さて、話は変わりますが、以前言ったように急に話が重くなります。今回から『残酷な描写』タグをつけていますし、先にネタバレして申し訳ないですが今回流血表現があります。必ずそれを踏まえた上で読んでください。
刀が風真の腹部に刺さろうとしたその瞬間、風真の元に何かが飛んできた。
『ぐっ……!!』
「『ミオ‼︎』」
飛んできたのはミオだった。左手は刀を握りしめているせいで血がでており、右手に関しては刀を真正面から受けたようで手のひらに刀が貫通してしまっている。
俺とフブキはすぐにミオの元へ向かう。風真の方を見ると、どうやら気絶しているようだ。
『ミオ!大丈夫ですか⁉︎』
『うん…この子も…大動脈には刺さってない…刀抜いても…大丈夫だと思う…』
フブキが頷き刀に手を触れると、刀はクダギツネの姿に戻る。そしてフブキはミオのことを気にしつつも、風真の止血を始めた。
一方のミオはその場に座りこみ、苦しそうな表情で手を押さえている。
「ミオ!本当に大丈夫なのか?」
『これくらいなら大丈夫…心配しないで』
ミオの言う通り、ミオの手から出てくる血はもうほぼ止まっている。フブキのほうを見ると、風真の出血も止まっているようだ。
『一旦落ち着いたようですし、白上神社に戻りましょうか』
『そうだね…うっ』
ミオが立ちあがろうとしたが、ふらついてしまった。俺はすぐにミオの身体を支える。
「あれだけ血も出てたし、やっぱりきついんだろ。おんぶ…はその手じゃ無理か。じゃあ——」
俺はミオをお姫様抱っこで抱き抱える。思ったよりも軽いな。
『ひゃっ⁈ウ、ウチは大丈夫だから!』
俺がミオを抱き抱えると、さっきまで蒼白だった顔色が一気に赤くなる。
「いやいや、流石に大丈夫じゃないだろ。それに今の所俺は何もしてないからな。ちょっとでもミオの力になっておきたい」
『それでも…これは恥ずかしいよ〜!』
フブキの方を見ると既に風真を背負っていたので、ミオの言うことは無視して俺たちは白上神社に向かった。
白上神社に到着し、ミオとまだ気絶したままの風真を別の部屋にそれぞれ寝かせると、俺とフブキはリビングで一旦状況を整理することにした。
『まず起こった事実としては、オニの家の前にいた風真さんの刀を白上が折り、家族の話をすると急に暴走して自殺しようとした…といったところですね』
「謎だらけだな…もしかして、過去に家族をオニに殺されて、その復讐をしに来た、とかじゃないか?」
『可能性はありますが…もしそうだとしてもあのオニが原因ではないでしょう。あのオニは滅多に山の外に出ませんし、風真さんもこの辺りが出身ではなさそうですからね』
「そうか…う〜ん…」
2人で考え込んでいると、ミオと風真のいる部屋から物音がした。部屋の戸を開くと、風真が部屋の隅に移動していた。風真はこちらを見ると、怯えたような表情になる。
『こ…こっちにくるな!』
近づこうとすると、風真が精一杯の威嚇をしてくる。正直全然怖くないが、警戒されているのは間違いないだろう。
「どうする、フブキ。めちゃくちゃ警戒されてるぞ」
『困りましたね…無闇に刺激してまた暴走されても困りますし、かといってこのままにしておく訳にもいきませんからね…』
どうしたものかと考えていると、あることに気付く。
「…なんか風真の目線、フブキの方にだけ向いてないか?」
『そうですか?』
フブキが横に移動すると、風真の目線もそれに合わせて動く。
『…そうみたいですね。それじゃあ一旦白上は退出しましょうか。まあ近くで待機しているので、何かあったらすぐに呼んでください』
「ああ。分かった」
フブキが部屋を出ると、風真が威嚇体制を解いた。まああの時フブキがそのまま風真を殺す事もできた訳だし、命の危険を感じるのも当然か。
「…なあ、風真。まずは話をしないか」
『風真は何があっても何も話さないでこざる!たとえどんな拷問にも屈しないでござる!』
なかなかまずい状況だな。このままだと情報が出ないどころか絶食して死にかねないぞ。というかいつ舌噛み切って自殺しようとしてもおかしくないな。まずは警戒を解くことが最優先だ。
「じゃあ話したくない情報は話さなくてもいい。俺もできる限り話しやすいことから聞く。まず、なんであんなにフブキを怖がってたんだ?」
数秒の沈黙の後、風真が口を開く。
『………あんな怪力の怪物、同じ空間にいたい訳がないでござる』
…ああ、そういうことか。恐らく風真はフブキが腕の力だけで刀を折ったと思っているのだろう。どういう原理かは分からないが、あの時フブキは恐らく8割以上は妖力の力で折っていたはずだ。
「安心してくれ。フブキが出せる腕の力は恐らくあれの5分の1以下ってところだ」
『……?』
「詳しくは後で説明する。次は…そうだな。年齢はいつだ?」
『年齢は…もう分からないでござる』
これは…もしかして幼少期になんかあったやつではないだろうか。まあ明らかに地雷だしまだ踏み込む訳には行かないか。
「そうか。ちなみに誕生日とかは分かるか?」
『誕生日は…確か6月18日だったはずでござる』
「そうなのか。ちなみに俺は12月22日だ。」
『そうでござるか。………風真もひとつ聞いていいでござるか?』
お、ついに風真が自発的に喋った。警戒が薄れてきた気がするぞ。
「ああ、いいぞ。なんでも聞いてくれ」
『…なんでオニはみんなから嫌われているんでござるか?』
「えっと…それは…」
予想外の質問に言葉が詰まる。確かにオニは怖いものだと勝手に思い込んでいたが、実際に何か悪事を働いたのかは何も聞いていない。
「…すまん。俺はついこの間この辺りに来たから分からない」
『…じゃあなんで…オニを倒しに来たでござるか』
風真の声が少し震えている。
さっきから風真の質問の意図が汲み取れない。風真はオニのことをなんだと思っているんだ?オニを倒しに来たんじゃないのか?
