本編開始前に死亡予定のモブに転生した俺。ゲーム知識と最強ステータスでとことん無双します。ついでにヒロイン全員ハーレムルートに取り込んじゃおう   作:かくろう

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謎の襲撃

 

 砦の見張り台の片隅で二人並んで座る。

 

 夜も更けてきたのに、俺達はずっとお互いのことを語り合っていた。

 

「そうか……貴族同士の抗争で両親を。ごめん、同じ貴族として、謝りたい」

 

「そ、そんなっ。シビル君が謝ることないよ。それに、もうずっと昔の事だから」

 

 資料としては知っていたが、実際に本人が語る体験は非常に(こく)なものだった。

 

 両親を亡くし、叔父に引き取られた後も一生懸命働きながら自立の為の準備をする。

  

 子供の時分から苦労し通しなのだ。勇者の使命に目覚めて戦えるのは、そうした辛い境遇で苦しんでいる人達を救いたいという思いからなのだということが伝わってくる。

 

 強がりを言っているが、この時点でのホタルは貴族への苦手意識を克服できていない。

 

「貴族が憎くはない?」

 

「人を憎むって、凄く辛いんだ。自分が人を憎むと、自分自身が憎しみに染まってしまう気がして」

 

「立派だね。俺なんて中級貴族のボンボンにイジメを受けただけでいじけてたのに」

 

「あはは」

 

「本当に凄いよ。でも、神様も酷だよね。普通の女の子としていきてきたホタルに魔王と戦えなんてさ」

 

「私にしかできないなら、他の誰かに押し付けなくていい分だけ気楽なんだ。正直、戦うのは怖いよ。死ぬのも怖い。でも、できるのに手をこまねいているのは、もっと嫌なの」

 

「立派だ。君は心から勇者なんだね。でも、普通の女の子だ。多分俺はこのパーティーの中で一番強いから、ピンチの時は遠慮なく頼ってくれよ」

 

「ありがとうシビル君。じゃあ、もしもの時は、お願いね」

 

「ああ。任せておいてくれ。君の事は俺が命を賭けて守るから」

 

「ありがとう……。私、シビル君のこと誤解してた。貴族だからって決めつけて」

 

「そんないきさつがあるなら仕方ないさ。こんな見た目だしね」

 

「ご、ごめん……」

 

 ――友好度 【普通】→【友好】

 

 流石に彼女の上がりやすさもあって、腹を割って話す事で友好度は順調に上がっていく。

 

 相手がどう思っているのかの感情が見えるというのはこれ以上ないアドバンテージだ。

 

 彼女をバッドエンドから救うためには、貴族に対する密かな憎しみを克服させる為のピースを揃えなければ。

 

(あのバッドエンドだけは避けないとな)

 

 【ヒナギク・ホタル】のバッドエンドは、求婚してきた貴族とのトラブルの最中に勇者の力を失ってしまい、抵抗することができずに殺されてしまうという悲惨なものだった。

 

 だとすれば、戦いが終わった後すぐにでもエミリアに保護してもらおう。

 

 俺のハーレムに入れれば変な奴に粉を掛けられることもあるまい。

 

「ホタル、戦いが終わったら何をしたい?」

 

「え?」

 

「魔王を倒して平和を取り戻した後さ。また宿屋のレストランで働くのか?」

 

「ん~。学校、行ってみたい」

 

「学校か。いいね」

 

「うん。働くのも好きだけど、もっと色んなことを学んで、友達も作りたい」

 

「それなら俺の幼馴染みを紹介するよ。公爵令嬢だけど、庶民の人達にも好かれる良い子だよ」

 

 エミリアは個人の財産で孤児院を作ったり、貧しい人達の為に分け隔てなく身を砕くことを惜しまない。

 

 実際にゲーム内でもその人柄は庶民から慕われている。

 

「ありがとうシビル君」

 

「きっと沢山友達ができるさ。俺も将来は王立学院の高等部に進学するし、同級生だね」

 

「うん。凄く楽しみ!」

 

 友好度【友好】→【友情】

 

 凄いな。あっと言う間の勢いで好感度が爆上がりしている。

 何か特別な力でも働いているのだろうか。

 

『シビルさんの人柄だと思いますよ。この調子でコマしちゃいましょう♡ 条件が揃えばエロ同人が発動しますからねっ』

 

 途中までいい事言ってたのに台無しだよっ!

 

◇◇◇

 

「それじゃあお休みなさいシビル君。また1週間後の訓練でね」

 

「ああ。何か困ったことがあったら学園の事務から呼び出してくれ。夕方以降ならルインハルドの領事館にいるから」

 

「うんっ。ありがとうシビル君」

 

 夜も更けてきたので、彼女を部屋まで送って帰宅することにした。

 

 

 

 

 

 

 

――ドンッ!

 

「ん?」

 

 

 彼女を部屋まで送って外に出て、寝泊まりする領事館の自室へ向かって歩いている頃、たった今歩いてきた方向から奇妙な物音を聞いた。

 

 突如として鳴り響く轟音に何事かと兵士が集まっていく。

 

「なんの音だ?」

 

『むむぅ。なんだか訓練所の方が騒がしいですね。変な魔力を感じます。モンスターの気配ですよコレは』

 

 モンスター? こんな町のど真ん中に?

 

「急いで戻るぞッ」

 

『ガッテンでいっ!』

 

 大急ぎで訓練施設へと走る。人に見つからない場所を選びながら能力全開の全力疾走で駆け抜け、15分以上掛かって帰ってきた道のりを数分で逆戻りした。

 

「うわゎあああっ」

 

「敵襲ッ! 敵襲ぅうっ!」

 

 怒号が聞こえる。硬いものが衝突する音が鳴り響き、悲鳴と怒号、戦いの気配。

 

 素人の俺でもこれだけ近づけば濃厚な殺気をビリビリ感じることができた。

 

 音のする方向――訓練場の外壁周辺を見やると、巨大な……そう、とてつもなく巨大な蜘蛛のモンスターが集団で訓練場を取り囲んでいた。

 

 赤いまだら模様を背中に背負い、人の頭のような頭部に大きく開いた口の中に鋭い牙。

 

 ヘドロの沼のように濁った丸い目玉がぎょろぎょろと動いている異形の蜘蛛。

 

 まさかあれは……。

 

「タイラントスパイダー⁉ ストーリー中盤の魔物じゃないかっ。なんで本編前にあんな奴がッ⁉」

 

『とにかくアレじゃ訓練中の兵士達が危ないですよ。ホタルちゃんに危険が及ぶかも。行ってあげた方が良いんじゃないですか?』

 

 だな。モンスター相手なら殺さないように手加減する必要はねぇ。

 

 ゲームじゃ分からなかったバトルの厳しさ。

 

 転生する前としてからを合わせても、俺はモンスターと戦った経験はほぼ皆無だ。

 

 基礎訓練の成果も出ないまま、身体能力もほとんど上がらなかったし、試練の洞窟での訓練も荷物持ちばかりで戦わせてもらえなかった。

 

「事実上の初戦闘だ。気合いが入るってもんよ。思いっ切り暴れてやるぜ」

 

 

 

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