TS六留女子高生は魔法少女がやめられない   作:雅媛(みやび)

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4 子育てと新しい争い

 二人の愛の結晶とうるさいサクヤを連れて、ボクたちはひとまずサクヤの家へと向かう。

 さすがにこの状況でのんびりお買い物とも行かない。

 

 

「えっと、あー、まず名前を決めたほうがいいかも」

 

 

 女の子に呼び掛けようとして名前がないのに気づく。

 生まれたてなんだから当たり前だ。

 

 期待するようにボクを見る女の子とサクヤ。

 いや、お前も考えろよサクヤ。お前の子でもあるんだからな。

 

 

「じゃあウズメちゃんでいいかな」

 

「はい、ありがとうございます! ウズメ、うれしいです」

 

 

 ボクの名前の五十鈴は天岩戸のときに天宇受売命がつけていた鈴のことを指すと言われている。だからウズメにしたのだが、気に入ってくれたようで何よりだ。

 

 サクヤがウズメを手に乗せて撫でている。

 ウズメも気持ちよさそうに撫でられている。

 

 

「えっと、ウズメは自分のことどれくらいわかってる? ごはんとか必要なものとか」

 

「ごはんはお母様たちの魔力があれば十分ですが、普通のものも食べられますよ! あとは特に必要なものは大丈夫だと思います」

 

 

 どうやら少女の外見でも一般的な魔法生物とそのあたりは変わらないようだ。

 魔法生物は魔力で出来ているので魔力が食事だし、病気にもかからないし、怪我も魔力で簡単に治る。

 

 後でちゃんと調べる予定だが、ひとまず必要なものは洋服ぐらいか。

 とはいえサイズが30cmぐらいだからどこからどうやって調達するべきだろうか……体型的にベビー服も難しいだろうし。

 

 そんなことを悩んでいると、くー、とウズメのお腹が鳴いた。

 

 

「ご飯あげましょうね」

 

「サクヤ、どうして上着脱いでいるの?」

 

「おっぱいあげようと思いまして」

 

「なんで胸から!?」

 

「ママですから」

 

 

 サクヤがウズメを抱き上げると、自分の乳首を吸わせる。

 

 

「いやいや、魔力あげるなら指とかでもいいじゃない?」

 

「この方がそれっぽいですし」

 

「意味が分からん……」

 

 

 ウズメがサクヤの胸を吸う。

 魔力を母乳に変換して与えているみたいだが…… 回りくどいことをしている。

 

 少し飲むと、ウズメが満足そうに口を離して、けぷーとかわいらしいげっぷをした。

 

 

「……なに?」

 

「イスズお母様のおっぱいものみたいな」

 

 

 サクヤはニヤニヤ見ているし、ウズメもちょっといたずらな笑みを浮かべている。

 この二人のつながりをしみじみと感じてしまう。

 

 この後しぶしぶ、ボクもウズメにおっぱいをあげるのであった。

 魔力を母乳に変換するなんて初めてだったが、案外簡単にできるものである。

 

 

 

 さて、こんな感じで始まったウズメの世話だが、ちょこちょこ面倒だった。

 いや、普通の子育てに比べれば全く楽だろう。なんせ排泄しないからおむつの世話とかもないし、話も通じる相手だ。ただ、燃費が悪いのか数時間に一度食事が入るのだ。しかもよくわからないこだわりでおっぱいを飲みたがる。

 強く言えばたぶんわがままは言わないだろうなと思うのだけれども、ボクもサクヤもどうもウズメには甘くなってしまって、毎回胸を吸わせていた。

 

 ひとまずボクはサクヤの家に泊まるようにして、二人でウズメの面倒を見ているのだが、問題は学校の時間である。

 食事の頻度から言って学校の時間ずっと留守番させておくこともできないので、ボクが連れて行ったのだが……

 

 

「イスズさんの子供、かわいいね」

 

「いつ産んだの?」

 

「お相手はやっぱりサクヤさんなんですか?」

 

 

 こんな感じで根掘り葉掘り聞かれるから若干うんざりしてしまう。

 まあ、余計な目で見られないだけましだが。

 あとなんでサクヤが相手って決めつけるんだ。まあ今回はそうなんだけど。

 

 授業中はボクの頭の上で寝ていたり、机の横で絵本を読んだりして静かにしてくれているからそう困らないが、それでも面倒な部分は面倒だった。

 まあこの程度で面倒と言っていたら世の親御さんに失礼だろうが。

 

 

「イスズさん、この子にお菓子あげても大丈夫ですか?」

 

「すこしなら大丈夫だよ」

 

「ありがとうございます。はい、ウズメちゃん」

 

「わーい」

 

 

 ウズメ自身はクラスメイトに大人気だ。

 休み時間はいつも誰かに構ってもらって、撫でてもらって、お菓子をもらって、ご満悦である。

 昼食の時間にはお菓子やら唐揚げやらをもらって大満足だ。

 授業中は基本静かにしているのもあり、先生たちからもお目こぼしいただいている。

 子供の魔法生物という前例のないものが爆誕した割には、日常は平穏にすごせていた。

 

