ジェネリック小壺 in リムベルド 作:棘棘生命(一旦再考中)
本日中にもう一度投稿できるよう頑張ります。
再び出撃するまでの間、僕は夜渡りたちの手伝いと、協力者への交流に時間を使った。
まず守護者について、召使人形が見つけたという書物の内容を共有してもらった。しかしこれについては、隠者が紛失していた二冊の内、一冊を見つけ出し渡したというのが正しかったようだ。
やはり隠者は、円卓の支えとなっている。それでも彼女を疑ったのは、文献調査と夜の王討伐とでは別で考えているということだろうか。
次に隠者のため、『かじりやさん』に関する文献探しをした。彼女に対する疑いが晴れた召使人形と一緒にである。
調査の傍ら、召使人形は本をめくっている僕に丁寧な口調で話しかけてきた。
「英雄サマ。二体もの夜の王討伐に貢献していただいたこと、改めて感謝申し上げます。また貴方サマは、博愛の精神を持たれる方だと、これまでの生活から存じております。どうか私にもお申し付けください。ご奉仕させていただきます。」
恭しくも固い言葉に聴覚を傾けながらも、僕は召使人形の様子を伺う。やはり彼は、僕のことを観察しているようだ。
召使人形はとても几帳面であり、夜の王を討つ戦士に対して協力をしている。反対に夜の王を倒そうとしなければ、疑いの目を向けるということであり、手放しに信頼を置いているわけではないようである。
夜渡りたちから、これまでの戦いについて聞いたのだろう。夜の王を倒すにしても、ただ屠ることには抵抗がある戦士。彼にとって僕は、どちらにも転ぶ可能性がある不穏分子に映っているのかもしれない。
僕は気取られまいと、普段通りの調子で尋ね返す。彼が同志としての証拠を欲しがれば、僕は進んで差し出そう。
「うん、ありがとう人形さん!僕は大丈夫。できたら、同じ壺たちや狼さんを助けてほしいな。僕はむしろ、もっと皆さんをお手伝いできるように頑張りたいから!人形さん、何かしてほしいことはある?」
「お気遣いありがとうございます。ふむ…。」
彼は無私の在り方を明確にした後、考え始めた。
与えられた命令をこなすように作られているというよりは、第三者としての立場を保ち続けようとしている。信用ができない者には態度で示す。僕は召使人形のことを、人間とほぼ変わらない存在だと思った。
しばらくして彼は提案してくれた。壺たちやグラディウスに対して、食料を渡したり、テントの中の快適さを向上させたりといった手伝いをする旨である。次に召使人形が僕に話したことは意外なことであった。
「…小壺旅人サマにお願いしたいことがございます。英雄サマ方から、貴方サマは私たちの知らない多くの情報を持っていらっしゃるとお聞きしております。特に異形の竜『貪食ドラゴン』については、どの文献を調べようと見つけることができませんでした。そのため、どうか貴方サマの知見を共有していただきたいのです。」
召使人形は、続けて言う。僕の知っている情報が夜渡りたちの戦いの助けになると。
僕は考える。偉大なるエデレとの戦いがあったため、後々整理しようと思っていた事象。御伽噺の実在について間接的にではあるが、他者から触れられたのは予想外であった。
「うん、喜んで共有するよ!でも僕は、お話でしか聞いたことが無かったから、今でもびっくりしてるんだ。本当に助けになれるかは分からないけど、いい?」
「勿論でございます!では、羊皮紙を持って参ります。」
僕が頷くと、召使人形は今までで一番機嫌が良さそうな声を上げて、本棚が並ぶ部屋の奥へ向かおうとする。まるで、無頼漢の狭間杯を応援していたときのような雰囲気だ。僕は驚き、声をおさえて質問する。
「お姉ちゃんの用事はいいの…?」
「夜の欠片に関連しそうな文献は、既にいくらか見つけ出しております。ですので今は、小壺旅人サマのお話をまとめさせていただきたいのです。」
