TS六留女子高生は魔法少女がやめられない   作:雅媛(みやび)

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3 異世界の街と魔法少女

 異世界から来る者は2種類に大別される。

 一つは侵略者であるインベイダー。

 もう一つは、協力者であるフォーリナーだ。

 

 どちらも異世界人というのは変わりないのだが、とはいえそのスタンスは大幅に異なる。

 

 

 異世界、ユグドラシルは魔法技術が発達した世界だ。

 そして魔法の根源となる魔力は人の感情から発生する。

 

 感情を魔力に変換するという技術が発達するにつれ、技術は大きく二種類に分かれた。

 

 一つは正の感情、喜びとか愛とかを源とする正魔法。

 一つは負の感情、苦しみとか悲しみを源にする負魔法だ。

 

 この二つはお互い相容れず、反発する特性があった。そのため、正魔法を使う人々と負魔法を使う人々は明確に分かれ、国を作り、そして戦争になった。

 

 

 戦争となると、負魔法の方が本来圧倒的に有利だ。負魔法は、正魔法に比べると瞬間出力が実に5倍に及ぶ。その分持続力が5分の1なのだが、戦場という一瞬で命のやり取りをする場では、負魔術のほうが圧倒的に強かった。

 だが、力を合わせて頑強に抵抗し続けたためか、正魔法の軍勢のほうが徐々に有利になっていったというのが、こちらの世界にインベイダーが来るまでの異世界の状況だ。

 

 負の魔法を使う人たち、これがインベイダーであるが、彼らは魔力をより多く集めるためにこちらの世界に訪れて大暴れを始めたのだ。

 一時的に大量の魔力を得た負魔法の軍勢は一気に優勢を確立したのだが……

 正魔術を使う人たち、こちらがフォーリナーだ、がこちらの世界に助けに来てくれたことで、情勢が落ち着き、ボクが異世界で大暴れしたことで情勢はかなりフォーリナー有利になっているとのことである。

 

 

 という経緯もあり、こちらの世界にはフォーリナーがかなりの数住んでいる。

 特に日本、町田市近辺は、世界でも有数のフォーリナー人口を誇っており、フォーリナーの街が存在する、フォーリナーに親和性のある地域でもある。

 

 ボクの相方のサクヤもそんなフォーリナーの一人であり彼女と一緒に、フォーリナーたちの街に来ていた。

 

 

 町田市の北側、東京都との境にある多摩丘陵地域の森の中に、その街は存在する。

 人口は1000人ほど。町並みはドイツ風の建物が立ち並んでおり異国情緒があふれている。

 もっとも町のど真ん中にファミマがあったり、道端に自動販売機が置いてあったりと、ちょこちょこと日本的な部分が顔をのぞかせているが。

 

 

 久しぶりの休日ということで、サクヤおすすめのお店に行くことになっている。緊急の出動要請が出ない限り羽を伸ばす予定だ。

 

 

「今日のデートプランはですね。カフェに寄ってゆっくりした後、ショッピングをして、夜はうちにお泊りです」

 

「いや、泊まらないが? 後デートでもないが?」

 

「お泊りです。デートです」

 

 

 勝手にサクヤの家に泊まることになっているが、気にしないことにする。

 着替えとか持ってきてないから泊まるのは無理だし、いつものサクヤの悪ふざけだろう。

 ひとまずサクヤの案内でカフェに入る。白漆喰の壁に緑のツタが這い、木組枠の茶色がアクセントとなっているおしゃれな外見だ。

 

 中はあまり広くなく、少し暗めだが茶色を基調とした壁と床で、落ち着いた雰囲気だった。

 

 

「いらっしゃい。好きな席に座っていいよ」

 

 

 渋い雰囲気のマスターがカウンターに立っていて、お客さんは誰もいなかった。

 ずいぶんいい雰囲気の店を知っているじゃないか。

 

 カウンターに座ろうとも思ったが、ボクの背の高さだと椅子に上るのもちょっと大変だし、食べたりするにもカウンターが高い気がするので、テーブル席に座る。

 サクヤはなぜか向かい側ではなく隣に座った。

 

 

「狭いんだけど」

 

「いいじゃないですか」

 

 

 ここで強く断ると捨てられた犬みたいな顔をして、それはそれでかわいいのだが少し罪悪感を感じるので放置することにした。

 

 

「何食べようかなぁ……」

 

 

 シックなメニューに書かれた言葉は、フォーリナーの言葉と日本語の併記だ。

 だが、翻訳があまりよくないようで、意味がいまいちわからない。

 

 

「なんだ?海の悪魔の地獄焼きって……」

 

「たこ焼きですね」

 

「なんでこんな雰囲気の喫茶店にタコ焼きが……?」

 

 

 マスターを振り返ると、いい笑顔で親指を立てた。

 たこ焼き、マスターが好きなのだろうか。

 

