ニンジャ・サプライズド・ニューエリドゥ 作:ニュービー・ニンジャ・ドージョー
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「よし! 全員揃ったわね!」
十四分街で発生したホロウ災害騒動の数日後、ピンク髪の女性がその場を仕切るように声を上げた。
彼女の面前に集うは、先のホロウ災害に巻き込まれたアンビーとビリー。そして、スカーフを巻いたウサギめいた姿のボンプ──パエトーンだ。
「金庫の所在も暗証番号も分かってる……あとはブツを見つけ出すだけよ!」
「よっ! ニコの親分!」
周囲をまとめるリーダーとして堂に入った姿を見せる彼女こそ、邪兎屋のトップ──ニコである。
ついに金庫を奪還できる日が来たことでドラムロールめいて胸が高鳴り、バストも豊満であった。
「あ、ちょっと待って!」
「どした店長?」
「えっと、あと1人素敵なゲストがいるの!」
「ゲスト……誰かしら?」
「あー、それは来てからのお楽しみ? というか……」
「……」
何やら隠し事がありそうなイアス──の中に入っているリン──の様子にアンビーは訝しんだ。
伝説のプロキシ「パエトーン」である事実をここまで隠し通している彼女だが、今の様子からも分かる通り何かを隠す行為は実際上手くない。
軽くカマをかけるだけで分かりやすく狼狽える……これまで正体を隠し通せたことは奇跡のようなものだ。実際のところ兄の頑張りのおかげ、なのだが。
だが、邪兎屋のように仲が良い相手を陥れるようなことをしたことがないのも事実。アンビー含め、邪兎屋の面々はその点はしっかりと理解していた。
一刻も早く金庫を奪い返したいニコも、普段世話になっているリンの申し出を快く受け入れ、豊満なバストも頷くように揺れた。
「分かったわ。その代わり、合流したらすぐ出発するわよ!」
「もちろん!」
リンは胸中でしめやかにため息を吐く。
彼女の言うゲスト。それは紛れもなくホロウスレイヤーのことだ。
先日、セールスマンめいて突然ビデオ屋に来訪したホロウスレイヤーの頼みを聞き入れたのだ。
何人ものホロウレイダーを治安局送りにした相手。そんな危険人物を邪兎屋達と引き合わせるのは如何なものか。
悩みに悩んだ末──前回の共闘の様子から危害を加えるつもりはない、そう判断したのだった。
「大丈夫かな……」
「どうかした?」
「え!? い、いや! なにも!」
判断したのだが、そう簡単に不安は拭えない。
何故こんな不安を抱えなければならないのか。リンは己の不運を嘆く。
あれもこれも、昨日現れた探偵モドキのせいだ。
リンの走馬灯めいた回想は、素敵なゲストが色付きの風めいて現れるまで続くことになった。
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「ぱ、ぱえ……?」
「すみません。見ての通り、営業時間外なので──」
「隠す必要はない。パエトーン=サン」
街も寝静まるウシミツ・アワー。薄暗いビデオ屋の店内に佇む3人の影は、ホロウスレイヤーの一言で一触即発アトモスフィアに包まれた。
目に見えて狼狽するリン。
そんな彼女を庇うように立つアキラ。
そして、確信を持った口調のホロウスレイヤー。
サンシャ・イーチ・ディファレント*1である。
「その目……サイバネ化しているな」
「──!」
予想外の言葉にアキラは驚きの表情を浮かべ、刺すような眼光から瞳を隠すように手で遮った。
実際、アキラとリンの目にはインプラントが埋め込まれている。2人のプロキシ稼業をここまで支えてきたのも、この目のおかげといっても実際過言ではない。
今まで一目で見抜いたものは1人もいなかった。彼らと関わりのある者でも、それを知ってしているのは極少数だ。
では、ホロウスレイヤーは何故見抜けたのか。そのタネはただ一つ。彼のニンジャ視力にほかならない。
彼がドアの隙間からアキラに目を合わせたほんの一瞬で、瞳の奥にあるインプラントの存在を見抜いたのだ。なんたる天体望遠鏡めいた遠目か!
