忘れてなんかやらない   作:アゲアゲ太郎

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初投稿で〜す
駄文で〜す
め〜ちゃくちゃにわかです
温かい目で見てくださ〜い


第一話 再開、再始動、再起動

 

 

 「 ━━ちゃん、大好き!」

 

 あぁ、これ、夢だな。

 たまに俺は自分が夢を見ていると気づく時がある。気づく理由は主に2つ、現実離れしすぎているか俺に都合が良すぎるかだ。そして今回は後者だった。

 なにより、俺が彼女とこんな会話をして忘れるわけがない。

 

 今よりもとても幼い俺と彼女はとてもいい笑顔を浮かべている。

 

 その温かい笑みを浮かべる女の子は小さい俺の方に向き直りー

 

「うん!私もあくと君のことが───「ピピピピピピピピピピ!!!!!!」

 

 

 

 スマホのアラームで目を覚ました。起きて間もない目にはスマホの光は強すぎて思わず再び目を閉じる。さっきまで見ていた夢の内容を掻き消すようにスマホは耳元で大音量の電子音をかき鳴らしていた。

 

 さっきの夢の続きを見たくないと言ったら嘘になるが、ああいう夢はたいてい起きた後の虚無感が凄いため仕方なく目を開く。4月になり暖かくなったもののまだ朝は肌寒く、布団に体を吸い寄せられながらもなんとか体を起こし洗面台に向かった。

 

 冷たい水で顔を洗うと意識が急速にクリアになり、頭が働き始めるのを感じとった。顔にタオルを当て水気を拭き取ってからリビングに向かい朝食の準備をする。

 

「…て言っても温めるだけだけど」

 

 ラップのかかった朝食をレンジで温めながら小さなメモに書いてある言葉を心のなかで読み上げた

 

 入学式に行けなくてごめんね。

 

 昔から変わらない小さくて綺麗な母さんの字だった。簡潔で短い手紙だがそれでも母さんが朝早くに俺のため朝食を作ってくれた事実は変わらない。父さんは単身赴任で母さんは化学か何かの研究者で朝から晩まで仕事漬けだ。

 

 ふざけんなよ。もっと俺を見ろよ

 

 だからといって別に不満なわけじゃない。これが家の家族の形なんだってことはとっくの昔に理解しているし、寂しいなんて感じる時期はもう過ぎ去ってしまった。

 ただ少し、一人ではこの家は広すぎると思うだけ。

 

「ご馳走様でした」

 

 両手を合わせ肺に含まれた空気と共に言葉を吐き出す。誰にも届くことはないけれど。

 

 挨拶を欠かさないのは放任気味なウチの数少ないルールだ。

 

 まだ硬さが残る制服に袖を通し、家のドアを開ける。今日は俺がこれから3年間通う高校の入学式だ。

 

 秀華高校 それが俺の通う高校の名前。偏差値はそこそこで選んだ理由は特にない。強いて言えば受験勉強をあまりせずに入ることができ、家から通える距離だったからだ。

 

 小さい頃は勉強が得意だった。なんてことは多くの人が少なからず思っていることだろう。実際俺もそうだった、いや今でも割と得意な方だ。

 

 試験前に課題と少しの復習をすればテストでは80点以上は取る事ができたし、得意な教科の数学と理科では勉強しなくても90点は取れる。だけど頭のいい高校には入ろうと思わなかった。

 結局俺の人生は楽しいか、面倒くさくないかでしか決めることができなかった。多分これは一生死ぬまで変わることの無い俺の性質なのだろう。

 

「いってきまぁす」

 

 鍵穴に鍵を差し込み、手首を回す。返事は返ってこなかった。

 

 

 

 

 まだ1、2回しか通ってない通学路を通り、校門をくぐる。時間がギリギリだったためか入った教室は一つの空席以外全員が着席していた。ギリギリ遅刻かもしれない。

 

 そこの空いていた席は当然俺の席であり、俺が着席した事で教室の席が全て埋まった。いつもどおりというかだろうなというべきかやはり出席番号1番で最前列、1番廊下と教卓に近い席だった。

 全員が揃ったからか教師が今日の日程を話し出す。特に変わったとこはない悪く言えばつまらない入学式の日程だった。

 

