Monster Hunter:Horizon 作:ちくわ
「あら、アナヴィー。それにエルフォ君まで。待ってたわ」
「…。」
「…さて、では紹介しましょう」
カ「はじめまして。貴方の教官を務めるカルシラといいます。今後ともよろしくね。」
エルフォはひどく動揺した。
エルフォはひどく動揺した。
この人が自分の教官?
昨日、酒場で暴れていた情緒不安定なこの人が??
カ「…?どうしたの?」
エ「あ、いや、なんでもないです」
カ「ふふ、変なの」
笑顔は穏やかで、まるで昨日のことなどなかったように見える。それがまたエルフォを困惑させた。
昨日の印象から、この女性は「そういう人」としか見ていなかったので、思ったよりマトモで穏やかな様子が逆に違和感だったのだ。
こういう時は、目の前の事象をそのままに受け止めるのがセオリーだ。
この人は「普通の人」だ。
アナ「それで、もう一人紹介なのですが。」
アナヴィーがしゃべり始め、そっちのほうを向く。
カウンターの中から、自分より少し年上っぽい男性が手を振っている。
イ「よっ!俺はイルセン!」
エ「こんにちは。クエストカウンターですか?」
イ「そうそう!別に嬢ちゃんじゃなくても受付はできるからな。この街のクエストカウンターは俺がやってるのさ」
エ「なるほど」
クエストカウンター。受付嬢とも言われるので女性がやるイメージが強いが、男性が行うことも別に例外というわけではない。
アク「…で、」
エ「?」
アク「クエストに出発する準備が完了したわね」
エ「…!」
カ「あたしはここで待ってるから、準備しておいで」
急ではあるが、何も問題はない。なんせ「ニーシァ諸島」に行けるのだから。
…とはいえ、準備準備…
…
…
エ「…装備と、食事が…」
武器はある。旅立ちに際して贈られた片手剣。
しかし、装備がない。そして食事もとっていない。
…あれ、食事処って案内されたっけ?
カ「ふふ、それなら大丈夫」
エ「?」
カ「こっちで用意しているよ」
エ「あ、ありがとうございます……!」
カルシラは微笑むと、ずっしりとした両手サイズのポーチを前に掲げた。
ほんのりといい匂いがする。
エ「これは?」
カ「お弁当。セルマーニェは船での移動が主になるから、街で食べるより現地で食べるほうが多いの」
エ「なるほど!」
お弁当かあ。
たしかに、現地に着くまでに食事の効果が減っては意味がない。それよりかは現地で食べたほうがまだましということだろう。
…自分の場合、船酔いで吐く可能性もあるわけだし…。
カ「そして、装備よね。この街の標準的な防具を用意しているから、エルフォ君の武器も含めて装備しておいで」
エ「了解です!」
…
エ「装備してきました!」
アナ「あら。」
アク「お似合いねえ」
ーセルマ装備ー
機動性と防御を併せ持った装備で、布製の服の上から腹と背中を3つに分かれた板金2枚で覆い、それを紐でつなぎ合わせている。また腕や足は大きなプレートを用いているなど、現実で言うところのバンドルに近い鎧の組み方となっている。
そして特徴的なのが、その上からセルマーニェの伝統衣装にあるような白いローブをかぶっていることである。とはいえ実践向きのため動きの妨げになるような長さはなく、見てくれで言うとホープ装備やギルドクロス装備に近い印象を受ける。
カ「それじゃあ、早速クエストに出発する?」
エ「はい!」
イ「はいはい、クエスト受注はこっちからね!」
イルセンからクエストを受注し、カルシラとともに船への搭乗を始める。
アナ「それでは、行ってらっしゃい。」
船着き場に残ったアナヴィーとアクシアが手を振って送り出す。
ふと、控えめに手を振るアナヴィーの胸元に、黒い貝殻の首飾りが見えた。
…
……
………
船の上。ザブンザブンと波が打ち、船が揺れる。
案の定胃が持ち上がる感覚を覚えるが、出すものがないためか気持ち悪さはそこまでである。
エ「…。」
エルフォは甲板に立ち、外の空気を吸っていた。
カ「隣いい?」
エ「あ、はい」
カルシラがやって来て、エルフォの隣に立つ。
やはりその様は落ち着いていて、あの光景さえ見ていなければ、ただの落ち着いた人に見える。
ただ、隣に立っているからこそ、無い右腕が気になって仕方ない。
エ「あの、」
カ「?」
エ「…これからよろしくお願いします」
カ「うん。よろしくね。」
一瞬、昨日の様子について聞こうとしたが、やはり口を紡ぐ
聞けるわけがない。
カ「…それにしても」
エ「?」
