僕のウィザーディングアカデミア   作:いものこ

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最初はハリーとデクを別人にしようとし考えていたけど、キャラの役割が被って動かしづらいなってなったのでいっそデクをハリー・ポッターにすればいいと思った。


賢者の石編
プロローグ


バーノンおじさんは、まるで最後の砦を築くかのように、ボロボロの古机を必死に引きずってきて、唯一の出入り口である扉に立てかけた。そして、奥の部屋から運び出してきた、年季の入ったでこぼこした粗末なベッドに重い体を沈めた。

青白い顔をして、ダドリーはまだ眠れないペチュニアおばさんの腕の中で、まるで縋り付くようにして小さく丸まり、何枚もの毛布にすっぽりと包まれて眠っていた。いつもの、周囲を威圧するような威張り散らす表情は完全に消え失せ、今の彼は、嵐の音に怯えて泣き疲れたか弱い子どものようにしか見えなかった。

 

 そして、その部屋の隅——みすぼらしい衣服をまとった小柄な少年が、縮こまるようにして壁際の床に座っていた。ハリー・ポッターだ。彼はどうしてこんなことになってしまったのだろうと思いながら、じめじめとした冷たい床に背を預け、ぼんやりと時計を見つめていた。誰も祝ってくれなくても、自分だけは知っている。明日が、特別な日なのだと。ささやかでも、心の中で「おめでとう」と呟いてやろう。そんな小さな決意で自分の誕生日までのカウントダウンを行っていた。あと十分……五分……一分……三十秒……二十……十……五、四、三、二、一。

 

 ドーン

 

 小屋全体が激しく震えた。

 

 ドーン、ドンッ。

 再び、扉が何か巨大な、制御不能な力を持つもので強引に押しつけられたかのように、けたたましく軋み、立てかけていたボロ机が、耐えきれずにガタンと鈍い音を立てて倒れた。

 

「ひっ……! な、なによっ……! なんなのよ!」

 

 ペチュニアおばさんの、張り詰めた悲鳴が、小屋の中に鋭く響き渡る。その声に反応して、眠りから引きずり起こされたのか、ダドリーがまだ夢の中にいるような、ぼんやりとした、掠れた声を上げた。

 

 

「何? 大砲? どこ?」

 

 ドン、ドンッ……! 

 

 ドン、ドンッ……! 

 

 まるで巨大な槌で打ちつけるような、容赦のない音が連続して響き渡り、やがて、古びた錠前のあたりから「ミシ……ッ」という、背筋が凍るような不吉な音が聞こえ、立てかけていた机が、まるで諦めたようにずるずると滑り落ちた。ベッドから飛び起きたバーノンおじさんは、顔面蒼白になりながら、慌てて奥から持ち出したライフル銃を、震える手で必死に構えた。

 

 ドォン!! 

 

 次の瞬間、粗末な扉は、まるでハリケーンに吹き飛ばされた木の葉のように、内側へ向かって爆ぜるように倒壊した。吹き荒れる嵐の冷たい風と共に、小屋の中に、まるで巨大な山のような、圧倒的な影が怒涛のように押し寄せてくる。

 

 全身を覆う、分厚い毛皮のコートに身を包み、その巨躯は、優に2メートル半はあろうかという大男。黒く、荒々しく絡み合った髪と髭に覆われたその姿は、文明社会の人間というよりは、洞窟の奥深くから出てきたばかりの太古の怪物のようだった。

 

 ダドリーが、息も絶え絶えの短い悲鳴を上げ、ペチュニアおばさんも、喉の奥で必死に叫び声を押し殺しながらわが子を抱きしめ、まるで危険な猛獣から逃れるように、後ずさった。バーノンおじさんは、一瞬、握りしめていたライフル銃を落としかけたが、すぐにそれを強く握り直し、まるで喉の奥から絞り出すような、低い唸り声で威嚇するように言い放った。

 

「貴様ッ! 不法侵入だぞッ! 今すぐ出て行け! 」

 

 しかし、その大男はバーノンおじさんの必死の威嚇など、まるで耳に入っていないかのように、狭い小屋の中に窮屈そうに身をかがめてずかずかと入ってきた。屈み込んでも、彼の頭頂部の黒い髪は、低い天井をざらりと擦った。彼はまるで子供のおもちゃを拾い上げるかのように、容易く倒れた扉を拾い上げるといとも簡単に、元の歪んだ枠にバチンと戻した。それまでけたたましかった外の嵐の音が、やや薄らいで聞こえた。