 

 

 湧き出る眠気と戦いながら教師や校長のありがたい話を聞き流し、つつがなく入学式が終わった。教室に戻り席に着く。朝も先生が言っていたが今日は軽い自己紹介をして終わりらしい。

 やっぱり最初に自己紹介をさせられる悲しき運命を背負っている俺は教卓に上がり教室全体を見渡す。

 

「あ……」

 

 今まで必死に寝ないよう睡魔と戦っていたためか気づかなかった赤く綺麗な髪が目に入る。

 

「喜多さん……?」

 

「アクトくん……?」

 

 そう、5年間片思いしていた相手、喜多郁代が隣の席にいたのだ。

 

 

 ─────────────────────────

 

 

 コンビニで買ったおにぎりで軽い昼食を取りながらリビングで今日あったことを思い出す。

 

(まさか同じ高校の隣の席なんてな…)

 

結局あの後喜多さんとは特に話すことはなく午前中の学校は終わった。

 

 喜多郁代 それが5年間片思いしている人の名前。

 最初に会った日のことをよく覚えている。小学生の時同じクラスになった俺と喜多さんは、喜多さんのコミュ力もありすぐにクラス全体で仲良くなった。

 

 喜多さんを好きになった理由は思い出す事もできない。思い出せないということはそれほど面白い理由じゃないのだろう。

 

 ただ当時の俺にとっては好きという感情を抱いた事が大事だった。その感情を自覚してからはなにをしていても喜多さんが頭に浮かぶくらいに。

 

 だからといってヘタレな俺に喜多さんと距離を縮める事ができるはずも無く人生の中で一番早く過ぎていった1年が終わり、それから中学も合わせて一度も同じクラスになることはなかった。

 

(こんな事なら…もっと遠い高校を選べば良かった)

 

 (もう諦めた想いなんだ。そのはずなのに、こんな事があったら諦められないじゃないか)

 

 これからの高校生活を憂い、今まで何回したか数えられない自分の怠惰を後悔したのだった。

 

 

─────────────────────────

  

 

 

 

 喜多さんと奇跡の再会をした翌日。いつものように昼と夜のご飯代をポケットに突っ込み適当に作った朝食を腹に収め、通学路を歩いていた。

 

 通るのはまだ片手で数えられる回数なはずなのに通学途中の景色の代わり映えのなさにもう退屈を覚えていた。

 

 安いワイヤレスイヤホンから流れるノイズ混じりの音楽を聴きながら歩いていると特徴的な赤い髪を見つける。

 

「あ〜!芥川くんおはよう!」

 

 キターン!と音でも鳴りそうなほど輝く笑顔を浮かべながら喜多さんがこちらに近づいてくる。

 

「喜多さん、おはよう」

 

 こんな少ない文字数を交わすだけでさっきの退屈が露のように消えてしまうのだから恋というものは不思議だ。

 

「?」

 

「?」

 

 どちらも足を止め一向に歩き出さ無いことを疑問に感じ思わず喜多さんを見つめてしまう。

 

 あっ目が合った。………恥ずかしい。

 

 喜多さんの顔を直視することが出来ず目線を逸らす。

喜多さんも同じ事を考えていたのか少し顔を赤らめ震える声で話しかけてきた。

 

「えっと、一緒に学校行かない?」

 

「っ!?」

 

 まさかの登校の誘いに一瞬思考が止まり、息を呑む。

 

(な、何か言わなきゃ。と、とりあえず返事を…)

 

よほど険しい表情をしていたのだろう。そんな事を悩んでいると喜多さんが少し悲しそうな顔をして話しかけてきた。

 

「ごめんなさい…嫌だった?」

 

 好きな人とかそれ以前に女の子にそんな顔をさせてしまったという罪悪感がさらに俺の喉を締め付ける。だが、だからといって何も言わないわけにはいかない。しまった喉を無理やり開くように言葉を捻り出す。

 

「いや、少し考えごとをしてただけだよ。だから、その…」

 

 ここまで来て恥ずかしさで言葉が途切れてしまう。ええい、男を見せろ!芥川亜久人(あくと)

 

 「一緒に…学校行かない?」

 

「っ!! ええ、行きましょう!」 

 

 やはり彼女には笑顔が似合う。そんなことを想いながら俺は喜多さんと学校に向かった。もう通学路を退屈だとは思わなかった。

 

 ちなみに美人の喜多さんと登校したからか朝礼後新しくできた友達にめちゃくちゃ質問された。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 その日の4つの授業──授業と言っても2、3年生との顔合わせや個人写真の撮影など──を終え皆が待ち望んだ昼休み、昼ご飯を食べる時間が来たのだが。俺は目の前に立つ人物の姿を見て悪い予感を感じていた。

 

「芥川くん!一緒にお弁当食べましょう?」キターン!!

