俺の目の前には、戦士を乗せた巨大なドラゴン・勝利宣言鬼丸「覇」が、背には逃げ遅れた人々のいるカジノがあった。
こうなった以上は、選択肢は一つだけだ。
「いけ!富轟皇 ゴルギーニ・エン・ゲルス!」
俺がカードを取り出して念じると、カードから光が瞬く。
すると、上空から黄金の巨大ロボットが俺の目の前に降り立った。
「ゴルギーニ・エン・ゲルス!鬼丸「覇」を止めろ!」
黄金のロボット────ゴルギーニ・エン・ゲルスは俺の命令に従い、鬼丸「覇」を押さえつける。
「……ほう。財前、お前も能力者だったか」
「ピザン!何のつもりだ!」
俺が叫ぶと、ピザンは眼鏡を持ち上げながら淡々と答えた。
「消えてもらうんだよ。生きてたら追撃してくる可能性があるからな。やるなら徹底的に、だ」
「貴様……!」
分かっていたが、マトモな奴ではない。他でも略奪と殺しを繰り返してきたに違いない。
このまま戦ったら街に被害が出る。デュエルゾーンに引き込むしかない。
「背中がガラ空きだぜ!」
「っ!」
ガパスタの声がした。その後、大きな打撃音と共にゴルギーニ・エン・ゲルスが体勢を崩して片ひざをつく。
ゴルギーニ・エン・ゲルスが、後ろから攻撃されたのだ。
「ガパスタも能力者か……!」
ガパスタはニヤニヤしながらカードを見せびらかす。奴の後ろには、青い瞳の巨大な蝿────蠅の王 クリス=タブラ=ラーサがいた。
「俺と兄貴は無敵だ!敵うわけねぇだろ!」
「くっ……!」
鬼丸「覇」の牙とタブラ=ラーサ。二つの攻撃が、ゴルギーニ・エン・ゲルスを襲う。硬いはずの装甲には、多数の傷がついていた。
流石に、巨大クリーチャー相手に二体一はキツイ。
デュエルゾーンに引き込もうとしても、片方に逃げられる可能性もある。そうなれば、街が破壊されるかもしれない。
「死ね!財前!」
ガパスタは、明確に殺意を向けてくる。俺を亡き者にしようと力を振るう。
タブラ=ラーサの拳が、ゴルギーニ・エン・ゲルスに振り下ろされようとしていた。
「させない!」
女の声が聞こえた。
それと同時に、砲撃音のようなものが上空に響き渡った。
「なにっ!?」
ガパスタが驚愕する。
砲撃が当たって、拳を振り上げていたタブラ=ラーサが、体勢を崩したからだ。
タブラ=ラーサを止められるほどの砲撃を撃てるのは、クリーチャーしかない。そして、そのクリーチャーを操ってる人間を、俺は知っている。
「アンナ!」
後ろを振り向くと、長い黒髪の女────助手のアンナがいた。
そのアンナの頭上には、白銀の空中戦艦のようなクリーチャーである、氷結龍 ダイヤモンド・クレバスの姿があった。
「ザックさん!みんなは逃がしたよ!」
「よし!よくやった!」
カジノには緊急用の避難出入り口がある。そこから、カジノの連中を避難させたのだ。
「嬢ちゃんも能力者か!」
ガパスタが俺達を睨む。その瞳からは、有利な状況を覆された怒りを感じる。
何をしでかすか分からない。とにかく、ピザンとガパスタ無力化させる必要があった。
俺はカードの束────デッキを構えると、アンナに問う。
「アンナ、準備は良いな?やるぞ!」
「うん!」
アンナも同じくデッキを構えた。
デュエル・マスターズの能力者を相手にすると、周囲に被害が及ぶ。それを少しでも抑える方法があった。それを、俺とアンナはやろうとしている。
「まさか……!」
ピザンは、これから何が起こるのか察しているのか呟いた。しかし、もう遅い!
