ニンジャ・サプライズド・ニューエリドゥ   作:ニュービー・ニンジャ・ドージョー

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(これまでのあらすじ)
 赤牙組のマッタン組織員、スモウルとフライ。一攫千金を夢見てホロウに飛び込んだ二人に待ち受けていたのは、ホロウスレイヤーによるアンブッシュだった。
 襲われたフライを置いて逃げることに成功したスモウルは、ホロウからの脱出を図っていた。


ショウキ・カイキ・ニンジャ #1

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 エーテルが容赦なく身体を蝕んでいく感覚を味わいながら、スモウルは先ほどの戦いを思い出していた。

 

 共にホロウに入った仲間、フライは隣にいない。

 高い金を支払って手に入れた「キャロット」が全く役に立たず、元来た道を辿っていた彼らの前にヤツが現れた。

 彼ら赤牙組だけでなくあらゆるホロウレイダー達に恐れられる、ホロウに与する全てを滅する者。これすなわち、ホロウスレイヤーに他ならない。

 

 ホロウスレイヤーの万力めいたニンジャ筋力から繰り出された鋭いチョップ斬撃。それがフライの意識を刈り取ったのを見て、スモウルは稲妻めいた速度で逃げだした。

 彼よりも実力のあるフライが、文字通り手も足もでなかった相手。戦うのはあまりにも無謀だからだ。実力差を理解できずイヌジニするような弱者が生きていけるほど、ホロウレイダーの世界は甘くはない。

 

 

「フライ……」

 

 

 スモウルはポツリと呟く。

 ホロウレイダーにとって、仲間との離別はチャメシ・インシデント*1だ。昨日まで顔を合わせていた仲間が、明日にはムクロになっているなんて珍しいことではない。

 それも覚悟の上で、ホロウレイダーは食虫植物に誘われるハエめいて、大口を開けて獲物を待つホロウの裂け目へ飛び込んでいくのだ。

 

 しかし、スモウルにとってフライは組織の中でもとりわけ仲の良い、いわば親友だった。

 時に笑い、時に喧嘩し……幾度となくユウジョウを確かめ合った親友を見捨てて逃げた彼は、コウカイの念に苛まれるのと同時にフクシュウの炎を燃やす。ホロウスレイヤー、許さぬと。

 

 

「この借りは必ず……」

 

 

 数時間ほど歩いた彼の目に映ったのは、ホロウに入って最初に見た光景だった。隣にいた親友は居ないが、無事に出口まで辿り着くことに成功した。

 ホロウ内部の構造は時間経過によって移り変わる。侵入からかなり時間が経っていたが、変わる前に戻ることができたのは不幸中の幸いである。

 もし間に合っていなかったら……結末は一つ、エーテリアスとしてホロウに囚われるほかない。エーテル適正体質であろうとなかろうと、ホロウでの長時間滞在はセプク*2行為だ。

 そうならなかったことにスモウルは安堵の息を漏らし、はやる気持ちを抑えながら出口へ向かう。

 

 だが、ああ! ヒトは油断した時ほど失敗を犯すものだ。スゴイタカイよりスコシタカイが実際ヤバイ。平安時代の哲学剣士、ミヤモト・マサシの言葉である。

 駆け足で出口へ近づこうとしたスモウルは気がつかなかった! 2メートル近い彼の頭上を飛び越す赤い影に! 

 

 ニンジャ第六感をお持ちの方ならもうお分かりだろう。そう! ホロウスレイヤーのエントリーだ! 

 

 

「Wasshoi!」

「なっ!?」

 

 

 猫めいた着地を披露するホロウスレイヤー。コメダワラのように人を肩に担ぎ、マフラーの如く長いボロ布を風に靡かせている。鮮血に浸したような赤黒いニンジャ装束は、時折カラフルな色調を見せるホロウ内でも実際目立っていた。

 スモウルの眼前に舞い降りたホロウスレイヤーは、肩に担いだ荷物を地面へ降ろし手を合わせた。まごうことなき奥ゆかしいニンジャのアイサツだ。

 

 

「ドーモ、スモウル=サン。ホロウスレイヤーです」

 

 

 恐怖を煽る字体で「虚」「殺」と刻まれた金属メンポに隠されている顔からは、表情は読み取れない。しかし、隙間から覗く殺気を湛えた視線を受け、スモウルはカエル・セラピー*3めいて凍りついた! コワイ! 

