目を覚まして布団を畳み、顔を洗って台所に行く。今日はフブキの方が先に起きていたようだ。
「おはよう、フブキ」
『おはようございます、コウ君。もう少しで朝ご飯できるのでちょつと待ってて下さいね』
ここに来てからまだ数日しか経っていないはずなのに慣れてきたような気がするのは何故なのだろうか。そんな事を考えていると、朝食が完成した。いつも通り朝食を食べ、食器を片付ける。
「明日からはフブキと行くようになるんだっけ」
『そうですね。明日からは本格的にやってもらいますよ』
「…まさか、昨日のやつで一周させるとか言わないよな…」
『流石に白上も行きますよ〜。…でもそれもいいな…』
「よくねーよ!」
フブキは俺を家から動かせるラジコンとでも思っているのだろうか。
と、その時、コンコンと家の戸が叩かれる。もう来たのか。
『ミオー?空いてるよー?』
俺とフブキが玄関に行き戸を開けると、そこにはミオではなく数日前に行った料理店の店主が立っていた。しかもかなり息切れしている。
『ノゾミちゃん⁉︎なんでここにいるの⁉︎』
『ハァ、ハァ…フブ姉ぇ、村外からの人が…オニの棲家の方に!』
『…また腕試しの人ですか。発見したのはいつごろ——』
『違うんです!その人、前に村で見たことがあって…しかも、その時はすごくやつれていたし…』
それを聞いたフブキの表情が途端に険しくなる。
『その人はどんな様子でしたか?』
『えっと…金髪の女性の方で、歳は…ちょうどコウさんと同じくらいですかね。二回ともこちらに気付くなりすぐに逃げて行ったんですが、さっきはちょうどオニの棲家の方に向かっていたので、それで…』
『それはまずいですね…一刻も早く探しに行きましょう!』
「ちょっと待て。状況が全く理解できていないのだが」
『移動しながら話します。急いで準備しましょう』
俺たちはイナリフォンでミオに事情を話した後、白上神社を飛び出しオニの棲家とやらに向かう。
「オニの棲家ってどこなんだ?そもそも今はそんなにまずい状況なのか?」
『かなりヤバいですね。村の南側の山、大江山には凶暴なオニが住んでいるんです。腕に自信がある人がオニを倒そうとしてやってくるのはたまにありますし白上達も止めないのですが、何も知らない人がオニに襲われるのを見て見ぬふりする訳にはいかないですからね』
「そのオニはそんなに強いのか?」
『めちゃくちゃ強いですね。もう数十年はあのオニに会っていないので今はどうなっているか分からないですが、正直あんまり戦いたくんないですよね…』
そんなに強いのか…俺はお荷物になる予感しかしない…
「そ、そうか……あ、あの建物か?」
『はい。ここで間違いないはすです』
山の中にはポツンひとつだけ家が建っていた。村の建物に比べるとかなり古く、材料も違うようだ。
家の周辺を観察していると、1人の人を発見した。さっき言っていた人の特徴によく似ている。
「フブキ、あの人ってさっき言っていた人じゃないか?」
『そうかも知れません。行きましょう!』
その人の方へ近づくと、向こうもこちらに気付いた。
『!貴様ら…何者でござるか…』
その人はこちらに気付くや否や、明らかに敵意を持ってこちらを見てくる。帯刀しているし、既に色々とおかしい。やはり腕試しをしにきただけなのか。それともさっき言っていたのはこの人ではないのか。
『私は白上フブキ、こちらは都宮コウです。あなたこそ何でこんな所にいるのですか。ここはオニの棲家なんですよ』
『…拙者は風真いろはでござる。やはり貴様らもオニを倒しに来たんでござるな…』
そう言うと、風真と名乗る人は刀を抜いて構えてきた。
『ちょっ…、誤解です!白上たちは——』
『問答無用!貴様らには…ここで死んでもらうでござる!』
『…戦うしかないようですね。コウ君は安全な所でミオを呼んできて下さい』
そう言うとフブキはどこからともなく現れたクダギツネを刀にして臨戦体制をとる。
「分かった。俺のことは気にせず存分に暴れてくれ」
