デュエル・マスターズAZ   作:柿田

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その2「ザックとピザン」

 俺の目の前には、戦士を乗せた巨大なドラゴン・勝利宣言鬼丸「覇」が、背には逃げ遅れた人々のいるカジノがあった。

 こうなった以上は、選択肢は一つだけだ。

 

「いけ!富轟皇 ゴルギーニ・エン・ゲルス!」

 

 俺がカードを取り出して念じると、カードから光が瞬く。

 すると、上空から黄金の巨大ロボットが俺の目の前に降り立った。

 

「ゴルギーニ・エン・ゲルス!鬼丸「覇」を止めろ!」

 

 黄金のロボット────ゴルギーニ・エン・ゲルスは俺の命令に従い、鬼丸「覇」を押さえつける。

 

「……ほう。財前、お前も能力者だったか」

 

「ピザン!何のつもりだ!」

 

 俺が叫ぶと、ピザンは眼鏡を持ち上げながら淡々と答えた。

 

「消えてもらうんだよ。生きてたら追撃してくる可能性があるからな。やるなら徹底的に、だ」

 

「貴様……!」

 

 分かっていたが、マトモな奴ではない。他でも略奪と殺しを繰り返してきたに違いない。

 このまま戦ったら街に被害が出る。デュエルゾーンに引き込むしかない。

 

「背中がガラ空きだぜ!」

 

「っ!」

 

 ガパスタの声がした。その後、大きな打撃音と共にゴルギーニ・エン・ゲルスが体勢を崩して片ひざをつく。

 ゴルギーニ・エン・ゲルスが、後ろから攻撃されたのだ。

 

「ガパスタも能力者か……!」

 

 ガパスタはニヤニヤしながらカードを見せびらかす。奴の後ろには、青い瞳の巨大な蝿────蠅の王 クリス=タブラ=ラーサがいた。

 

「俺と兄貴は無敵だ!敵うわけねぇだろ!」

 

「くっ……!」

 

 鬼丸「覇」の牙とタブラ=ラーサ。二つの攻撃が、ゴルギーニ・エン・ゲルスを襲う。硬いはずの装甲には、多数の傷がついていた。

 流石に、巨大クリーチャー相手に二体一はキツイ。

 デュエルゾーンに引き込もうとしても、片方に逃げられる可能性もある。そうなれば、街が破壊されるかもしれない。

 

「死ね!財前!」

 

 ガパスタは、明確に殺意を向けてくる。俺を亡き者にしようと力を振るう。

 タブラ=ラーサの拳が、ゴルギーニ・エン・ゲルスに振り下ろされようとしていた。

 

「させない!」

 

 女の声が聞こえた。

 それと同時に、砲撃音のようなものが上空に響き渡った。

 

「なにっ!?」

 

 ガパスタが驚愕する。

 砲撃が当たって、拳を振り上げていたタブラ=ラーサが、体勢を崩したからだ。

 タブラ=ラーサを止められるほどの砲撃を撃てるのは、クリーチャーしかない。そして、そのクリーチャーを操ってる人間を、俺は知っている。

 

「アンナ!」

 

 後ろを振り向くと、長い黒髪の女────助手のアンナがいた。

 そのアンナの頭上には、白銀の空中戦艦のようなクリーチャーである、氷結龍 ダイヤモンド・クレバスの姿があった。

 

「ザックさん!みんなは逃がしたよ!」

 

「よし!よくやった!」

 

 カジノには緊急用の避難出入り口がある。そこから、カジノの連中を避難させたのだ。

 

「嬢ちゃんも能力者か!」

 

 ガパスタが俺達を睨む。その瞳からは、有利な状況を覆された怒りを感じる。

 何をしでかすか分からない。とにかく、ピザンとガパスタ無力化させる必要があった。

 俺はカードの束────デッキを構えると、アンナに問う。

 

「アンナ、準備は良いな?やるぞ!」

 

「うん!」

 

 アンナも同じくデッキを構えた。

 デュエル・マスターズの能力者を相手にすると、周囲に被害が及ぶ。それを少しでも抑える方法があった。それを、俺とアンナはやろうとしている。

 

「まさか……!」

 

 ピザンは、これから何が起こるのか察しているのか呟いた。しかし、もう遅い!

