忘れてなんかやらない   作:アゲアゲ太郎

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 さて、xには何が入るでしょう?

 いやマジでめっちゃオリキャラ注意です。



第十四話 (俺+君−時間)÷好き=x

 

 

 初ライブから早いものでもう2週間以上が経過し、とうとう夏休みも最終日である。8月31日、祐希は今頃終わってない課題に追われている事だろう

 助ける義理もないが恩は売れそうだったので昨日の夜ノート類を貸しに行った。すると祐希は

 

『ああぁぁ…ありがとう……ありがとう…!』

 

 と咽び泣いていた。普通にキモかった。明日始業式のあとハーゲンなダッツを奢ってもらおう

 

 なんて回想を挟みつつ、8月最後なので記念に出勤をしていると、なんと我らの職場であるスターリーの前で座り込んでいる後藤がいるではないか。

 なんだか普段よりも増してオーラが陰気だ。最近急に泣き出したり急に陽気になってサンバを踊り始めていたがここまで分かりやすく調子が悪いなんて………おもしろ!!

 見たところ…セミのお墓を作っているようだ。いや怖。

 

「まだやってんの…?」

「あ、店長さん」

 

 後藤ひとりの観察日記でもつけようかとスマホのメモアプリを開いていると、買い出しに行っていたのかビニル袋を片手に下げた店長さんがやって来た。まだやってるって言ったってことは…

 

「え、このセミのお墓作りいつからやってるんですか?」

「朝からだよ…いやてかお前も止めろよ」

「いや面白かったので止める必要ないかなって…」

「スターリーの評判に響くだろ。まぁいい、お前が止める気ないんなら虹夏たちに止めてもらうから」

 

 そう言うと店長さんは階段を降り、スターリーの入っていった。こんなの任される虹夏さんたち可哀想。

 程なくしてスターリーの入り口あたりが騒がしくなってきた。うっっすら「限界すぎる!」と聞こえた。今のは声的に虹夏さんかな?

 

 取り敢えず俺も階段を降り、喜多たちに合流した。日差しが無いだけで大分涼しいな。喜多達に片手を上げて挨拶を済ませ、会話に混ざる

 

「てかさ、お前らこの夏どこか遊びに誘ってやったの?」

「え?」

「この前バイトの日以外何やってるのか聞いたらずっと家にいるって言ってたぞ?」

 

 マジか、夏休みの過ごし方俺と一緒じゃん。ウケる。

 

「予定は空いてるんじゃなくて開けてるって言ってたぞ?」

「それ早く言ってよぉ!」

「誘おうとは思ったんですけど、ここに来る日以外ずっと予定入ってて、知らない人居ると萎縮しちゃうと思ったので」

「私は家事したり、ここでバイトしてたから……」

「リョウ先輩は?」

「2人が誘ってると思ってた…」

「はは、ウケるぅ!」

「いや全然ウケないんだけど…!」

 

 マジか、この人たち後藤のコミュ症知ってて誘ってなかったのか。一緒にバンド組んでるのに。後藤可哀想

 

「そういうアクト君はどうなのよ!」

「そうだよ!アクト君だけ偉そうに言っちゃってさ!」

「………」

 

 喜多、虹夏さん、リョウさんから圧力をかけられる。なんだなんだ。誘ってないアンタたちが悪いだろ

 

「いや俺はバイト終わりとかにメシ誘ってるから…」

「は!?」

「なにそれアクト君私聞いてないわよ…!?」

「そりゃ言ってないからな」

「……女たらし」

「おい最後聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ」

 

 そう、俺は君たちとは違うのだ。夏休み期間中だけでも5回ぐらいは後藤をご飯に誘っているからな。(全部来た訳じゃないけど)

 後藤は食べさせがいがあるし、なにより食べてる時が可愛いのだ。どこかの酒カスや金欠青髪ベーシストに比べたら天と地ほどの差である。

 最近は上がりの時間が被ったり、お菓子を食べていると後藤の方から寄ってくるレベルである。餌付け成功、可愛い

 

「いや今重要なのは俺じゃなくて虹夏さんたちが遊びに誘ってないことですよね?」

「うっ」

「お前らもうバンド名変えろよ…」

 

 結束バンド(笑)の結束力は流石だな。もう後藤はセミのお墓の側に卒塔婆立て始めてるし。どこで手に入れたんだよそんなもん。もしかして自作?