「俺たちはオニを倒しに来たんじゃなくて、風真がオニの所に向かっていると聞いて様子を見に来たんだ。…風真は…オニを怖いと、憎いと思っていないのか?」
『思うわけないでござる!…師匠はあんなに優しくて…かっこいいの——』
そこまでいって風真ははっとして口をつぐんだ。恐らく『師匠』については、本来話したくかったことなのだろう。
「…その師匠という人の話を俺に話してくれないだろうか。もちろん嫌なら話さなくていい。ただもっと知りたいんだ。風真と、風真にとって大切な人のことを」
『………』
風真は顔をしかめて考え込んでいる。師匠…ここもしくは別の場所のオニなのだろうが、風真はその師匠とどんな関係なのだろうか。
長い沈黙が続いた後、風真はついに口を開いた。
『…分かったでござる。お主、確か都宮殿といったでござるよな?』
「ああ。でもコウでいい」
『コウ殿にだけなら、話してもいいでござる。だから…戸の後ろにいる方をどかしてもらってもいいでござるか?』
「え?」
立ち上がって部屋の戸を開けると、そこにはフブキが立っていた。
「ずっとそこにいたのか?」
『えへへ…』
「…まあ、今聞いた通りだ。一旦、別の部屋にいてくれ」
『は〜い』
フブキが別の部屋に移動したのを確認し、戸を閉めて風真の方へ向き直る。
「…話をする前に、一旦こっちに来て座らないか。ずっとそこで立っているのも疲れるだろ」
『そうさせてもらうでござる』
風真と俺が部屋の中央で向かい合って座ると、風真が語り出す。
『師匠というのは、あの山に住んでいるオニのことでござる。風真が幼い頃…10年以上前からずっと一人で風真を育ててくれたでござる。何もできなかった風真に言葉、計算、剣術、他にも数えきれない程のことを教えてくれたでござる。
師匠はよく他の人に戦いを仕掛けられていたでござる。風真は家の中から見守ることしか出来なかったでござるが、師匠は相手が何人でも勝ち続けていたでござる。
でも、師匠はやさしかったから絶対に誰も殺さなかったでござる。どれだけボロボロになっても、たとえ下手したら自分が殺される状況でも、必ず相手を気絶させて山のふもとまで運ぶことようにしていたでござる。風真はそんな強くて優しくてかっこいい師匠が大好きでござる!』
風真の話を聞いた感じ、どうやら他の人々がオニに対して誤解を持っているようだな。他のオニが凶暴なのか、他に理由があるのか。
「そうか。ならさっきあの場所に師匠がいたらまずかったな」
『確かにでござるな。あそこに師匠がいたらきっと——』
そこで急に風真の表情が変わる。
「風真?どうした?」
『…風真が腹を刺した時、地面に血は流れたでござるか?』
「ああ。なんならミオの分もついているはずだ。後で謝りにいかないとな」
『そんな場合じゃないでござる!師匠が帰ってきた時、風真がいなかったら——』
—同時刻、大江山—
『ん?なんで庭に血が?おーい、いろは〜。庭でなんかやったのか〜?おーい、返事しろ〜いろは〜。…いろは?………まさか…この血…いろはの…いや…でも…そんな…いろは…いろは!!!』
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次回は多分設定集更新です。宿題に追われて書けないと思うので。新着は出ないのでよければ8/30に見に来てくださいね。