ジェネリック小壺 in リムベルド   作:棘棘生命(一旦再考中)

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Chapter5
夜明けへの貢献


 円卓に戻ってきた戦士たちを、召使人形が迎える。そして次の瞬間、意思の宿った無機物は驚きを表した。坩堝の騎士と、太陽を望む蛾が円卓へとやってきたからだ。どちらも夜から逃れ、戦士たちに加勢するという旨をレディから聞き、召使人形は恭しく彼女へ頭を下げた。

 

 導きはすぐに、次の気配へと道を示す。だがそれは定まりきっておらず、巫女が見える景色も朧気だ。

 王を討つには入念に策を練り、立ち向かえる戦士を選ぶ必要がある。レディは巫女に戻り、リムベルドを観測する。それにより、一時の休息が円卓を安らぎで包んだ。

 

 

 次の出撃はいつか。追跡者は武器を砥石を使って磨き、待ちながらも心を整えていた。

 近くにある書斎からは、隠者が本をめくる音が聞こえてくる。彼女から学ぶため共にいることの多い、あの鳥人騎士は、珍しく席を外しているようだ。追跡者は意外に思いながらも、別の通路から微かに談笑する声が聞こえ、納得した。新しく円卓へやってきた騎士は、守護者の気に召したようだと。

 追跡者は大剣を置き、立ち上がる。坩堝の騎士や、あの幼き壺が連れてきたもう一つの存在へ、興味が引かれたために。

 

 円卓の階段を降り浜辺、海岸へと向かう。彼は円卓から出てすぐ、遠くを見ながら弓の弦を弾く鉄の目と会合する。鉄の目は地平線から目を離すことなく、歩いて来た追跡者と言葉を交わした。

 

 

「調子は悪くなさそうだ。」

「…そのようだな。」

「あんたの戦いは、見事だった。次組んだ時も頼む。…用は、あちらにあるだろう?」

「…ああ。だがお前の戦いぶりは良かったと、伝えるつもりだった。俺の方からも、またよろしく頼む。」

 

 

 どちらも多くは語らない男だが、夜渡りとして実力を認め合っている。鉄の目は顔を追跡者に向けてから頷き、海岸下へ行くように目配せする。追跡者も小さく頷いて返し、柔らかな草の生えた坂を下った。

 

 穏やかな波の音に混じり、やかましいほどの豪快な笑い声が聞こえてきた。そして彼の兜の隙間を通り抜け、香ばしい肉の匂いも漂ってきた。

 浜辺では、無頼漢と小壺旅人、そして壺の協力者たちが集まっていた。綺麗に血抜きをした獣肝を焼いて、穀物と一緒に皿へ盛り付けている。

 

 

「あ、お兄ちゃん!お話をしに来てくれたの?」

「おう!大剣の兄ちゃん、匂いにつられてきたか!そら、お前も食え食え!」

 

 

 無頼漢と小壺旅人が追跡者に気づき、盛り付けた料理をそれぞれ手渡した。彼の視界の隅で、大きな壺たちがどこか自慢げに、力こぶを見せつけるようなジェスチャーをしている。または、ごそごそとテントの中で作業をしているようだ。

 追跡者は、絶対に腹を下さないことを二名から説明されながらも肉料理を食べる。塩気の効いた濃い味が、追跡者の味覚を丁度良く刺激した。

 

 

「この料理は、壺たちが作ったんだとよ!それにこれも見てみろ!こいつらは腕っぷし以外にもやるもんだぜ。」

「美味いな。…これは景色の石か。」

 

 

 その後、小壺旅人が言葉を発さない壺に代わって説明する。壺たちは複数集まることで、ようやく戦いを支援している状況であり、それでは貢献できているとは言い難いと考えたそうだ。そのため、壺たちは自発的に戦闘以外での支援方法を考え、円卓の過ごしやすさに寄与しようとし始めた。

 料理が出来る者の手伝いをしたり、小壺商人に弟子入りすることで景色の原石を格安で仕入れたり、召使人形が花に水やりするのも分担したり。出来ることは限られているが円卓に彩りを加えようと、努力しているのだと。

 

 追跡者は頷きながら聞き思う。こういった細やかな支援は、必ず夜渡りたちの力になる。彼は料理について手伝える一体の壺に言葉をかけた。

 

 

「パンの焼き方を、俺が教えよう。多めにできれば皆も食べるだろう。」

 

 

