本編開始前に死亡予定のモブに転生した俺。ゲーム知識と最強ステータスでとことん無双します。ついでにヒロイン全員ハーレムルートに取り込んじゃおう   作:かくろう

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悲痛の咆哮

 魔狼帝とエルフの姫アーシェ・レネリー姉妹は、幼い頃から心を分かち合った親友同士であった。

 

 特にアーシェはフェンリルと心を通わせ、幼い頃から親と同じくらいの愛情を注がれて育ってきた。

 

 高位生物である故に同族と交わることのなかったフェンリルは、子供を育てるという感覚を彼女からの愛で初めて知った。

 

 フェンリルの首元にあるコアには、アーシェとレネリーの作った花飾りが今でも取り付けられている。

 

 不思議なことに二人の作った花飾りは時と共に朽ち果てることなく、10年以上経過した今でも朽ち果てることなく存在していた。

 

「フェンリルさんっ! アーシェ達、ずっと友達だよねっ♪」

 

 幼きアーシェの言葉は、永《なが》い時を過ごしてきたフェンリルの心にぬくもりを与え続けている。

 

 

◇◇◇

 

 

 アーシェにかけられた呪いを解除するため、魔狼フェンリルの暴走を止めに森へと入った俺達。

 

『奴の気配はこの先です。奴め、凄まじく殺気立っている様子。おそらく我が主の魔力を嗅ぎ取ったのでしょう』

 

 サダルのナビゲートよって森の中を奥へ奥へと進んでいく。

 

 どうやらフェンリルとサダルは顔見知りらしく、居場所は奴の放っている凄まじい殺気と魔力で分かるらしい。

 

「ホタル、そっちにいったぞっ」

 

 豪腕大猿の魔物、アームドエイプの腕を斬り飛ばし、飛び上がった先にある後頭部を蹴り飛ばす。

 

「任せてッ!」

 

 ザシュッ!

 

「たぁああっ」

「HOAAAAAAA!」

 

 更に飛びかかってくるモンスターを蹴散らしていく。

 

「セイナさんお願いッ」

「任せろッ!」

 

 既に豪腕の魔物よりも高い腕力ステータスを誇るセイナの大槍の薙ぎ払いが炸裂し、複数の魔物が横一線に真っ二つになっていく。

 

「ウィンドスラッシュッ」

「フローラ、上だッ」

 

「ッ⁉ はぁあ、中級魔法ロックタワーッ!」

 

 続くフローラの攻撃魔法。

 木の上から攻撃してくる鳥形のモンスター達を地面から生えた岩の槍が突き上げで攻撃していた。

 

 大森林は魔物の巣窟になっていた。

 

 恐らくはフェンリルが瘴気で狂った影響だろう。森に入った途端に四方八方から浴びせられる夥《おびただ》しい量の殺気を感じとる。

 

「倒しても倒しても敵が迫ってくるっ。ドラグニート山で修行しておいて良かった。こんなのキリがないよっ」

 

「泣き言を言っている場合ではないぞホタルッ。また次がくるぞっ」

 

『シビルさんっ、今度は前方300メートル先にフォレストウルフ30体ですっ』

 

「フローラッ、前方にフォレストウルフだっ。上級の雷魔法を準備しろっ」

 

「分かりましたッ!」

 

 レベルが上がって、フローラは広範囲の攻撃魔法を沢山覚えた。

 

 流石に森の中で火炎魔法は使えないので、土、雷、水魔法で対処している。

 

 もしかすると雷魔法も危ないかもしれないが、森の魔物に土魔法は効果が出にくい。

 

 もし使うなら先を鋭く尖らせて放つストーンバレットで貫く方が良い場合もある。

 

 物理的に貫けば魔物は死ぬ。コアは魔物によって位置が違うから的確に破壊するには技術が必要だ。

 

「フローラッ、今だッ!! 上級魔法ッ」

「スパークブラスターッ!!」

 

『GYOAAAA!』

『AGYAALAAAAAA』

 

 末広がりの雷光が木の隙間を縫ってフェレストウルフの体を貫いていく。

 

 上級魔法だけあって威力も折り紙付。

 

 MPは無限じゃないので上級魔法をガンガン打つのは本来得策ではない。

 

 だがそうも言ってられない。とにかく数が多すぎるのだ。

 

 いざとなれば魔力はフローラと共有できるので、とにかく広範囲に撃って敵を蹴散らし、フェンリルがいると思われる森の奥へと足を進めた。

 

 裏ダンジョンで集めたMP回復アイテムも限りがあるしな。

 

 いくつかは共有しているが、戦闘中に回復アイテムを使うのも神経を使うから気楽には考えられない。

 

「ここまで来たら案内されるまでもなく分かる。もの凄い殺気と魔力だ。サダルの時と同じ殺戮の波動をビンビン感じるぞ」

 

 奥へと進んで開けた場所に出ると、無数のオオカミたちが群れをなして待ち構えていた。

 

 まるで俺達を迎え撃つかのように陣形を組んでいるように見える。

 

 その中央。台座のような形をした……いや周りを囲むオオカミ達が中央の魔狼に花道を作るように並び立つ様相は、まるでそこに王がいることを強調しているかのようだ。

 

 つまり、その中央の台座が玉座なのだろう。

 

 漆黒の毛並みに覆われた一際大きなオオカミが座り、こちらを睨み付けていた。

 

 殺気。

 

 野生の魔物や殺意の塊である裏ダンジョンのモンスターとも違う、なにか別種の殺意をぶつけてくる魔狼帝。

 

『久しいな魔狼よ。闇に染まった姿というのは随分と滑稽なものよ。まったく恥ずかしい』

 

 まるで自嘲するように溜め息をつくサダル。

 

『グルルルルッ……懐かしい気配がすると思えば、やはり汝《うぬ》でしたか魔龍よ』

 

「しゃ、喋ったッ⁉」

 

 瘴気で狂っていても理性を保っている……?

 

 まさかこいつ、サダルの時とはパターンが違うのか……。

 

 とにかく対話が可能かどうかを試すか。

 

『邪神の瘴気に当てられたか。温厚な貴様らしからぬ殺気に満ち満ちておるぞ』

 

『この衝動は自分でコントロールすることが出来ぬのです。魔龍よ、そなたがこの乾きを満たしてくれるのか』

 

『我が相手になってやってもよいが、我が主の用事を先に済ませてもらおうか。エルフの娘にかけた呪いを解け』

 

『それは不可能です。自分の意志でできるならとっくにやっている。あの呪いは彼女本人が自分の意志で引き受けたものです。そこな不思議な魂を持つ人間の男よ』

 

「はい」

 

『お願いする。既に意識が消えかけています。殺意の衝動に自分自身が飲み込まれそうなのです。私を殺し、あの子を蝕んでいる呪いを解いてあげてください』

 

 そうか、アーシェが呪いの幾分かを受け持つ事で理性を保っていたのだな。

 

 しかしそれも限界に近いらしい。

 

「分かりました。ただし、我々はあなたを殺しません。必ず救い出してみせます」

 

『それでは、ダメ、なのです……お願い……あの子、達を……うぅ、ううっ……UOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!』

 

 フェンリルの瞳から最後に残った理性の色が消え、狂気に飲まれたことを知らしめるように闇色の波動が炎のように舞い上がった。

 

「くるぞっ!」

 

 魔狼帝が狂気に飲み込まれ、正気を失ったのと同時に、それまで沈黙していた周りのウルフ系モンスター達が一斉に凶暴化して襲い掛かってきた。

 

 

 

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