本編開始前に死亡予定のモブに転生した俺。ゲーム知識と最強ステータスでとことん無双します。ついでにヒロイン全員ハーレムルートに取り込んじゃおう   作:かくろう

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強くなるには

 

 フローラは思っていた以上に心を疲弊させていた。

 

 これはちょっとした荒療治が必要かもしれない。心情としては旅をやめて安全な所に送り届けてやりたい。

 

 だけど彼女を欠いては魔王討伐の旅は成功しない。

 いや、成功したとしても、彼女はヒロインたり得なくなってしまう。

 

「こ、ここが霊峰ドラグニート……」

 

「そうです。ここの頂上にいる魔龍に会いにいきます」

 

 霊峰ドラグニートはゲーム終盤で起こるイベントで訪れる場所だ。

 

 序盤に一度イベントが起こり、終盤に別のイベントで訪れる。

 

 終盤になり、勇者は更なる力を必要とした。

 

 その為の試練を求めて、この霊峰ドラグニートのボスエネミーである『魔龍帝サダルゼクス』とガチンコ勝負をするのだ。

 

 魔龍を倒すと力を認められ、『龍帝の宝玉』というアイテムでパワーアップすることができる。

 

「ま、魔龍……それが、私の試練ですか?」

 

「はい。あなたには魔龍と心を通わせる能力が眠っています」

「わ、私にッ⁉ なんでそんなことを」

 

 魔龍は共通イベントであるが、フローラ・セイナそれぞれに特殊なイベントが用意されている。

 

 攻略に連れて行くのがこの二人か、どちらか片方だった場合で、それぞれ違った形の特殊イベントが起こることになる。

 

 今回は丁度良くセイナもいる事だし、あわよくば一番熱いイベントが見られるかもしれない。

 

「それは後でお話します。まずはここのドラゴン達を軽く倒せるようになるまで強くなりましょう」

 

 ここは五合目以降になるとゲーム終盤クラスのモンスターが跋扈《ばっこ》するレベル上げスポットとして重宝する場所だ。

 

 ドラゴン系のモンスターは通常の魔物より取得経験値が高く設定されており、同じレベル帯のモンスターを相手にするより遙かに効率よくレベル上げが可能となる。

 

 ゲーム序盤でも入れない訳じゃない。敵が強すぎて立ち入っても全滅必至だ。

 

 二週目に入ってすぐに立ち入ることで、更なるレベルアップや熟練度稼ぎのスポットとして利用することもできる。(まあ裏ダンジョンの方が圧倒的に効率が良いけど)

 

 そして今の俺達の強さなら問題なくパワーレベリングが可能だ。

 

 フローラには個人イベント『龍帝の巫女』でゲットできる特殊アイテムでパワーアップを図ってもらう。詳しい内容は追い追い説明しよう。

 

「私に、そんな力が……」

 

「そうです。それを可能とすれば、あなたとセイナは確実に強くなれる。私を信じてくださいますか?」

 

「分かりました。シビル様を信じます」

 

 フローラは強くなりたいと願った。本来ならば物語を通して少しずつ勇気を培っていくのだが、既にその本筋は破綻してしまっている。

 

 だからゲーム本編のイベントを先取りして強くなり、自信を付けてもらおうというわけだ。

 

 ドラグニートの地理はしっかり頭に入っている。既に裏ダンジョンでゲームと現実の地図の違いには慣れた。

 

 現実の方が当然のように遙かに複雑だが、基本的な構造は同じだ。

 

 効率的にマップを制覇してレベル上げを行なえば、戦いに苦労することはなくなるだろう。

 

 強さがあれば自信が身につく。心の細かなフォローはその過程を踏みながらでも十分間に合う筈だ。

 

「さあ、出発しましょう」

 

 ドラグニート山脈はドラゴン族が多く生息する危険地帯だ。

 

 どうしてこんな危険な場所にわざわざ行く必要があるのか。

 

 小説の本筋ではここから馬車を乗り継ぎながら情報を集め、魔族領の辺境に生まれたダンジョンで決戦を迎える。

 

 だがそれらを一足飛びで越えてしまわなければ、今後邪魔してくるであろう謎の勢力に対抗できないかもしれない。

 

 だからスピンオフ小説時点では足を踏み入れることはないこの場所へ、敢えて立ち寄ったのだ。

 

◇◇◇

 

「ど、ドラゴン……あんなに大きいの?」

 

 山の中腹に差し掛かるまでは順調に進む事ができた。

 

 道中はさほど苦労することなく、戦闘回数もそれなり。

 

 入り口から中腹付近までは、リザードマンやレッサーワイバーンなどの小型から中型の魔物で構成されているため、さほど脅威ではない。

 

 序盤に訪れた時に回復アイテムをしこたま準備してレベル上げに籠もるプレイヤーもいるほどだ。

 

