ニンジャ・サプライズド・ニューエリドゥ 作:ニュービー・ニンジャ・ドージョー
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「ワッショイ!」
ホロウスレイヤーはエーテル結晶の頂点から腕を組んだまま飛び上がる。その姿勢で空中で三回転し、武器に手をかけたまま石像めいて静止している2人の前へ降り立った。
その間、ホロウスレイヤーの姿勢は殆ど変わらない! 誤差0.01ミリ以下! なんたるニンジャ姿勢制御か!
「……赤牙組のものではないな」
力強いショドーで「虚」「殺」と描かれたメンポの下から、ホロウスレイヤーは2人へ問いかける。
もし赤牙組であれば、アンブッシュから即インタビューに移る予定であった。しかし、彼が事前に確認していた赤牙組メンバーのリストに2人の姿はない。
ホロウに巻き込まれただけの一般市民? 違う。それは先程の戦闘慣れした様子から間違いない。
では、一体何者か? エーテリアスとの戦闘を難なくこなす、ホロウ内部の光景を見慣れている……そう、赤牙組とは別のホロウレイダーに他ならない。
胸の前で組んだ腕の中へ隠すように、手品めいてノーモーションでスリケンが握られる。ホロウスレイヤーのスリケン投擲力をもってすれば、腕を組んだ状態でも相手の頭と首をサヨナラさせることは実際容易い。
(回答次第では……)
ホロウスレイヤーはメンポの下にじわりと殺気を滲ませた。サツバツ!
「私はアンビー、隣はビリー」
「よろしくな、イカした面のホロウスレイヤーさん」
2人はホロウスレイヤーがスリケンを構えたことに気づいていない。しかし、自己紹介する2人の警戒が緩むことはなかった。直立不動を保つホロウスレイヤーが身動ぎ一つ見せれば、デン・ジツ*1と鉛玉が襲いかかることだろう。
アンビーは目の前のニンジャをしめやかに観察する。
メンポから覗くホロウスレイヤーの瞳に好意の色は見えない。むしろ敵意さえ感じ取れる。アンビーはその瞳の奥に、復讐鬼と化した人間が放つ消えることのない怨嗟の炎を幻視した。
そして、先程のアイサツ。ホロウスレイヤー……ホロウレイダーで知らぬものはいない。圧倒的な力でいくつもの組織を壊滅させてきた殺戮者の名だ。
一つ間違えれば戦闘は免れない。武器を握る2人の手が微かに強張る。ナムアミダブツ! 一触即発の気配!
「……オヌシらと敵対する意思はない」
「……そう」
だが、2人のアイサツを受けたホロウスレイヤーは、暫し考えたのちにスリケンを収めた。
今回の目標はあくまで赤牙組の頭首「シルバーヘッド・ミゲル」ただ1人。赤牙組に属するものならまだしも、新たな勢力と事を構えている余裕はないのだ。
虻蜂取らず……ホロウスレイヤーは平安時代の哲学者ミヤモト・マサシのコトワザを思い出し、スリケンを収めることにした。決して、メンポを褒められたからではない。
「戦わずに済んで良かったぜ」
「ええ。脈絡なく急に現れるニンジャは恐ろしくツヨイと相場が決まっているわ」
「だから、それも映画の話だろ!」
ホロウスレイヤーの言葉を聞き、2人も武器を収める。ただでさえ体力も物資も消耗が激しい今、余計な戦闘は避けられるに越したことはなかった。
「で、あんたも巻き込まれたクチか?」
「あの高層ビルで人を探していた」
「人探し……」
一体誰を……なんて疑問は、アンビーの頭からすぐに消えた。
高層ビルにいたのは邪兎屋の3人と赤牙組のみ。ホロウスレイヤーの様子から邪兎屋に用があるとは思えない。
となると、残るのは赤牙組。その中でも探さないと会うことが出来ないような人物。そんな条件に合致する人物は1人しかいないだろう。
「ああ、シルバーヘッド・ミゲル=サンだ」
「彼のことなら情報を持ってる。一番新鮮なものを」
「ナニ……?」
彼の行方をホロウスレイヤーは知らない。アンビーは利害が一致する音を聞いた。
相手はホロウレイダーの天敵だが、無差別に攻撃するようなタイプではない。上手くいけばホロウ脱出の手助けになるだろう。
「彼の居場所を教える。その代わり……協力してほしいの」
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『この辺りだと思うんだけど……』
黒いアメーバめいたモヤモヤ──裂け目と呼ばれる場所から、スカーフを巻いた喋るボンプが姿を現した。
小動物めいて辺りを見回す。呟かれた言葉はどこか聞き覚えのある少女の声だ。
ニンジャ記憶力をお持ちの読者諸氏ならお気づきになるだろう。このボンプを遠隔操作している人物は、ビデオ屋「Random Play」の店長の1人──リンである。