 俺とアンナは同時に叫んだ。

 

「デュエルゾーン、展開!」

 

 周囲の風景が、漆黒に塗り替わっていった。

 

 

 

「財前、デュエルなら勝てるとでも思ったのか?」

 

 暗闇の向こうから声がする。ピザンの声だ。少しずつだが、姿も見えてきた。

 眼鏡の奥の瞳は、真っ直ぐに俺を見ていた。

 

「デュエルなら、じゃない。デュエルでも、だ」

 

 俺は五枚のシールドを展開する。デュエルを開始するという意思表示だ。

 

「舐めるな。財前!シールド展開!」

 

 ピザンも五枚のシールドを展開した。互いを守る盾が並んだ。

 

「デュエル!」

 

 俺とピザンのデュエルが始まった。

 

 

 

 デュエルはピザンの二ターン目で、早速動きがあった。

 

ピザン

●手札…四枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…二枚

 

「呪文、メンデルゾーンを発動!デッキを二枚捲ってドラゴンをマナに置く」

 

 ボルシャック・栄光・ルピアと勝利宣言鬼丸「覇」がマナに置かれた。どちらもドラゴンだ。

 これでピザンのマナは四枚。メンデルゾーンによる序盤からの大量ブーストは、ドラゴンデッキの定番だ。

 

「ターンエンド……財前。次の俺のターンに地獄を見せてやろう」

 

 ピザンの口元が笑みで歪む。既に俺を倒す算段を立てているらしい。

 

「俺のターン」

 

 奴が何を考えていても関係ない。俺はカードを引くだけだ。

 

 

ザック

●手札…五枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 忍式の聖沌 y4kk0

●マナ…一枚

 

「マナチャージ。俺は、ボルシャックの古代神殿を出す」

 

 俺のシールドの前に太陽を模した神殿が現れる。この神殿は、クリーチャーにスピードアタッカーとブロッカーの効果を与える。

 

「バトルだ!y4kk0でシールドを攻撃、革命チェンジで手札のドラン・ゴル・ゲルスと入れ替える!」

 

 バトルゾーンにいた、刀を背負った忍びを思わせるクリーチャーが、後方からやってきたドラゴンを模した車のクリーチャーと入れ替わる。

 

「ドラン・ゴル・ゲルスの効果を発動!自身のシールドを一枚ブレイクし、手札からアストマープルT-3をバトルゾーンに出す。アストマープルの効果で、手札から単騎連射マグナムをバトルゾーンへ!」

 

 紫色の車と、ガンマンのような人形が続けてバトルゾーンに出現する。一気に俺のバトルゾーンのクリーチャーは三体に増えた。

 

「攻撃は終わってない!ドラン・ゴル・ゲルスでシールドをブレイク!」

 

 紫色の車型ドラゴンロボが、ピザンのシールドを踏み潰す。

 ピザンはシールドを確認する。シールドのカードを見て、目つきが険しくなった。

 

「チィ……!」

 

 こちはを睨むピザン。その視線の先には、マグナムがいた。

 マグナムは踏み倒して出てきたクリーチャーを墓地に送るカードだ。トリガーが出ても、クリーチャーであれば出しても意味がない。

 

「ターンエンドだ」

 

ザック

●手札…二枚(一枚は忍式の聖沌 y4kk0)

●シールド…四枚

●バトルゾーン

 ドラン・ゴル・ゲルス

 アストマープルT-3

 単騎連射マグナム

 ボルシャックの古代神殿

●マナ…二枚

 

「俺のターン……!」

 

 ピザンは勢い良くカードを引く。

 

ピザン

●手札…五枚

●シールド…四枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…四枚

 

「マナチャージして、王来英雄モモキングRXを召喚!」

 

 刀を持った侍のドラゴンが、桜吹雪と共にバトルゾーンに舞い降りた。

 

「モモキングRXの登場時効果。手札一枚を墓地に送って、二枚ドロー。そして、モモキングRXを王闘竜皇ボルシャック・ドラゴンに進化!」

 

