた中にひっそりと建てられた教会にて、1人の少女が祈りを捧げていた。時刻は深夜、彼女以外の来訪者はいない。ただ1人、神父すらいないそこで、彼女は膝をつき祈りを捧げていた。
「ああ、まさかこんなことになるだなんて……」
悲しむように、憐れむように、悲痛そうに顔を歪めた彼女は嘆く。
「私が求めたばっかりに。いいえ、そもそも最初からあんなもの手にしていなければ……かの大天使も彼女の魂を受け継いだあの方も、奪われずに済んだというのに……」
彼女はごく普通の、どこにでもいる女学生だった。特別な力も、特殊な出生も、過酷な過去も、人の身を超えた神器も……何も持ち合わせていない。そのまま普遍的な日常を過ごし続けていれば、普通の少女のように学び、結婚し、子供を産み、安らかな一生を終えたことだろう。
しかし彼女は、本来あり得るはずのない2つの事象に遭遇した。それを祝福か、呪いと答えるかは意見の分かれるところだろう。
1つは、生前の記憶の保持。
輪廻転生の輪を潜り、新たな生を得た彼女には、【前世の記憶】と呼ばれるものを生まれながらにして持ち合わせていた。それだけならば、この世界では珍しいことでもない。実際、【英雄派】にも前世の自分の記憶を受け継いだ者は少なくない。だが彼女の場合は多少特殊だっただけ。
前世の彼女は名のある英雄でも過去の戦争にて命を落とした人外でもない。ごく普通の、現代で生まれ育った学生。彼女……もしくは彼自身は特に目立った偉業など成し遂げてはいない。加えて稀な才能があるわけでも、死に物狂いの努力によって力を身につけてもいない。
ただ知っていた。その世界にて生み出された数多の架空世界を。
娯楽目的で生み出されたフィクションの絵空事、実在しないはずの空想の具現。紙の上にインクで描かれただけの在り得ざる平面の世界。そしてその中にある【ハイスクールD×D】と名付けられた、誰よりも性欲と愛のために生きた男の物語を。
教会で生まれ育った彼女は知っている。記憶にある歴史とは僅かに
あらゆる全てが、その【原作知識】と一致していることを証明していた。
そう、彼女の前世は平行世界――それも現世のモデルとなった創作物が存在する上位の世界の住人だったのだ。
確かな異質、異常ではある。だがそれでも、彼女自身が強大な力を持ち合わせていない以上、それは本当に知っているだけに過ぎない。これから先起こりうる未来を変えることはできず、主人公である
世界にとって、なんら問題はなかった。それが明確な異常へと発展してしまったのは、本来こちら側の世界にあるはずのない……【
この世界に存在している神器としての聖杯とは大きく異なる、願望機として顕現した聖杯。偶然か、それとも運命か。成り行きはどうあれ、彼女は記憶にある【Fate】の聖杯を手に入れてしまった。
運命が狂いだしたのは、そこからだった。
流石にそんなあからさまな厄災のタネを捨て置くわけにもいかず、聖杯を持ち帰ってしまった彼女は当初、それを使うつもりなど一切なかった。
それは【Fate】の原作知識を持つ者であれば当然の判断だろう。あの別名、万能の願望曲解機は口にした願いそのものは叶えてくれるものの、ほぼ確実に望んだ通りの結果とはならない。願いだけは叶えてくれる外道魔法マスコットの方がまだマシであろう。
しかし信用できないとはいえ、目の前に願望機が存在し、その誘惑に耐えられるほど人間は強くできていない。それはしばらくの間『願いが叶う』という誘惑に耐え続けていた彼女も例外ではなかった。
ちょっとした出来心。ふとした興味心からだった。ついに誘いの手に惹かれてしまった彼女は【聖杯】へ手を出した。
望んだ願望は『全人類の救済』。
【Fate】の世界においてある聖人が願ったものと同様のあからさまな危険しか感じられない願望。欲に忠実な人間ならばまず最初に浮かべるはずもないその願いを、彼女は本気で望んでいた。
