デュエル・マスターズAZ   作:柿田

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その3「アンナとガパスタ」

 私は、お母さんから子どもの頃にデュエマを教わった。

 それは遊びじゃなくて、自分の身を守るため。私にはデュエマのカードを具現化する力があるからだ。

 でも、お母さんからは出来ることなら力を使うなと言われた。私が傷つき、誰かを傷つけて欲しくないからだ。

 今、私はお母さんの嫌う傷つけ合う戦いをしている。

 

「お母さん……ごめんなさい……それでも……!」

 

アンナ

●手札…五枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 桜風妖精ステップル

●マナ…三枚

 

ガパスタ

●手札…三枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…五枚(水晶三枚)

 

 

「嬢ちゃん、何をぶつくさ言ってんだ?さっさとターンを進めろ!すり潰してやるよ……!」

 

 ガパスタという人は私を見ながら舌なめずりする。下品な笑みを浮かべている。

 負けられない!ザックさんや街のみんなのためにも!

 

「マナチャージ。呪文、探求の絆を発動!デッキの上から四枚を見て百景妖精アセビ=アンドロメダ=クシナダをバトルゾーンに出す!」

 

 ステップルの上にアセビを重ねる。これで、ステップルが除去されてもマナは離れない。

 

「アセビの効果。手札から恋愛妖精アジサイをバトルゾーンに出す!一枚ドロー!」

 

 アセビは効果で選ばれないジャストダイバーを持つ。そして、アジサイは破壊されたらマナに送られる。

 ガパスタ次第ではあるけど、最初の準備はできた。

 

「ターンエンド」

 

アンナ

●手札…三枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 百景妖精アセビ=アンドロメダ=クシナダ

 恋愛妖精アジサイ

●マナ…四枚

 

「俺のターン。ドロー!」

 

ガパスタ

●手札…四枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…五枚(水晶三枚)

 

「マナチャージ。その可愛らしいクリーチャー共を潰してやるよ!「無」の頂天タブラ=ラーサを召喚!」

 

 巨大な白い蝿が、バトルゾーンに降り立った。その姿は美しくも不気味であった。

 タブラ=ラーサはコスト12だが、裏向きに置かれたマナ────水晶マナを召喚の際に一つ3マナとして扱う事が出来る。

 だから、マナが六枚でも召喚出来る。そして、その効果は強力なものだ。

 

「召喚時効果を発動!デッキの上を二枚裏向きでマナゾーンに置いて、水晶マナの数一つにつき無色以外のクリーチャーのパワーマイナス2000だ!」

 

 向こうのマナに水晶マナは五枚。つまり、マイナス10000だ。

 アセビの選ばれない能力も全体に及ぶ効果には通じない。

 

「アセビを破壊。アジサイはマナに置かれる……」

 

 これでマナは五枚。墓地のスノーフェアリーは二枚。バトルゾーンはゼロだ。

 

「ターンエンド。せっかくの盤面が滅茶苦茶だぜぇ?」

 

 安い挑発。アレに乗る必要はない。

 ザックさんにも、相手の言葉に惑わされるなと厳しく言われてきた。

 

「……私のターン」

 

 とにかくカードを引く。こんな事に付き合ってる暇はないのだ。

 

アンナ

●手札…四枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…五枚

 

「マナチャージ……」

 

 これでマナは六枚。手札三枚。正直、私が勝つには準備が足りない。

 特に、あのタブラ=ラーサが厄介だ。除去しても裏向きマナが三枚あれば耐えてしまうのだ。仮に除去してもゼニスデッキには回収カードが多い。同じく引いてくる可能性は高い。

 

「どうしたよ?降参するかあ?」

 

 ガパスタが鼻で笑う。彼には、次のターンで決める算段があるようだ。

 

「降参?無いよ。それだけは絶対に」

 

 私は、私を守ってくれたザックさんが好きだ。本当に家族のように思ってる。もちろん、街の人達も同じだ。

 彼の守りたいものを、私も守りたい。その為にも、退くわけにはいかない。

 

「分析妖精レモングラスを召喚。手札のアセビをマナに置く。さらに、呪文のド浮きの動悸をを発動!タブラ=ラーサを手札に戻す!」

 