 モモキングRXが、燃える炎の拳を宿した王闘竜皇ボルシャック・ドラゴンへと進化を遂げる。その熱気は、こちらにも伝わってくる。

 

「ボルシャックの効果発動!マグナム、ボルシャックをお前とバトルさせる!」

 

 ピザンがマグナムを指差す。マグナムが邪魔で仕方ないらしい。

 

「マグナム、か……良いんだな?」

 

「ああ。トドメまで刺したいが、防がれる可能性もある。ならば、返しのターンにマグナムがいては困る。それに、ドラン・ゴル・ゲルスのメガラストバーストも厄介だ。マグナムに消えてもらう!」

 

 ピザンの顔は、邪魔者を排除できる歓喜に歪んでいた。

 俺の忠告を無視して、ボルシャックに攻撃を命じる。ボルシャックの拳に、マグナムはアッサリと潰されてしまう。

 

「ボルシャックの効果!ボルシャックのパワーである12000以下のクリーチャーをマナから呼び出す!来い!我が切札、鬼丸「覇」!」

 

 ピザンの後方から、戦士を乗せた藍色のドラゴンが飛翔する。鬼丸「覇」も恐ろしい力を秘めたクリーチャーだ。

 

「鬼丸「覇」でシールドを攻撃!貴様も終わりだな!財前!」

 

 鬼丸「覇」が、俺のシールドへと飛んでくる。コイツは、Tブレイカーを持つ。

 さらに、王闘竜皇ボルシャックは攻撃時にもバトルする効果を持つ。間違いなく使うだろう。

 しかし、俺にとっては今の状況はチャンスでしか無かった。

 

「……この瞬間を待っていた!」

 

「何ッ!?」

 

 ピザンは目と口を大きく開く。この瞬間に、俺が動くことなど予想などしていなかったようだ。

 俺は手札からバトルゾーンにカードを投げる。

 

「ニンジャチェンジ5!発動!いけ、聖カオスマントラ!」

 

「コイツは……!」

 

 ドラン・ゴル・ゲルスが、顔に回転刃を着けたクリーチャー────カオスマントラと入れ替わる。

 ニンジャチェンジは、相手が攻撃かブロックした時に発動できる効果だ。条件に見合ったクリーチャーがバトルゾーンに居たら、手札のカードと入れ替わる。

 カオスマントラは、コスト5以上のメカでないとチェンジ出来ない。だから、ドラン・ゴル・ゲルスが残ったのはありがたかった。

 

「場を離れたからゲルスのメガ・ラスト・バーストが発動する。デッキの上から一枚をシールド化だ」

 

 これで俺のシールドは五枚に戻った。さらに、このシールドは次の俺のターンまでトリガーを持つ。

 

「そして、カオスマントラの効果を発動!相手のクリーチャーを全員タップ!」

 

「何っ!?」

 

 カオスマントラが印を切ると、地面から鎖が出現した。ボルシャックが鎖に縛られて身動きできなくなった。

 ボルシャックで攻撃するつもりだったのだろうか。ピザンの顔は、怒りに歪んだ。

 

「だが、鬼丸「覇」の攻撃は残ってるぞ!ガチンコジャッジだ!」

 

 攻撃時に互いデッキの上を捲って、出たカードのコストを比べる。自分のカードのコストが相手より高ければ効果が発動し、低ければ発動しないという能力だ。

 鬼丸「覇」の能力は、ガチンコジャッジで勝てば追加ターンを得るという強力なものだ。

 

「いくぞ!ガチンコジャッジ!」

 

 俺達はカードを捲った。互いのカードを提示する。

 

「鎧機天シロフェシー。コスト4だ」

 

「なっ……コスト2のメンデルスゾーン……!クソ!」

 

 俺がコスト4、ピザンは2。俺が勝ったから鬼丸「覇」の効果は発動しない。

 ここで勝って、さらにドラゴンを展開していくつもりだったのだろう。

 

「運に見放されたようだな、ピザン」

 

「黙れ!このままシールドを三枚ブレイクだ!」

 

 鬼丸「覇」が、炎を吐き出す。三枚のシールドは、粉々に砕ける。

 

「くっ……!」

 