教会という、この世界において重要な役割を担う施設で暮らしていた彼女は実際にその目で見たことがなくとも、多くの人々が人ならざる者の手によって命を落としていることを知っていた。ならば、例え前世の記憶があったとしても、善性の塊のように育てられた彼女がその身を超えた願いを抱くことは別にありえない話ではなかった。
唯一の間違いは、聖杯に対して願ってしまったこと。
願いの内容が大雑把であればあるほど、聖杯は人道を無視した確実で効率的な手段を選ぶ。それを彼女も分かっていたからだろう。咄嗟に願いの変更をしようとしたところで、脳裏にとある女性の姿が浮かび上がった。
彼女の持つ【Fate】の知識の中で最も新しく、誰よりも公平であった女性。救世の聖処女を依り代に現界した大天使という複合サーヴァント。
今世では憧れすら感じられるその姿が鮮明に脳内を駆け巡り、彼女は思った……思ってしまった。
――あの人のような力があれば、本当に世界中の人達を救えるかもしれない……と。
その思考を読み取った聖杯は彼女の願いを最悪な形で聞き届ける。
【Fate】の世界において、聖杯は過程を無視して結果のみを引き寄せるという性質を持つ。それは当然、彼女が手に入れた聖杯も同様。つまり逆説的に考えれば、規模を無視したとしても具体的な
だが運の悪いことに、聖杯が必要とする素材がこの世界には既に揃っていた。ならば後は、それを回収し、合成するだけ。
聖杯はまず天界に住まう熾天使メタトロンの存在と力、魂を自発的に献上させた。そして続いて、ジャンヌ・ダルクの魂を受け継いだ少女の魂と記憶、肉体を強奪する。
そんな非道を、聖杯を使った彼女が知らないはずがない。平和を愛し、殺生を拒む彼女は当然聖杯の暴走を止めようとはした。しかし彼女には何もできない。抗う力がない。
こうして、2つの命は聖杯によって回収された。天界と英雄派のアジトで起きた異常は聖杯によるものだったのだ。
勿論、それだけで終わることはない。むしろ本題はここから。
「次は私……ですか。分かりました。あの人達を犠牲にしてしまったのは私の愚かな願いが原因です。この程度で償いになるとは思えませんが、私は全てを受け入れます」
彼女は理解していた。あと数秒もしない内に、自分という個が消滅することを。怖かった。嫌だった。でも、己の欲望に逆らえなかったばかりに関係ない人の命を奪った罪悪感は重くのしかかり、抵抗する気持ちすら奪っていった。
「ぁ……」
両膝を突き、手を合わせて祈りを捧げていた彼女は全身から一気に力が抜けたかのようにバタリと倒れ込む。瞼は開いているものの瞳に光はなく、顔からは一切の生気を感じられない。だが数秒後、彼女は何事もなかったかのように平然と立ち上がると、まるで機械のような声音で語りだす。
「私は天使。私は力。私は栄光。私は玉座。私は侍る者。私は護る者。私は歯車。私は監視者。私は書記。私は法」
狂ったような、もしくは誰よりも正確な機械のように、感情の消えた顔で彼女は意味があるのかすら分からない言葉を並べる。
「外殻を聖女ジャンヌ・ダルクの魂から再現――成功。中核を天使メタトロンの魂と肉体から抽出――成功。そして、それらの材料に我が肉体レティシアを依り代に受肉を開始」
次の瞬間、彼女――レティシアの体は閃光に包まれる。眩い光は彼女の体を覆い隠し、教会全体を輝きが照らす。そして視界を潰すほどの光が収まった後そこには、
――【天使】がいた。
「神よ。異なる世界、既に滅びを迎えていたとしても貴方に感謝を。この顕現は奇跡です」
そこにいるのはもう、元の心優しいだけの少女ではない。公平に公正に、全て平等に裁く
「――メタトロン・ジャンヌ。