 五合目から急激に魔物レベルが上がり、初見殺しなバカ強い大型ドラゴンがウヨウヨ出現するようになるから要注意な場所だ。

 

 休憩を入れながら食事をとり、3日かけて中腹まで辿り着いたのである。

 

 目の前には巨大なドラゴンが複数体でウロついている。

 

 ゲームだと多くても二体までの出現だが、ご存じの通り現実はそうもいかない。

 

 俺達は岩陰に隠れながら様子を伺っていた。

 

「私の龍人の血がザワザワしているのが分かるぞ。今の私達がしゃしゃり出たら、一瞬にして胃袋の中だ……爪の一撃がかすっただけでアウトだろう」

 

「こ、怖い……。あんなのと戦うの……?」

 

「まずは俺が戦います。その後に連携の練習をしましょう」

 

「我が主が戦う所を見るのは久しぶりだな。ワクワクするぞ」

 

「私も楽しみだよ。シビル君頑張ってっ」

 

「おう。じゃあ行ってくる」

 

 巨大なドラゴンの体はタイラントスパイダーより遙かに威圧感がある。

 

 だが、裏ダンジョンのモンスターと対峙し続けてきた俺には、今更こんな迫力でビビることはなくなった。

 

「いくぞっ」

 

『グオオオオオオオッ!』

 

 普通ならこんな巨大なモンスターの咆哮を聞いたら足がすくんでしまうだろう。

 

 だが俺には最強のステータスがある。

 

「刺突・千枚通しッ!」

 

『グアッ⁉ ゴ……』

 

「まずは一匹」

 

 胴体の真ん中にあるコアに向かって槍の刺突。

 

「パワーストライドッ」

 

 1匹目が絶命し、突き刺した槍を掴んでそのまま振り上げた。

 

「ぜぇええええりゃぁあああああああ」

 

 ドラゴンの巨大な体を槍ごと持ち上げ、そのまま他のドラゴンたちに叩き付ける。

 

「な、なんという腕力だっ! しかも一撃で仕留めるとはっ!」

「シビル君凄いよっ!」

 

『ゴガァアアアアッ⁉』

 

 巨大質量を勢いよくぶつけられては、さすがのドラゴンも吹き飛ぶしかない。

 

 目を回している隙を突いて――

 

「ライトニングピアスッ」

『ガッ……』

 

 雷撃の魔法で2匹目を絶命させる。

 

 カンストオーバーの魔力はコアを一撃で貫き、ドラゴンはゆっくりと倒れていく。

 

「ファイアボルトッ」

 

『ギャオオオオオンッ……』

 

 更にもう一匹。3匹目のドラゴンが焼け焦げて絶命する。

 

 よし、魔力コントロールが大分に上手くなったぞ。

 威力を高めつつ効果範囲を絞って撃ち出すことに成功している。

 

「シビル様ッ、上空に!」

 

「むっ」

 

 フローラの声で空に意識を向けると、翼をはためかせた更に三匹のドラゴンが襲い掛かってきた。

 

 上空なら、弓だ。

 

 狙いを定めて……撃つッ!

 

『ガッ⁉』

『グアッ⁉』

 

 二匹仕留めたが、損ねた一匹が怒りを露わにしながらこちらに向かってきた。

 

 

『グオオオオオオオオオッ!』

 

「シビル殿ッ」

 

 こちらに向かってくる最後の一匹。

 

 

 

 エボルウェポンを大槌《おおづち》の形状に変化させ、真っ直ぐ向かってくるドラゴンに向かって飛び上がる。

 

「轟撃ッ」

『ガゴッ⁉』

 

 その勢いのまま平面を叩き付け、巨大な頭部をひしゃげさせた。

 

 コアを壊さなくても生物である以上頭部を破壊されては生きていられない。

 

「ふう、これで終わりかな」

 

「す、凄いです……ドラゴンですよっ! ドラゴン六体相手に、全部一撃で……」

 

「これが今の俺の強さです。安心して頂けましたか?」

 

「凄い、凄すぎますッ! あんな威力の魔法、どうやって身につけたのですか」

 

 おおう、ゼロ距離で興奮しながらおっぱいを押し付けてくるフローラの良い匂いがする。

 

『おめでとうございますシビルさんっ! フローラちゃんとスピリットリンカーで繋がりましたよーっ♡』

 

 よっしゃっ! これでエロ同人し放題だぜっ! っと、いかんいかん。俺までミルメットみたいなことを言ってしまった。

 

「フローラ様、落ち着いてください。まずは素材の回収をしましょう」

 

「そ、そうですね。すみません……はぁう」

 

 興奮冷めやらぬフローラをたしなめながら、倒したドラゴンの死体をアイテムボックスに回収していった。

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