俺とアンナは同時に叫んだ。
「デュエルゾーン、展開!」
周囲の風景が、漆黒に塗り替わっていった。
「財前、デュエルなら勝てるとでも思ったのか?」
暗闇の向こうから声がする。ピザンの声だ。少しずつだが、姿も見えてきた。
眼鏡の奥の瞳は、真っ直ぐに俺を見ていた。
「デュエルなら、じゃない。デュエルでも、だ」
俺は五枚のシールドを展開する。デュエルを開始するという意思表示だ。
「舐めるな。財前!シールド展開!」
ピザンも五枚のシールドを展開した。互いを守る盾が並んだ。
「デュエル!」
俺とピザンのデュエルが始まった。
デュエルはピザンの二ターン目で、早速動きがあった。
ピザン
●手札…四枚
●シールド…五枚
●バトルゾーン
無し
●マナ…二枚
「呪文、メンデルゾーンを発動!デッキを二枚捲ってドラゴンをマナに置く」
ボルシャック・栄光・ルピアと勝利宣言鬼丸「覇」がマナに置かれた。どちらもドラゴンだ。
これでピザンのマナは四枚。メンデルゾーンによる序盤からの大量ブーストは、ドラゴンデッキの定番だ。
「ターンエンド……財前。次の俺のターンに地獄を見せてやろう」
ピザンの口元が笑みで歪む。既に俺を倒す算段を立てているらしい。
「俺のターン」
奴が何を考えていても関係ない。俺はカードを引くだけだ。
ザック
●手札…五枚
●シールド…五枚
●バトルゾーン
忍式の聖沌 y4kk0
●マナ…一枚
「マナチャージ。俺は、ボルシャックの古代神殿を出す」
俺のシールドの前に太陽を模した神殿が現れる。この神殿は、クリーチャーにスピードアタッカーとブロッカーの効果を与える。
「バトルだ!y4kk0でシールドを攻撃、革命チェンジで手札のドラン・ゴル・ゲルスと入れ替える!」
バトルゾーンにいた、刀を背負った忍びを思わせるクリーチャーが、後方からやってきたドラゴンを模した車のクリーチャーと入れ替わる。
「ドラン・ゴル・ゲルスの効果を発動!自身のシールドを一枚ブレイクし、手札からアストマープルT-3をバトルゾーンに出す。アストマープルの効果で、手札から単騎連射マグナムをバトルゾーンへ!」
紫色の車と、ガンマンのような人形が続けてバトルゾーンに出現する。一気に俺のバトルゾーンのクリーチャーは三体に増えた。
「攻撃は終わってない!ドラン・ゴル・ゲルスでシールドをブレイク!」
紫色の車型ドラゴンロボが、ピザンのシールドを踏み潰す。
ピザンはシールドを確認する。シールドのカードを見て、目つきが険しくなった。
「チィ……!」
こちはを睨むピザン。その視線の先には、マグナムがいた。
マグナムは踏み倒して出てきたクリーチャーを墓地に送るカードだ。トリガーが出ても、クリーチャーであれば出しても意味がない。
「ターンエンドだ」
ザック
●手札…二枚(一枚は忍式の聖沌 y4kk0)
●シールド…四枚
●バトルゾーン
ドラン・ゴル・ゲルス
アストマープルT-3
単騎連射マグナム
ボルシャックの古代神殿
●マナ…二枚
「俺のターン……!」
ピザンは勢い良くカードを引く。
ピザン
●手札…五枚
●シールド…四枚
●バトルゾーン
無し
●マナ…四枚
「マナチャージして、王来英雄モモキングRXを召喚!」
刀を持った侍のドラゴンが、桜吹雪と共にバトルゾーンに舞い降りた。
「モモキングRXの登場時効果。手札一枚を墓地に送って、二枚ドロー。そして、モモキングRXを王闘竜皇ボルシャック・ドラゴンに進化!」