ジャンヌの魂から再現された生前のジャンヌ・ダルクの肉体。そこに埋め込まれた
聖杯は、レティシアの願いを彼女自身の人格も含めて作り変えることによって叶えたのだ。
こうして、彼女は人類を救えるだけの力を手に入れた。だが……
「足りません」
天使――メタトロン・ジャンヌはそれだけでは満足しなかった。
聖杯が「これだけあれば十分」と判断した圧倒的な力でさえ、彼女にとっては物足りないものだったのだ。それも仕方のないこと。この世界とは異なる【Fate】のメタトロンの強大な力を聖杯1つで補えるはずがない。
とはいえ、現状以上の力を手に入れることなど不可能に等しい。それは全能の力と聖杯を手にした彼女にも当てはまる。だが彼女は知っている。元の肉体の持ち主が所有していたこの世界とは異なる世界の記憶を。
「怠惰を切り離して……いえ、これはいけませんね。それをしてしまえば、私の裁定者としての相応しさがなくなります。ならば……ああ、そうでした。こちらの世界にはこちらの聖杯があるんでしたね」
メタトロン・ジャンヌはレティシアの前世から必要な情報を探り出す。そして見つけた。こちらの世界にも存在する。神器としての聖杯の情報を。
「では、まずはそちらを頂きましょう」
そして彼女は飛び立った。その純白の翼を輝かせ。高く、高く。暗闇の空へと消えていく。
こうして、1人の少女が終わり、世界には新たな天使が誕生した。
◯
1ヶ月後。
冥界でありながら、聖なる力に恵まれた地。悪魔からしてみれば教会と同様近づきたくはないその場所にて、何人かの種族の異なる者達が集まっていた。
「おい、ミカエル。あの天使共は本当にこっから湧き出てんだろうな?」
「ええ、間違いありません。それと、奴らを天使とは呼ばないよう。あのような者達と同じ名で呼ばれるのは屈辱です。貴方も元は天使なのですから、自分の種族にそれくらいの誇りは持ったらどうです?」
「へいへい。わーったよ」
「まったく貴方は……」
対照的な白と黒。どちらも同じ天使と呼ばれる種族でありながら、純粋であり続けたか、【欲】に目覚めたかによって分岐した2つの種族。その両方のトップ――【
2人は決して仲の良い関係性ではない。たとえ和平を結ぼうとも、天使と堕天使という間柄である2人の仲が真の意味で改善することはなかった。だがそれとは別に無視することのできない脅威を前にしたからこそ、2人は共に本来の持ち場から離れ、冥界にまで足を運んでいる。
天使と堕天使の頂点。その2人が同じ場所にいるというだけでも珍しいことであるが、この場にいるのはなにもこの2人だけではない。
「感謝するよミカエル。それとアザゼル、油断しないでくれ。あの天使――いや、異形達は強さこそ大したことないが、数があまりにも多い。敵の目的が不明であるからこそ、警戒を怠ってはいけない」
「まったく、皆に迷惑かけて! 絶対許さないんだから!」
「お前もかよサーゼクス……。俺だって相手のヤバさぐらいは分かってるっての。ただな、このメンバーのどこに心配する要素があんだよ」
紅蓮の髪を靡かせる長髪の男――二代目魔王サーゼクス・ルシファー。そして相当な年齢にも関わらず魔法少女のコスプレをしたサーゼスク同様二代目魔王の女――セラフォルー・レヴィアタン。四代魔王の内でも特に戦闘力の高い2人もそこに揃っていた。
絶対的な強さから【魔王】の称号を与えられた悪魔。これから世界でも滅ぼしに行くのかと言いたくなるメンバーになってきてはいるが、これでもまだ全員ではない。
「そうよお兄様。もう少し私達のことを信頼してくれたっていいじゃない。イッセーもそう思うでしょう?」
「勿論っすよ部長! 冥界の皆を傷つける野郎なんざ。俺がぶん殴ってやります!」
「ええ、その意気よ。私達に喧嘩を売ったらどうなるか、思い知らせてあげましょう」