 大きな壺は縦に傾き、追跡者の後を追う。小壺旅人はその光景を見て、円卓のどこかで時間を過ごしている夜渡りそれぞれへ、話しかけに行った。追跡者の作るパンは香ばしく、甘じょっぱい。壺は味が分からないが、夜渡りたちがそれを美味しそうに食べることを知っている。

 

 

――――――――――

 

 僕が浜辺から離れようとした時、太陽の蛾がぴたりと背について思念を飛ばす。自身も共に行動するという意思だ。僕は了承し、同じくついてくる狼と共に、彼女の羽が引っかからない道を通っていく。

 騎士と翅が円卓へ来て、しばらく経った。二名とも協力者になってくれるとのことであり、夜明けを目指すための味方が増えて僕は感無量だった。

 

 坩堝の騎士は、夜渡りたちに対して多くを詮索しなかった。現在は共に盾を構えた守護者や、坩堝の諸相を持つ執行者の近くで過ごすことが多くなっている。

 執行者は初め、己が抱えた罪について問われるかと考えていたらしい。しかし、長い時が経ち罪を問う理由もないため、坩堝の騎士は気に留めなかったという。

 

 夜渡りと交流を深める騎士とは反対に、野生の本能を残している太陽の蛾は、僕にしか近づかなかった。浜辺に居を構えると、僕に張りつくか餌を食べる以外は何もしない。

 彼女の力はリムベルドでこそ発揮される。僕は彼女へ頼りにしていると伝えると、優れた知性で暖かな思念が返ってきた。

 

 

 無頼漢を最初に夜渡りを集めていき、一緒に食事をしようと誘って回った。そして巫女も含めて、和やかに食事会を開くことができた。性質は違くとも、この円卓にいる戦士は親しくあることができる。それがどれだけ温かいことかを、僕は再確認した。

 この団欒もまた、太陽の一つである。僕はこの太陽も輝かしく、守りたいと強く思った。

 

 そして食事会が終わった後。レディが夜渡りたちに、あることを提案してきた。提案内容はリムベルドの探索ではあるが、巫女としての力によって感知した存在があるのだと、レディは話す。

 

 

「夜に蝕まれているけれど、助けられそうな人が見つかったの。今回の探索は、その人物を連れて帰るのが目的になるわ。…誰か、私と共に来てくれる戦士はいるかしら。」

「僕、行くよ!」

「…俺も行こう。お前たちには、夜の王一体分の借りがある。」

 

 

 夜の蝕みから救助できるならば、絶対に成功させなくては。レディの優しさを感じながら、僕がいち早く手を挙げると、追跡者も続いてくれる。また一拍置いて、無頼漢が救助に名乗り出てくれた。

 

 

「ありがとう、三人とも。救助でき次第すぐに戻るわ。…行きましょう。」

 

 

 レディは懐中時計を握った後、円卓の祝福から先、崖の方へと歩いていく。無頼漢は食後の運動にはもってこいだとおどけてから、大斧をぐいと持ち上げる。追跡者はかちゃりと左腕の武装を鳴らし、鋭く前を見据えた。

 此度の探索は、他者のため。僕は太陽の蛾に協力して貰う旨を伝えてから、三人の後に続いた。

 

 霊鷹が待ち構えていたかのように、僕たちの腕を掴み、空へ運ぶ。

 リムベルドに着くまでの間、僕はレディが見つけた人物について考えていた。夜から逃れられそうな人物ならば、相応に力を持っており、意志も尋常ではなく強いだろう。どんな気高き人と会えるのか、僕は高揚を隠せなかった。

 

 

――――――――――

 

 廃墟にて、夜に蝕まれた者が待つ。

 

 必ずや報いをと。作り物の瞳は、向けるべき相手をも忘れた殺意を、凝縮させている。

 

 




円卓のマップ
『協力者たちのテント』

主に、生きている壺たちが過ごしているテント。召使人形が手伝ったことで、布地が新調されている。
少量のマークと引き換えに、円卓のみで食べられる料理や各々が好きな品と交換できる。
加えて夜の王討伐後、小壺商人に弟子入りした生き壺が、景色の原石(大)を無償で三つ譲渡する。

―――――

協力者
坩堝の騎士

坩堝の斧鎧に全身を包んだ、古き時代の騎士
主、仲間が亡くとも、変わらぬ闘志がある

執行者・守護者のどちらかと小壺旅人が出撃している際
追加で召喚できる
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