「ええ!?すごい!人形さんって、とっても調べ物が得意なんだね!」
「お褒めいただき、ありがとうございます!それでは、少々お待ちください。」
召使人形はそう言い残し、しばらくして大量の羊皮紙を腕いっぱいに持ってきた。彼も戦士ではないが、一流の域に達しているのだ。僕は召使人形の一面を見て、認識を改めた。疑り深いのではなく、ただ真面目な性質なのだと。
僕は御伽噺が非常に長い故に、かいつまんで話すことにした。貪食ドラゴンとの戦いが行われた場所の話から始まり、不死の英雄の旅路で相対した強敵たちについて伝える。
英雄は二つの鐘を鳴らし、太陽の王の霊廟での試練を潜り抜ける。そして王によって封印されていた四つの場所にて、神々の時代を作り上げた存在と戦った。
話す中で僕の嗜好が出てしまい、太陽の戦士の旅路についても強調してしまった。それでも召使人形は文句を言うことなく、短い質問を挟みながら聞いてくれる。
「お話の途中ではございますが…言わせてください。貴方サマの記憶力は素晴らしい。夜の雨に晒されながらも尚。旅人として大成するには、これだけの資質が求められるのですね…。」
「何百回も聞きに行っていたから、覚えてるだけだよ!それに聞くたびに楽しくって、壺が震えるんだ。またあの語りが聞けないのは寂しいけど、こうやって他の人に話せるのはとっても嬉しいな。」
「小壺旅人サマ…。」
召使人形は声を小さくし、祈るように四つ腕を組んだ。彼の気遣いに感謝を伝え、話を続ける。
そして不死の英雄の概要を話し終え、一息つく。それでも召使人形が持ってきた羊皮紙は、インクの黒で埋め尽くされていた。
召使人形は、指でなぞるように強敵たちの名前を示し、動きを止める。
「なるほど…。お聞きするほどに、狭間の地とは違う法則で動いている世界であると分かりますね。竜、デーモン、そして亡者…。名称が似ている存在は文献で知っていますが、こうも成り立ちが違うとは…。」
「不思議だよね…。あと夜の王も、元々は全然違う世界にいたみたいなんだ。」
「なんと…!夜の浸食とは、それほどまでに貪欲なのですね。」
僕は、夜の性質を知ることも夜明けに繋がると力説する。召使人形は頷き、その意見へと賛同してくれた。
僕と召使人形は話し合い、次に会合するかもしれない敵について考えを巡らせていく。その後、情報を夜渡りたちに共有しても良いかと問われたため、僕は快く同意した。
召使人形は楽しそうに僕の話を聞いてくれた。それだけで彼のことを信頼できたのだ。
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時が経ち、巫女が夜渡りの戦士たちを招集する。今回向かうべき戦士の組み合わせの一つは、巫女、もう一つの呼称をレディ、隠者、守護者の三名である。
小壺旅人はこちらの三名へと加わり、準備を開始する。その際に巫女が、今回導かれた夜の気配の持ち主について、夜渡りたちに伝えた。
「見えたのは、二匹。空を飛ぶ翅と、地を這う鋏。そう形容するのが相応しいだろう。奴らは蛾毒にて宿主を喰らう。もし辿り着いたときには、蟲の双方を対処せねばならない。注意深く観察し、隙を突くとしよう。」
鋏と呼称される蟲については、堅牢な盾が有効であり。もう一方の翅には、矢や魔術など高所を攻撃できる戦士が必要だ。
夜渡りたちは、蟲には火が有効だと判断した。献器を選んだ後、対応する景色を砂の上へと置く。遺物儀式によって、夜渡りたちを補助するのだ。
そして準備を終えた戦士たちは霊鷹に掴まり、リムベルドへと飛ぶ。ただ一名のみ『知性の蟲』と呼称される夜の王について、その夜への在り方がどうあるかを考え続けていた。
リムベルドの中空を、黒い影が集まっては散開する。
潜んでいた自然の脅威が、夜を終わらせようとする外敵へ牙を剥こうとしている。