紅髪に青い瞳。サーゼクスの妹であり、グレモリー家次期当主の上級悪魔。その実力と強力な眷属から
現状メンバーと比べてしまえば多少見劣りはするものの悪魔と呼ばれる種族の中でも頭の1つや2つ抜きん出た優秀な主従。そんな2人も、ある共通の目的のためこの場に集っていた。
三大勢力の中でも上澄みの彼らが何故ここに集まっているのか、それはちょうど1か月ほど前から出現した謎の勢力が関係していた。
出現理由は不明。行動理由も不明。3枚の翼とその上に輪のある天使に酷似した特徴を持つ異形が冥界と天界に突如現れ、そこに住まう者達へ攻撃を開始したのだ。幸いその強さは下級悪魔程度のものであったものの、場所も相手も関係なく襲ってくる上に数が多い。
その異形達を仮定として【天使】と呼び(天界陣営は断固抗議したが)、三大勢力はすぐに対策を練った。しかし発生原因を探ろうにもヒントはなく、見つけ次第倒しても文字通りいくらでも現れるため切りがない。
そんなこんなで手をこまねいている内に、異形達はある変化を見せた。
これまで下級悪魔程度の力しか持ち合わせていない異形達の中から、上級悪魔に匹敵する個体やそれすら上回る個体が現れ始めたのだ。そして比例するように増えていく被害者の数。
このまま放置してしまえば魔王や熾天使に匹敵する個体も現れるかもしれない。最悪の想定をした三大勢力のトップ達はこれまで同様に守りに入ることはやめ、謎の敵勢力の殲滅を決断した。
そしてようやく天界陣営が異形達の発生源を特定し、最大戦力である彼らの突入が今行われようとしていたのだ。
ただ本音を言うと、サーゼクスはこれでもまだ戦力が欲しかった。天使と堕天使のトップに悪魔の頂点に立つ魔王の2人。加えて、若手悪魔の中でも彼が最も信頼を置く妹と、その妹が心から信頼し未来の弟になるとも思っている赤龍帝。確かに上級悪魔程度の敵が何体いようとも、圧倒できるメンバーだろう。それでも、悪魔としての本能が危険信号を送り続けていた。
不安が尽きることはない。それでもこれは仕方のないこと。異形達の発生源に踏み込み、その元凶を打破することは重要であるが、だからといって冥界や天界の守りを疎かにするわけにもいかない。
愛する妻や眷属達。【
「――さあ、行こうか」
仲間を家族を、そしてなにより自分自身を信じ、サーゼクス・ルシファーは歩みを進めた。その英断が、己の運命を決定づけることになるとも知らずに。
「……おい、なんだありゃあ?」
目的地へ向け、進んでいたサーゼクス達はそれを発見する。アザゼルが唖然とするのも無理はない。冥界が調べた情報によれば、この聖なる地には誰1人として近づく者がおらず、そこには何もない大地が広がっているだけであったはず。
しかし彼らの前には、巨大な建造物がそびえ立っていた。
質素な作りでありながら、どこか神聖さも感じられる神殿のような建物。だが同時に現代の人間界にありがちな近代的な構造もしている。あからさまな異質感を漂わせる建造物だった。
「私達にはあらゆる情報が不足しています。あれがなんであるかも調べなければ分からないでしょう。……ですがその時間すら、あちらは与えてくれないようですよ」
「っ……部長、俺の後ろに!」
「ダメよ! 逆にもいるわ!」
「なるほど。待ち伏せされていたというわけか……」
決して油断していたわけではなかった。だがミカエルの警告を受けた時には既に遅く。気づけば彼らは天使の特徴を持つ異形達に取り囲まれていた。その中には、情報にあった上級悪魔に匹敵するともいう頭部が抉れた人型の個体も存在する。
「へっ、なるほどな。ここまで警戒してくるってことは、よほど俺達にここを調べて欲しくないらしい。ってことは調べねぇわけにはいかねーなぁ」
「魔法少女レヴィアタンの出番だね!」