 

「そ、そうだ!今から海行きましょうよ!江ノ島とか!」

「い〜ね〜!下北からなら1本で行けるし」

「デ、デモ…今日ノ練習ハドウスルンデスカ…?」

「なぜカタコト?」

 

 気付けば後藤はみんなに囲まれ江ノ島へと誘われていた。海かぁ…行ったことないな。

 

「いーよ練習はいつでもできるし!次のライブも決まってないしね」

「皆で夏休み最後の思い出作りましょう!」

 

 今から海、しかも江ノ島に行くとか陽キャの発想はすごいな。季節外れだからもう泳げないんじゃね? 

 俺の疑問は口に出さなかったがリョウさんは気づいていたらしく、もう泳げないんじゃないかと皆に言っていた。

 

「まだ海の家があります!」

「しらす丼食べよ!?あと…ほら砂浜!」

 

 どれだけ江ノ島に行きたいのだろう…後藤の思い出作りの為とはいえここまで出来るの凄いな

 ただしやはりというか後藤は後藤であり、砂浜…砂浜…とブツブツ呟いたかと思えば

 

「…TROPICALLove…」

 

 と言って倒れてしまった。体の原形を保って意識を失うのは割と珍しいのでいいものを見せてもらった気分になる

 

「あ、アクト君!後藤さん運ぶの手伝って!」

「ごめん、今日おれ18時ぐらいから予定あるんだよね」

「えぇ〜!?アクト君も一緒に江ノ島いきましょうよ!」

「どうしても外せない用事なんだよ。ほら、いってらっしゃい」

 

 

 アクト君の裏切り者〜!と可愛い叫び声を上げながら喜多は後藤を抱え、先に駅へと向かっていた虹夏さんたちを追いかけていった。もしかして喜多って俺より運動できるんじゃないか……?俺は後藤抱えながらあのスピード出せる自信ないぞ

 取り敢えず姿が見えなくなるまで見送り、そのままスターリーへと降りた。

 扉を開け中の冷気を肌で感じとったときに店長さんに話しかけられる

 

「ホントに行かなくて良かったのか?」

「さっきも言いましたけど、あいにく今日は他の用事が入ってまして」

「ふ〜ん…」

 

 店長さんは腕を組みながら怪訝そうな顔をこちらに向けていた。なんですか。別にやましいことはありませんよ

 

「また女の子ですか?アクト君」

「うわ!……PAさん脅かさないでくださいよ…」

「ごめんなさい…楽しくて」

 

 いつの間に居たのか、横から出てきたPAさんが耳元で囁いてきた。楽しくてで脅かされるこっちの身にもなってほしい。普通に心臓に悪い

 

「また女の子って何ですか」

「じゃあ違うのか?」

「………」

「やっぱ女じゃねぇか!」

 

 店長さんに聞かれ咄嗟に目を逸らしてしまう。というか結束バンドの皆もそうだけどそんなに女を誑してそうに見えるのだろうか。

 顎に手を当て考え込んでいるとよほど分かりやすかったのか店長さんとPAさんが説明する

 

「なんかお前の顔とか言動ってメンヘラとか惹きつけそうなんだよな…」

「なんですかそれ。だとしたら原因俺じゃないでしょう」

「なんというんですかね…アクト君って自覚はないんでしょうけど女の人に対して可愛いとか綺麗ってよく口にするんですよね」

「……マジですか?」

 

 嘘だろ、自覚なかった。確かに可愛いとかはよく考えたりするが口に出した覚えはない。もしかするとマジで無意識で口に出てるのかもしれない

 ……いや普通に考えて無意識に口に出るってなんだよ!?そんなことありえねぇから!

 

「いやいやそんなの関係なくて…別に誰と会おうが俺の勝手でしょ?」

「喜多にチクってもいいのか?」

「それ禁止カードなんで使うのやめましょう?レギュレーション違反ですよ」

「実際誰と会うんですか?」

 

 ……言っていいものだろうか。言ってもいいのだけど絶対深掘りされるからなぁ…。疚しくはないけれど探られて痛くない腹なのかと言われると微妙なラインだ。

 ただ言わなかったらバラされるかもしれないしなぁ…。言うしかないか…

 

「柳田 玲奈(レイナ)……中学の時の同級生です」

「……ホントか?」

「いやそれ以外ないでしょ」

「私が疑ってるのは只の同級生だったのかってことだよ」

 

 ……やっぱり勘付かれるよなぁそりゃ。俺でも気付くもん。こんな分かりやすかったら

 

「元カノですよ。中2のときの」

「マジか」

「へぇ〜……」

「なんすかこの空気!せっかく話したのに!」

「いや、失礼かもしれないけどお前に元カノなんていたのかと思って……」

「いやホントに失礼ですね!?」

「やっぱり女誑しですね」

「いやあのホント、辞めてくださいそういうの。レイナが最初にできた彼女だしそれからできてませんから…」

「すまん」

「からかいすぎましたかね〜?」

 