カ「よくこんな所に来たね」
エ「セルマーニェが何か?」
カ「いいや、ニーシァ諸島のこと」
エルフォは困惑した。
カルシラは神妙そうに語る。
カ「…エルフォ君は、ニーシァ諸島がなんて呼ばれているか知ってる?」
エ「…知らないです。なんて呼ばれているんですか?」
カ「…。」
エ「…。」
カルシラは一瞬俯き、スンと鼻から息を吸って重そうに口を開いた。
カ「…『呪われた諸島』」
セルマーニェからさらに南へ航海を進めおよそ3時間。二つの大陸に挟まれるように広がる諸島こそ『呪われた諸島』ニーシァ諸島である。
長らく未開拓地であったこの諸島は現在、セルマーニェの管轄のもと調査が行われている。
カ「…よし、着いたね」
エ「ここが…」
着いてしまえばあっという間で、2人は島に上陸を果たした。
船の揺れる感覚が取れず、何度も転びそうになりながら、エルフォは砂を踏み締める。
カ「ここがニーシァ諸島で最も大きい島。『カルス島』だよ」
エ「カルス島……!」
エルフォは揺れる足元を踏みしめ、視線を上げる。
中央にそびえる波のような山、それを覆うように広がる森と海岸が目に飛び込んできた。
ーカルス島ー
ニーシァ諸島の中では最も大きい島で、外周はおよそ270kmほど。
中央に聳える、大きな波のような形の山を中心として森林地帯と海岸地帯の二つに分断されており、それぞれ『島林』『海浜』として登録されている。
気候は安定しており、島林は深い森林に覆われている。
カ「植生密生度は低そうだ。いい季節だね。」
森の方を眺め、カルシラはつぶやく。
エ「植生密生度と季節に何か関係が?」
カ「ああごめん。あたしたちはニーシァ諸島を管理するにおいて、島の状態を『季節』として管理してるんだ。」
エ「ええっと、どういうことですか?」
カ「そうだね、フィールド一つとっても、姿形は常に変化しているの。例えば『豊穣期』と『荒廃期』なんかが分かりやすいかな。
でも、環境の変化っていうのは単に『豊穣期』と『荒廃期』だけじゃない。だから私たちは、そういう環境変化を各島ごとに『〇の季』と読んで、季節扱いしているの。」
エ「なるほど、ちなみに、今のカルス島は何の季なんですか?」
カ「今は『明の季』だね。正確には「島林」の季節がだけどね。
『明の季』は植生密生度が一番低い状態で、木々がまばらに生えているから視界が安定しているの。」
エ「へえ」
ー明の季ー
カルス島の森林地帯。島林の季節の一つ。
植生密生度が森の中で一番低く、木漏れ日がよく射すことからこの名前が付いた。
視界が開けており、比較的安全な季節。
カルシラから島の話を聞きつつ、2人は森へと入っていく。
『明の季』というだけあって、木々の間から木漏れ日が射している。
カ「…さて、エルフォ君。」
エ「?」
カ「改めて、ハンターのお話をしましょうか。」
エ「…はい…!」
カルシラは姿勢を改め、面と向かってエルフォに話す。
カ「君は今から、この何もわからない島々で、大きな体躯で強い力のモンスターを狩ることになる。しかもさっき言った通り、島々は変化し続ける。
そんな状態で、君は命を失わないようにしなければいけないの。これは分かっているね。」
エ「その心構えは出来てるつもりです」
カ「心構えだけ?」
エ「あ、えっと、、、」
カ「ふふ、ごめんね。
とにかく、そんな状態で最大限「ハンター」を全うするために、何が必要だと思う?」
エ「…常に、周囲に気を配ること、とかですか?」
カ「確かに臨機応変さは必要ね。どこからモンスターが襲ってくるか分からないし。
でもね、あたしが思う、ハンターにとって一番大事なこと。それは『知ること』よ。
少なくとも「自然」というものは敵でも味方でもない。だから言い換えれば、敵にも味方にも「できる」の。」
エ「…!」
カ「だから、君はできる限り味方を増やして。そしてそのためにこの島の自然を「学んで」いってね。
そうすれば、ハンターを全うできる時間は長くなると思うわ。」
エ「はい!」
カルシラの声が、風の音に交じって耳に届く。
先輩ハンターからの理にかなった助言は、エルフォを深く納得させた。
それと同時に、カルシラの無い右腕がやはり目に止まった
エ(もし、自然が敵になったら…)
高揚する気分がスーッと冷めた。というか、冷静に戻った。
エルフォは軽く息を整え、気を持ち直す。
カ「…エルフォ君。」
エ「あ、はい」
カ「本当に気をつけてね。」
腕を見ているのがバレたのか、カルシラが口を開いた。
