ニンジャ・サプライズド・ニューエリドゥ   作:ニュービー・ニンジャ・ドージョー

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ショウキ・カイキ・ニンジャ #5

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ARRRRRGH!」

「相変わらずシツコイ奴らだぜ!」

「ビリー、正面に2体」

「おうよ!」

 

 

 出口へ走るホロウスレイヤー達の背後からエーテリアスの群れが迫る。モータルが見れば失禁ものだが、ここにいるのはホロウでの活動を生業にしている者たち。冷静さを保ちつつ、追われる最中も周囲への警戒は怠らない。

 アンビーの声にビリーは銃声で答える。小気味良いテンポで放たれた銃弾は、前方のコンテナ上で待ち伏せていたエーテリアスは爆発四散! ポイント点! 

 

 

「へへっ、楽勝!」

『次はあそこ!』

「イヤーッ!」

 

 

 リンの声を聞くが早いか、ホロウスレイヤーは決断的にスリケンを放つ! 前方のコンテナ上で待ち伏せていたエーテリアスは爆発四散! ポイント倍点! 

 

 なんたる鮮やかなコンビネーションか! 即席ながらスムーズな連携を見せ、足を止めることなくホロウを駆け抜けていく! 

 しかし、そんな彼らの行手を阻むように次から次へと湧き出るエーテリアス。なんたるシンクの頑固な油汚れめいた粘り強さか! シツコイ! 

 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

「「「ARRRGH!?」」」

 

 

 ホロウスレイヤーがカラテシャウトと共に空中で高速回転し、スリケンを乱射! 寸分の狂いなくエーテリアスのコアを破壊! アタリ! ポイント三倍点! 

 

 

『後ろの3体で多分最後だよ!』

「任せろ!」

 

 

 ビリーが道を塞ぐ電車を飛び越え、着地と同時に銃を放つ! 追いかけてきていたエーテリアスは怯んだが、すぐさま飛びかかってくる! アブナイ! 

 

 

「ARRRRGH!」

「よっ!」

 

 

 エーテリアスの二連切り払いを、ビリーは空中に飛び上がり回避! そのまま発砲! 鉛玉がエーテリアスのコアを貫く! ワザマエ! 

 

 

「ARRRGH!」

 

 

 着地の隙を狙ったエーテリアスがビリーへ飛びかかる! ビリーは半身を引いて躱して発砲! 

 コアを撃ち抜かれたエーテリアスはよろめき……おお、なんたる執念! ビリーの脳天目掛けてヤバレカバレに腕を振り下ろす! 

 

 

「おっと!」

「はあっ!」

「ARRRRGH!?」

 

 

 敵の攻撃を受け止めたビリーの背後から、青い閃光を纏った電磁ナタがエーテリアスへ叩きつけられる! 

 最後の力を振り絞った一撃は届かないまま、エーテリアスはしめやかに爆発四散した。

 

 戦場に束の間の静寂が訪れた。一行は暫し足を止める。

 エーテリアスに追われながらも、リンの的確なルート案内によりホロウの出口まであと一歩の所まで近づいていた。

 

 

「店長! 次はどの方向に行けばいいんだ?」

『全速力で直進!』

 

 

 その言葉にビリーは思わず頭を抱える。彼らの正面は壁がそびえ立ち、間違っても直進できそうな道ではない。突き進んだとてゴムボールめいて跳ね返されるのがオチだ。

 しかし、かの伝説のプロキシが間違えることなどあるだろうか。ビリーは隣にいるホロウスレイヤーに目をやる。彼のニンジャ筋力があれば、あるいは。

 視線を察知したホロウスレイヤーが、スリケンを手にしようとしたその時だ。

 

 

『心配しないで。リンの言う通りにすれば大丈夫だから』

「この声は……おお! もう1人のパ──店長!」

 

 

 新たに通信へ接続したアキラの説明を補足するように、アンビーが貴重な常識をシェアする。

 

 ホロウ内部は秩序無く繋がっている。方角はおろか、上下左右すら実際意味をなさない。ホロウの裂け目もどこに繋がっているか見た目では判断不可能だ。これが、ホロウから脱出することが難しい要因となる。

 そして無秩序に思える情報を分析し、法則性を見出すことが出来る存在。それがプロキシだ。

 

 

『えっと、ホロウスレイヤー……さんはどうする?』

「……」

 

 

 若干の怯えが混じった問いがホロウスレイヤーに投げかけられた。ここまで一緒に行動したはいいが、彼の本来の目的はシルバーヘッド・ミゲルを討つ。その一点である。

 獲物の居場所は既に確認済み。ホロウの脱出を手伝う……その契約も既に完了したといってもいい。

 

 

「……協力はここまでだ」

「そう。助かったわ、ありがとう」

「また会ったらヨロシクな!」

「こちらこそ……ドーモ」

 

 

 曇りなき感謝の言葉。それは旧都陥落から十数年間、バーサーカーめいて1人で戦い続けてきた彼の心に実際響いた。

 友人を、家族を奪った怨敵に対する復讐心は決して消えない。しかし、ヘドロめいた怨恨で濁ったホロウスレイヤーの心に、少しの晴れ間が差した。

 

 プロキシもホロウレイダーも憎きホロウの恩恵を受けている存在だ、無視することはできない……それでも、中には彼と志を同じくするものもいる。

 また、彼ら以上にホロウを熟知した存在もいない。時には力を借りる必要があるだろう。

 