 やっぱり大人なんか嫌いだ!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「もうこんな時間か……」

「そうですね」

「アクト君ほんとに辞めちゃうんですか?」

「まぁ9月中は来ないですね。10月からどうするかもまだ決まってないので退職って形になります」

 

 出口に近づき扉の2歩手前ぐらいで後ろを振り返る。今まで散々お世話になったのにお礼の一つも言えないほど常識がないわけじゃないからな

 店長さんたちに向き直り、頭を下げる

 

「店長さん、PAさん。今まで、3カ月ぐらいの短い間でしたけど本当にありがとうございました」

「辞めろよそういうの…」

「泣いてます?」

「泣いてねぇ!」

 

 目元を手で隠した店長さんをPAさんがからかう。この景色を見るのも今日が最後かもしれないな

 

「はぁ…まぁいい。おいアクト」

「なんでしょう」

「10月になったら…いや、お前が何か答えを出したならここに顔出せ。缶コーヒーぐらいなら奢ってやる」

「ありがとうございます。でも出来ればコーラの方が嬉しいですね」

「うるせぇ。ほら、遅れる前にいけよ」

「……本当に、ありがとうございました」

 

 もう一度頭を下げ扉を開ける。道具で晴れ渡る空。自分探しの旅の出発日にはこれ以上ないだろう

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 左腕の腕時計を確認する。現在時刻18時と少し、約束の時間から5分ほど遅刻してその少女はやって来た

 

「ごめ〜ん!遅れちゃった!」

「はぁ…遅刻癖は治ってないのか?」

 

 遅れたくせにニコニコと楽しそうにこちらへ寄ってきたこの少女こそ中学の同級生にして俺の元カノ、柳田玲奈(レイナ)だ。

 黒髪ショートにダボダボの服、八重歯が見える笑顔を常に浮かべている可愛らしい少女であり、喜多を誰とでも仲が良い完璧陽キャとするならばレイナは突き抜けたマイペース陽キャである

 

「よ〜し、じゃ今からスイパラ行くぞ!」 

「え、は!?今から?」

「当たり前じゃんほらほら行くぞー!」  

 

 顔を合わせて早々に左腕をつかまれ街の方向へと引きずられていった。

 

 

 

「う〜ん!美味しい!」

「もう午後6時過ぎなんだけど……?」

 

 あの後マジでスイパラ(スイパラって何?)に連れ込まれた俺は目の前でショートケーキを頬張るレイナを頬杖をつきながら見ていた。ちゃっかり俺でカップル割使いやがった。狙ってただろ

 

「あ、イソスタあげていい?」

「別にいーけど顔映らねぇようにしろよ?」

 

 おけけ、とか良く分からん返事をしたレイナはスマホでパシャパシャ写真を撮り始めた。コイツ中2のときイソスタとかしてたっけ?

 

「でさー」

「ん〜?」

 

 そんな事を考える俺にレイナはなんでもない風に、とても軽くそれを口にした

 

「答え…分かったの?」

 

 途端にレイナの顔から表情が抜け落ちた。目から光は消え、すっと細められた目からは何もかもをのぞき込まれるような錯覚も覚える

 

「ああ、レイナが納得するかは分からないけどな」

「ふ〜ん…じゃあ出よっか」

「は!?あと20分ぐらい時間余ってんだけど!?」

「男が細かいこと気にしない!」

「ふざけんな!」

 

 ああ、でも懐かしいなこの感覚。あの時、中2のときはバカみたいに何も考えずにコイツと、たまに祐希と三人集まって遊び回ってたっけな

 

 そしてスイパラの支払い全額を払わされた俺がまたまた引きずられ着いたのは近所の公園だった

 

「また懐かしい場所だな」

「そうだね…私がアクト君に告白して、私がアクト君をフッた場所」

「………」

 

 この公園こそが俺たちが始まり、終わった場所。そして、俺の生き方も変わった場所

 

「じゃあ答えを聞こうかアクト君。貴方はあの時の、あの問になんて答えを出したのかな?」

「そうだな…ま、ここはガラじゃないが過去回想でも挟みながら途中式も聞いてもらおうかな」

 

 そう、確か始まりはあの日、中2に進級したすぐの日だった……

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「では、先ずはレクリエーションで誕生月が同じ人との交流をしてもらいます!」

 

 そんなことを提案したのはまだ若い、新任の女教師だった筈だ。そして、なんとそのクラスには同じ4月生まれが俺とレイナしか居なかったんだ

 