 

 

「……」

 

 

 ホロウスレイヤーからジゴクめいた殺気が溢れ出し、緊張感のある静寂が辺りを包んだ! 

 アイサツにはアイサツを返す。たとえどれだけ憎み合う敵であろうとも変わらない。古事記にもそう書かれている。

 アイサツを返さない行為はスゴイ・シツレイ、セプクやドゲザどころかムラハチ*4されても文句は言えない。だが、ホロウスレイヤーは殺気を溢れさせるだけに留めた。なぜか! 

 

 それは、アイサツの掟はニンジャ同士のイクサにおいて適用されるからだ。スモウルのようなモータル*5からアイサツが返ってこなくてもシツレイには当たらない。

 アイサツの重要性が書かれた古事記は、コンテンポラリダンスめいて紙の上で躍るエンシェント漢字で記されており、並のニンジャでも全てを解読するのは難しい。モータルともなればなおさらだ。ゆえに、ホロウスレイヤーがスモウルに対して、セプクもドゲザも求めないのは当然だった。

 

 

「く、くそッ!」

 

 

 あまりの殺気にカラテ警戒するスモウル──カラテというにはあまりに拙い構えだ──を見たホロウスレイヤーは判断した。交戦の意思を見せたスモウルにこれ以上の待ちは不要。

 

 すなわち始まるのは……そう! イクサだ! 

 

 

「ワッショイ!」

「なっ!?」

 

 

 いつの間にか肩に担ぎ直していた人──先のイクサで捕らえたフライだ──を放り投げ、ホロウスレイヤーは決断的に肉薄した! なんたるニンジャ脚力か! ニンジャとのイクサでは瞬きですら致命的なスキとなる! 0コンマ5秒以下の世界! 

 警戒していたにも関わらず、スモウルは無防備にその体を晒している! ウカツ! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 

 至近距離からノーモーションで放たれたスリケンがヘルメットにヒビを入れた! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 

 至近距離からノーモーションで放たれたスリケンが胸当てにヒビを入れた! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 

至近距離からノーモーションで放たれたスリケンがスモウルを地面へハリツケにした! 

 

 カラテ・シャウトと共に繰り出されたスリケンの数々により、スモウルの動きを封じた! さらに、ニンジャ知力から弾き出された放物線通りに落下してきたフライをキャッチ! ワザマエ! なんたる精密機械めいた重力加速度を考慮した正確無比な肩の力か! 

 

 地上絵めいて地面に縫い付けられたスモウルはもがくが微動だにしない! ホロウスレイヤーのスリケン投擲力から射出されたスリケンは、スモウルの服を破かずに完璧に固定してみせた! あまりにも一方的! この場にミヤモト・マサシがいたのならば、ベイビー・サブミッション*6と呟いたことだろう。

 逃げようと必死に身を捩るスモウルにホロウスレイヤーは近づいた。スモウルは肩に担がれた人物を見て思わず失禁! ナムアミダブツ! 顔は原型を留めていないが、間違いなく彼の親友──フライの変わり果てた姿だった! 

 

 

「今からオヌシにインタビューをする」

「ひぃっ!」

 

 

 しめやかに股間を濡らしたスモウルは顔を引き攣らせた。

 インタビューと言えば聞こえはいい。しかし、親友の惨状から察するに、これから行われるのは……あからさまにジゴクめいた拷問なのだ! 

 

 

「こっ、殺さないでくれ……! イノチだけは……!」

「……命まではとらん。ただし、全てが終わったらマッポ……治安局に自首するとヤクソクしろ」

「もちろん! 約束するっ!」

 

 

 おお、ブッダ! なんたる慈悲深さか! 