 

「でも、何も情報が見つからないんですよね……」

 

「私の方も、まったく情報がないわ」

 

 

 一応ウズメのような、人型の魔法生物がいないかということは調べてもらったのだが……

 

 サクヤの方も、藤宮先生の方も全く何も前例が見つからなかったらしい。

 人の言葉を話す魔法生物自体が前例がないというありさまである。

 念話などで会話することはできるので意志があるというのは昔からわかっていたようだが……

 

 

「そもそもこの子の知識はどこから来てるんだろう」

 

「うにゅ?」

 

 

 頬をうりうりと指でいじると楽しそうに笑うウズメ。

 

 生まれたころから普通にしゃべっていたし、それなりに頭も回るように見えた。

 つまり最初から一定の知識があったということだ。

 

 

「魔力に知識が含まれているとかかな?」

 

「魔力は純粋な力なので情報が入ることはないはずですが……」

 

「じゃあ卵の時点から知識が入ってる……とも考えにくいしなぁ」

 

 

 ウズメの性格は、ボクと似ているところもあればサクヤに似ているところもあり、二人の子供感がすごい。

 でも生まれるまでにしたことは、卵に触って魔力を流し込んだだけだ。

 

 さすがに掌から何かをとるのは難しいだろうし、魔力が一番怪しいのだが……結局よくわからなかった。

 

 

「そういえば予防接種とかしたほうがいいのかな」

 

「ぴえっ!?」

 

 

 予防接種と聞いた途端逃げ出して藤宮先生の後ろに隠れるウズメ。

 注射嫌いなのか……

 

 

「そうですね。魔力の塊ですからウイルスには感染しませんが、魔法生物用のワクチンはありますよ」

 

「ぴええええええ!?」

 

 

 藤宮先生がそう言ってぶっといお注射を取り出した。

 そしてそのまま、流れるように上目遣いでおねだりするウズメのお腹にぶっ刺した。

 

 

「ぐへぇ」

 

 

 ウズメがカエルがつぶれたような声をあげた。

 

 

 

 

 

 結局謎生物のままのウズメだが、かわいいボク達の子供である。

 徐々に大きくもなっているし将来が楽しみな子でもある。

 

 幸い藤宮先生にお願いしたおかげで日本人とフォーリナーのハーフとして戸籍も取得した。

 これからも平和な日々が続くだろう、そんなことを考えて1月が経った時、それが起きた。

 

 

 

 突然のサイレンが街の中に響く。

 

 

「ここで襲撃!?」

 

 

 聞きなれた音に慌てて跳び起きるボクとサクヤ。

 インベイダーの襲撃だ。

 

 だが、全く予想できなかったことだ。

 なんせ今いるのはフォーリナーの街にあるサクヤの家だ。

 インベイダーたちがこちらの世界に来るのは、感情という魔力の元となる資源を求めてくるのであり、感情制御になれたフォーリナーはこちらの世界の人間に比べて著しく感情を得る効率が悪い。

 また、フォーリナーたちは基本魔法が大なり小なり使えるので、抵抗される可能性も高く、ごく少数居るこちらの世界の人間を狙うにしても不向きでおいしくない場所だ。

 

 だからこそ安全でウズメを育てるのにいいかと思ってボクがサクヤの家に引っ越したのだが……

 

 

「全くどこの誰が来たんでしょうか」

 

 

 準備を始めるサクヤに対し、ボクはなんとなく嫌な予感がしていた。

 

 考えのない阿呆が襲撃を仕掛けてきたならそう掛からずに鎮圧されるだろう。

 だが、狙って襲撃してきているとするならば、その狙いは何かと考える。

 ここ最近でこの街に新しく加わったもの、と考えれば、必然的に、これだけ大騒ぎしているにもかかわらずすやすやと眠る我が子、ウズメが狙いだという想像ができるわけだ。

 

 果たして彼女を得ることでなにができるのかはわからないが。サクヤの元の国にも、こちらの魔法少女協会にも前例がない存在だ。相手の妄想も含めて、いろいろな可能性が思いつく。

 

 

「サクヤ、たぶん相手はここに来るよ。しかも飛び切り厄介なのが」

 

 

 ウズメを抱えて窓から離れ、部屋の真ん中に移動する。

 窓から襲撃してくる可能性も考えられるからだ。

 

 

「え、どういうこと?」

 

「ウズメを狙ってる可能性があるってことだよ。そうじゃなければボク達じゃなくてもどうにかなる可能性が高いし」

 

 

 普段なら真っ先に飛び出していただろうが、守らなければならない存在がいるというのはこんなにも重いことか。

 しかし、誰かの被害があったとしても今のボクには守らなければならない存在がいるのだ。

 

 

「それなら……」

 

「来るのはクイーンクラスかキングクラスだろうね」

 

 