 

 その言葉が喜多さんの口から発せられた瞬間周りから一斉に視線が向けられた。主に俺に。なのに喜多さんは気づいていない。それは慣れすぎたせいなのか、それとも気づいて無視しているのか、俺には分からなかった。

 その中には色恋沙汰に興味津々の女子の視線や男子の嫉妬が含まれていたので喜多さんが気付いていないことを祈る。

 

「えぇ〜っと、なんでかな?」

 

 お昼に誘われた事に対する動揺や歓喜が言葉に漏れ出ないよう、必死に上面を取り繕って返事をする。最近気づいたのだが、俺は嘘を付くのが得意なようだ。

 

 喜多さんは少し考え込んでから顔を赤らめ俺の問いかけに返事をする。

 

「その…芥川君に話したいことがあるの!」

 

 「ゔっっ!!」

 

 あまりの可愛さに胸を抑える。だって仕方ないじゃないか。喜多さんだもの。というかそんな分かりきっていることより、さっきの喜多さんの言葉を聞いて教室でお昼ご飯を食べていた生徒たちが各々様々な声を上げていた。

 

 恋愛話に飢えている女子達はキャ〜という声を上げ、一部の男子は俺への恨み言や陰口、呪詛などをブツブツ呟いていた。しっかり喜多さんには聞こえない大きさの声で。

 

 とは言っても俺も健全な一般男子高校生なのでさっきの言葉を聞いては冷静になれない。そんなことは無いと確信していながらも期待することがやめられない。コレだから男子は…

 

 「ど、どうかしたの?」

 

 返事が来ないため俺の机の前に立っている彼女は椅子に座り胸を押さえている俺の顔を心配そうに覗き込んできた。

 そういうトコだよ!!

と、女子相手に怒鳴ることもできないため言い訳を考える。

 

「ごめんゴメン、昨日ちょっと夜更かしして寝不足気味なんだよね。ボーっとしちゃってた」

 

 この空気感の中二人でお昼ご飯を食べるのはあまり良いこととは言えないが、逆に言えばこの空気感では断ることもできない。だからね、仕方なくね!?一緒にお弁当食べようかな〜って!?

別に告白されるかも〜なんて思ってないからね!?

 

「お〜い芥川誘えた?」

 

 喜多さんのではない声で感覚が現実に引き戻される。声の主は喜多さんと仲良しの佐々木さんだった。

 

「は?」

 

 思わずお世辞にも良いとは言えない言葉が自分の口から零れ出る。

 は?え?さっきの雰囲気で喜多さんと2人きりじゃないの?

自分でもびっくりするぐらい頭に大量の疑問符が浮かぶ

 

「ふふっww 喜多があんたに相談したい事があるってw」

 

 佐々木さん的には必死に笑みを隠しているんだろうけど全然隠せていない。むしろ悪意が口の端ににじみ出ている。

 

「何がそんなに面白いんだ?佐々木さん」

 

「ふふっwそんなに怒るなよ」

 

精一杯睨んだつもりだったが佐々木さんはまだニヤニヤと笑っている。佐々木さんには効果が無いと悟った俺は若干仲間外れにされて萎んでいる喜多さんに相談の詳細を聞く。

 

「えっと、芥川くんにギター教えてほしくて。確か芥川くんのお父さんギターしてたわよね?」

 

 佐々木さんがでてきた時点で期待はしていなかったがやはり告白じゃなかった。いや別にがっかりしてないからね!?