モモキングRXが、燃える炎の拳を宿した王闘竜皇ボルシャック・ドラゴンへと進化を遂げる。その熱気は、こちらにも伝わってくる。
「ボルシャックの効果発動!マグナム、ボルシャックをお前とバトルさせる!」
ピザンがマグナムを指差す。マグナムが邪魔で仕方ないらしい。
「マグナム、か……良いんだな?」
「ああ。トドメまで刺したいが、防がれる可能性もある。ならば、返しのターンにマグナムがいては困る。それに、ドラン・ゴル・ゲルスのメガラストバーストも厄介だ。マグナムに消えてもらう!」
ピザンの顔は、邪魔者を排除できる歓喜に歪んでいた。
俺の忠告を無視して、ボルシャックに攻撃を命じる。ボルシャックの拳に、マグナムはアッサリと潰されてしまう。
「ボルシャックの効果!ボルシャックのパワーである12000以下のクリーチャーをマナから呼び出す!来い!我が切札、鬼丸「覇」!」
ピザンの後方から、戦士を乗せた藍色のドラゴンが飛翔する。鬼丸「覇」も恐ろしい力を秘めたクリーチャーだ。
「鬼丸「覇」でシールドを攻撃!貴様も終わりだな!財前!」
鬼丸「覇」が、俺のシールドへと飛んでくる。コイツは、Tブレイカーを持つ。
さらに、王闘竜皇ボルシャックは攻撃時にもバトルする効果を持つ。間違いなく使うだろう。
しかし、俺にとっては今の状況はチャンスでしか無かった。
「……この瞬間を待っていた!」
「何ッ!?」
ピザンは目と口を大きく開く。この瞬間に、俺が動くことなど予想などしていなかったようだ。
俺は手札からバトルゾーンにカードを投げる。
「ニンジャチェンジ5!発動!いけ、聖カオスマントラ!」
「コイツは……!」
ドラン・ゴル・ゲルスが、顔に回転刃を着けたクリーチャー────カオスマントラと入れ替わる。
ニンジャチェンジは、相手が攻撃かブロックした時に発動できる効果だ。条件に見合ったクリーチャーがバトルゾーンに居たら、手札のカードと入れ替わる。
カオスマントラは、コスト5以上のメカでないとチェンジ出来ない。だから、ドラン・ゴル・ゲルスが残ったのはありがたかった。
「場を離れたからゲルスのメガ・ラスト・バーストが発動する。デッキの上から一枚をシールド化だ」
これで俺のシールドは五枚に戻った。さらに、このシールドは次の俺のターンまでトリガーを持つ。
「そして、カオスマントラの効果を発動!相手のクリーチャーを全員タップ!」
「何っ!?」
カオスマントラが印を切ると、地面から鎖が出現した。ボルシャックが鎖に縛られて身動きできなくなった。
ボルシャックで攻撃するつもりだったのだろうか。ピザンの顔は、怒りに歪んだ。
「だが、鬼丸「覇」の攻撃は残ってるぞ!ガチンコジャッジだ!」
攻撃時に互いデッキの上を捲って、出たカードのコストを比べる。自分のカードのコストが相手より高ければ効果が発動し、低ければ発動しないという能力だ。
鬼丸「覇」の能力は、ガチンコジャッジで勝てば追加ターンを得るという強力なものだ。
「いくぞ!ガチンコジャッジ!」
俺達はカードを捲った。互いのカードを提示する。
「鎧機天シロフェシー。コスト4だ」
「なっ……コスト2のメンデルスゾーン……!クソ!」
俺がコスト4、ピザンは2。俺が勝ったから鬼丸「覇」の効果は発動しない。
ここで勝って、さらにドラゴンを展開していくつもりだったのだろう。
「運に見放されたようだな、ピザン」
「黙れ!このままシールドを三枚ブレイクだ!」
鬼丸「覇」が、炎を吐き出す。三枚のシールドは、粉々に砕ける。
「くっ……!」
三枚分の破片が俺に向かって飛んでくる。破片の雨を潜り抜け、カードを手にする。