各々が士気を高め、戦闘態勢を取る。もし相手が上級悪魔に匹敵する力を持っていたとしても、このメンバーの前では有象無象に等しい。全員が余裕の笑みを浮かべ、迫る異形達へと向かい合った。
しかし、
「――。――」
「……って来ねぇのかよ?!」
「これは……ついてこい、ということかな?」
異形達が仕掛けてくることはなかった。バトる気満々であった一誠がツッコミ、サーゼクスが背を向けて建造物の中へと入っていく異形の行動理由を推測する。
全員は顔を見合わせ、頷いて意見の一致を確認すると、警戒は解かずに先を行く異形についていくのだった。
建物の中は、広大だった。装飾はなく、ただただ広い純白の通路。一誠はともかく、豪勢な暮らしに慣れたサーゼクス達ですら、その光景に圧倒される。
「奴ら……一体どういう仕組みだ? 見境なしに襲い掛かる機械だとばかり思ってたが、まさか知能があるのか? ああクソ、すげー調べたい!!」
「暴走しないでくださいよアザゼル。敵とはいえ、攻撃してこない相手をわざわざ刺激する必要はありません」
「分かってるっつーの。俺もそこまで馬鹿じゃねぇよ」
敵の本拠地であるというのに、いつものような言い合いを繰り返すアザゼルとミカエルに他の者達は呆れながらも笑みを浮かべ、自然と肩の力も抜ける。この緊迫的な状況で彼らのような存在はありがたかったことだろう。
そうこうしている内に、目的の場所へとたどり着いたのか人型の異形は巨大な扉の横で立ち止まる。
「この扉をくぐれ、ということらしいな……」
緊張に顔を強張らせた彼らは、サーゼクスを先頭に扉を開く。
「ここは……法廷……ですか?」
「みたいね。でもどうして法廷が……」
ミカエルが呟く。そこは人間界にあるものとは大きく異なり、壮大かつ神聖さにあふれていたものの、裁判所の法廷のような空間であった。その場にいる全員が驚きつつも、『どうしてこんな所に法廷が?』そんな疑問が先に生まれる。しかし法廷がある理由など1つしかない。
「――被告、原告、揃ったようですね」
その時、決して大きくはないものの法廷全体に威厳のある声が響き渡る。
「「「「「「……!?」」」」」」
姿どころか、気配すら感じられなかった。サーゼクス達の間に戦慄が走り、同時に全員が声の聞こえた方向へと顔を向ける。
そこにいたのは、1体の天使。
黄金の髪に純白のドレス。その背には偉大さを示すかのような大きな純白の翼。そして神と見間違うほどの圧倒的
彼女は、言葉も出ずに呆然とするサーゼクス達へと告げる。
「では――審理を開始します」
作者「ンンンンンッ。続きませぬ!!」
コヤンスカヤ「はい? こんな中途半端なところでやめるんですか? どうせ大して長くも続かない短編なんでしょうし、最後まで書いたらどうです?」
作者「……まあ確かに、当初は【連載小説】なるものへの展開も思案していたのですよ。なのですが……」ほわんほわんほわ~ん
コヤンスカヤ「ええ、回想始めるんですぅ?」
~回想シーン~
作者『さてさて、とりあえず検事代理は曹操殿に任せ……彼、普通に屑でしたね。弁護のしようもなく有罪判定と。ほぉう…? どうしましょう?』
作者『ンンンン。ここでサーゼスク殿を怒らせ、メタトロン殿との戦いに……ダメですね。権限で一方的な展開になります』
作者『ミカエル殿がメタトロン殿消滅の真実に気づき激怒する展開を……フハハッ! そもそもミカエル殿と元メタトロン殿の関係性がいまいちわかりませぬ!』
作者『えぇ、えぇ。ここで一誠殿をセクハラで訴え……はて? ギャグ路線から戻ってこれなくなると』
作者『ぬぅ……これはそもそも、【ハイスクールD×D】に関する知識が浅すぎるのでは?』
~回想終了~
作者「……やめました」
コヤンスカヤ「やめたんですか……」