先ほどとは違い、視線が重い。
初めてカルシラを見た時のあの気持ちを思い出して、引き締め直した気持ちが、さらに引き締まる。
カ「…それじゃあ、キャンプを設営してお弁当を食べようか。」
エ「…はい」
森の中の小さな穴倉にキャンプを設営し、火を立てて弁当を火の上に置き、温める。
中からオリーブのいい匂いがした。
ーウォーミルパンとセルマーニェ風ムサカー
セルマーニェで食べられる料理の一つ。
パンはウォーミル麦で作り、オリーブを塗りたくって焼き、独特の風味を閉じ込めた味になっている。
ムサカはすり潰した芋の下敷きに草食竜の肉とミックスビーンズを挽いたものを乗せ、オリーブを塗りつつ、風味がくどくならないようにシモフリトマトを数枚乗せる。
その後は特製のミートソースとホワイトソースをかけ、チーズをまぶして20分ほど焼く。
どちらもそれぞれの特性を活かしつつ、そこにオリーブを用いてセルマーニェの風味を引き出させた一品である。
エ「おおお!美味しそう…!いただきます!」
カ「ふふ。私もいただきます。」
まずはパンに一口。生地はフワフワとしており、オリーブの風味がパンを飽きさせない。
ムサカはムサカでミートソースとホワイトソース仕込みの肉と豆が濃い味を出しつつ、それを芋とチーズで調和して、濃い味付けを上手くカバーしている。シモフリトマトの酸味も舌を踊らせるに十分なトッピングだ。
ジワっとはみ出た肉と豆をパンに塗りたくって食べるのも、見た目は悪いが十二分に美味い。
エ「…美味しいぃぃ…これって誰が作ったんですか?」
カ「ドリアナさん。料理作りが好きなのよ。彼女。」
エ「へえ…次あったらお礼しないとですね!」
カ「ふふ。」
美味いものは無くなるのが早いもので、あっという間に食べ終えてしまった。
なんだか力が漲りつつも、元気が湧いてくるような感じがする。
カ「さ、これで頑張れるわね。」
エ「はい!」
エルフォは武器を持ち、カルシラとともに改めて森の中に入る。
カルシラは無い腕に簡素な義手をはめ、そこに盾を巻きつけ片手剣としていた。
持っている武器は一般的なハンターナイフ。
カ「そういえば」
エ「?」
カ「エルフォ君は何利き?」
エ「あ、左利きです。…この場合右で持つんですよね?」
カ「そうそう。分かっててよかった。」
分かっている人は分かっていると思うが、片手剣というものは、盾を右手、剣を左手で持つ武器である。
これはハンターが自身の生存を重視しているためであり、利き手を空けることでアイテムを使いやすくなったり、いざという時に盾での防御がしやすくなったりと、利き手で武器を持つ時よりも利点が多いのである。
とはいえ、やはり利き手じゃない手だと力が入りにくいのもまた事実で、エルフォはこの不文律がそんなに気に入っていなかった。
…
……
………
しばらく歩いて、開けた場所に出た。
何やら小さい生き物がたくさんいる。
カ「それじゃあ、この森の自然を学んでいきましょう。」
エ「はい」
カ「じゃあまず、あの飛んでいる生き物から。」
カルシラが指を刺す方に目をやると、確かに飛んでいる生き物がいる。小さな「環境生物」だ。
白いコウモリのように見えるが口は長い。何やら木の周りをパタパタと飛んでいる。餌でも探しているのだろうか?
カ「あれは『チョウモリ』色々な蜜を吸う環境生物で、ニーシァ諸島の色々な島にいるの。」
ーチョウモリー
ニーシァ諸島の色々な島に生息する環境生物。
様々な植物の蜜や胞子を食べて生活している。
カ「この環境生物は色々な植物の蜜や胞子を食べていてね。だから、ほらっ!」
カルシラは近くの石を掴み、チョウモリのいる方向に投げる。
石はチョウモリの近くの木にあたり、驚いたチョウモリは口から紫っぽい煙を噴射した。
カ「…ほら、ああやって植物のもつ成分を吹き出すことがあるの。あれは紫色だから、毒テングダケでも食べたんでしょうね。」
エ「なるほど!」
環境生物の利用。
シビレガスガエルや回復ミツムシがそうであるように、自然の中で生きる小動物が、何かしら自分の利益になることもある。勿論利益にならない生物もいるが。
そういう生物も利用してこそ、自然を知るということなのだろう。
カ「そして次は…あれかな。」
エ「?」
次にカルシラが指差すところを見るも、何もない。
エ「何もありませんよ?」
カ「何もない事はないよ。よく見てみて。なにがある?」
じっくりと見てみる。というか、分析するという方がいいのか?