 

「じゃあこっちの海の悪魔の白天国ってなに?」

 

「たこ焼きパフェですね」

 

「それはちょっと……」

 

 

 外見と内装のシックさに比べて、メニューがぶっ飛びすぎじゃないだろうか。

 

 

「いい感じの甘い系ない?」

 

「この憤怒の溶岩焼きとかどうですか?」

 

「なに? ホットケーキかなにか?」

 

「いえ、サーロインステーキです」

 

「甘いのって言ったでしょ!!!」

 

 

 まあステーキはステーキで好きだけどさ……

 今はパフェとか甘いものが食べたい気分なんだ。

 

 

「じゃあマスター、ラブラブカップルパフェと、ラブラブカップルジュースをお願いします」

 

「ちょっとまって、何その不吉な感じの名前!?」

 

「ラブラブカップルがイチャイチャしながら食べるためのカップル限定メニューですよ」

 

「ちょっとまてぇ!! そもそもボクとサクヤは同性! カップルじゃない! よってカップル限定メニューはNG! OK?」

 

 

 サクヤは心底不思議そうに首を傾げた。

 

 

「百合カップルのほうが美しいですよね?」

 

「いみがわからん!!」

 

「ですよね、マスター」

 

「そうだな」

 

「マスター!?」

 

 

 渋そうなのは外見だけでこいつ愉快犯だな!

 店の雰囲気と外見に騙された!!

 

 

「ということでラブラブカップルジュースからどうぞ」

 

「うげぇ」

 

 

 ハートをかたどった一組のストローが刺さった、ピンク色のジュースが出てきた。

 ちょっと光っていて、体に非常に悪そうだ。

 

 

「このジュースには、愛情の魔力がふんだんに使われているからとても甘いぞ」

 

「……大丈夫?惚れ薬みたいな効果でない?」

 

「……」

 

 

 マスターは笑顔でサムズアップした。

 せめて否定してほしいんだけど。

 

 まあいいや、ひとまず飲んでみよう。

 

 片方のストローを咥えると、もう片方のストローをサクヤが咥えた。

 うーん、やっぱり美人だな。まつ毛すげー長いし。地毛が白いからまつ毛も白いんだよねぇ。

 真っ青な瞳がキラキラ輝いていてみていると吸い込まれそうだ。

 

 ジュースの方は気持ち悪いぐらい甘い。

 本気で愛情の魔力が溶け込んでいるようだ。

 ミックスジュースか何かっぽい味がほのかにするのだが、甘さですべて上書きされている。

 

 

「ふう、さて、イスズさん、私に惚れました?」

 

「いや、何も変わってないけど」

 

「そんな……」

 

 

 これくらいの魔力に影響されるほどやわじゃないし、そもそも一般の人が飲んだってそんなに大きな影響は出ないだろう。ちょっと相手がカッコよく見えたりかわいく見えたりするぐらいじゃなかろうか。

 

 

「ラブラブカップルパフェもどうぞ」

 

「マスター、スプーンの柄が長すぎない?」

 

「こちらの世界の童話を参考に、お互いあーんして食べないと食べられないようにしたんだ」

 

「参考にするの間違ってないかなぁ」

 

 

 天国と地獄で、長い箸を使う故事か何かを参考にしたのだろうが…… 普通にあーんさせるにしても食べにくすぎる。

 

 

「イスズさん、あーん」

 

「……」

 

 

 サクヤが果敢にもあーんにチャレンジをしたが、彼女が手にしたスプーンは無事ボクのほっぺに着陸して、顔を汚すだけに終わった。

 

 

「マスター、普通のスプーン頂戴」

 

「……はい」

 

 

 アイデア倒れに終わったことを察したマスターは普通のスプーンを渡してくれた。

 パフェの味自体は普通においしかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ということで腹ごしらえも終わりましたし、ショッピングしましょう」

 

「……まあ構わないけど……」

 

 

 買い物というものにあまり興味はない。

 この辺りは体が乙女でも中身はおっさんのままなのだろう。

 目的のものをさっと買うだけで、何か買いたいものがないか探すというのはあまり好きではないのだ。

 

 とはいえサクヤが行きたがっているし、荷物持ち程度で付き合うことにする。

 

 

「まずは雑貨屋さんですよ!!」

 

「はいはい」

 

 

 サクヤが最初に連れてきたのは明るい感じの雑貨屋であった。

 小物がゴロゴロおいてあり、乙女向けの感じのグッズがいろいろ置いてある。

 

 

「むぅ」

 

 

 正直何も惹かれない……

 かわいい小物とか、部屋に置いていても特にテンション上がらないし……

 落として壊しそうだし……

 

 

「お客さん、何を悩んでいるんだい?」

 

「いえ、特には……」

 

 

 お店の人らしい、エプロンをした女性に話しかけられて焦る。どうやらよほど眉の間にしわが寄っていたらしい。

 