俺は数十mほど離れた場所まで離れイナリフォンでミオを呼ぼうとするが、ミオは電話に出ない。流石にここを離れるわけにもいかないので、メッセージだけ入れておく。
フブキと風真の方を見ると、まさに目にも止まらぬ速さで戦いを繰り広げている。戦況はフブキが若干押されているように見える。何故だろうと思いよく見ると、どうやらフブキは妖力による飛び道具や刀の強化を使用していないようだ。フブキが妖力を使えば拘束など簡単にできるはずなのに。
時間が経つにつれ、フブキは少しずつ傷が増えていく。逆に風真はほとんど傷もなく、あまり息もあがっていないようだ。何かしらの援護をしようと近づこうとすると、急にフブキが風間から少し距離をとる。
すると、フブキが急に何人にも分身し、風真の周りをぐるっと取り囲む。恐らく神技を使ったのだろう。
フブキたちは別々の動きで一斉に飛び掛かる。風真は回転しながらの斬撃で分身のほとんどを消滅させるが、1人だけ—恐らく本物のフブキばうまく躱したのだろう—懐に入るのを許してしまう。フブキは風真の懐に入り、左手で風真の刀の刃の根元辺りを掴む。
恐らく風真に瀕死、最悪即死になる一撃を与えるのだろうと感じ、思わず目を背けてしまう。だが、俺の想像とは裏腹に、フブキの方からはフブキの『ふんっ!!』という大きな声と爆発音のような音が聞こえてきた。
恐る恐るフブキたちの方を見ると、フブキが風真の刀を根元からへし折っていた。俺は困惑しながらフブキの元まで駆け寄る。
「フブキ!大丈夫か!」
『大丈夫です。この程度の傷なら今日中には治ります』
「そうなのか、ならよかった。…ところでさっきのは?」
『ああ、あれですか。簡単なことです。まず、刀は横からの力に弱いです。そして、あれは妖力を纏った刀、妖刀です。つまり、白上が全力で左手に妖力を込めれば、左手だけでも刀が折れちゃうってわけです』
…え???
「…ちょっと何言ってるか分かんないわ…」
『なんで分かんないんですか。あとそんな引かないでください。…って、そんな事はどうでもいいんです。問題は風真さん。あなたです』
改めて風真の方を向くが、風真は膝を地面について呆然としている。恐らく刀が折られたショックだろう。
『…まず、あなたを無力化するためとはいえ、刀を折ってしまい。申し訳ありませんでした。あそこまで強い妖力を持った妖刀をなぜ持っていたのかは聞きませんが、その様子だとかなり思い入れのある物だったのでしょう。そこに関しては、白上はお詫びすることしかできません』
そう言い、フブキぱ深く頭を下げる。風真は何も言わずフブキを見つめている。
『さて…次はあなたの番です。恐らく風真さんは未成人ですよね。あなたにとっては残念かもしれませんが、いくつか聞いた後に親御さんの元に送らせて頂きます』
『親御さん』という言葉を聞いた瞬間、風真の体がビクッと跳ね、明らかに様子が変わる。呼吸が急に荒くなり、目には涙が浮かび、小さく独り言を呟いている。まるで何かに怯えているようだ。
『…嫌だ…あんな所…戻るくらいなら…』
「おい、明らかに様子がおかしいぞ。大丈夫かこれ」
『とりあえず何か飲み物持ってきます。コウ君はどうにか風真さんを落ち着かせて下さい』
そう言ってフブキが振り返ろうとした瞬間。
『あああぁぁ!!!』
風真が急に叫び出し、フブキから刀を奪い取る。咄嗟の出来事に、俺もフブキも反応が遅れる。
『しまっ——』
風真はそのまま刀を鞘から出し、一切の躊躇いもなく自分の腹部へと振り下ろした。
お気に入り登録感想評価頼みます(定型文)そういえばホロライブオフィシャルショップ梅田に行ってきました。大きさは想像より小さめでしたが(ポケセンみたいなのだと思ってた)グッズの量はかなりありました。やはり田舎のアニメイトとは格が違いますね。ちなみに購入者特典のうちわ3枚とポストカード1枚でちょうどフブキ以外の4人が当たりました。畜生メェェ!!