【Lobotomy Corporation】管理人代理職員Z 作:ノーラ・バーン
では本編をどうぞ。
ゼロはフィオレが手配していた車にフィオレと共に乗っていた。
車は全身が黒く、窓の中は外から見えない様になっている。
日本のイメージ通りの、The ヤクザの車、見たいな見た目だ。
中にいるのは運転手、フィオレ、ゼロの三人のみ。
フィオレはコップを取り出し、ゼロに飲み物を差し出した。
「喉が渇いただろう?このジュースを飲みなさい。」
「ありがとう。……」
ゼロは飲み物を受け取ったが、一瞬フィオレの方を見た。
…安全な飲み物か、これ。だけど殺すんだったらこんなまどろっこしい方法でやらない…よな?
「安心して飲みなさいな。毒は入ってないよ。」
…なら良いか。お言葉に甘えて、いただこう。
「んぐ…美味しっ」
ジュースはオレンジジュースだった。
穏やかな甘みに程よい酸味。二つがベストマッチしていてとても美味しい。
オレンジジュースだ。懐かしい。
ゼロがジュースの懐かしさに浸っていると、運転手の若い男が話しかけてきた。
「なんかフィオレさん、さっき出会ったばっかりの子を、孫みたいな扱いしてない?」
「そうかな。いつもこんな対応だと思うんだけど。」
いつも?今いつもっていったか?この人、俺みたいな孤児をいつも助けているのか?
こんな素晴らしい人がここで、この歳まで生きているなんて。
「偏見なんですけど、フィオレさんは子供好きそうですもん。」
「実際そうだよ。だって、子供はいつも、私の様な老人をあっと驚かせてくれるからね。」
「あぁ〜。気持ちはわからないでもないですよ?この前も…」
「…、私も…ことが…」
フィオレと運転手が話しているとゼロは急な眠気に襲われた。
うわ、急に眠たくなってきた。今日で三徹目だったからかな。
あと今までの緊張とかが切れたか、本気で動いて疲れたからかな。
そう思っていると、車の窓から見える光がぐにゃりと曲がったとゼロは錯覚する。
ゼロの視界が揺れる。景色が歪む。
ふぁあ。くっそ眠い。考えるのがうまくいかねぇ…
「…おや。ゼロ、眠くなってしまったのかい?」
「はい…ここで…寝て良いですか?」
「いいよ。着いたら起こしてあげる。おやすみ、ゼロ。」
フィオレの声が遠くに聞こえる。
「おやすみ…なさい…」
「…やっと眠った様だね。確か、結構強めの睡眠薬だったはずだったんだがね。」
フィオレは少しため息をつきながら低い声でつぶやいた。
「
ジョレクスは怪訝そうな声でフィオレに尋ねた。
「いずれは絶対話すだろうけど、今知ったら面倒になりかねないからね。」
「まあ言いたい事はわからんでもないですが。
そこまで重要な子供って認識で良いんですよね?」
「ジョレスク。この子、ゼロはね、私の攻撃を避けたんだよ。」
「へぇ。…え?本当ですか?」
ジョレスクと呼ばれた運転手は驚きを隠せないようだ。
驚いているからか、運転が少し雑になっている。
「本当さ。『心』は使ってはないけど。一発で仕留めるって思った攻撃をスライディングで
避けたんだよ。子供だから避けれないって言う私の中の慢心が原因かもね。」
「そういっても今まで物凄い強さを持った子供とかとも戦いましたよね?