 三枚分の破片が俺に向かって飛んでくる。破片の雨を潜り抜け、カードを手にする。

 

「来た……!S・トリガー、メガ・ブレードドラゴンを召喚!相手のブロッカーを全て破壊だ!」

 

「俺のブロッカーは……そういうことか!」

 

 ピザンは自分の状況を察したのか、眉を寄せる。

 ピザンの場にブロッカーを持つクリーチャーは、本来はいない。だが、今は俺のボルシャックの古代神殿の効果でブロッカーを持っている。

 メガ・ブレードが背中の刃で、鬼丸「覇」と王闘竜皇ボルシャックを切り裂いた。

 

「させん!ボルシャックは自身の下のカードをすべて墓地に置いて場に留まる!」

 

 ボルシャックは満身創痍ながら、その場に留まった。これで、ピザンに攻撃できるクリーチャーはいない。

 

「チィ!ターンエンドだ!だが、次で仕留める!それは忘れるな!」

 

ピザン

●手札…四枚

●シールド…四枚

●バトルゾーン

 王闘竜皇ボルシャック・ドラゴン

●マナ…三枚

 

 確かに、ピザンが有利だ。シールドは俺の方が少ないし、クリーチャーもボルシャックを上回るクリーチャーはいない。

 

「そうだな。だから、俺も決めさせてもらう!」

 

「なっ……!?」

 

 ピザンの顔が再び驚愕に歪む。

 ありえない。このターンで四枚のシールドを割って決められるわけがない。そんな顔だ。

 それでも、俺は勝たなければならない。もう、何も失わないためにも!

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 俺はカードを引いた。

 

ザック

●手札…四枚(忍式の聖沌 y4kk0)

●シールド…四枚

●バトルゾーン

 聖カオスマントラ

 アストマープルT-3

 メガ・ブレード・ドラゴン

 ボルシャックの古代神殿

●マナ…二枚

 

「マナチャージ。忍鎖の聖沌 94nm4を召喚。そして、アストマープルでシールドを攻撃!」

 

 鎖の身体を持つクリーチャーが現れる。入れ替わるように、アストマープルがシールドへと突撃する。

 

「革命チェンジ!シロフェシーをバトルゾーンへ!Wブレイク!」

 

 槍の戦士が、二枚のシールドを砕く。

 これで、ピザンの残りシールドは二枚だ。

 

「ぐ……!S・トリガー!王闘の大地!デッキをシャッフル、デッキの上から五枚確認してネオ・ボルシャック・ドラゴンをバトルゾーンに出す!」

 

 拳に青い炎を纏わせたドラゴンが行く手を阻む。カードの効果で、今のネオはブロッカー効果を得ている。

 

「無駄だ!カオスマントラでシールドを攻撃!クリーチャーを全員タップさせる!」

 

「なんだと!?」

 

 カオスマントラは、ネオ・ボルシャックの巨体を通り抜けてシールド砕く。

 これでピザンのシールドは全てなくなった。

 

「忍鎖の聖沌 94nm4で攻撃!効果でシールドを追加し、メカ・メクレイド5を発動!デッキの上の三枚を確認してクノイチマントラをバトルゾーンに出す!」

 

 刀を持った顔に回転刃を持ったクリーチャーが現れる。その姿はカオスマントラを思わせる。

 これが決まれば勝てるが、それで終わるピザンではない。

 

「手札からボルシャック・ドギラゴンの革命0を発動!デッキの上から鬼丸「覇」をバトルゾーンに出して、その上に重ねる!94nm4をバトルして破壊だ!」

 

 ピザンに向かっていた鎖が、ボルシャック・ドギラゴンに引きちぎられた。

 攻撃は防がれたが、俺のクリーチャーはまだ残っている。

 

「クノイチマントラで攻撃!そして、革命チェンジ!富轟皇ゴルギーニ・エン・ゲルス!」

 

 くノ一と黄金のロボットが入れ替わる。ゴルギーニは、巨大な剣を携えてピザンに向かって走る。

 

「これで終わりだ!ダイレクトアタック!」

 

 ゴルギーニ・エン・ゲルスの黄金の剣が、全てを切り裂いた。

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