書くことないので本編どうぞ。
『師匠が帰ってきた時に風真がいなかったら、師匠は一体何をし出すか…もしかしたら、村の方まで出て行くかも…』
「やべぇな…急いで戻るぞ!」
そう言って俺と風真は部屋を飛び出し、フブキに急いで声をかける。
「詳しくは言えないがオニの家まで行ってくる!」
『え⁉︎何言ってるんですか⁉︎じゃあ白上もついて行きます』
「いや、フブキは念の為村の方に行っておいて欲しい」
『流石に危険すぎます。せめて事情を説明してください』
風真の方を見ると、まだフブキを警戒しているようだ。わざわざ風真が俺にだけ言ってくれた情報を話す訳にはいかないし、警戒を解いている時間もない。
「すまん!どうしても言えん!時間がないからここは受け入れてくれ!」
『………もう…分かりました。事情は後で必ず聞きます。ただ、危険だと思ったら必ずすぐ逃げてくださいね』
「分かった。じゃあ、行ってくる」
俺と風真は家を飛び出し、師匠の家まで一直線に向かう。俺がおんぶして運んだ方が速いかと思ったが、意外にも風真は俺と同じくらいのスピードで走っている。
「思ったより速いんだな」
『むしろこっちのセリフでござる。よく風真についてこられるでござるな』
「まあこっちはゴリゴリに身体強化使ってるからな…もしかして風真も使ってたりするのか?」
『…?よく分からないでござるが風真は子供の頃から毎日走っているでござるからな』
素の状態でこれってマジ…?バケモンじゃん…
しばらく走り続けると、師匠の家が見えてきた。家の戸が開けっぱなしになっている。
「どうだ…間に合ったか…?」
さらに近づくと家の中に、角が生えた女の子が膝をついて倒れているのうが見えた。
『師匠!!心配かけてごめんなさいでござる!』
「待て、いろは。何か様子が変だぞ…」
師匠はこちらの声に気付くとゆっくりと立ち上がる。その目には生気が籠っておらず、そして何より俺でも感じられる程の、何か嫌な気配がある。
『師匠……?』
少しの間を空けて、師匠が喋り出す。
『いろは…余、やっと気付いたんだ。今までのやり方じゃ甘かったって。…ちゃんと、奪われる苦しみを教えておかないと』
『な、何言ってるでござるか…師匠…風真は無事でござる、だからまた元の優しい師匠に戻って欲しいでござる』
『今回はよくても次また無事にいられるかは分からない。だから不安の芽は早めに摘み取っておかないと』
そういって師匠は俺に刀を向ける。
「…聞いてたのとちょっと…いやだいぶ違うがこれで正常運転なのか?」
『そんな訳ないでござる!こんなの…師匠じゃないでこざる!』
どういうことだ…?色々とおかしい。なぜ風真を取り返そうとしないのか。なぜ人を殺さないはずの師匠が急に殺意を向けてきたのか。そしてこの嫌な気配の正体…
『つべこべ言わずに、さっさと死んでもらうよ』
そう言うと師匠はこちらに突撃してくる。俺といろはは咄嗟に横に飛び出して回避する。振り返ると5mほど先で刀が地面に刺さっているのが見える。
「おいおい…風真も狙ってくるのかよ…くそ、一旦逃げるしかないな。いろは、走るぞ!」
俺が走り出すとそれに合わせて風真もついてくる。師匠も追ってきたが、数百メートル走ると見失ったようだ。
「一旦は撒くことができたか…こっからどうする?」
『…おかしいでござる。師匠ならあれを逃すはずがないでござる』
確かになんで突撃してきたんだ?風真に剣術を教える程の実力者なら近づいてスパで終わりじゃないのか。もはや人が変わったレベルだぞ…ん?人が変わる……
その時、ミオの『ある言葉』を思い出す。
"怪異は弱いアヤカシが悪い気に飲み込まれちゃった姿だから"
…もしかして、師匠もなにかしらの原因でケガレに取り憑かれたのではないだろうか。そう考えると、矛盾に説明がつく。
「風真、もしかしたら事情をもとに戻すことができるかもしれない」
それを聞くと、風真の表情が少し和らぐ。
『本当でござるか?どうするんでござる?』
「その前に、いくつか聞きたいことがある。まず、師匠の体は頑丈か?」
『そりゃあ、ちょっとやそっとじゃ傷付かないぐらいめちゃくちゃ頑丈でござるが…なんでそんなことを聞くんでござるか?』
「いやまあ…な…」
さすがにあれは言えないよな…
「で、次なんだが、師匠を相手に1分…いや、30秒時間稼ぎできるか?」
『あの刀の振り方なら楽勝でござる!』
「そうか。最後に、俺が合図した時に3秒師匠をその場に足止めすることはできるか?」
『…なんとかやってみるでござる』
よし、うまく行くかは分からないが、やるしかねぇ。
「じゃあ、今言った通りに頼む」
『了解でござる!』
風真は師匠の近くの茂みまで近づき、師匠の目の前に飛び出す。師匠は風真それに気付くと風真に向かって刀を振るが、風真はそれをギリギリで躱す。
俺は全神経を集中させ、師匠の嫌な気配、もといケガレが集中しているところを探す。