 ウズメを狙っているなら、ボクに勝てるインベイダーが来るはずだ。最上級のやつが、下手すると複数来てもおかしくない。

 ひとまず部屋中に魔法でトラップを仕掛ける。普通のインベイダーなら一つ被弾するだけで原子レベルまで吹き飛ぶ強力な奴だが……

 

 

「こんばんは、忌々しき国崩しと、亡国のお姫様♪」

 

「やっぱりあんたか……」

 

 

 窓を開けて優雅に入ってきたのは、真っ黒な全身タイツに真っ黒な髪をした女だ。

 夜の女帝。インベイダーの帝国のトップが現れたのだ。

 その実力はトップクラス。ボクでも勝てるかどうかわからない相手だ。

 

 ユグドラシルにいたときには何度かやりあったが、結局勝負はつかなかった。

 

 

「サクヤ、ウズメを抱えてて。ほかに伏兵もいるかもしれないから注意して!」

 

 

 サクヤにウズメを投げ渡しながら、ボクは魔法を使う。

 準備していた指向性爆発魔法が作動し、光の筋が夜の女帝に殺到する。

 

 すさまじい爆音と光に当たりが包まれ、一瞬の後にすさまじい爆風が部屋を荒らしまわる。

 その風に乗って、サクヤが外に逃げたのを確認しつつ、ボクはハンマーを構えた。

 

 

「ふふ、情熱的なお出迎えで」

 

「ほとんど効いていないか」

 

 

 夜の女帝は何事もなかったかのような態度でボクの向かいで武器を構えた。

 魔法使いがよく使うロッドだ。

 

 

「ウズメさんに用があったのですが…… まあいいでしょう。貴女との決着、今日こそつけさせてもらいますわ」

 

「しっ!!!」

 

 

 思いっきりハンマーを振り回して相手に殴りかかる。

 しかしボクの攻撃は相手をとらえたにもかかわらず、その場で停止してしまった。

 

 

「夜の衣、相変わらず厄介ですね」

 

 

 夜の女帝を最強たらしめている絶対防具、夜の衣。

 攻撃の威力のほぼすべてををカットするそれは、絶対の守りとして彼女を守っている。

 

 女帝の振る杖を躱し、後ろに跳び退くことで一度距離をとる。

 夜の衣の弱点は、少しはダメージを通すことだ。つまり大威力の攻撃をぶち当てる必要がある。

 

 

「さて、今回はどんな方法を使うのかしら?」

 

 

 炎、氷、雷といった多彩な魔法の矢が飛んでくるのを躱しながら、ボクは考える。

 

 今まで彼女と戦ったのはすべてユグドラシルで、しかも周りの影響を考えなくていい場所ばかりだった。

 なので超高威力の極大魔法を遠慮なくぶっ放せた。

 

 しかしここは違う。町のど真ん中だし、直線距離で1kmも行かないうちに駅すら存在する。

 半径数kmを吹き飛ばす極大魔法なんて使うことができない。

 

 

「ルミナスレイ!!!」

 

 

 数百もの光の玉を手の振りに合わせて四方八方にばらまく。

 そこから光線を発射し、相手に集中する形でぶち当てる。

 

 

「悪くはない攻撃だけど、力不足ね」

 

 

 光が収まる前に、女帝がボクに突っ込んでくる。

 杖とハンマーの鍔迫り合いをするが、彼女の方が圧倒的に余裕がある。

 

 ルミナスレイはボクの使える魔法ではかなり高威力なものだったのだが、ほとんど効き目が確認できない。

 先ほどの指向性爆発魔法マジカルクレイモア集中型も効かなかったし、これ以上の威力ととなるとあたり一面吹き飛ばすようなものしかない。

 

 ためしに何度か殴ってみるが、鋼鉄か何かを殴っているかのようで全く効果が見られない。

 今の時点では優勢だが、時機にこちらの魔力や体力が尽きて不利になりそうだ。

 

 耐久戦しかないかもしれない。そのうち援軍も来るだろうし、そうなってから少しずつ向こうの魔力や体力を削って、撤退に追い込むしかないだろう。

 そう思っていたのだが……

 

 

「なにっ!?」

 

 

 ボクの真横を光の魔法が貫いていく。その光は夜の女王の腕を貫いた。

 何事かと振り向くと、そこにはウズメを抱えたサクヤがいた。

 

 ウズメの手はこちらに向いている。今の魔法、もしかしてウズメが使ったの!?

 夜の衣をぶち抜く魔法ってどんな威力しているんだ。

 

 ボクも動揺したが、それ以上に動揺したのは夜の女帝の方だった。

 

 

「くっ、やはり危険な存在だなっ」

 

「うちのかわいい子の悪口は止めてよね!!」

 

「そんな化け物をよく子供などと言えるものだな!」

 

 

 捨て台詞を吐いて消える夜の女帝。

 あたりには静寂が戻る中、く~というかわいらしいウズメのお腹の虫の鳴き声が響いた。




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