 タブラ=ラーサは裏向きマナである水晶マナを表にすることで場に留まる効果を持つ。逆に言えば、水晶マナを減らせばタブラ=ラーサの耐性回数を減らせるのだ。少しでも水晶マナを削っておきたかった。

 

「その手には乗らねぇよ。手札に戻すぜ」

 

 タブラ=ラーサはバトルゾーンから姿を消した。水晶マナを削る狙いをガパスタに読まれていたようだ。

 

「水晶マナを削ろうったってそうはいかないね。コイツは俺の戦略の生命線だ。なきゃ困るんだよ」

 

 水晶マナによる大型クリーチャーの召喚。それこそがゼニスの強みだ。ガパスタとしても守りたいのは当たり前だろう。

 

「……ド浮きの動悸の効果で一枚ドロー。ターンエンド」

 

 とりあえずの仕込みは終わった。後は次のターンが回ってくるか。そして、その時の自分の手札次第だ。

 

アンナ

●手札…一枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 分析妖精レモングラス

●マナ…七枚

 

「俺のターンだぜ。ドロー」

 

 次はガパスタのターンだ。ガパスタは、カードを引いた。

 

ガパスタ

●手札…四枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…八枚(水晶五枚)

 

「嬢ちゃん、最後通告ってやつだ。降参するなら命くらいは助けてやるぜ?俺はデュエルで散々命を奪ってきた。今回も間違いなくそうなるからな」

 

「何で言い切れるの?」

 

「切り札が来たからだよ。お前をぶっつぶすな」

 

 切り札。恐らくはすぐに攻撃できるクリーチャーと、革命チェンジ持ちのクリーチャーだろう。水晶マナが五枚あるなら、ゼニスが何体出てきてもおかしくない。

 

「さあ、選べよ。降参か、続行か」

 

「降参はしない!何が来ても絶対に勝つ!」

 

 諦められない理由はあっても、諦める理由なんてない。

 それに、まだトリガーだってある。最後まで何が起こるか分からないのが勝負だ。

 ガパスタは鼻を鳴らす。その鋭い瞳が、私のシールドを見据える。

 

「そうかい……だったら、やらせてもらうぜ!」

 

 明確な敵意を、こちらに向ける。

 ガパスタの猛攻が来る!

 

「Dの寺院 タブラサ・チャンタラムを展開!」

 

 横向きのカード────D2フィールドがバトルゾーンに置かれた。ガパスタの後ろに、蝿の銅像が現れる。

 

「再び、召喚!「無」の頂天タブラ=ラーサ!さらに、チャンタラムのDスイッチ発動!」

 

 大型の蝿のクリーチャーがバトルゾーンに舞い戻った。タブラ=ラーサが出たことで、チャンタラムが起動した。

 

「水晶マナを全てアンタップする!五枚全てな!」

 

「くっ……!」

 

 水晶マナは五枚ある。それら全てが再び使えるのだ。

 それだけではない。さらに、タブラ=ラーサの効果が発動する!

 

「タブラ=ラーサの召喚時効果!裏向きで二枚チャージ、裏向きのマナ一枚につき無色以外のクリーチャーのパワーをマイナス2000!七枚だから合計マイナス14000だ!」

 

「レモングラスを破壊……」

 

 タブラ=ラーサから放たれた瘴気が、レモングラスを蝕む。レモングラスは苦しみ、爆散する。

 

「まだ終わらないぜ!水晶マナ四枚をタップし、「無情」の頂点シャングリラ・ファンタジアを召喚!」

 

「……っ!」

 

 空から、一本角の銀色の巨人が現れた。シャングリラ・ファンタジアだ。

 シャングリラ・ファンタジアもゼニス。厄介な能力を持っている。

 

「シャングリラ・ファンタジアの効果で、俺のクリーチャーは出たターンにプレイヤーを攻撃できる。つまり、タブラ=ラーサは召喚酔いしないってことだ」

 

 そう言うとガパスタは、タブラ=ラーサのカードに手を伸ばす。早速、攻撃が来る!