 

「お茶でも入れてくれんかね? いやはや、ここまで来るのは骨だったぞ」

 

 彼は、まるで自分の家であるかのように、遠慮会釈もなく、どすんどすんと重い足音を立てて、ダドリーとペチュニアおばさんが身を寄せ合っているソファに近づいた。ペチュニアおばさんの顔は、恐怖で完全に引き攣り、まるで蝋人形のように蒼白になった。

 

「少し開けてくれや、太っちょ」

 

 ペチュニアおばさんは、まるで熱い鉄板から飛び退くように、ダドリーを荒々しく引きずって、バーノンおじさんの元へ逃げ出した。

 

 彼は、重い体をドスンとソファに沈めると、火のついていない寂しい暖炉に気が付き暖炉に近づいて何かを行った。すると、一瞬にして暖炉の中に、オレンジ色の温かい炎が燃え上がった。

 それから、大男は何かを探すように辺りを見回し始めた。どうか、どうか、見つかりませんように、とハリーは心の中で必死に願ったが、その願いは届かず、大男の目に捉えられてしまった。

 

「オーッ、ハリーだ!」

 

 ハリーは、その恐ろしげで、まるで熊のように荒々しい大男の目が、出会ったばかりの自分に向かって、クシャクシャになって優しく笑いかけているのに気が付いた。そのおかげで恐怖でガチガチになっていたハリーの体が、ほんの少しだけゆるまった。

 

「最後におまえさんを見た時にゃ、まだほんの赤ん坊だったなあ。あんた父さんそっくりだ。でも目は母さんの目だなあ」

 

 大男は、まるで遠い日のことを懐かしむように、優しい声でハリーに話し始めたが、その温かい言葉を遮るように、バーノンおじさんが震える銃口を大男に向け、まるで悲鳴のような叫び声を上げた。

 

「いますぐ出ていけ、この異常者が!」

「黙れ、ダーズリー。腐った大すももめ」

 

 大男は、ソファの背もたれの向こう側に手を伸ばして、バーノンおじさんの震える手からいとも簡単にライフル銃をひったくってしまった。ライフル銃はまるで子供がまだ柔らかい粘土を弄ぶかのように、やすやすとねじ曲げられ、部屋の隅に捨てられた。

 唯一の武器を失ったバーノンおじさんは、恐怖で顔を完全に引きつらせていたが、それでも、目の前の巨大な大男を必死に睨みつけ続けていた。大男は、そんなバーノンおじさんの様子など一切気にも留めず、優しい眼差しをハリーへと向け穏やかな声で話しかけた。

 

「誕生日おめでとう。おまえさんにちょいとあげたいモンがある……どっかで俺が尻に敷いちまったかもしれんが、まあ味は変わらんだろ」

 

 黒く分厚いコートの内ポケットから、ややひしゃげてしまった四角い箱が取り出されハリーの目の前に差し出された。ハリーは震える小さな指でその箱を受け取ろうとしたが、それよりも早くバーノンおじさんがそれを叩き落とした。

 

「ハリー! 妙なものを受け取るんじゃあない!」

 

 その瞬間、大男の優しかった目が、にわかに鋭く光った。手に持っていた巨大な傘を、勢いよく振り上げようとした。その瞬間ハリーは、バーノンおじさんの前に飛び出した。小さな両腕をめいっぱい広げて大男の前に立ちはだかり、精一杯の勇気を振り絞って叫んだ。

 

「バーノンおじさんたちをいじめるのは、僕が許さないぞ……この悪者(ヴィラン)め!」

 

 その小さな体は、恐怖でガチガチに震えていた。その小さな勇気に大男は、まるで石像のように固まった。

 

「……敵、じゃと? ……待て待て、誤解だハリー。わしは敵じゃねぇ。魔法省の者でも、ましてや、あの忌まわしき『例のあの人』の信奉者でも、悪人でもない。わしは、ホグワーツの森番で、ダンブルドア校長の使いで——」

 

「だったら、どうして、おじさんを攻撃しようとしたんだ!」

 

 ハリーの声は震えていたが、目は真剣だった。 大男はきょとんとした顔になった。それから何かを確かめるように、目の前の少年をじっと見つめた。

 

「ふむ……なるほど。お前は、やっぱりあの人の子じゃのう……」

 

