目を開けると、見慣れない天井が見える。
…そういえば昨日からここで住む事になったんだった。
時計を見る。今は8時ごろのようだ。
二度寝するか迷う時間だな。
耳をすませてみる。生活音が聞こえるのでフブキはもう起きているようだ。俺も何か手伝いに行くか。
諸々を済ませダイニングに行くと、テーブルの上にはすでに美味しそうな料理が並べられていた。少し遅かったようだ。
『コウ君。おはこんでーす』
「ああ。フブキ、おはよう」
『今ちょうど朝ごはんができて、コウ君を起こしにいく所だったんですよ』
「それは嬉しいけど…俺もこれからここでお世話になるんだ。手伝えることは手伝わせてくれ」
『そうですか?じゃあ、後片付けはコウ君に任せちゃいましょうか』
「ああ、それでいい」
『それじゃあ、いただきまーす』
「いただきます」
俺とフブキは朝食を食べ、俺は片付けを終わらせた。
「そういえば、いくつか質問していいか?」
『いいですよ。なんですか?』
「カミって普段何してるの?」
『普段は大体ミオと交代でふもとの町の見回りですね。あとはたまに山に出てくる怪異を倒したりします』
「怪異?」
『怪異の話をする前に、まずはアヤカシの話をしましょう。この世界にはアヤカシと呼ばれる精霊がたくさん存在しています。それらが『ケガレ』と呼ばれる悪い気を吸い込むと怪異になり、人や自然を見境なく破壊し始めます。それを防ぐために、カミである白上たちが見回りをしているのです』
「このあたりにいる狐とかタケノコもアヤカシってこと?」
『そうですね。ちなみにあの狐の精霊は『クダギツネ』、タケノコの精霊は『オルヤンケ』といいます』
ああ、そういえば昨日言ってたな。
『そういえば、妖力の無い人には精霊は見えないはずなんだけど、なんで昨日白上が力を渡す前にオルヤンケが見えてたんですか?』
「耳とか尻尾は見えてなかったから多分もともと存在してたタケノコだけ見えたんじゃないかな」
『へー。興味深いですね。…他に質問は?』
「交代で見回りするって言ってたけど昨日はミオがやってたよな?今日はフブキが行かなくて大丈夫なのか?」
『1週間ごとに交代なんですよ。ちなみに今日はコウ君に色々教え込む予定です』
「色々って…ああ。フブキがいない時に家事をできるようにってことか」
なんか時間かかりそうだしこれまで見回りがある日は大変だったんだろうな。
『…?何言ってるんですか。コウ君も明日から一緒に行くんですよ?』
「……は?」
『今日はまず妖力の使い方と戦闘の基礎を教えます。さあ、外に行きますよ』
「いやちょっと待て。なんで一般人の俺がカミの仕事をしなくちゃならないんだ」
『最近強力な怪異が増えてきていて白上たちだけでは大変だったんです。なのでコウ君にも手伝って貰おうかと』
「いや一般人が手伝いにいってもむしろ足手纏いになるだけだろ」
『コウ君には白上の力が入っているので一般人じゃないですよ。それに今のコウ君にはとんでもない妖力があるはずです。白上たちのようなカミには及ばないとはいえ、特訓すれば十分戦力になりますよ』
そうだった。俺はフブキにから力を貰っている。カミが倒れるほどの力を注がれたら一般人の妖力を超えるのは必然だろう。昨日も倒れた理由を適当に答えていたが、恐らく最初から戦ってもらうつもりで俺に力を与えたのだろう。
加えて俺はその後追加の強化を貰っている。まあかなり強くなっているだろうと予測できるな。
「…分かった。手伝えることは手伝うと言ってしまったしな。できる限りのことはしよう」
『その心意気です!頑張りましょう!』
…別に乗り気ではないんだけどな。
渋々外に出ると、早速フブキが話し始める。
『えー、それでは今からコウ君の特訓を始めます』
「お願いします」
『まず妖力を使うにあたって一番大切なこと。それはイメージです。
まず空気中にある妖気の存在をイメージします。そして自分の体内にある妖力を放出して妖気の流れをコントロールする感じです。とりあえず何かやってみてください』
空気中にある妖気…恐らく空気中の気体原子のような感じだろう…これを自分の妖力でコントロール…
「こんな感じか…?きゅっとして…ドカーン!」
俺は空中に向かって妖気を集め、一気に放出させる。すると、
ドゴーーーン!!!