「君は……えっと…」

「あはは、まだ二日目だから全員覚えてなくても仕方ないよ。おれの名前は芥川アクト。ソッチは確か…柳田玲奈さん、だったかな?」

「えー!?もう全員分の名前覚えたの?」

「いや、柳田さんが特別きれいだったから印象に残ってただけだよ」

「いやー!それ程でもあるかな!」

 

 確かあの時期はまだ他人との交流を積極的に行っていた。ただまぁ自分の弱みを自ら話し、それを種に会話と友情を育てるという歪な方法ではあったが

 

「面白いね!アクト君!」

「君ほどじゃないと思うな」

 

 それが俺とレイナのファーストコンタクトだった

 

 一月が経ち5月に入ると、体育会が6月の初めにあると言われ、実行委員をクラスから男女1名ずつを選出する必要があった。

 さっき言ったようにその時の俺はバカみたいに人の為になることをして、面倒な事を全部引き受けていた。今思えば全部押し付けられていただけだがあの時の俺はそれでも良かったんだ。誰かに必要とされていれば

 

 少し話がそれたが、いつもの様に押し付けられた実行委員だが、女子が一人いるとのことで白羽の矢が立ったのが俺と一番仲がよかったレイナだった。(祐希は男子なのでダメだと言われた)

 

「ごめんね、こんな事付き合わせちゃって」

 

 夕日が差し込む教室に2人で、内容は覚えていないがまたまた押し付けられた仕事を居残りでしていた

 

「いや、私がしたいからしてるよ?それにアクトくん1人置いて帰ったら同じ実行委員としてダメじゃない?」

「はは、ありがとう」

 

 特に文句も言わずに側にいてくれるレイナの存在が心地よかった

 

 さらに一月経ち6月。体育会が無事に成功した翌日、俺とレイナの2人は祝勝会として水族館へ遊びに行っていた

 

「うわー!凄いね!ホラホラ!サメだよサメ!」

「分かったからもう少しゆっくり回ろう?」

 

「エイの裏側可愛い!」

「……そうか?」

 

「ペンギンって臭いらしいよ!」

「あんまり知りたくなかったかな」

 

「イルカショー楽しかった!ちょっと濡れたけど」

「ちょっとどころじゃなくてびしょ濡れなんだけど!?レイナがシート借りないから…!」

 

 もう一月経ち7月。あと1週間後に迫った期末試験の対策のため、俺はレイナと家で勉強会をしていた

 ただレイナは俺、祐希を含めても理解の早さがずば抜けており学年でも毎回5本指…いや3本指に入る成績を収めていたため、むしろ俺が教えられる立場になっていた

 

「ここは…ひゅーんとやってひょいだよ」

「ひゅ、ひゅーん……?」

「そう、ここにコレを代入してひょい!」

「………は?」

 

「ええ〜?なんでわからないの?」

「いや、逆になんでわかるんだよ。コレ去年の私立入試問題だぞ?なんで満点なんだよ…」

 

 夏休みに入った8月。その時期に俺とレイナの関係は変わり始めた。

 

「どうした?遊びに行こうなんて珍しいな」

「え〜?いや…ちょっとアクトくんに会いたいなって…思ったんですが……」

「……良くわかんねぇけど取り敢えず遊び行くか。映画見に行くんだろ?」

 

 今思えばカス野郎だと思う。何がよく分からないだよ。全部分かってて見たくないから目を逸らしてたくせに。なのに思わせぶりな態度だけは作ってた。嫌われたくないから

 

 9月は特に何もなく10月。文化祭の後、俺はレイナにこの公園へと呼び出された

 

「どしたの?こんな時間に」

「わ、わたしは…柳田玲奈は芥川アクトのことが大好きです!付き合ってください!」

「……は?」

「へ、へへへ…返事は!?」

「え、あ、ああ。そうだな。付き合おう」

 

 今思えばここから俺とレイナの歪みは大きくなり始めていた

 

 思い返せば楽しいことばかりだったと思う。レイナといるのは楽しかったし笑いが絶えなかった。だけどその歪みは到底目を逸らせないものになっていき、その日はやって来た

 

 その日は12月、中学の二学期終業式でクリスマスイブの夜だった。確か …そう、あの日は雪が降っていて祐希やクラスメイトがはしゃいでいた気がする。でも、いつもこういうのに食いつきそうなレイナが静かでそれが心に残っていた

 

「ねぇ、アクトくん」

「どしたの?レイナ」

 

 その時の気温やイルミネーション、会話の繋がりなんかはもう思い出せないが、その言葉とそれを言うレイナの表情は今も頭に残っている

 