 ハハグリットは、まるで納得したように鼻をすすり小さく笑った。そして、そっと、手に持っていた巨大な傘を下ろし分厚いコートのいくつもある大きなポケットの中から、一枚の古びた手紙を取り出した。

 

「わしはルビウス・ハグリット。ホグワーツの校長、アルバス・ダンブルドアの使いじゃ。まずはこれを読んでくれ、ハリー。お前宛ての手紙だ。すべてはそこから始まる」

 

 ハリーはハグリットからその手紙を受け取り封を開けようとしたが、ペチュニアおばさんが「待って!」と叫んだ。

 

「い、いや、まって、ハリー。読んじゃダメよ、そんな手紙……お願い、そんなもの読まないで……」

 

「うるさいぞペチュニア。黙りな」

 

 ハグリットが苛立たしげに巨大な傘の柄で床をドンと叩いた。そのあまりの剣幕に、ペチュニアおばさんは再び声を失いまるで金縛りにあったかのように黙り込んだ。そんなペチュニアおばさんの様子を見て、ハリーは手紙の開封をほんの少しだけ躊躇したが、意を決して封蝋を開けて手紙を開いた。

 

 ホグワーツ 魔法魔術学校  

 校長   アルバス・ダンブルドア  

 マーリン 勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、

 最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員

 親愛なるポッター殿

 このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心より

お喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

 新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事を

お待ちしております。

                                   敬具

                       副校長 ミネルバ・マクゴナガル

    

「……ホグワーツ魔法魔術学校?」

 

 思わずつぶやいたハリーの言葉が終わるよりも早く、バーノンおじさんはまるで狂ったように手紙をハリーからひったくり、手紙をバラバラに破り捨てた。それからハリーの小さな体を強引に抱え込み、怒鳴り散らすかのように叫んだ。

 

「こんなものは全部、この大馬鹿者の妄言だ! いいか! ハリーはストーンウォール校に行くんだ! そんな、みょうちきりんな、聞いたこともないような学校などには、絶対に、絶対に行かせんぞ!」

 

「だまれ、ダーズリー。なんにもわかっちゃいない奴が、勝手なことを言うでない」

 

 ハグリットがステューピファイという言葉とともに傘を振ると、その先端から眩い光が飛び出した。その光を浴びたバーノンおじさんは、まるで糸の切れた操り人形のように、たちまち意識を失って、床にぐったりと倒れてしまった。

 

「バーノンおじさん!」

 

 ハリーは、まるで抜け殻のように力なく倒れたバーノンおじさんの体を、必死に支えようとしたが、小さな体ではどうすることもできなかった。ハリーは、ありったけの敵意を込めた目で、ハグリットを鋭く睨みつけた。

 

「心配いらん。ちっとおとなしくなっただけじゃ。魔法に対する免疫がないから、ちと効きすぎたかもしれんが……まあ、そのうち目を覚ます」

 

 ハグリットは、部屋の隅で、まるで石像のように固まって動けずにいるペチュニアおばさんとダドリーに一瞥をくれた。ハリーは意識を失ったバーノンおじさんを見下ろしながら、まだ少し震える声で、ハグリットに問いかけた。

 

「一体……あなたは何者なんですか。どうして僕の名前を知ってるんですか? それに、ホグワーツって……一体何なんですか?」

 

 ハグリットは少し驚いたように大きな目を見開き、それから、まるで苦虫を噛み潰したような顔で低い唸り声を上げた。

 

「……なんてこった。まさか、あんたら何も話してなかったのか? 一言たりとも?」

 

 ハリーは、首を横に振った。ハグリットは、怒りで荒い鼻息を漏らし、何か激しい罵りの言葉を呟きかけたが、ぐっとそれを飲み込んで、まるで重い扉を開くように口を開いた。

 

「いいか、ハリー。お前は普通の子じゃない。魔法使いなんだ。そしてわしら魔法使いの英雄(ヒーロー)なんじゃ」

 

「ヒーロー……?」

 

 その言葉は、まるで遠い夢の中の出来事のように、どこか現実味がなかった。だって無個性の僕がヒーローになれるはずがない。

 

 ハグリットは力強く頷き、続けた。

 

「そして、おまえさんの両親——リリーとジェームズ・ポッターも、偉大な魔法使いだった。わしの知っとる中でも、指折りの優秀な者たちじゃ。心優しく、勇敢で、そして——」

 