彼女とその兄アキラの目に埋め込まれたインプラントにより、ボンプを自身の身体のように操ることができる。
邪兎屋を束ねる社長──ニコ・デマラ。クリティホロウに飲まれた部下達を助けるべく、彼女の優れた人脈を頼った。
ホロウ探索において最も頼りになるもの。それはプロキシの存在と言っても過言ではない。不規則に変化するホロウ内部データを解析し、依頼主の安全な探索を約束してくれる。
プロキシがいなければ、内部の探索どころか帰還することすら困難な場所。それがホロウだ。当然、ニコも重々承知している。
そこで彼女は大切な社員達を助けるため、自身の人脈を最大限活用した。
伝説のプロキシ「パエトーン」。ホロウ探索においてこれ以上ない人選である。
パエトーンはこの世界で唯一、ホロウ内外をタイムラグ無しで接続できる通信手段──H.D.Dシステムを有している。これによりリアルタイムで状況を分析し依頼者を援護し、高難易度の依頼を幾度となく達成してきた。今回の依頼もその腕を見込まれてのことだ。
『……! 戦闘音! すぐそこだ!』
ウサギめいた耳が剣戟の音と銃声を拾う。その出所は彼女の側にある打ち捨てられた電車のすぐ裏だ。
ひっそりと様子を伺うと、障害物が無くなったことで戦闘音がより鮮明になる。
軽快な発砲音と稲妻めいたデン・ジツの音。何かが高速で飛翔し空気を切り裂く音。
「イヤーッ!」
そして、決断的なカラテ・シャウトだ!
「ビリー!」
「任せとけ!」
アンビーのデン・ジツを纏った一閃をモロに喰らい、動けなくなったエーテリアスにビリーが発砲! 爆発四散!
最後の敵を屠ったビリーとアンビーの元へ、三連続側転でホロウスレイヤーが合流! 見事な連携を見せた2人へホロウスレイヤーは頷きながら語る。
「ミゴトなコンビネーション・カラテだ」
「おう! そのナントカカラテってやつは分からねぇけど……」
「あなたのおかげで私達の生存確率は90.3%まで上昇した。助かるわ」
「ドーモ……む?」
お互いを称え合っていた3人のすぐそばにある電車の陰。そこから覗くボンプの耳に、ニンジャ感覚を持つホロウスレイヤーが気づかないはずがなかった。
ホロウスレイヤーの視線の先を辿り、アンビーとビリーもその姿を捉えた。
「スカーフのボンプ……」
「オヌシらの仲間か?」
「かもしれない。少し待ってて」
そう言うと2人はボンプの元へ向かった。
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『2人とも無事で良かった!』
2人と合流したリンは全身で喜びを表現した。あとはホロウから脱出するだけだが、先程から気になっていたあの存在について尋ねる。
赤黒い装束に身を包み、顔半分を妙な面で隠した人物。戦闘はからっきしのリンでも、強者の気配をひしひしと感じとれた。
『ところで、あの人は?』
「ホロウスレイヤーよ」
『ふーん……え!?』
リンが驚くのも無理もない。ホロウスレイヤーといえば、ホロウレイダーやプロキシの間で噂される殺戮者だ。彼のせいで知り合いが廃業に追いやられることもままある。
そんな恐ろしい存在に目をつけられてしまえば、いくら伝説のプロキシといえど平常心ではいられない。
『だ、大丈夫なの?』
リンの不安げな問いにアンビーは頷く。
「条件付きだけど、協力を取り付けたわ」
「超強いんだぜ!」
ここまでの道中、彼は己の戦闘力をこれでもかと見せつけた。
物陰から忍び寄るエーテリアスを障害物もろとも爆発四散させ、数百メートル離れた標的もスリケン一つで爆発四散させた。なんたるニンジャ腕力か!
敵として遭遇しなければ、これ以上ない護衛である。最初は訝しげな様子のリンだったが、2人の話を聞いて納得したようだった。
「それは心強いね!」
「彼がいれば脱出も──」
「アンビー=サン」
アンビーは背後からの囁き声に飛び上がり武器に手をやった。
「……驚かさないで」
「ゴメンナサイ。しかし、エーテリアスが近づいてきている」
遠くから聞こえてくるエーテリアスの声。今いる場所からそう遠くない。
「はやくね? ついさっき倒したばっかだろ!」
『とにかく今はここから出よう! こっちだよ!』
脱出の手立てが出来た以上、ホロウ内に留まっている理由はない。リンの声に従って、一同はしめやかにその場を後にした。
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暑い日が続くのでカラダニキヲツケテネ!