それにしてもギターか、あの喜多さんがって言ったらお前は喜多さんの何を知ってるんだと言われそうだがギターに興味を持つとは意外だった。結構びっくりしている。

 

「確かに父さんがギター持ってるし家に帰ってきたときはたまに弾いてるけど俺は弾けないんだ。期待に応えられなくてゴメンね?」

 

「いや全然大丈夫よ?むしろこっちのほうが謝りたいぐらいだわ」

 

「それにしても何で急にギター?喜多さんそんなに音楽好きだったけ?」

 

そう、さっきも(心の中で)言ったが喜多さんがギターに興味を持つのは結構意外なことだ。喜多さんの好きな音楽はヒットチャートの友情!努力!勝利!みたいな曲ばかりでもちろんギターがカッコいい曲もあるが到底それだけで喜多さんがギターを弾こうとするとは思えない。

 

「それは…」

 

喜多さんが顔を赤らめモジモジしている。嫌な予感がする。何でそんな表情(かお)するんだ。なんでその顔をする相手が俺じゃないんだ。これ以上聞きたくない。辞めてくれ。

 だがそんな俺の祈りも虚しく喜多さんは言葉を紡いでいく。

 

「この前路上ライブしてる人に一目惚れしちゃって…リョウ先輩って言うんだけど───」

 

 気づけば俺は家のソファに倒れ込んでいた。どうやって帰ってきたのかは覚えていない。

 唯一覚えているのはお弁当が食べられなかったこととギターの教え役を断ったことだけだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 「コレが昨日あったことだ」

 

「なんというか…お疲れ様」

 

 頭を殴られたかのような衝撃を食らった翌日の昼休み、俺は中学からの友達である 太宰 祐希(だざい ゆうき)と話していた。コイツは俺が気を許している数少ない人物でもある。芥川と太宰で作家コンビとも呼ばれていた。(こいつは文系だが俺は理系である)

 ちなみに俺が喜多さんに片思いしていることを知っている。いやなんなら同じ小中学のやつはほぼ全員知っている。

 というか中2に上がりたての頃初めて知り合ったやつに

 

「喜多さんのこと好きな人だよね?」

 

 と言われたことがある。ちなみにそいつとは1年友達として仲良く過ごしたんだが、根拠のない噂話などはあまり好きじゃないタイプだった。流石に浸透しすぎだろ。

 

 「ま、喜多さんの気持ちがそっちに傾いてるんじゃもう無理なんじゃない?僕もずっと喜多さんに片思いしてるお前を見るのは心苦しいしね」

 

 祐希の言う通りこの想いを捨てるいい機会かもしれない。だが、

 

「なぁ祐希、付き合っちゃいけない3Bって知ってるか?」

 

「急に何…?そりゃバンドマン、美容師、カレーをスパイスから作る男じゃないの?」

 

「それじゃ2Bと1Cじゃねぇか。 ……正解はバンドマン、バンドマン、バンドマンだ!!!」

 

「うわぁ急に大きい声出さないでよ。男の嫉妬見苦し〜」

 

「うるさいっ!!もう俺はそのバンドマンと会って喜多さんを任せられるか確かめるまで諦めん!」

 

「どの口でうるさいとか言ってんの…?ここに測音計があったら測定結果を見せてやりたいよ」

 

 祐希から心無いツッコミが入るが割といつもこんな感じなので気にしない。

 

「というかアクト、その人の名前知ってるの?」

 

「あ」

 

「え?」

 

 喜多さんの一目惚れ発言から記憶がないせいでそのバンドマンの名前どころか特徴さえわからない

 

「なんというか…アクトってアホだよね」

 

 「夜飯奢るから一緒に作戦会議しない?」

 

 作戦会議もなにも名前がわからないんじゃ話の進めようがないが人探しも初めてなのだ。こういうのは形から入るのがいい。

 

「ゴメン、今日放課後バイトなんだよね」

 

 ただ一人の親友からも振られた俺は目尻に涙を浮かべながら食べ終わった弁当の片付けを始めた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 「じゃ〜ね〜アクト」

 

「おう、じゃあな」

 

 バイトに向かう祐希の背中を見ながら家に帰ってからすることを考える。今日から体験入部ができるらしいが運動が苦手な俺は部活に入らないから関係ない。部活は中学のときで懲り懲りだ。