 

(仲間……か)

 

 

 新たな選択肢がホロウスレイヤーの胸中に湧いて出た。彼1人では生まれようもなかった視点だ。

 憎悪を撒き散らし身体を乗っ取らんとするナラク・ニンジャ。それに苦しめられていたニンジャスレイヤーを救ったのも、ドラゴン・ゲンドーソーを始めとした仲間の存在が実際大きい。

 

 ホロウスレイヤーは深々とオジギした。インストラクションを授けてくれた彼らへの心からの感謝だった。

 

 

「では、オタッシャデー!」

『お、お達者で〜』

 

 

 リンは独特なシャウトに戸惑いながら、色付きの風となって飛び去っていく彼の背に手を振った。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 六分街のビデオ屋の一室、薄暗い室内にタイピングの音が響いている。

 

 真剣な面持ちでモニターに向かうアキラの指がピアニストめいてキーボード上で踊り、破損していたメモリディスクからデータが抽出される。

 

 

「やっぱり……金庫の暗証番号みたいだ」

 

 

 十四分街の高層ビルでの赤牙組との大立ち回りの最中、ニコが抜け目なく拾ったペンダント。シルバーヘッド・ミゲルが肌身離さず持っていたという代物だ。

 重要な情報が入っているに違いない……そんなニコの推測通り、中身に入っていたのは件の金庫の暗証番号だった。

 

 一仕事終えたアキラは、すぐそばのソファに腰掛けるリンへ振り向いた。

 

 

「あとはニコの連絡を……リン?」

「──あ、お兄ちゃん。どうしたの?」

「ぼーっとしていたみたいだけど、何か気になることでもあったかい?」

 

 

 インターノットの海を揺蕩っていたリンは、アキラの言葉を受けて端末の画面を見せる。

 

 

「この前のことが頭から離れなくて。ちょっと情報を集めてたの」

「ああ、彼のことか」

 

 

 相次いだホロウレイダーの摘発についてまとめられた記事。そのページの端にしめやかに記されている存在──そう、ホロウスレイヤーだ。

 捕まったホロウレイダーの口から語られたであろう情報から、彼の存在はウキボリになりつつあった。

 

 

「かなり話題になってるみたい」

「今回は運良く味方してくれたけど、次はどうなるか分からないか」

 

 

 クリティホロウでの一幕で彼の実力は理解している。エーテリアスを爆発四散させるスリケンが自身に向けられたら……リンは想像して身震いした。

 味方に引き込めれば実際心強いが、彼の情報は現状かなり少ない。交渉も難しいだろう。

 

 

「ん……?」

 

 

 KNOCK! 

 もう少し情報収集しようと思った矢先、ドアノックの音が2人の元へ届いた。

 

 

「こんな時間に……?」

「怪しいな……僕が出るよ」

 

 

 時刻はまもなくウシミツ・アワー*1。ビデオ屋の明かりは消え、ドアの標識も営業終了を主張している。

 こんな時間の来客はウシミツ残業サラリマンか……裏世界の人間しかいない。

 

 アキラは恐る恐る玄関へ向かう。

 ドアの小窓から、月に照らされた来訪者の影が伸びている。かなりの偉丈夫だ。

 

 

「どちら様で──」

 

 

 アキラの問いかけは最後まで続かなかった。

 ドアを開けた彼の前に立ちはだかる男。ハンチング帽をかぶり、バッファロー色のトレンチコートに身を包んでいる。

 服装におかしいところはない。アキラの言葉を奪ったのは──男の目だ。

 

 ツキジに並んだマグロめいた黒く淀んだ目。しかし、鋭さを損なうことなくアキラを睥睨している。明らかにモータルではない、どこか見覚えのある目だった。

 

 

「ドーモ、イチロー・モリタです」

「──ッ!」

「イヤーッ!」

「な!?」

 

 

 名乗りを聞いたアキラは勢いよくドアを閉めようとした。しかし、ドアは完全に閉じることなく、拳ひとつ分の隙間を残す!

 

 

「あ、足が!」

 

 

 フット・イン・ザ・ドア! 常軌を逸した速度でドアの隙間に差し込まれた足は、アキラがいくらドアを引いてもびくともしない!

 なんたる交渉術か! それをやってのけた目の前の人物は一体何者なのか? 経験豊富な訪問販売サラリマンなのか? あるいは……もしかすると……ニンジャなのか?

 

 

「こういうものです」

 

 

 ドアの隙間からスリケンめいて投げ込まれた名刺はアキラの手の中に吸い込まれる。間違いない、ニンジャだ!

 名前の他に「ネコ探し」「優秀な」「実際安い」と書かれた名刺。あからさまな偽名だ。この身分も仮初の姿に過ぎない。

 

 

「お兄ちゃん!? 今の声!」

「ああ、大方リンの想像通りだろうね」

 

 

 アキラはドアを閉じることを諦めてドアノブから手を離した。

 ゆっくりと開くドア。月明かりを背に受けた大男は、硬直する2人へ深々とオジギする。

 

 

「ドーモ、パエトーン=サン。ホロウスレイヤーです」

*1
丑三つ時





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 ニンジャスレイヤーに倣い、ディテクティブとして生活しています。
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