…木と、ツタと、、ツタ?
エ「ツタが生えている…?」
カ「そう、それを狩りに活かすとすれば、どうする?」
エ「…ツタで罠を作る…?」
カ「その通り。そういう思考のし方が『自然を味方にする』という事だよ。」
なるほど。
その場にあるものをそのままにするのではなく、有効活用する方法を考える。それこそ自然を使う、味方にするという事か。
カ「あと…お、いいのが来たね。」
エ「!生肉が歩いて…違う?」
草むらの奥から、何かがノソノソと歩いくる。
一見生肉に見えたが、これは小型モンスターのようだ。
ー肉蜥蜴 ナマニクモドキー
カルス島に生息する小型の牙竜種。
赤く太った見た目からこの名前がついた。
食べれるものはなんでも食べる性格をもつ。
カ「このナマニクモドキはね、食べたものの毒素が全身に回る前に、特殊な臓器にしまい込んで貯蓄する性質を持つの。だから…」
カルシラは近くにあったネムリ草をちぎり、ナマニクモドキに与える。
ナマニクモドキはムシャムシャと食べた。
それにしても警戒心がない。
カ「毒の効果が効かないの。」
エ「へえ」
狩猟に有利な性質を持つのは、何も環境生物だけじゃない。
このナマニクモドキも、何か使い道があるのか…
カ「それじゃあ……!?」
エ「どうしm-」
カ「隠れて!」
エ「!?」
咄嗟に二人は大きな草むらに隠れる。
エ「何かいますか!?」
カ「シッ!上みて!」
草むらの中から上を見上げると、空から何かが音もなく舞い降りた。巨大な影が、茂みの隙間から視界を覆う。
リオレウスだ。
エ「!?」
リオレウス。この前の個体の可能性もある。
やはりこの島に定住しているようだ。
リオレウスはそのまま、さっきまで目の前でネムリ草を食んでいたナマニクモドキに喰らい付いた。
血と肉がビチャビチャと飛び散る。
ミ゛ィィィィィ!!!!!
嫌な断末魔が耳の中で暴れまわった。
そんな惨劇が続いて、静寂が戻った後、リオレウスは大きく欠伸をし、その場にドンと倒れた。
エ(そうか!ネムリ草の…!)
嫌な活用方法だが、ナマニクモドキを生贄にすることで、対象に毒を仕掛けられる事は分かった。
二度とやりたくないが。
二人はこの機会を逃さず、できるだけ遠くへ逃げる。
カ「…あれが何かわかる?」
エ「…?リオレウスですよね?」
カ「そういう意味じゃない。あれはこの森の『頂点捕食者』よ。」
エ「…!」
頂点捕食者という事は、単純に考えて「この森で一番強いモンスター」ということになる。
対峙したら、まず生きて帰れないだろう。
カ「…。」
カルシラの呼吸が荒いのが分かる。
それだけリオレウスは脅威的で、恐ろしい相手なのだ。
それに、カルシラの言葉を借りるなら「自然は敵にもなる」という事だ。リオレウスが地面にいるナマニクモドキに気づいたのも、今が視界の開ける『明の季』だからだ。
もし、あれがナマニクモドキじゃなくて自分だったら。
カ「…あんな風に、自分じゃ相手にもならない存在が突然やってくることもある。」
エ「…。」
カ「そういう時は、隠れて、逃げるの。分かった?」
エ「…はい」
まただ。カルシラの視線が重い。
命を預けるとは、そういう事なのだろう。だが…
カ「それじゃあ、座学はここまでにしようか。これからは実践よ。」
エ「分かりました」
肺のふくらみを感じるほど息を吸い、気持ちを整える。
一生物の死に割く時間や精神は多くない。これから沢山狩ることになるんだ。むしろ慣れねば。
今更ながら、クエストの内容は小型の肉食モンスター「ラゴラス」の討伐である。
カ「ラゴラスは…いたわね。」
エ「あれが!」
ー泳賊竜 ラゴラスー
新大陸のジャグラスやギルオスのような、賊竜の仲間。
泳ぐことが得意であり、各島や海でブイブイ言わせている。
カ「数は3体ね。あれを狩猟したらクエスト完了にしよう。」
エ「分かりました。」
カ「エルフォ君、油断しないでね。」
エ「分かってます…一狩り、いきます!」
エルフォはラゴラスの前に立ち、剣を抜く。
ゴガァッ!