落ち着け…フブキに見せてもらった景色を思い出すんだ…あれと同じようにケガレが濃い場所が必ずあるはずだ…
…分かった。間違いなく心臓の部分だ。
さて。仕上げだ。俺は右腕に体内の妖力を集中させる。ちらっと風真の方を見ると、風真もだいぶ息があがっているようだ。早くしなければ。
……よし、完了した。あとは風真に合図を送るだけだ。と、その時。
『あっ!』
風真の方を見ると、風真が転んでいるのが見える。
『いっ…!くっ…』
足首でも捻ったのか、風真はうまく立ち上がれずにいる。そうしている間にも師匠はどんどん風真に迫っている。俺はすぐさま風真の方に走る。だが、この距離では明らかに間に合わない。
「風真ーー‼︎」
師匠は風真の目の前まで近づくと、振り上げていた刀を風真に向かって振り下ろした。
『師匠…!師匠!!!』
刀が風真の頭に当たる…直前に師匠の腕がピタッと止まる。そして、まるで振り下ろそうとする腕を見えない手で押さえられているかのようにプルプルと震え出す。
何が起きているのかは分からないが、とにかく師匠の動きは止まった。仕掛けるなら今しかない。俺は右腕を振りかぶって師匠に向かって走る。
「目を覚ませやーー!!!」
俺は全力で師匠の心臓に向かって、師匠の背後から拳を放った。
「はぁ、はぁ…大丈夫か、風真」
『あ…え…?』
風真はかなり混乱しているようだ。まあ尊敬している師匠が目の前で急に殴り飛ばされたらそうなるわな。
と、その時、前方から物音がする。そちらを見ると、師匠がもう立ち上がっている。マジかよ。数本ぐらい骨折る気持ちで殴ったんだけどな。
師匠はこちらに向かって走ってくる。やばいな。俺はさっきの反動であんまり動けないし、風真も素早く動くことは出来ないだろう。どうすればいい。とにかく、風真を守らねば。
風真の前に立とうとした時、師匠が刀を持っていないことと涙を流していることに気付く。俺が呆気に取られていると、師匠は俺をフル無視して風真に抱きついた。
『いろは…無事でよかった…』
『!…師匠、戻ってくれたんでござるね…』
どうやら師匠は元に戻ったようだ。師匠と風真は泣きながらお互いを抱きしめ合っている。
数分経ち、師匠と風真が立ち上がると、師匠が急に振り返りこちらを見てくる。
『……そこにいろ』
師匠はそう言うと、風真を連れて家の中へ入って行った。ていうかさっきまで気づかなかったけど師匠の家の真ん前まで戻ってきてたんだな。
家の戸のすぐ前まで近づくと、物音と会話が聞こえてくる。
『師匠⁉︎何するんでござるか⁉︎』
『いろはがどこを怪我したのか見るんだよ。深い傷ができてたら大変だろ?』
『風真は大丈夫でござるよ…ひゃあっ!そんなとこまで——』
…よし、戻っとくか。これ以上聞くとバレた時に殺されかねんからな。
さっきの場所に戻ると、少し前方に黒いモヤのような塊が空中に浮かんでいるのを見つける。
「なんだこれ?」
それに触れた瞬間、ドス黒い感情—嫉妬、恨み、怒りなと—が一気に流れ込んでくるのと同時に、頭痛や吐き気、指先の痺れなどを感じる。咄嗟に手を離すと、さっきまでの症状は消えた。
間違いない。これはさっきまで師匠の中にあったケガレだ。こんなやばい物だったのか。
とにかく、これをどうにかしなければいけない。俺はミオに連絡をとろうとしたが、またもや連絡はつかない。もしかしてミオのイナリフォンは大神神社にあるのではないだろうか。
諦めてフブキに電話をかけると、すぐに通話が始まった。
『もしもし?そっちはどうにかなったんですか?』
「概ね解決したんだが、でかいケガレの塊みたいなのが残ってしまってな。フブキならどうにか出来ないだろうか」
『ケガレの塊ですか…とりあえず、そっちに向かいますね』
「ああ。オニの家の前あたりにいるから頼んだ」
『分かりました。くれぐれも気をつけて待機しておいて下さいね』
「ああ」
俺は電話を切ると、距離を取るのも兼ねてまた元の場所に戻る。
その場でぼーっとしていると、一旦ドタバタしたことが終わったんだという安堵と同時に、師匠や風真が住みやすいよう色々変えていかなければならないという義務感も感じる。そういえば師匠の名前もまだ聞いていないな。俺が師匠と呼ぶのもおかしいし後で聞いておこう。
—同時刻、某所—
どこか暗い場所に、一人の男が何かを見ながら佇んでいる。
「…ダメだったか…まあよい…まだ終わっていない………ん?この少年……ふっ、面白くなってきたな」
男は手に持っていた何かを握って割ると、その破片を床に捨ててどこかへと去っていった
お気に感評願(定期)
最後に謎の人が唐突に出ましたね。先に言っておきますがあいつはオリキャラです。というか本作では男性は全員オリキャラです。まあもともとYAGOOぐらいしか入れられる人いないし。
そういえばこれは全然関係ないですが、これとは別の作品の小説をストーリーだけ考えたのでいつか出すかもしれないです。どうせしばらくかかるので気長に待ってて下さい。