「来た……!S・トリガー、メガ・ブレードドラゴンを召喚!相手のブロッカーを全て破壊だ!」
「俺のブロッカーは……そういうことか!」
ピザンは自分の状況を察したのか、眉を寄せる。
ピザンの場にブロッカーを持つクリーチャーは、本来はいない。だが、今は俺のボルシャックの古代神殿の効果でブロッカーを持っている。
メガ・ブレードが背中の刃で、鬼丸「覇」と王闘竜皇ボルシャックを切り裂いた。
「させん!ボルシャックは自身の下のカードをすべて墓地に置いて場に留まる!」
ボルシャックは満身創痍ながら、その場に留まった。これで、ピザンに攻撃できるクリーチャーはいない。
「チィ!ターンエンドだ!だが、次で仕留める!それは忘れるな!」
ピザン
●手札…四枚
●シールド…四枚
●バトルゾーン
王闘竜皇ボルシャック・ドラゴン
●マナ…三枚
確かに、ピザンが有利だ。シールドは俺の方が少ないし、クリーチャーもボルシャックを上回るクリーチャーはいない。
「そうだな。だから、俺も決めさせてもらう!」
「なっ……!?」
ピザンの顔が再び驚愕に歪む。
ありえない。このターンで四枚のシールドを割って決められるわけがない。そんな顔だ。
それでも、俺は勝たなければならない。もう、何も失わないためにも!
「俺のターン、ドロー!」
俺はカードを引いた。
ザック
●手札…四枚(忍式の聖沌 y4kk0)
●シールド…四枚
●バトルゾーン
聖カオスマントラ
アストマープルT-3
メガ・ブレード・ドラゴン
ボルシャックの古代神殿
●マナ…二枚
「マナチャージ。忍鎖の聖沌 94nm4を召喚。そして、アストマープルでシールドを攻撃!」
鎖の身体を持つクリーチャーが現れる。入れ替わるように、アストマープルがシールドへと突撃する。
「革命チェンジ!シロフェシーをバトルゾーンへ!Wブレイク!」
槍の戦士が、二枚のシールドを砕く。
これで、ピザンの残りシールドは二枚だ。
「ぐ……!S・トリガー!王闘の大地!デッキをシャッフル、デッキの上から五枚確認してネオ・ボルシャック・ドラゴンをバトルゾーンに出す!」
拳に青い炎を纏わせたドラゴンが行く手を阻む。カードの効果で、今のネオはブロッカー効果を得ている。
「無駄だ!カオスマントラでシールドを攻撃!クリーチャーを全員タップさせる!」
「なんだと!?」
カオスマントラは、ネオ・ボルシャックの巨体を通り抜けてシールド砕く。
これでピザンのシールドは全てなくなった。
「忍鎖の聖沌 94nm4で攻撃!効果でシールドを追加し、メカ・メクレイド5を発動!デッキの上の三枚を確認してクノイチマントラをバトルゾーンに出す!」
刀を持った顔に回転刃を持ったクリーチャーが現れる。その姿はカオスマントラを思わせる。
これが決まれば勝てるが、それで終わるピザンではない。
「手札からボルシャック・ドギラゴンの革命0を発動!デッキの上から鬼丸「覇」をバトルゾーンに出して、その上に重ねる!94nm4をバトルして破壊だ!」
ピザンに向かっていた鎖が、ボルシャック・ドギラゴンに引きちぎられた。
攻撃は防がれたが、俺のクリーチャーはまだ残っている。
「クノイチマントラで攻撃!そして、革命チェンジ!富轟皇ゴルギーニ・エン・ゲルス!」
くノ一と黄金のロボットが入れ替わる。ゴルギーニは、巨大な剣を携えてピザンに向かって走る。
「これで終わりだ!ダイレクトアタック!」
ゴルギーニ・エン・ゲルスの黄金の剣が、全てを切り裂いた。