1匹がさけび、飛びかかる。
エルフォもまた走り出し、飛びかかろうとしたラゴラスを思い切りスライディングしてかわした。
カ「!?」
そのままエルフォは勢いに任せて滑り、後方で待機していた2匹の背後を取る。
エ「えいっ!」
そのままエルフォは水平に剣を振り、2匹を同時に切りつけた。
グゲっ!
致命傷にはならないものの、顔面を強く切りつけられた2匹はダメージを受け、大きく怯む。
そのチャンスを逃さず、エルフォは2匹のうちの1匹に注視し、再び大きく剣を振った。
頭に大きなダメージが入り、1匹が倒れる。
ググググ…
残った2匹は改めて体制を立て直し、今度は2匹で突進する。
エルフォは両腕を前に強く突き出し、1匹を盾に齧り付かせ、もう1匹は剣に齧り付かせる。
エ「ぐぬぬ…!えいっ!」
エルフォはそのまま右方向に体を回し、2匹を投げ倒す。そのまま剣を両手で持ち、倒れた2匹に向かって強く剣を振り下ろした。
腹にダメージを受け、2匹とも倒れる。
エ「…ふう。」
カ「お疲れ」
茂みから様子を観察していたカルシラが声をかける。
カ「ラゴラスの動きは予測していたの?」
エ「はい。ああいう場合、一匹が飛びかかってくるのがセオリーかなって」
カ「ふうん。」
とにかく、これでクエストクリアである。
カ「…で」
エ「?」
カ「もう帰還する?」
エ「うーん、、、もう少し島を見てもいいですか?」
カ「いいよ。じゃあ今度は海岸地帯に行ってみよっか。」
クエストが終わったので、あとは自由行動である。
とはいえ、気は張り続けないといけないが。
…
……
………
最初に上陸した浜辺に戻り、そこから海岸線を歩いて小一時間ほど。森を抜けた先に大きな海岸が広がっていた。
エ「…そういえば」
カ「?」
エ「森林地帯と海岸地帯で季節って分けられているんですよね?」
カ「そうだね。今の海浜は…『渦の季』かな。」
エ「なんだか不穏な名前ですね…」
カ「確かにね、でもそんなに危険な状態じゃないよ。あそこ見てみて。」
エ「?」
カルシラが指さす方向を向くと、そこは海。
ドドドと大きな音をして、海に渦が起こっている。
エ「な、なにあれ!?」
カ「あれは渦潮よ。波の流れの影響で海に渦ができるの。つむじ風みたいなものよ。」
エ「へえ!」
カ「そんな渦潮が発生しやすい波の状態をしているから『渦の季』と呼ばれているの。この季節は海のモンスターが渦潮によって上陸を阻害されるから、危険なモンスターが少ない季節ね。」
ー渦の季ー
カルス島の海岸地帯。海浜の季節の一つ。
波の影響で渦潮が多発することからこの名がついた。
渦潮の影響で海のモンスターが島に寄り付かず、比較的安全な季節といえる。
エ「なんだか、今日はラッキーな日ですね」
カ「今日だけね。」
リオレウスの襲来はあったにせよ、言ってしまえば危険な出来事はそれだけである。初クエストにはちょうどいい危険さなのだろう。なんにせよ、今日はラッキーだ。
と、おもっていた。
エ「?」
しばらく波を眺めていると、遠くに何かが見えた。
白い塊?
エ「あれは?」
カ「何だろう…行ってみようか。」
エ「はい」
ザッザと砂を走り、対象に近づく。
…それはどうやら複数の小型のモンスターだった。
白い殻の「甲殻種」が、何やら集まっている。
カ「ああ、なんだ。「プヒァクラパ」か。」
ー噴蟹 プヒァクラパー
海浜に生息する、丸い体つきが特徴的な甲殻種。
アプケロスほどの大きさで、性格は極めて臆病。
攻撃や排水のために噴水を行う習性があり、噴水の勢いはとても強力。
エ「でも、なんでこんなに集まっているのでしょう?」
カ「うーん、そうだ、エルフォ君、プヒァクラパの背中に乗ってみてよ。」
エ「え、いいんですか?」
カ「うん。ただ、乗ったらすぐ降りてね。」
エ「?」
言われた通り背中に乗ると、プヒァクラパは驚いて体を丸める。
その上部からのぞき込むと、何やら複数の死体。
エ「エピオス?」
カ「…!?」
カルシラの表情が、大きく曇った。
にが虫を嚙み潰したような顔だった。