本編開始前に死亡予定のモブに転生した俺。ゲーム知識と最強ステータスでとことん無双します。ついでにヒロイン全員ハーレムルートに取り込んじゃおう   作:かくろう

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人から好かれる町娘

 ホタルは神託を受けた神殿にある騎士団の訓練場で剣の特訓を行なっている所だった。

 

「はぁああっ、やっああっ、せいっ、やぁあっ!」

 

 前に踏み込み、剣を振るう姿は堂に入っている。

 まだ旅立つ前だというのに、もう何年も剣の修業を重ねてきたかのように洗練された動きをしていた。

 

 それが勇者のスキルの力だ。歴代の勇者の経験値を受け継ぎ、レベル上げによって徐々にそれを覚醒させていく。

 

 普通の人が修行する何倍もの速度で成長していく超絶チートの才能。

 

 それが勇者の超絶チートスキルの力だ。

 

 俺はしばらくその素振りの様子を眺め、一息を付くまで見守っていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ、えっ、る、ルインハルド様ッ⁉」

 

「こんにちは。お邪魔してはと思い見学させていただきました」

 

「そ、その、失礼しますっ」

 

「あ、ちょっと待ってっ」

 

 顔を見るなり逃げ出してしまうホタルを呼び止め、なんとか踏みとどまってもらう。

 

「えっと、何か御用でしょうか……」

 

「どうか怖がらないでください。少し、お話しませんか?」

 

「……はい。分かりました」

 

 なんとか話が繋がった。さて、心の距離を縮めるには会話が一番だ。

 

 俺はあらかじめ準備していた携帯用ポットに淹れていた紅茶をカップに注ぎ、エミーのメイドであるアミカさん特製の焼き菓子でもてなすことにした。

 

 俺は子供の頃からこれが大好きなのだ。子供の頃はアミカさんのお爺さんである執事のゼクント氏が作ってくれたが、孫娘のアミカさんが見事に受け継いでくれた。

 

「あ、良い香り」

 

「幼馴染みが見立ててくれたものです。紅茶は、お好きですか?」

 

「ぁ、えっと、あまり飲んだことがなくて……」

 

 確かに貧民街に暮らしていたら紅茶を飲む機会なんてないわな。

 

「疲れた体には甘いものが効きますよ。どうぞ」

 

「ありがとう……ございます」

 

 訓練場の片隅にあるベンチに腰掛け、できるだけ紳士的に紅茶と菓子の準備をしていく。

 

 カップに注いだ紅茶を渡し、茶菓子を小皿に盛ってそっと置いた。

 

「はむ……んぁ、美味しい、です」

 

「それはよかった。幼馴染みの家で作ってくれたクッキーなんです。よかったらどうぞ」

 

「はむっ……はぅ、甘くて美味しい♡」

 

 ひとたびクッキーを口に入れたホタルの頬が緩んでいく。

 可愛いなぁ。ゲームでも町にデートへ出かけた時に初めて食べたクレープ的な食べ物に感動してる場面があったっけ。

 

「沢山焼いてもらいましたから、好きなだけ食べてください」

 

「あう……ありがとうございます……。そのルインハルド様」

 

「僕のことはシビルと呼んでください。敬称は不要です。あ、呼びにくければブタゴブリンでも構いませんよ」

 

「い、いえっ! 貴族様にそのような不敬は働けませんっ!」

 

 冗談のつもりだったが彼女には通じなかったらしい。

 

「あはは、冗談ですよ。勇者様と打ち解けたかったので」

 

「ありがとうございます……。そ、その、勇者様というのはやめていただけませんか? あんまり、持ち上げられるのに慣れてなくて……」

 

「そうですね。少し前まで平民だった訳ですし、貴族に囲まれていては中々気が休まる時間もないでしょう」

 

「はい……。皆さんよくしてくださいますけど、その、私ちょっと貴族様が苦手で……ぁ、すみません、ルインハルド様も貴族ですよね」

 

「ははは。僕の家はもの凄く小さな領地しか持ってない三流も良い所ですし、僕自身は三男坊で何の権限も持ってませんからね。ほとんど平民と変わらないですよ」

 

「あ、はは。そんな風に言う貴族様は初めてです」

 

 彼女の雰囲気はとても話しやすく、心の中に温かいものが入り込んでくる。

 

――――――

 

【ホタル(人間族)】女 勇者

――ギフトスキル【勇者の魂】【愛され体質】

 

――――――

 

 これが彼女が人から好かれやすい理由だ。人から愛されやすい。勇者の資質といってもいい。

 

 貴族絶対主義のこの国において、平民から出た勇者は疎まれない理由がない。

 

 それでも彼女が差別されることなく勇者として持て囃(もてはや)されるのは、もらったギフトが良い方向に働いているからだろう。

 

「確か、同い年だよね。とりあえずお互い敬語をやめるところから始めないか?」

 

「いいんですか?」

 

「命を分け合う仲間になるんだ。心を開いてくれたら嬉しいな」

 

「う、うん。じゃあ、ホタルって呼んでくれる?」

 

「じゃあ僕……いや俺の事はシビルでいいよ。貴族ってことは気にしなくて良いから。さっきも言った通りほとんど平民と変わらないからね」

 

「あはは、ありがとう。じゃあシビル君って呼ぶね。緊張ほぐす為に色々気遣ってくれて、凄く嬉しい」

 

 少しずつ打ち解けてきた。彼女の持っている【愛され体質】のおかげもあるだろうが、彼女本来の明るさが人と打ち解けるハードルを下げてくれるのだろう。

 

 俺達はお互いの身の上話から初めて心の距離を縮めていった。

 

 

――友好度 【最悪】→【嫌悪】→【苦手】→【普通】

 

 おおっ、いいぞっ。

 

 好感度が一気に上昇した。やはり貴族ではなく、平民寄りの人間だと理解してもらえたことが功を奏したようだ。

 

 彼女は大の貴族嫌いという裏設定があり、俺もその例外ではないはずだった。

 

 ゲームにおける彼女は好感度の上がりやすさと相まって、初心者が普通にプレイをするとまず彼女のエンディングに辿り着くことが多い。

 

 戦闘能力も非常に優秀で、物理攻撃を中心に全てのステータスがバランス良く伸びていくので隙がない。

 

 支援魔法が得意なエミリア、攻撃魔法が得意な魔導師のヒロインと並んで必ずメインパーティーに入るくらいに能力が高いのだ。

 

 明るい性格と、主人公と同じ平民出身と言うこともあって、共感性の高さから友好度も上がりやすいのも特徴の一つだろう。

 

 ただ、その攻略のしやすさが悪影響して他のヒロインを攻略する時に彼女の存在が邪魔になるという側面も持っている。

 

 そうなると手っ取り早いのは、ホタルをバッドエンドルートに入れて物語から退場させることなのだが、俺はそういう攻略の仕方を絶対にしたくなかったので故意に退場させたことは一度もない。

 

 仲良くなる為には自己開示が有効だ。俺は自分の身の上話から始めることにした。

 

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