本編開始前に死亡予定のモブに転生した俺。ゲーム知識と最強ステータスでとことん無双します。ついでにヒロイン全員ハーレムルートに取り込んじゃおう   作:かくろう

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浄化の正体、その名は【神力】前編

「うぅううおおおおっ!」

 

 ズシンッ!

 

 巨大な拳を地面に突き立てる魔王もどき。

 凄まじい猛攻を避け続けるうちに目が慣れてきた。

 

「不思議な変化だ。さっきよりも動きが鈍い」

 

『どうやら内側のホタルちゃんが自分の体を取り戻そうと頑張ってるみたいです。って、なんか魔王の魔力も一緒に感じますね』

 

「なんだそりゃ、どういうこった?」

 

 攻撃を避けながらミルメットの言うことを咀嚼してみると、先ほどから感じている変化に納得するものがあった。

 

「ホタルッ! もうすぐ助けてやるからなっ!」

 

『シビルさん、もしかしたらテレパシーの魔法で呼びかけた方が効果的かもしれません』

 

「確かにそうだ。よし、[ホタルッ、聞こえるかっ]」

 

「ッ⁉」

 

 テレパシーで呼びかけると、明らかな変化があった。

 動きが鈍くなり、魔王もどきのあちこちを向いていた目がはっきりとこちらの姿を捉えた。

 

[ホタルッ、もうすぐ助けるからなっ]

 

[……ビルくんっ、シビルくんの声だっ!]

 

「ホタルッ! 声が通じたッ。[大丈夫かっ!]」

 

[よかったっ! こっちは大変だよ。体の自由を奪われちゃって。魔王さんと一緒に取り戻してるところなの]

 

「魔王ッ⁉ どういうこった……とにかく無事でよかった。詳しい話は後だ。もうすぐ浄化ノ光をかけるから、心しっかり持ってろよっ」

 

 いきなり出てきた謎のワードに困惑するが、今は考えている場合じゃない。

 

「でも、おかげでちょっと安心したぜ」

 

 実は、マド花における魔王とは悪の存在ではない、という裏設定がある。

 

 正義と悪というのは立場の違いで生まれるものだ。

 

 魔王にとって強い相手を求めて戦うことは悪では無い。

 

 どちらかというと悪は黄鬼のオベロンの正体、四天王オベリュオンを始めとした部下達だ。

 

 魔王直属の四天王とは銘打っていたが、その実は魔物を従えて強者との戦いをひたすら求める魔王の目的に便乗して自分の欲望を満たしている奴らばかりだった。

 

 魔王自身は、黒とも白ともいえない透明な存在といったら分かるだろうか?

 

 自分の目的はあるが、自分を討伐した勇者に自分の娘の後を託すような人心を持っている。

 

 本来であれば許さないことであるが、この世界線の魔王はまだ何も悪い事をしていない。

 

 正確に言えば過去においては違ったが、説得して戦わずに済むならそれに越したことはないはずだ。

 

[シビルくん、魔王さんが話があるって。ちょっと代わるね]

「え、あ、ああ」

 

 魔王が俺に話? 

 

[転生者よ、時間がないので端的に伝える。この肉体を元に戻すには、1度徹底的に痛めつけて瀕死にする必要がある]

 

「なんだと? じゃあ思い切り攻撃しないと駄目なのか」

 

[その通りだ。今のアレは勇者でも魔王でもない。闘争本能と邪神の瘴気で暴れる物の怪の類いになっている。実体は勇者にあらず。周りを覆っている邪神の瘴気を取り除かねば我らも外に出ることはかなわん]

 

「なるほど。ホタルの肉体を邪神の瘴気が覆っている訳か。ますます浄化ノ光が必要だな」

 

 戦うのはいいとして、ホタルの本体を傷つけないように回りの瘴気を取り除かないといけない。

 

 これはもう浄化ノ光なしで戦うことは不可能だ。

 

「我が主ッ、ご無事かっ」

「セイナッ⁉」

 

「セイナちゃん、体は大丈夫なの?」

「大丈夫だ。姫様達に治してもらった。それより主よ、足止めは我らで行なう。双子姫のもとへ来てくれ」

 

「ッ、分かった」

 

 よく見るとアーシェとレネリーの双子姫も一緒に来ている。

 よかった。無事に救出できたのは本当だったらしい。

 

「「救世主様ッ」」

 

「アーシェ姫、レネリー姫、ご無事で何よりです。ゆっくり話たいところですが、そうもいきません」

 

「「分かっています。あなたの潜在能力を私達で覚醒させます」」

 

「分かりました。どうすればいいですか?」

 

「「祝福を……私達に、救世主様の祝福をお与えください」」

 

 祝福……。どういうことかと一瞬思案し、すぐに答えに行き当たる。

 

「俺達は初めから繋がっていた。だったら」

 

 両膝をついて祈りを捧げるようなポーズをする2人に寄り添い、俺は唇を寄せた。

 

 2人は静かに目を閉じ、そのまま俺を受け入れてくれた。

 

 まずはアーシェに、次にレネリーに。

 

 何の説明もなく、何の脈絡もなく、初めから彼女達は俺とスピリットリンカーで繋がっていた。

 

 それは一体どういう事だったのか。今はまだ分からないが、一つだけ分かることがあるとすれば、2人は俺の知らないこの世界の秘密を知っているのではないだろうか。

 

「「お目覚めください。女神の眷属よ。お目覚めください、神なる戦士よ。お目覚めください、【神力(しんりき)】の御使(みつか)いよ」

 

 祈りの力、とでも呼ぶべきものか……。

 

 アーシェは右の手を。レネリーは左の手をとり、柔らかく包み込んで指先に口づける。

 

 すると2人から流れ込んできた魔力……とも違うような暖かい感触が全身を包み込み、俺の中で何かが目覚めた。

 

 全身を血管のように巡っている気の流れ、魔力の流れ…。

 

 それと同じように、この神の力が俺の中を流れていた。

 そのことを、【思い出した】

 

「これは……この記憶は……」

 

 それは前世の記憶。かもしれない……。神力という言葉には聞き覚えがあった。

 

 だが今は自分の記憶の精査をしている場合ではない。

 

 ただ一つの重大な事実が俺の中に記憶と共に確信が蘇った。

 

「これが神力。よしっ、これでホタルを救える」

 

 今まで気が付かなかった、いや、忘れていたものがそこにある。

 

 自分の中にあったのに、気が付いていなかった力がある。

 

「フローラッ、セイナ、来い」

 

「シビル様?」

「よしっ、せぇええええいっ」

 

「ッ⁉⁉」

 

 セイナの槍が魔王の猛攻を掻い潜って頭に叩き付けられた。

 

 以前よりも動きが明らかに良くなっている。ステータスに差があるのにあれだけの動きができるとは。

 

 俺もまだまだ動きに無駄があるのかもしれない。

 

 よし、今ならホタルを救えるぞ。

 

「説明は後だ。ホタルを救うぞっ。セイナは足止め。できるだけ引きつけろ。フローラは飛びきりの氷魔法を詠唱しろ」

「応ッ、足止めは任されよっ」

「分かりましたッ」

 

 魔王の動きは段々鈍くなっている。どうやらホタルが中で頑張っているようだ。

 

 今から救ってやるからな。

 

 この【神力】で。

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