 

「消えろ……タブラ=ラーサでシールドを攻撃!」

 

 タブラ=ラーサとシャングリラ・ファンタジアはどちらもTブレイカー。そのままではトドメは刺せないが、ゼニスにはシールドを全て吹き飛ばすカードがあった。

 

「そして、タブラ=ラーサを革命チェンジ!手札の蠅の王 クリス=タブラ=ラーサをバトルゾーンへ!」

 

「来た……!」

 

 白い蝿が光に包まれる。光が収まると、より巨大な白い身体と青い瞳の蠅の王が現れた。

 コスト15、パワー57975の凶悪クリーチャーだ。さらに、能力も恐ろしいものであった。

 

「さらに蠅の王の効果を発動!手札を裏向きでマナに置け!」

 

「くっ……」

 

 これが蠅の王の厄介なところだ。手札をいくら溜めても、強制的にマナに置くことになる。だから戦略を狂わされることもある。

 それに、裏向きのマナは文明をもたない無色のマナとして扱う。無色カードを使わないデッキには痛い能力だ。

 

「まだ攻撃が残ってるぜ!ワールドブレイクだ!」

 

「きゃっ……!」

 

 蠅の王が、私のシールドを纏めて鷲掴みする。シールドは、蠅の王の手の中で粉々に砕かれ、投げ捨てられる。

 

「言っておくが、コスト7より小さい呪文は唱えられないぜ!シャングリラを除去してもエターナルKで離れないがなあっ!ハハハハハハハハハハッ!」

 

 呪文封じにゼニスの耐性効果で、ガパスタは勝ちを確信して高笑いする。

 

「うるさい!そんなの関係な……うわっ!」

 

 破片の雨が、私に降り注ぐ。私の頬を、腕を、足を傷つける。分かってはいたけど、全身が痛い。

 ザックさんは、私が子供の頃にコレから私を守ってくれていたんだ。

 

「ぐっ……!シールドチェック!」

 

 だからこそ、まだ倒れるわけにはいかない!もう、守られているばかりの私じゃない!みんなを守れる私になるためにも!

 壊されたシールドのカードに手を伸ばした。

 

「……!来た……!」

 

 シールドから手札に加わるカードを見る。そこには、逆転のカードがあった。

 私は、その中の一枚を掲げた。

 

「Gストライク!一音の妖精!シャングリラ・ファンタジアの攻撃を封じる!」

 

 私のカードから閃光が走る。光はシャングリラを貫き、その巨体は身動きを封じられた。

 

「ああっ!?これじゃシャングリラ・ファンタジアで攻撃出来ねぇ!!」

 

 ガパスタは頭を抱える。

 除去なら効果で耐えれば良いが、攻撃を封じられては何も出来ない。それこそが、ゼニスの弱点だ。

 ガパスタの顔は怒りに歪む。何も出来ないことへの苛立ちをぶつけるかのように、ガパスタは叫んだ。

 

「クソがっ!ターンエンドだ!」

 

ガパスタ

●手札…〇枚

●シールド…五枚

●バトルゾーン

 蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ

 「無情」の頂点 シャングリラ・ファンタジア

●マナ…一〇枚(水晶七枚)

 

 これで私のターンだ。盤面はガパスタが圧倒的に有利だが、私にも逆転の手はある。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 私はカードを引く。恐らくは、これがラストターンだ。

 

アンナ

●手札…六枚

●シールド…〇枚

●バトルゾーン

 無し

●マナ…八枚(水晶マナ一枚)

 

 

「マナチャージ……」

 

 マナにカードを置き、改めて盤面を確認する。

 ガパスタの場には蠅の王とシャングリラ・ファンタジア。呪文は蠅の王の効果で使えないものと考えた方が良いだろう。

 そして、私を守るシールドは存在しない。もう攻撃を防ぐ手段はない。死にたくなければ、このターンで決めるしかない!

 

「背水の陣ってやつだな?死ぬ前のあがきを楽しみにしてるぜ?」

 

 ガパスタは口元を歪ませる。私が何も出来ずにターンエンドすると確信している。

 それを見て、ますます勝ちたくなった。こんな卑劣漢に負けるわけにはいかない。

 

「その悪足掻きが活路を開くところを見せてやる!」

 

 私はマナをタップし、手札のカードを手にする。私の勝利の鍵だ!