 だが、それも実際当然だ。ここはネオサイタマめいたマッポーの世ではない。新エリー都はあくまで、権力者が法に則って裁くべきものを裁いている。いかに悪逆非道を働いたとしても、それを捕らえるのは治安局の仕事であってホロウスレイヤーの仕事ではない。

 己の目的のためにむやみにスレイしていては、ホロウを利用して私利私欲を働く輩と変わらないことをホロウスレイヤーは理解していた。

 

 

「シルバーヘッド・ミゲル=サン……ヤツはどこにいる」

 

 

 ホロウスレイヤーの右手に音もなく握られていたスリケンが、スモウルの額に向けられた。

 ニンジャ投擲力から放たれるスリケンは、銃よりも遥かに殺傷能力の高い投擲兵器である。これすなわち、死なずともスゴイコワイ目に合うこと請け合いだ。ワン・インチ距離*7で黒曜石めいた黒い光沢を放つスリケンを直視したスモウルは再失禁した。

 

 

「どうだ、答えろ」

「し、知らねぇ! ボスの居場所は俺達みたいなマッタンに──」

 

 

 地面に世界地図を描くスモウルの口から零れたのは、組織を庇うような言葉だった。

 アタマが落ちればその組織は終わりだ。赤牙組という()の存続のため、所属するホロウレイダー達は尋問された時にボロを出さぬよう躾けられていた。

 先程までイノチゴイしていた人間とは思えない態度は、ホロウスレイヤーの目を憤怒の色で染め上げた。

 

 左腕が鞭のようにしなり、スモウルのひび割れたヘルメットに叩きつけられる! 側頭部強打! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「どうだ、答えろ」

「し、知らねぇ! 本当に──」

 

 

 左腕が鞭のようにしなり、スモウルのひび割れたヘルメットに叩きつけられる! 側頭部強打! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「どうだ、答えろ」

「分かったっ! 言う! 言うから──」

 

 

 左腕が鞭のようにしなり、スモウルの穴の空いたヘルメットに叩きつけられる! 側頭部強打! 

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「どうだ、答えろ」

「ヤヌス区十四分街! そこにある高層ビルが本拠地だっ!」

「あそこか」

 

 

 ゴウランガ! なんたる効率的インタビューか! 息も絶え絶えにスモウルは叫んだ。あまりに必死だ。ウソついている様子はない。

 経験したことのない痛みと、組織を売った罪悪感が涙となってスモウルの目から溢れ落ちた。親友を見捨て、組織を売った。彼に残っているのは、命惜しさに全てを投げ出す醜い本性だけだった。

 満足のいく情報を得たホロウスレイヤーは、スモウルに突きつけていたスリケンを粉砕した。消滅するエーテリアスめいた鮮やかな残影が埃と共に散っていく。まるで、粉々になったスモウルの心を代弁するかのように。

 電池の切れたロボめいて呆然とするスモウルへ、ホロウスレイヤーは肩の荷を投げつける。

 

「オヌシの仲間だ。一緒に連れて行け」

「は、はいぃ……!」

「では……オタッシャデー!」

 

 

 かつての親友を受け取ったスモウル。彼がなんとか振り絞った返事を聞き、ホロウスレイヤーは一陣の色付きの風となってしめやかに消えた。

 静寂が訪れたホロウでスモウルが身じろぎする。彼を地面にハリツケにしたスリケンは、ホロウスレイヤーの消失と共に跡形もなく消え去っていた。

 

 

「これからどうすれば……」

 

 

 命はかろうじて繋ぎ止めた。しかし、他のものは全て失った。ドロップアウトしたスモウルを一度は受け止めてくれた赤牙組も、裏切ってしまった彼を二度と受け入れないだろう。

 痛む体に鞭を打って立ち上がった。背中にのし掛かるフライの重みが、彼の足を裂け目へと向かわせる。そうだ。治安局で罪を償ったら、親友とやり直そう……もう二度とホロウに関わらないよう。

 

 

「……サヨナラ!」

 

 

 裂け目に体を預けたスモウルはそう言い残し、ホロウを後にした。

*1
日常茶飯事

*2
自殺(切腹以外も含む)

*3
蛇に睨まれたカエル

*4
陰湿な社会的リンチ

*5
ニンジャではない一般人

*6
赤子の手をひねる

*7
ごく密接した間合い





 感想・評価貰えるとありがたさがある。以上です。

◆追記◆
 アンケートの結果に基づいて、そのままでは伝わりづらいものや現実のアイエエエの小説とで意味に違いがあるものにのみ注釈メントを追加しました。
◆重点したい◆

日本語がフルサポートされていないように思える……ので、忍殺語に注釈は?

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