そんなことを知る由もないパエトーンは、より一層警戒を露わにする。
彼の探偵という肩書は偽りの身分ではないのか……まさか、本当に優秀な……ヤバイ級ディテクティブなのか?
「他言する気はない。ここに来たのは、パエトーン=サンに力を借してほしいからだ」
「……つまり、依頼ってこと?」
「そうだ」
予想外の方向に話が転がり、思わずリンの口からこぼれ落ちた言葉にホロウスレイヤーは頷きを返した。
パエトーンとしての依頼はインターノット上や知り合いから貰うことが多い。わざわざ店に顔を出す人もいるにはいるが、数は限られる。
何故なら依頼するのも大体は裏社会の人間。治安局や敵対勢力を警戒している。どこからか情報を得た相手に待ち伏せされて一網打尽……なんてことは万が一あってはならないのだ。
そして、ホロウスレイヤーは裏社会では色んな意味で有名な人物。これまでの活躍から、多くの恨みを買っていることは間違いない。
そんな彼が身バレの危険を冒してまで店にやってきた。間違いなく、厄ネタである。
「断ったら?」
そう尋ねたアキラ。ナムサン! その問いはあまりにも悪手!
「伝説のプロキシの秘密が明日の一面を飾ることになる」
「お、脅したってそうはいかないんだから!」
相手の見せた隙を逃さずホロウスレイヤーが仕掛けた!
相手に打開の機会を与えず、一方的に捲し立てる! 営業サラリマンが漏れなく習得する交渉のキホン!
アキラは歯噛みする! 先手を取られた代償は余りにも大きい!
彼の背後からリンの援護射撃が飛ぶも、ホロウスレイヤーは気にも留めない! ただまっすぐアキラの目を見つめていた。油断の色はない。
誰の目から見ても形勢は明らか……だが、ホロウスレイヤーはそれ以上仕掛けなかった。じっと相手の出方を伺うのみだ。
この時、ホロウスレイヤーの胸中には様々な言葉が浮かんでいた。
勝っている時がアブナイ。
ネズミは二度噛めばライオンをも倒す。
調子に乗っている奴から負ける。
急ぐと失敗する。
いずれも平安時代の哲学剣士ミヤモト・マサシが残した、油断し、増長したものの末路を教科書めいて分かりやすく表した言葉である。
普段の彼であればここまで慎重になることはない。しかし、たった今対峙しているのはかの有名なプロキシ──パエトーンである。警戒するに越したことはなかった。
「……分かった、要件を聞くよ」
「お兄ちゃん!?」
「大丈夫だ、リン。僕に任せて」
「……お兄ちゃんがそういうなら」
アキラは相手の隙をついて主導権を取り返そうとしたが、黙り込んだホロウスレイヤーに白旗を振った。
リンを丸め込んだアキラは、ホロウスレイヤーへ一歩近づく。
ワン・インチ距離。カラテが振るわれようものなら、頭と胴体は容易にサヨナラすることだろう。
しかし、彼の瞳に恐怖の色はない。あるのは大切な家族を守る覚悟。そして、揺らぐことのない信念だ。
「ほぅ……!」
その様子にホロウスレイヤーは思わず息を呑んだ。
彼のニンジャ存在感にも劣らぬ気迫。やはり、これまで会った他のプロキシとは違う。
アンビー達と共に行動していた時から感じていたものが確信に変わる。
裏社会の相手とも対等以上の関係を築く胆力、そしてコミュニケーション能力。それこそ、ホロウスレイヤーが最も欲しているものだ。
「それで? 私達に何をして欲しいの?」
納得していない様子のリンが続きを促す。
「俺を雇って欲しい」
「…………なんだって?」
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シノビめいてひっそり投稿。