ある日ある時ある高校。私は友達と会話中。のんきに会話していた私は、突如として頭の中にポップアップしたある記憶に思わず顔をしかめる。
「どうかしたの?」
対面していた友人が心配そうにこちらを覗く。
「……いや、用事あったの忘れてた。またにゃ…またね」
「そっか。猫瀬さん、またね〜!」
思ってることを顔には出さないよう気をつける。笑顔でその子と別れ、電車に乗る。会話中していた時の笑顔を貼り付けたまま、最寄駅で降り南口。てくてく歩いて五分の好立地の私のマンションに入る。
鍵を開けて自分の部屋に向かう。扉を閉めて一言。
「ここってさぁ……」
『コナンの世界じゃんかぁ!!!!!!!!』
そう。前世でオタクだった私は、コナンの世界に転生していたのだった。それを思い出したのがついさっき。きっかけとかそういうのは何にもなく、もとからそうだったみたいに私の頭の中に入り込んでいたのだった。友人がいる前で叫ばなかった私偉すぎる。多分だけどこの働きは神様も見てたに違いない。イマジナリー猫神様が猫缶を進呈してくださった。アリガタッキシアワセー。
「現状を確認すると、私は東都の高校生。てんせいしゃ?で、あの能力が使えること以外は一般人と同じだにゃ」
戸棚から自分で買った猫缶を出して、尻尾で戸棚の扉を閉めながらつぶやく。なお語尾は転生特典でくっ付いてきた。え?特典の内容?おいおい話すから今は待ってほしい。
さて、記憶が戻るより前に特典としてついてきた尻尾と耳と語尾。この高校生でも着けてるやつはギリギリ痛い呪物達だが、幸いにも猫缶だったりキャットフードを食べることで消すことができる。私は目の前の猫缶を開け、箸でそのまま食べる。
「トモちゃんともうちょっとおしゃべりしたかったけど、この見た目でいるわけにはいかないしなぁ…チュールが入った袋もどこかに落としちゃったし全く……」
と、家のテレビをつけてみると、東都のどこかで発生した殺人事件が報道されている。ちなみに今日は12件あるらしい。世紀末か?
そりゃまああんなに原作が続いてるんだから、事件もいっぱいあるよね。と考えたところでふと思い立った。
「原作、変えれないかにゃあ…」
記憶が戻り真っ先にやってみたいのはそれだろう。でも救済なんてたいそうな言葉使えません。猫なので。にゃ〜ん。でも人が死ぬってのに何もしないのもきまりが悪い。ただ、正直原作の時系列に私が載ってるのかさえ分からない以上手の出しようも……。ん?
「なんか外がうるさい……」
ちょっとマンションの外に出てみると、お隣さんが家財道具を持って慌ててる。どうしたん話きこか?
「猫瀬ちゃん!高層階に爆弾だって!大事なものだけ持って早く下に降りるよ!」
……あ、そういえば今日って11月7日かぁ。よくよく思い出せば、見たことある形してたんだよねぇこのマンション。これも特典のせいかなぁ……あ、とりあえず。
「教えてくれてありがとう隣のお姉さん!ちょっと財布だけ持っていくから先に降りてて!」
お姉さんとのお話を終え、私は玄関に掛けてあった黄色いヘルメットを被る。玄関の鏡を見るとそこには、どこかで見たことのある二足歩行の猫が立っていた。
「今日も一日安全に!指さし確認ヨシッ!」
…タイミングもいいし、萩原さんわからせてから考えるか〜。
side萩原
マンションに仕掛けられた爆弾のタイマーが止まり、俺はほっと一息をついた。だがタイマーが再び動き出し、周りに急いで退避を促す、と、次の瞬間目を疑うような事が起きた。
「ハギワラ!ヨシッ!」
「え?」
爆弾の上に載る、やたらずんぐりむっくりな二足歩行の猫。黄色い、安全と書かれたヘルメットを被る猫は、俺を指差し何かを伝えたそうな目でこちらを見る。
「えぇ…」
「防護服キナイヨクナイ!タバコ危険!爆弾安全ジャナイ!」
「お、おう」
「防護服ヨシッ!距離ヨシッ!タバコヨシッ!ソシテ!爆弾ヨシッ!」
そう、猫が喋った。耳を疑った。
その時には、視界が急に変わっていた。気づけば俺は防護服を着て爆弾から離れた場所にいた。慌てて伏せるも爆弾はいつまで経っても爆発せず
恐る恐る爆弾を覗けば、黄色いヘルメットをかぶった猫などおらず。そこにあったのは部品単位で丁寧に分解された爆弾と、キンエン!と書かれたタバコの空箱だけだった。
……とりあえず、病院で精密検査を受けよう。自分の見た光景が信じられなかったため、萩原は事件の処理後自らの希望で米花中央病院に予約を入れたのだった。
「う、うまくいって良かったニャ…」
ヘルメットを被った私は、萩原さんが生きてることを指差し確認した。ヨシッ!
現場猫になる能力、それが神様からの転生特典だった。その時はコナンくんの世界に転生することが分かっていたから、危険に遭わないような能力が欲しいって言ってた。そしたら神様がこの能力をくれたってわけ。なんで今まで忘れたんだろうね()
この姿は数々の失敗を具現化したような存在で、この姿で指を指すと危険が消えるという能力があるみたい。解体していない爆弾に指をさせば、爆弾は部品単位で粉々に分解する。防護服を着ていない萩原に指をさせば、防護服を着たモッコモコの萩原になる。
…ついでにタバコを吸う萩原に指をさしといたので、しばらくの間は手に持ったタバコがしけって禁煙することになるだろう。我が家を危機にさらした対価にゃ。さて……
「これ一体どうしようかにゃ…」
玄関の前の鏡を見ると、そこには猫耳と尻尾が生えた女子高生が立っていた。こうなってしまうと、2日は元に戻らない。女子高生という短い期間のうちの2日を猫耳と尻尾が生えた状態でいるなんてなかなかなハードモードだ。
「他人の物理的な死を回避する代わりに、自分に社会的な死が訪れるだなんて……これ本当にバーターかにゃ?」
とりあえず明日以降は、頭に包帯を巻いて耳を隠すしかない。思わず死んだ目になる私の後ろで、尻尾だけがご機嫌そうに揺れていた。
猫瀬なつみ
オリ主、当時高校2年生の少女。危険物や危険なものに指を指すことで危険を回避できる能力を持っている(指差し確認ってそういうことじゃねえだろ)。かわりに猫耳と尻尾は2日は消えない。かわいそう
萩原
買うタバコ買うタバコ全部が湿気ていて、泣く泣く禁煙している人。包装も問題ないのに、何で全部湿気るんだ