 

「ふむ、そんなあなたにお勧めなのはこちら」

 

「……卵?」

 

「魔法生物の卵ですよ。餌も魔力だけですし、ペットにお勧めです」

 

「へぇ、これが……」

 

 

 店員さんが持ってきたのはかごいっぱいの卵だった。色は本当にいろいろなものがある。

 大きさは鶏の卵より一回り大きい。

 魔法生物は、魔法で作り出される生き物だ。大体はペット程度にしか使えないが、ごくまれにすごく強い生物が生まれることもあったりして、いわゆるガチャ要素が強いアイテムだったりする。

 

 

「イスズさん、何を見てるんですか?」

 

「魔法生物の卵だって」

 

「へぇ、一個買ってみましょうよ。それで、私とイスズさん二人で魔力を注ぐんです」

 

「まあいいけど……なんで?」

 

「二人の魔力を注げば二人の子供みたいなものじゃないですか!!」

 

「やっぱりボク一人で注ぐ」

 

「あーん、いけずー」

 

 

 サクヤが妙なことを言い出したので、スルーするが、まあ物は試しだ。一つ買ってみることにしよう。

 

 1個1万円とぼちぼちいい値段だが、ペット代と考えればそんなところだろう。

 

 

「これってどれくらい魔力を注げばいいんですか?」

 

「好きなだけですね。いっぱい注げばいいものができるわけでもないですが……」

 

「不思議なものだねぇ……」

 

 

 かごの中にあった、真っ白な卵を取り出す。

 なんとなくこれがよさげだ。

 諭吉さんを1枚渡して買い取る。

 

 

「サクヤは何か買うの?」

 

「いえ、今日はやっぱりいいです」

 

 

 そういうサクヤはボクの持っている卵に目線が固定されている。

 サクヤは大概ふざけているだけでボクが言うと引くけれど、本当に譲りがたい時は結構強硬だ。

 

 まあ、魔法生物ぐらいなら特に問題は起きないだろう。

 

 

「じゃあ、二人で魔力を注いでみる?」

 

「はい!」

 

 

 嬉しそうにほほ笑むサクヤ。

 しかし、ここで妥協したことをボクは後々まで後悔するのであった。

 

 

 

 二人で公園に移動してベンチに座る。

 隣に座って、卵に二人して手を当てる。

 

 

「じゃあ行くよ~」

 

「はいっ」

 

 

 二人して魔力を流し込む。少しでいいかと思いきや、案外流し込めば流し込むほど吸収していく。

 

 

「この子、結構大喰らいだねぇ」

 

「大きくなるんですよ~」

 

 

 しかも魔力を流し込むだけ、少しずつ大きくなるので面白くなってどんどん流し込んでいく。

 サクヤの方も調子に乗ってどんどん魔力を流していく。

 

 1分ぐらい魔力を流したか。ダチョウの卵ぐらいの大きさになったところで、魔力の吸収が止まる。

 

 

「お、生まれるかな」

 

「わくわく」

 

 

 卵の殻をコンコン、と裏拳で叩くと簡単にひびが入った。

 ひびから光があふれ、パカっと卵が割れた。

 

 中から出てきたのは、なんと、小さい女の子だった。

 

 

「は?」

 

「え?」

 

 

 魔法生物って基本的には小動物、あたりでも動物が出てくるのだが……

 人が出てくるのものなのか?

 

 

「初めまして、お母様たち」

 

「しゃべった!?」

 

「しゃべりましたよ!!」

 

 

 しかもしゃべった。

 何が起きているかわからないが、ひとまずしなければならないことがある。

 

 

「服!服買ってこないと!」

 

「さっきの雑貨屋さんに行きましょう!!」

 

 

 出てきた女の子は当然ながら全裸であった。

 

 ボクたちは慌てて、さっきの雑貨屋さんに戻る。

 店員さんに事情を説明して、何か着るものがないか聞くと、さすがに服はなかったが布はあったので、それを買って女の子に巻き付ける。

 

 

「素敵なお洋服ありがとうございます。お母様」

 

「いや、今からちゃんとしたところに買いに行くからね」

 

 

 ニコニコしている女の子を抱える。

 

 だいたい30cmぐらいの身長の女の子だ。外見は赤ん坊ではなく、小さい少女といったような外見で、銀髪にピンク色のメッシュが入った特徴的な髪と、金色と赤色のオッドアイという特徴的な外見をしている。

 

 

「というか、ボクとサクヤの特徴半々じゃん……」

 

「それはお母様たちの子供ですから」

 

 

 嬉しそうにそういう少女。

 

 

「二人の愛の結晶ですよ!!」

 

 

 興奮するサクヤ。

 

 

「どうやって育てればいいんだろう」

 

 

 テンションが上がる二人を見ながら、ボクは頭を抱えるのであった。




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