慢心は少ないかと思います。」
確かにフィオレ自身子供だから侮っていたという心はあった。
だがジョレスクの言う通り、
今までの戦いの経験からゼロに対しての警戒を怠らなかったのは事実。
つまりゼロは、ゼロ自身の力で警戒したフィオレの攻撃を避けたのだ。
「今までの子達には申し訳ないけどね、彼は飛び抜けた逸材だよ。」
「大人気ないかもですけど、妬けちゃうな。
よーし、俺もゼロに追いつかれない様にもっと鍛錬しますか!」
「おっジョレスクにしては珍しいね。」
「こんな話聞いたら自分も頑張らないといけないなって感じて。
これが子どもの影響力って奴ですかね。」
ジョレスクは苦笑しながら答えた。そして真剣な顔になってフィオレにこう質問した。
「会長。件の工房との交渉はどうなりましたか?」
「あぁ、あれか。殺そうとしたから
「やっぱりそうなりましたか。」
「やっぱりって?」
ジョレクスはフィオレに何枚かの紙を渡す。
「実を言うとですね。
会長が交渉から帰って来たら詳しく話そうと思ってたんですがね。」
「…もしかしてあの工房、パトロンの私だけじゃなく色んな人にあんな事やってたの?」
「そうみたいですね。会長が交渉に行ってから五件ほど同じ依頼がありましたから。」
ジョレスクはまた何枚かの紙を渡す。どれも同じ様なことが書いてある。
「もうツッコミ入れないよ。そういえばあの工房に名無しがいるって話したかな?」
「あー、確か子どもでしたよね。それこそ、ここにいるゼロ君に…似た……ん?」
ジョレクスはハッと気がついた表情をしたかと思うと、
気まずそうな表情でフィオレに質問した。
「ま、まさかゼロがその『名無し』だったとか?」
「その通り。あの工房の仲間だと思ってしまったから攻撃をしたってわけだね」
「確かに会長にしてはおかしい行動だなと思ったんですよ…。
いやそんな物語のような展開がありますかね?」
「『現実は小説よりも奇なり』というじゃないか。」
「それはそうですけどね!…はぁ、自分はどっと疲れましたよ。
もうツッコむ気力すらありませーん。」
ジョレスクは肩を落とした。その顔はまるで『都市』の空の様に青かった。
フィオレは少し笑っていた。そして、これからの未来を見る様な、そんな目をしていた。
夢を見た。
俺を保護してくれた店の奴と過ごしていた日々を。
親じゃないのに可愛がってくれたあいつらの事を。
俺がいたせいで滅んだ生活を。
幸せとは言い切れないけど、楽しかった時間を。
俺のせいで、勘違いをした奴らが殺しにきたあの地獄を。
血の匂いと大きな悲鳴、争う物音に狂った声。
『これは
お前が殺したと突きつけるように。
何度も見せないでくれ。頼む…もう、やめてくれ…
「…ロ、ゼロ。着いたよ。起きなさい。」
「ん?ふぁ…おはようございます?」
結構な時間寝ていた様だ。頭がズキズキして痛い。
「やっと起きたか。さあ、こっちにおいで。」
フィオレはゼロの手を引いて車から降りた。
ゼロが見たのはP社の巣では異様な建物だった。
建物は周りと比べて低く、横にとても広かった。
他の建物を針山と表現するのなら、この建物は緩やかな丘だ。
そんな建物を見てゼロが佇んでいると、フィオレが咳払いをしてこう言った。
「では改めて。
ようこそ、私が開いている道場へ。今度はここが君の居場所だ。」
道場の二階、屋内修練場の窓から声が発せられる。
「へぇ。あれが新しく入ってきた奴か。弱そーで何もしらねぇガキだな。あっひゃっひゃ。」
豚の様に太ったデブが下品な笑い声を出しながらそう言う。
「そう言ってやらないでくださいよ、先輩。ビビらせすぎると可哀想っすよ。
一見何もないところから声が聞こえる。
だが目線を落としてみるとデブの右側に骨と皮しかない腰巾着がいた。
「そうっすよ。それにまた力の差を見せつけないでくださいね?引きこもっちゃいますからww」
左側にはイチゴ鼻に汚いメガネをかけたブスが喋っていた。
そんな下衆三人を冷ややかな目で見る奴らがいた。
「ねえ、またあいつらあんなこと言っているわよ。師匠の教えは学んだはずよね?」
「腐ってるものをどれだけ直そうとしても、腐って崩れていくのを見ていくしかない。
あいつらはここに来る前から腐っていた。そう考えるしかないよ。」
「そうは言っても。…まあそう考えるしかないか。」
「私、あの新しい子が泣きついて来たら、優しく保護してこういようかな。
『私があなたを助ける聖母よ』って。」
「うわきつ。」
「はあ、こんな時にあいつらじゃなくて、兄弟子たちがいたらなぁ…。」
「ほんと、兄弟子達はかっこいいわよね。」
「体も心もかっこよくて。教え方もうまくて面倒見が良くて。
…なんで私たちの年上があんなんなのよ。」
「それにあいつら、『年上に逆らうなー』『俺の言うこと聞け!』だって。
そんな意味わからないルールのせいで皆萎縮しちゃっているし。」
「師匠の前では良い子ぶるし、証拠も残さないから余計タチが悪い。
師匠自身は知っているけど『なんやかんや理屈で言い訳してるから追放したくても出来ない』
って言ってたし。」
「失礼かもしれないけど、可哀想よね。親も何かモンペで。
『私の子がそんな事する訳無いじゃない!』ってまた言ってた様だよ。」
「実力がなくて威張っているわけじゃなくて、ちゃんと実力はあるからもっと逆らえないしね。」
「これがきっかけで変わったりしたら良いな〜」
力と態度で支配する。そんな奴がいるとは知らずにゼロは道場に行くのであった。
実は2ヶ月ぐらい悩んだ。物凄い難産その1です。
評価、感想をくださると嬉しいです。
誤字脱字があれば報告して欲しいです。
門下生と弟子の使い方を間違っていたので訂正しました。
好きな数字を選んでください。(選ばれた数字で展開が変わります。)
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