僕のウィザーディングアカデミア   作:いものこ

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 イズクの犬種は洋犬ではなく日本犬のイメージ。とても賢いですが魔法生物ではない普通の犬です。
 


コンパートメントにて 後編

 

 いつの間にか、コンパートメントの窓の外は、すっかりと暗闇に包まれていた。深い霧が立ち込める中を、ホグワーツ特急は安全な速度でゆっくりと進んでおり、空の色は、吸い込まれるような深い群青色へと変わっていた。

 そんな中、コンパートメントのドアを、ノックする音が聞こえ、丸顔の少年が、泣きべそをかきながら入ってきた。

 

「ごめんね。僕のヒキガエルを見かけなかった?」

 

 コンパートメントの扉が静かに開き、泣きそうな顔の丸顔の少年が中をのぞき込んできた。

 

「ご、ごめんね……僕のヒキガエル、見かけなかった?」

 

 声は小さく、震えていた。彼の制服の袖口は少し濡れており、手には何かを握っている。おそらくずっと列車内を探し回っていたのだろう。ハリーが首を横に振るとか少年はめそめそと鳴きはじめた。

 

「僕のトレバー、またいなくなっちゃった。きっと僕から逃げてるんだ!」

 

「大丈夫、僕も探すの手伝うよ。そのトレバーだっけ? どんな子なの?」

 

 ハリーはすぐに立ち上がろうと身を乗り出したが、それよりも早く、勝己の手がハリーの肩を軽く押さえた。

 

「俺が行く。お前らはそろそろ制服に着替えてろ」

 

 勝己の言葉にハリーは外が随分と暗くなってることに気が付いた。確かにもうすぐホグワーツに着きそうではあるしそろそろ着替えたほうがいいかもしれない。勝己は立ち上がってハンガーにかけていたローブを羽織ると、イズクのリードを持ってネビルに近づいていった。

 

「お前、そのヒキガエルの匂いが付いてるもん持ってるか?」

 

「えっ……あっ、うん!」

 

 ネビルは慌ててポケットからしわくちゃになったハンカチを取り出した。勝己はそれを無言で受け取ると、しゃがみ込み、イズクにハンカチの匂いを嗅がせた。

 

「……ン」

 

 イズクはハンカチの匂いを念入りに嗅ぎ終えると、鼻先を床に近づけながら通路へと歩き出した。勝己はその後を無言でついていき、やがてコンパートメントの扉が静かに閉じられた。

 

「かっこいいね」

 

 思わずハリーが呟くと、ロンがソファの背もたれに寄りかかって鼻を鳴らした。

 

「僕ならヒキガエルなんて、さっさとなくなってくれた方がいいけどな。どうせ逃げ回ってばっかりで、言うこと聞かないんだろ?」

 

 そう言いながら、ロンは自分の膝で丸まっているスキャバーズをつついた。ねずみはぴくりとも動かない。

 

「見てよ、こいつ。寝てばっかりで、ぜんっぜん役に立たないんだ。僕もダイナマイトの犬みたいな、かっこいいペットがよかったよ、ほんと」

 

 言いながら、ロンは自分のトランクをごそごそとあさりはじめ、くたびれた杖を取り出した。あちこちが欠け、端から白い何かがはみ出している。

 

「昨日、ちょっとおもしろくしてやろうと思って、黄色くなる呪文をかけようとしたんだ。でも、全然効かなかったんだよな……見ててよ、今度こそ――『お日さま、雛菊、溶けたバター……』」

 

 ロンが呪文を唱え、スキャバーズに向かって杖を振り上げたそのとき――

 

 コンパートメントの扉が再び開いた。そこに立っていたのは、ふさふさとした栗色の髪を揺らす、一人の少女だった。彼女はすでにホグワーツの制服に着替えており、銀の時計を胸ポケットから引き出しては、ちらりと中を確認している。

 

「誰か、ヒキガエルを見なかった? ネビルのペットが逃げちゃったの」

 

 その口調には、どこか「当然の義務をこなしてます」といったような自信と威厳が漂っている。ハリーが返事をしようとした瞬間、彼女の目はロンの手元――今にも呪文を唱えようとしている杖に向いた。

 

「あら、魔法をかけるの? それじゃ、見せてもらうわ!」

 

 彼女はそのままズカズカと中へ入り、空いた席に腰を下ろした。ロンは面食らったように一歩後ずさる。

 

「あ、ああ……うん。じゃあ、いくよ」

 

 少しばかり咳払いしてから、ロンは緊張した面持ちで唱え始めた。

 

「『お陽さま、雛菊、とろけたバター……デブで間抜けなネズミを黄色に変えよ!』」

 

 杖を振るが、何も起きなかった。スキャバーズは相変わらず寝息を立てながら、ぐっすりと眠っている。

 

「その呪文、間違ってない?」

 

 少女はちょっと眉をひそめながらロンの杖を見つめた。

 

「まあ、うまくいかなかったわね。私は練習用の簡単な呪文なら大体成功してるわ。私の家族は誰も魔法使いじゃないの。でも、ホグワーツに入れるって手紙をもらったとき、もう本当に嬉しくて……全部準備したの。教科書はもちろん、全部覚えたわ。少しでも遅れを取りたくなかったから、だって最高の魔法学校だって聞いたんだもの……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなたたちは?」