「アクトくんは、私のほかに好きな子がいるでしょ?」

「……は?」

「ふふ、やっぱり?」

「いや…いやいやいや、そんなわけ無いだろ。だって俺の恋人はレイナだけだぞ?」

「じゃあさ、アクトくんは私に好きって言ったことある?」

「……それは…」

「やっぱりそうなんだね。……アクトくん、ます私たちもう別れよう」

「な…なんで?」

「わからないなら…それでいいよ」

 

 この少しの会話で、俺とレイナの関係は変わった。……そして付き合う前に戻ることもなかった

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「で?わざわざ恥ずかしい過去話したのはなんでかな?」

「まずは、俺の答えを聞いてほしい」

「……わかったよ」

 

 あの日、俺が家に帰ってから気付いたレイナから来た最後のメール。内容は『答えが分かったら、連絡して。分からなかったなら、いい』というものだった。

 リョウさんとの会話で過去に向き合う覚悟を決めて、最初に思い出そうとしたのはレイナの事だった。

 レイナの顔も名前も忘れるほどあの日のことは俺の心に傷をつけた。でも今考えれば先に傷つけていたのは俺の方だった。

 

 一年半越しに出した俺の答えは─────

 

 

「答えは…俺がレイナを通して他の人を見ていたから、だ」

 

 俺の答えを聞いたレイナは少し目を見開き、笑って言った

 

「満点とはいえないけど……うん。そうだね、合格。正解だよ。正直、アクトくんは一生分からないと思ったのになぁ…」

「俺も、あのままじゃ絶対に分からなかった。この答えを出せたのも皆のおかげだよ」

「そのみんなってのは喜多さん?」

「まぁ、そうかな」

 

 実際はリョウさんや店長さんのおかげであるが、俺のその言葉を聞いてレイナは俯いてしまった。

 

「そっか。そっかぁ……。やっぱり喜多さんなんだね」

「やっぱりって…?」

「気づいてないの?アクトくんがずっと見てたのは喜多さんでしょ?」

「……!、そう…だな」

 

 そうか、全部気づかれてたのか。あのときから。ずっと

 

「俺は、レイナ越しに喜多を見ていた。好きって言ってくれたレイナには向き合わずに、レイナの言葉を使って自分を慰めてた。だから、レイナは俺をフッたんだ」

「………うん」

「俺、理由がわからないのに謝るなってよく言われるんだよ。昔から」

「……うん」

「だから、ちゃんと謝るよ。レイナ、ゴメン。俺はレイナの恋人だったのに、レイナの気持ちを蔑ろにして自分の事しか考えなくて、ごめん」

「………うん」

 

 顔を上げたレイナの頬には涙が流れていた。なのにレイナはどこか嬉しそうで、満足したような顔をしていた

 

「レイナ、泣いてるよ」

「アクトくんだって泣いてるじゃん」

 

 そう言われ自分の顔に触れる。右手の指先には水滴がついていた。

 どちらかともなく笑い出す。なんだ。結構単純だったんだな。あの時告白を受けなければ、レイナのことを好きになれていればこんなことにはならなかった。

 でももう終わった事だ。ifを考えたって過去には戻れないし過ちはなかったことには出来ない。  

 

 だから─────

 

 

「ありがとう、こんな俺を好きになってくれて。こうやって考えるチャンスをくれて、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。少しの間でも、恋人になってくれて」

 

 そう言ったレイナは俺に背中を向け公園の外へ歩き出した。でも公園から出る瞬間こちらを向いてーー

 

「私!アクトくんのこと大好きだった!」

「ありがとう!!俺の事好きになってくれて!」

 

 好きだったなんて言えない。自分の心にウソはつかないと決めたから。だから、ありがとう。

 

 俺もレイナも、やっと前を向き始めた。

 




 今回はアクト君がクズな回です。コイツマジでクズだな


 オリキャラ紹介

 柳田 玲奈(やなぎた レイナ) クズ被害者その1
 あの情緒小学校低学年であるアクト君の中学時代の彼女。
 眉目秀麗、才色兼備。中学の同級生では祐希以外で唯一アクトのトラウマとかに気づいている人物
 たぶんこれからの出番はない
 『熱に浮く』で出てきたお母さんのセリフは実際に言われたものですが、レイナから言われたセリフは罪悪感からアクト君が作り出したものです

 ちなみにアクト君はよくクズとか女たらしとか言われますが別にそんなわけないです。ただちょっとメンヘラとかを引き寄せそうで女殴ってそうな顔してるだけです。まぁそれ除いてもアクト君はクズですけど


 次回 『アフターダーク 喜多が来るなんて聞いてない』

 アクト、喜多が来るなんて聞いてなかったらしいです
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