 墓地から四枚、マナから四枚、合計八枚カードが集まる。

 

「超無限進化!氷結龍 ダイヤモンド・クレバス!」

 

 八枚のカードの上に、カードを重ねる。すると、白銀のドラゴンが私の頭上に現れた。

 複数のゾーンから条件に合ったカードを進化元に現れる。それが、超無限進化だ。

 

「ダイヤモンド・クレバスは下のカード一枚につきパワーをプラス3000アップする。つまり、パワー27000!さらに、パワードブレイカーでシールドを四枚追加ブレイクする!」

 

 つまり、ガパスタのシールドは五枚全て割られるということだ。

 しかし、ガパスタの表情は変わらない。私を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 

「で、それがどうした?トドメを刺すにはクリーチャーが足りねぇ。クリーチャーを出すにしても、使えるマナは残り五枚。進化クリーチャーを一体出して終わりってところだろうな」

 

 その通りだ。シールドを全て割っても、トドメを刺すクリーチャーがいなければ意味がない。

 ガパスタは続ける。

 

「で、俺のデッキはトリガーとGストライクが合計一〇枚以上は入ってる。確率的に、シールドに一枚くらいはあるかもな。つまり、お前の攻撃は届かない。絶対に、な……ククク……ハハハハハハハハハハ!」

 

 ガパスタが笑う。本当によく笑う人だ。

 そして、その笑い声はうるさい。はっきり言って不愉快だ。

 

「どうでもいいよ。そんな事。勝つのは、私だ!」

 

 ガパスタの笑いが止まる。眉を潜ませ、私を睨みつけてくる。

 

「だったらやってみろや!俺の防御を潜り抜けるのは不可能だろうけどよぉ!」

 

「言われなくてもそのつもりだ!」

 

 怒鳴るガパスタに私は言い返す。ザックさんから弱みを見せたら勝負は負けだと言われている。だから、毅然としてみせる。

 それに、全く勝ち筋がないわけではない。私には、この状況を打破する切り札があるのだ。

 

「ダイヤモンド・クレバスをG-NEO進化!」

 

 ダイヤモンド・クレバスが光りに包まれる。その光から、五台の車が飛び出してきた。

 

「な、なんだってんだ!?」

 

 驚くガパスタをよそに、五台の車は変形を始める。

 

「全車合体!」

 

 私が合図する。変形した車たちが、今度は合体する。

 ある車は脚に。

 ある車は腕に。

 そして、またある車は頭に。

 

「召喚!轟䡛合体 ゴルギーオージャー!」

 

 五つの車は、一つの鋼の戦士に生まれ変わった。

 その大きさは、ゼニス・クリーチャー達ですら圧倒する。まさに、最強の戦士だった。

 ガパスタは息を呑むが、すぐにゴルギーオージャーを睨みつけた。

 

「はっ……お前、話聞いてなかったのかよ!俺のシールドを割ってトドメを刺すには打点が足りねぇ!そして、打点があったとしてもトリガーかGストがある!そんなクリーチャー出したところで意味なんかねぇよ!」

 

「シールドもクリーチャーのパワーも関係ない!ここで勝つ!」

 

「なに!?」

 

 もはや、トリガーやクリーチャーのパワーに意味などない。このゴルギーオージャーが出た時点で、全ては決まった。

 

「いけ、ゴルギーオージャー!シールドを攻撃!」

 

 ゴルギーオージャーの胸部に光が集まる。エネルギーを貯めているのだ。

 

「こ、これは……!まさか!」

 

 ガパスタは何かを察したようだが、もう遅い。勝負は決した!

 

「ゴルギーオージャーの効果発動!攻撃時にカードが十枚以上含まれていれば、プレイヤーはゲームに勝つ!」

 

「エクストラウィンだと!?」

 

 エクストラウィン────カードの効果によってゲームに勝つ効果を指す。本来はデッキが切れるか、シールドを割ってトドメを刺してゲームが終わるが、ゴルギーオージャーは効果によってゲームを終わらせることが出来るのだ。

 

「ゴルギーオージャーの進化元は九枚!だから、私の勝ちだァー!」

 

 エネルギーが溜まったゴルギーオージャーは、胸部から光線を放った。

 その光は、クリーチャーやシールドさえも包んだ。

 

「クソオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 ガパスタは絶叫共に、ゴルギーオージャーの光線へと消えていった。

 そして、漆黒のデュエルゾーンは少しずつ崩壊していった。




次回で最後になります。
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