俺と2人のカミさまと   作:あすたわし

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8話/このタイプの敵に第2形態あるんですか?

 安全のため少し距離を取った状態でケガレの塊を見つめていると、違和感に気付く。

 

「あれ…なんかこれ、でかくなってね…?」

 

 さっきまで野球ボールほどのサイズだったケガレの塊が、いつの間にか二回りほど大きくなっている。しかもまだ膨張し続けている。これこのままめちゃくちゃでかくなったりしないよな…?

 

 少し経つと、ケガレの塊は膨張を止めた。俺が心配していたサイズにこそならなかったものの、おそらく直径は1mほどあるだろう。何が起きるか分からないし、警戒せねば。

 

『コウくん⁉︎』

 

 集中している所に不意に大きな声が聞こえ体がビクッと跳ねる。声がした方を見ると、ミオが近づいてくるのが見える。

 

「ああ、ミオ。連絡に気付いてくれたのか?」

『連絡?もしかして、イナリフォンに連絡…あれ?ない…ない…あ‼︎今朝机の上に置いたままだ!コウ君、ごめんね〜』

 

 まさか本当に家に忘れてたとは。意外とPONなところもあるんだな。

 

「あれ?じゃあなんでここに来たんだ?」

『目が覚めて2人がいなかったから探してたら、急に大江山の方から強いケガレの気配を感じたの。だから向かってみたら、コウ君がいたってことだよ。…ってそんなことより、あれは一体なんなの…?』

 

 ミオはケガレの塊に向かって指を指した。

 

「詳しくは俺にもよく分からないが、ケガレに取り憑かれていたオニを殴ったら出てきたものだ」

『えーっと…状況がいまいち分からないんだけど、とりあえず、今オニはどうなってるの?』

「殴ったら正気に戻ったぞ。あそこの家の中にいる」

 

 俺が師匠の家の方に指を指すと、そこからちょうど師匠が出てきて、こちらに向かってくるのが見えた。

 

 師匠はこちらまで来ると歩みを止める。どうやらさっきまでいなかったミオとケガレの塊に困惑しているようだ。

 

『おい、人間。あの黒い球はなんだ?』

「俺にもよく分からないが、お前から出てきた物だぞ。何か心当たりはないのか?」

 

 師匠は少し考えた後、再び口を開く。

 

『あれの発生源については知らないが、あれが余の中にあったのは理由なら分かるぞ』

「本当か?俺たちに話してくれないか?」

『ああ。そこも含めてカミたちと話し合うつもりなのだが…まずはあれをどうにかすべきなのではないか?』

 

 そういって師匠が指を指した方を見ると、ケガレの塊がうにょうにょと変形しているのが見えた。

 

 ケガレの塊は人型の形に変形し、最終的に師匠の姿になった。真っ黒な師匠の姿をしたケガレは、師匠の影のようにも見える。

 

『なんだ?余のマネとは、なかなかいい度胸じゃないか』

 

 ケガレは背中から2本の刀を取り出すと、こちらを襲ってくる。俺たちはそれに合わせて少し距離を取り、戦闘体制をとる。

 

『おい、あいつをどうにかする方法はあるのか?』

『あるにはあるけど、あの状態じゃ厳しいかも…せめて、もっと弱らせないと』

『なんだ、簡単なことじゃないか。余の責任は余がカタをつけるよ!』

 

 師匠は刀を構えると、ケガレに向かって突撃する。師匠とケガレの間で、目で追えないような速さで壮絶な攻防が繰り広げられている。

 

『こいつ…意外としぶといな…』

 

 動きに関しては確実に師匠の方が上である。なのになぜ互角の勝負なのか。よく見ると、師匠は刀を両手で持っているようだ。つまり、師匠は1本しか刀を使っていないということだ。さっき戦った時は確実に2本あったはずなのに、なぜだろうか。

 

 時間が経つにつれ、むしろ師匠が押され始めている気がする。慣れない戦い方で戦っている上に、さっきまでケガレに憑かれていたことや疲労など、師匠に不利な要素はいくらでもある。一方のケガレは疲れている様子もなさそうである。これ、かなりまずいんじゃないか。

 

 せめて俺に少しでもヘイトを向けて師匠への負担を減らそうかと思っていたその時、突然ケガレと師匠の間に巨大な氷の塊が飛んでくる。

 

『なんだっ!』

 

 氷が飛んできた場所を見ると、そこにはフブキがいた。

 

『えーっと…白上が聞いていたのとはだいぶ違うんですけど…とりあえず、あの黒いのを倒すってことで良いですか?』

「『フブキ!』」

 

『ミオ、もう体調は大丈夫なんですか?』

『うん。で、あの黒いやつなんだけど、一旦封印してミヤコに持って帰った方がいいかも。もう少し弱らせたいんだけど、頼める?』

『分かりました!白上に任せんしゃい!』

 

 フブキはクダギツネを刀に変化させ、いつのまにか再開していた師匠とケガレの戦いに近づく。

 

『おい!入ってくるな!これは余が倒すんだ!』

『その割には押されてないですか?』

『うるさい!刀が2本使えればこんなの…』

『2本使えれば、勝てるんですね?』

 

 そういうとフブキは師匠たちから少しだけ離れる。

 

『1日で2回も使うとは思いませんでしたよ…悪戯狐(トリッキーヴィクセン)!』

 

 すると風真の時と同じようにフブキの分身が出てきて、ケガレに飛びかかる。

 

『受け取ってください、よっと!』

 