 

彼女は一息にまくし立てると、最後に少し早口で自己紹介をした。

 

「僕はハリー・ポッター。よろしく、グレンジャーさん」

 

 ハリーは握手をかわそうと手を差しだした。ハーマイオニーは目を輝かせ、勢いよくハリーと握手した。

 

「あっ……あなたが、ハリー・ポッター!? 本で読んだわ! あなたのこと、『近代魔法史』や『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかにも出てくるのよ!」

 

 ハリーは思わず目を瞬かせた。

 

「……へ、へぇ?そうなんだ」

 

 ハグリットから話は聞いていたがまさかマグル生まれの子にまで知られるくらい有名人になっているとは思わず、ハリーは気の抜けた返答を返した。

 

「そうなのよ! 私、手紙が届いてから歴史の参考書を二、三冊読んだの。あなたの名前、すごくよく出てくるのよ。でも、知らなかったの? 私だったら、全部調べるけど」

 

 ぐいぐい来る彼女にハリーは少したじろいだが、丁寧に手を差し出したまま言葉を返した。

 

「あ、ありがとう、グレンジャーさん。でも僕、当時のこと全然覚えていないんだ。ごめんね?」

 

 するとハーマイオニーは少し微笑んで、その手をしっかり握り返す。

 

「あらそう。でもグレンジャーさんなんて堅苦しいわ。ハーマイオニーって呼んでちょうだい。私もハリーってよぶから」

 

「そう?ならよろしくね。ハーマイオニー」

 

 一方、横で見ていたロンはようやく名前を自分の名前を口にした。

 

「ぼ、僕はロン・ウィーズリー……」

 

「ええ、よろしく、ロン」

 

 ロンの声はかすかに引きつっていたが、ハーマイオニーは意に介した様子もなく、握手を交わすとすぐに次の話題へと切り替えていた。

 

「ところで、二人は寮はどこどの寮に入るのかってもうわかってる? 私、いろんな人に聞いて調べたんだけど、グリフィンドールが一番いいと思うの。だってダンブルドアもそこ出身なんですもの。でもレイブンクローも悪くないと思っているわ」

 

 彼女は一息で言い切ると腕に着けた時計を見てサッと立ち上がった。

 

「あっごめんなさい、もう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。二人とも、そろそろ制服に着替えたほうがいいわよ。もうすぐ着くはずだから」

 

 その言葉を残し、ハーマイオニーはまるで嵐のように去っていった。

 扉が閉まると、ロンはスキャバーズを見つめながらうんざりとつぶやいた。

 

「どの寮でもいいけど、あの子のいないところがいいな……」

 

 ロンがスキャバーズを膝に乗せながらぼそりと呟いた。

 

「そう?ちょっと変わってるけど真面目ないい子だと思うけど……」

 

 ハリーがそう言うとロンはベーと舌を出して信じられないという顔をした。

 

「そういやさ、ハリーはどこの寮行きたいんだ? さっきは聞けなかったしさ」

 

 トランクを開けてローブを探していたロンがふと我に返ったように顔を上げて訊いてきた。ハリーは少し考えてから、穏やかに笑って答えた。

 

「僕もどこでもいいんだけどね。でも、君や、かっちゃんと同じ寮がいいな」

 

 その言葉にロンの顔がぱっと明るくなった。

 

「ほんとに? じゃあ、やっぱりグリフィンドールがいいよな! 僕、兄弟全員そこだし、なんか落ち着くっていうか……」

 

 やけに上機嫌なロンが、鼻をこするようにして照れた。ハリーもなんとなく嬉しくなって、つられて頷いた。

 

「ところで、ハリー。好きなクィディッチチームってあるかい?」

 

「クィディッチ……? あ、えっと……」

 

 ハリーは首をかしげた。ロンが目を丸くした。

 

「まさか、クィディッチ知らないの!?」

 

「う、うん……そもそも、どんなゲームなのかも知らなくて」

 

 その答えにロンはまるで世界が崩れたような表情を見せた。

 

「なんてこった……クィディッチを知らないなんて……マグルってのは大変だな…」

 

「そんな有名なの?」

 

「そうさ! 魔法使いなら誰でも知ってる大人気スポーツなんだよ!!」

 

 ロンは一瞬肩を落としたが、すぐに気を取り直したように身を乗り出した。

 

「じゃあ教えてやるよ! クィディッチってのは空飛ぶ箒に乗ってやるスポーツで、七人対七人で戦うんだ。ポジションは三つあって――」

 

 ロンは熱を帯びた声で、次々に言葉を繰り出していった。チャドリー・キャノンズの大ファンであること、かつての伝説的シーカーがどれだけすごかったか、去年の試合のリプレイがいかに感動的だったかなど、止まることを知らない。ハリーはというと、聞いたことのない単語に少し戸惑いながらも、そんなロンの話を楽しそうに。

 

 突然、天井から声が響いた。

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、社内に置いていってください」

 