 喜多さんは運動が得意だったはずだからどこかの部活に入ったりするのだろうか。

 

「あっ!やっべ明日課題の提出日じゃん」

 

 忘れ物を思い出した俺は教室に戻る為にもう一度学校へと歩を進めた。

 

 

 

 

「っ!」

 

 無事鍵が締まる前に課題のプリントを回収できた俺は昇降口で外靴に履き替え校門に向かっていたのだが…

 

(あそこにいるの…喜多さんだよなぁ)

 

 何度見惚れたか分からない綺麗な赤髪が視界に入る。喜多さんには今日、昨日俺の様子がおかしかったことを心配されていたので少し気まずいのだ。というかさっきからずっとキョロキョロしてるな。言っちゃ悪いけど挙動不審だ。

 

 取り敢えず何も言わずに通り過ぎてみよう。誰か待っていたら悪いし

 

「あっ、やっと来たわ!芥川くん!」

 

 なんて思っていたのだが、あの超絶陽キャの目の前をバレずに通るなんて不可能だったのだ

 

「やっと来たってどういうコト?」

 

 もしかして俺を待っていたのだろうかそんなコトされるとまた勘違いして期待してしまうからやめてほしいのだが

 

「芥川君を待ってたの!昨日からずっと元気がなさそうだったから良かったら話を聞かせて?」

 

 元気がなくなった理由は目の前にいるのだが、それを包み隠さず言ってしまうほど道徳を捨ててはいない。ここは適当にごまかそう。

 

「昨日は掃除を兼ねてギターを探しててさ、結構寝不足」

 

 うん嘘は言ってない。一応押し入れを見回してギターを探したし、掃除機もかけた。寝不足だって例のバンドマンの事を考えていたら深夜の2時だっただけ。うん嘘は言ってない

 

「わざわざ探してくれたのね…ありがとう!」キターン!!

 

 ゔっっ!!眩しい笑顔に照らせれ罪悪感が湧いて出る。それにしても可愛いなぁこの人」

 

「ふぇっ!?」

 

 急に喜多さんがこちらに顔を向けなくなってしまった。俺の顔なんて見たくないのだろうか。結構悲しい。

 

「お〜い?喜多さ〜ん?」

 

 何回か呼び掛けてみるが反応がない。考え事でもしているのだろうか

 

「えぇ〜っと、そういう訳だからじゃあね?」

 

 そう言って俺は歩を進める。コレ以上好きな人に顔を逸らされ無視されたら流石の俺も心にくる。好きな人である喜多さんと一緒にいられるのは嬉しいことなのだが今は間が悪い。

 流石に件のバンドマンについて聞けるほど俺の心臓は強くないし、かといってこのままここで立ち止まる事もできない。何度も言うが喜多さんは超がつくほどの陽キャで美人なのだ。

 校門なので人の出入りは少ないが確実に周りの目を引いている。俺なんかと噂が立っても喜多さんは嬉しくないだろう。

 

「待って!」

 

 結構大きな声で呼び止められてびっくりしてしまった。喜多さんに声をかけられたことでほぼ反射で振り返ってしまう。

 

「その、一緒に帰らない?」

 

 予想もしていなかった事態になり混乱してしまう。

 

「喜多さんは部活動体験行かないの?」

 

 動揺して返事がわかりきった問いを投げかけてしまう。部活動体験するならこんな誘いするはず無いし確か喜多さんは中学の頃部活に入ってなかった。

 

「助っ人でたまに呼ばれるけど部活には入らないわ。だから一緒に帰りましょう?」

 

 ここまで言われて断ることはできないし断る気もない。俺はできるだけ喜多さんの目を見て言った。

 

「俺なんかでよければ、喜んで」

 

 帰り道は何時もよりも短く感じた。

 




キャラ設定

オリ主人公 芥川 亜久人(アクト)

小学生の時に喜多ちゃんに脳を焼かれた悲しき男の子
一般家庭の一般人。
趣味は読書、ゲーム等のインドア派
実は飽き性でブームが結構な速度で切り替わる。1話時点だとルービックキューブにハマっている

亜久人の亜久は飽くのあく

 次回 『バンドマンにマトモな奴はいない』

   喜多ちゃん、メイド服を着る
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