 ケガレがフブキの分身を倒す為一時的に師匠から意識が逸れたその時、フブキが手に持っている刀を師匠に師匠に向かって投げた。

 

 師匠は飛んできた刀を左手でしっかりと受け止める。

 

『…感謝するぞ!』

 

 師匠はちょうどフブキの分身を倒し終わったケガレに向かって突撃する。

 

『余を操っていろはを傷つけようとした借り、きっちり返させてもらうよ!』

 

 師匠は先程とは比べ物にならないスピードで刀を振るい、ケガレを細切れにした。

 

 ケガレの大部分は塵となって消えたが、核となる部分からまた少しづつ再生しようとしている。

 

『今です!ミオ、いけますか?』

『大丈夫!——ニギミタマオオヒルメノムチノカミの息吹威光を借りて、アラミタマを治め封じる櫓と成せ』

 

 すると、ケガレの核の周りに結界のようなものが現れ、ケガレを封印した。

 

『よ、よかった〜。ちゃんと成功した〜』

「すげぇな…こんなこともできるのか」

『すごいです!流石ミオ!』

『えへへ、それほどでも…じゃあ、ウチはコレをミヤコに持って行ってくるね』

 

 そう言ってミオはこの場所をあとにした。

 

「フブキ、ミヤコってどこなんだ?」

 

『ここからずーっと離れたたところにある場所です。ミヤコには大神家や白上たちイナリ一門の偉いカミさまがいるので、その方々にケガレの浄化を頼もうということです』

 

「そんな離れた場所までミオ一人で大丈夫なのか?」

『白上神社の裏にミヤコまで直通のポータルがあるんですよ。そこを通ればすぐに着きます』

「へぇ〜。知らなかったな」

 

 ていうかフブキやミオって一族みたいなのあるんだな。一族のそれぞれのカミに神社が建てられているってことは、相当大きいところなんじやないのだろうか。

 

『…さて、では、一旦落ち着いたみたいですし、風真さんの事情について聞かせてもらいますよ』

「ああ。でも、その前に一旦風真を呼ぼう」

『ええっ!?余、完全無視!?』

 

 そういえば師匠もいたんだった。どんどん事情がややこしくなっていく…

 

『…じゃあ白上は一旦オニと話して来ますので、コウ君は風真さんを呼んできて下さい』

「ああ、分かった」

 

 師匠の家の戸の前まで進み、戸に手をかける。…そういえばさっき不穏な声が聞こえてたけど開けて大丈夫だよな…

 

 ノックをするも、特に反応はない。仕方ない、入るか…

 

 戸を開けると、そこには刀を構えた風真が立っていた。…もちろんさっきと変わらない姿で。

 

『あれっ、コウ殿?』

「風真?何やってんだ?」

『これは師匠に警戒しておけと言われたからでござる。で、向こうはどうなったんでござるか?』

「ああ、向こうはな——」

 

(説明中)

 

「——という感じだ」

『やっぱり師匠はかっこいいでござるな!』

「そうだな。ところで、状況がややこしすぎるから一旦情報を共有して整理したいのだが、風真や師匠のことをフブキに話してもいいだろうか」

『…いいでござるよ』

 

 あれ?意外と軽い。まさか二つ返事で了承してくれるとは。

 

「本当にいいのか?」

『コウ殿は師匠を元に戻してくれたし、風真のことも助けようとしてくれたでござる。フブキ殿も話を聞いた限り悪い人じゃなさそうだから大丈夫でござる』

 

「そうなのか…じゃあ、フブキたちがいるところまで行こう」

『あ、風真、師匠が戻ってくるまで絶対に家を出るなと言われているんでござる。師匠たちを連れてきてもらってもいいでござるか?』

「ああ。分かった」

 

 またフブキと師匠がいる場所へと向かう。なんかたらい回し感あるな…

 

「フブキ。そっちはどうだ」

『ざっくりとしたことは分かりました。詳しい話は風真さんからも…あれ、風真さんは?』

「家から出られないからオニと一緒に家に来て欲しいらしいぞ」

『えぇ…?まあ、いいですが…』

 

 フブキは師匠の方を向いて話しかける。

 

『あやめちゃんも、それでいいですよね?』

『うん、それでいいよ』

 

 何があった?なんかすごい仲良くなってね?

 

 疑問を一旦抑え、俺たちは師匠の家に入り、4人で居間に座る。

 

「…説明の前に、一旦オニの名前だけ教えてくれないか?あ、俺は都宮光だ」

『余は百鬼あやめだ』

「…じゃあ、風真さん、説明をお願いします」

『分かったでござる。——』

 

(説明中)

 

『——。これで風真から見たことは全部でござる』

『なるほど…そういうことだったんですね』

『ああ、そういうことだったのか…』

 

 フブキと百鬼は謎が解けたように、納得した表情をしている。

 

「フブキと百鬼だけ納得してるけど、俺と風真にも説明してくれないか。そっちだけ持ってる情報もあるんだろ」

 

『おっと、そうでしたね。あやめちゃんの方が詳しく話せると思うので、あやめにお願いします。ついでに、昔のことも言っておいた方がいいんじゃないですか?』

『うん、これはいろはにも言ってなかったし最初から説明した方がいいかな。これは、ずっと昔の話になるんだけど——』

 

 

 

 




たまにはいつも圧縮している定型分を全力で伸ばして書いてみます。読み飛ばし可です。


今回の話をお読み頂き、ありがとうございました。もしよろしければ、お気に入り小説登録、コメント、評価をお願いします。

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…次回からはまた圧縮しますね。最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
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