空中で大きめの花火ほどのサイズの爆発が起こった。マジか。こんなに高威力の爆発ができるのか。ある程度手加減して打ったつもりだったんだけどな。
『おおー。初めてでこれは凄いですね!やっぱり才能あるんじゃないですか?』
「嬉しいのか嬉しくないのかよく分からんな…」
『それじゃあこの調子でじゃんじゃん行きますよ!』
それから俺は妖力を用いた身体能力の強化や、通常の体術なども学んだ。そしてひとつのことに気付いた。
「俺は思ったより不器用なんだな…」
そう。俺はとにかく強い力を放つことには向いているが、方向や加減の繊細なコントロールがめちゃくちゃ下手なのである。
『白上はそれもいいと思いますよ。細かい遠距離攻撃が難しいなら間合いを詰め続ければいいですし、力を温存して戦えないなら早期決着に持ち込んでしまえばいいのです。できることの中で100%を目指して下さい』
「…それもそうだな。ありがとう、フブキ」
『ふふ。どういたしまして。さて、今日の特訓はこの辺にしてお昼ごはんを食べに行きましょうか。』
そういえばずっと特訓に夢中になってたが今は何時だ。もうとっくにお昼は過ぎているだろうな。
「食べに行くって、どこに行くんだ」
『ふもとの町に美味しい定食屋さんがあるんですよ。今日はそこにいきましょう』
「いやいや。わざわざこの山を降りてたら夕方になるぞ」
『そんな時のための身体強化ですよ。じゃあ、ついてきてくださ〜い』
フブキはそういうと山をピョンピョンと降り始めた。便利だな。この能力。俺もフブキに続いて山を駆け降りる。すると体感10分もせずに山のふもとに到着した。凄いな。中腹から山頂まで登るのに1時間かかったはずなんだけとな。
そして俺たちはそのまま定食屋に向かう。俺が一般人でないとバレるわけにはいかないので町の入口からは歩きで。フブキによるとここまで速く動ける人間はだいぶ稀らしい。これは俺を戦闘要員にしようとしてた説立証と言っても過言じゃないな。
店内はピークを過ぎた時間帯だというのもあってガラガラだった。
『こんにちは〜』
『フブ姉ぇ、いらっしゃ〜い。あれ?そちらの方は?』
『この子はコウ君です』
『はめまして。都宮光です』
『コウ君は…え〜と…両親を早くに亡くして町を転々としていたそうなので白上の家で保護することにしました!』
え????急に俺の両親殺されたんだが???
『それは大変でしたね。ここは平和でみんな優しい人ばかりですから、安心して暮らしてください』
「は、はぁ…」
『じゃあ白上はきつねうどんをお願いします。コウ君も同じのでいいですよね?』
「え?あ、あぁ…」
『きつねうどん2つですね!すぐ作りますんで、好きな所に座っててください!』
『は〜い。行きましょう。コウ君』
俺は呆気に囚われたままフブキについていき、席に座る。
『いや〜ここのきつねうどんは絶品なんですよ!コウ君も常連さんになっちゃいますよ〜』
「いやそんなことよりさっきのあれは…?」
『忘れてるかもしれないですけど白上は一応カミなんですよ。本来相当な理由がないと一緒に住むなんてできないんです。異世界から来たなんて言うわけにはいかないですし』
そういえばそうだった。町に来てからは普通に獣人も見かけたからすっかり特別感がなくなってた。
「もしかして俺って以外と肩身狭い?」
『カミと一緒に住んでいることを除けば一般人なのでそこまで気にしなくていいですよ』
「それは除いてしまっていい条件なのだろうか…」
『まあカミといっても崇め奉られるような存在ではないですからね』
そういえばさっきの店員さんも『フブ姉ぇ』って呼んでたな。以外とフランクな感じなのか。
『はい!きつねうどん2つお待ちどおさま!』
早いな…って思ったけどそういえば今はほぼ貸し切り状態だったな。
『「いただきます」』
『ん〜おいしい〜♪やっぱりここのきつねうどんは最高ですね〜』
「確かにうまいな。うどんにコシがあってもちもちしている。お揚げもちょうどいい濃さの出汁がたっぷり染み込んでいる。これはフブキが虜になるのもわかるな」
『そうですよね♪』
そうして俺たちはペロリとうどんを食べ切った。
『ごちそうさまー!いやー、美味しかった。やっぱここのきつねうどんは世界一です!』
『ここはうどん屋ではないんですよ。たまには別の定食も食べてくださいよ』
『それは…また今度来た時に考えます〜。ありがとうございました!』
店を出た後は、そのまま町で俺の服など生活に必要なものを色々と買った。特に服は俺が着れるようなものが転移してきた時に着てたやつと昔フブキが買った福袋に入っていたやつしかなかったからいくつか買っておいた。まあ買ったといってもフブキが選んでフブキのお金で買ったやつなんだけど。
『買うべきものはこれで全部ですかね。じゃあ帰りましょうか』
「え…これ持って山登るの?」
俺もフブキも両手にまあまあの量の荷物を持っている。しかも上りだと来た時と同じようにはいかないだろう。
『これくらいは根性で頑張ってください。ほら、行きますよ』
そういうとフブキは来た時と同じように軽々と山を登りだした。
「……頑張るかぁ」
渋々登りだしたものの、行きで感覚を掴んだのか思ったよりも楽で15分ほどで神社に着いた。やっぱ便利な能力だなぁ。
『あ、おかえりなさーい。思ったよりも早かったですね。いやー、それにしても明日が楽しみですね〜』
「え?フブキってそんなに戦いが好きなのか?」
『いや?明日もミオの担当ですよ?白上が楽しみなのはコウ君が明日から見回りに行くことですよ』
「え?フブキが担当の時についていくんじゃないのか?」
『1ヶ月ぐらいは慣れるために毎日行ってもらうことにしました。まあ新人研修みたいなものですよ』
「えぇ…行きたくねぇ…」
『そんなこと言わずに。もう決まったことなので受け入れてください』
「そっかぁ…」
そこからは昨日と同じように夕食や風呂を済ませ、布団に入る。
はぁ〜(クソデカため息)明日から見回りに同行することになってしまった。これ絶対明日怪異出るやつじゃん。まあもうどうしょうもないし腹くくるか。
そして俺は疲れていたこともあり、そのまま眠りについた。
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