 彼は、少し声を詰まらせ、まるで喉に何か詰まったかのように、ごほん、と小さく咳をした。そして、少しだけ顔を歪ませ、遠い日の記憶を辿るような、物憂げな表情で、ゆっくりと息を吸い込んだ。

 

「——そして、おまえを守って死んだ。ハリーがまだ赤ん坊だったとき、『名前を言ってはいけないあの人』、がおまえさんたちを襲った」

 

 その、言葉を聞いた瞬間、部屋の隅で小さく身を縮こまらせていたペチュニアおばさんの体が、びくりと小さく震えた。ハグリットは、その様子を気にも留めず重々しい声で続けた。

 

「あの、おまえさんたちを襲った人物は、魔法使いの中でも、それはそれは恐ろしい、強大な力を持った魔法使いじゃ。だが、あの人の死の呪いは、おまえさんに届かなかった。そして……あの人は、滅びた。お前さんは生き残ったんだ。お前さんだけが生き残った。赤ん坊のおまえが、最も恐ろしい呪いをはね返したんじゃ。誰にもできなかったことをやってのけた。魔法界じゃ、あんたは英雄じゃよ、ハリー・ポッター」

 

 ハリーは、その衝撃的な事実に言葉を完全に失っていた。自分が……英雄? 両親が魔法使い? 僕は魔法を使える? 

 

「でも……じゃあ、どうして僕は、こんなところで育ったの? なんで……ペチュニアおばさんたちは、そんなこと、何も教えてくれなかったの?」

 

「そりゃあ、あいつらが——」ハグリットは、堪忍袋の緒が切れたように怒鳴りかけたが寸前でぐっと言葉を飲み込んだ。そこに、まるで堰を切ったようにペチュニアおばさんがヒステリックに叫んだ。

 

「……だって、だってあなた達が、リリーを奪ったんじゃない! あの人を、殺したんじゃない! だから、この子は——この子だけは、あなた達に、絶対に奪わせてなるものかって……いや、いやよ、ハリー、行かないで、あなたまでいなくならないで……!」

 

 重苦しい沈黙が、小屋の中に流れ込んだ。

 

 ハリーはゆっくりと立ち上がり、床に散らばった破られた入学許可証の断片を茫然とした表情で見つめた。バーノンおじさんは、まだ意識を失ったまま床にぐったりと横たわっている。ペチュニアおばさんは、一体何が起こっているのか理解できていない様子のダドリーを、まるで自分の命綱であるかのように強く抱きしめて、静かにすすり泣いていた。ハリーはただただ、彼女の震える背中を複雑な感情を抱えたまま見つめていた。

 

 ハリーは、小さな拳をぎゅっと握りしめ、静かに口を開いた。

 

「……ペチュニアおばさん、ごめんなさい。僕、ホグワーツに行きます」

 

 ペチュニアおばさんはまるで世界が終わってしまったかのような絶望した顔で再び声を上げてすすり泣き始めた。ハグリットはそんな彼女の様子など目に入っていないかのように上機嫌にコートをまさぐった。

 

「おお、よう言うた! よく言うたぞ、ハリー! さっそくダンブルドア先生に連絡せんと、いかんのう!」

 

 ハグリットはポケットだらけのコートから一羽の眠たそうなふくろうを引っ張り出した。それから、使い古された羽根ペンと、丸められた羊皮紙の巻紙を取りだして、何やら熱心に走り書きを始めた。書き終わるとふくろうの嘴にそっとくわえさせ荒れ狂う嵐の吹き荒れる暗闇の中に躊躇なく放った。

 

「もう夜も遅い。明日は町へ行って、教科書やら何やらを買わんとな」

 

 そう言うとハグリッドは分厚いコートを脱いで、それを、ハリーに向かって放ってよこした。

 

「それを掛けて寝るといい。ちいとばかりモゴモゴ 動いても気にするなよ。どっかのポケットにヤマネが二、三匹入っているはずだ」

 

 ハリーはハグリットの小さな体では持ち上げるのがやっとな重たいコートを受け取ると、まだ意識を失って床に横たわっているバーノンおじさんの上にかけ、自分もその隣に潜り込んで眠りについた。そうやって誰かと一緒に眠るのはハリーにとって初めての経験だった。




簡単な構想だけなら炎のゴブレットまでは一応ありますし、ヴォルデモートとの決着もどうするか決めてはいるのでモチベが続けば完結させるつもりです。

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