 列車のスピーカーからのアナウンスだった。ロンがはっとして立ち上がる。

 

「やば、もうそんな時間か! ハリー、着替えないと!」

 

「うん」

 

 ハリーも頷いてローブを手に取り、二人は慌ただしく制服に着替え始めた。車窓の外はすっかり日が落ちていて、深い森と湖の影が流れていく。やがて、列車が速度を落とし、重たいブレーキ音とともに停車した。

 

 列車が止まり、ドアが開くと、冷たい夜風が一斉に流れ込んできた。黒一色の制服に身を包んだ子供たちがわらわらと降りていく。ハリーもロンと共にホームに降り立ったが、目は人の波の中に勝己の姿を探していた。

 

 白い犬の姿も、特徴的な金髪も、どこにもない。イズクがいればすぐに見つかるはずだと思っていたが、それらしき影すら見えない。まるで最初からこの場所にいなかったかのように、勝己の存在は跡形もなかった。

 

 焦りにも似た胸のざわつきを感じながら、ハリーはきょろきょろと周囲を見渡した。そこに、見覚えのある顔が目に入った。

 

「ハーマイオニーと、ネビル?」

 

 ハリーの声に、振り向いたのはネビルとハーマイオニーだった。ハーマイオニーはハリー達に気が付くとネビルに何かを伝えた。それを聞いたネビルが小走りでハリー達に近づいてきた。

 

「さっきはありがとう。君の友達のおかげでトレバーが見つかったよ」

 

「そっか、それはよかったよ。君はネビル?でいいのかな」

 

 ヒキガエルを嬉しそうに抱きかかえているネビルを見てハリーは笑顔になった。無事探し物を見つけられたらしい。しかし勝己が一緒にいないことに気が付いてハリーは周囲を見渡した。

 

「そう言えば自己紹介してなかったね。僕はネビル、ネビル・ロングボトム。君、ハリー・ポッターだったんだね。さっきハーマイオニーから聞いたよ」

 

「そうだよ。ハリー・ポッター。こっちは僕の友達の……」

 

「ロン。ロン・ウィーズリー。よろしく、ネビル。君、ダイナマイトは一緒じゃないの?」

 

「ダイナマイトって犬を連れた人のこと?ごめん……トレバーを見つけてくれた後、すぐどっか行っちゃったんだ」

 

 ネビルがどこか申し訳なさそうに答える。歩いてやってきたハーマイオニーも首をかしげながら、「私も見てないわ」と会話に加わった。

 

 ハリーは二人の発言に若干気落ちしつつ、もう一度当たりを見渡していると巨大な声が夜の空気を切り裂いた。

 

「イッチ年生はこっち! イッチ年生は、みーんなこっちにこーい!」

 

 声の方をに向かうと、ハグリットがいた。手には大きなランタンを掲げて一年生たちをどこかへ誘導していた。

 

「あそこにに行きましょう。一年生ならきっとそこにいるはずだわ」

 

 ハリー達はハーマイオニーの言葉に従ってハグリットのもとへと向かった。何十二んかの子供たちがすでにいたがその中に勝己の姿は見つけられなかった。ハグリットはハリーの姿に気が付きとクシャクシャの笑顔を浮かべてさらに声を張り上げた。

 

「全員ついてこい! ボートに乗るぞ、ホグワーツまで湖を渡る!」

 

 ハグリットの後について暗い小道を歩くと、やがて木々の切れ間から湖の岸辺が見えてきた。

 

 その光景は、息を呑むほどに幻想的だった。

 

 黒曜石のような湖面が、夜空を鏡のように映し出している。星々が水の中にも浮かんでいるかのように、ゆらゆらと揺れていた。遠く、湖の向こう岸に、巨大な城がそびえている。その姿はまるで空から生えているかのようだった。幾重にも連なる尖塔は闇の中に黄金色の灯りをともしており、まるで星屑を編み上げた絵画のように輝いている。

 

 湖の縁には、小さなボートが何十艘も並べられていた。四人ずつ乗り込むように、と指示され、ハリーは自然とネビル、ロン、ハーマイオニーと同じボートに乗り込むことになった。

 

 ボートはひとつ、またひとつと水面に滑り出す。誰かがこぐわけでもないのに、まるで風に押されるように、あるいは見えない手に導かれるように、静かに、そして確かに、ホグワーツへと向かっていく。

 

 夜の湖はまるで別世界だった。漆黒の水面に浮かぶ光の筋は、まるで空の星々が湖に道を描いているかのようだった。風は冷たくも穏やかで、水面を撫でるたびに、周囲の世界がほんのわずか震えるように揺れた。

 

 誰もが黙っていた。ただ、その美しさに息を呑み、言葉を失っていた。

 

 そして、湖の対岸――光に照らされた桟橋が、ゆっくりと近づいてきた。

 ボートが桟橋にたどり着くと、ハグリットが水音を立てながら大股で近づいてきた。

 

「全員、ここで降りるんだ。足元に気をつけろよ!」

 

 ハリーは冷たい夜気の中、ボートの縁に手をかけて慎重に立ち上がった。ネビルがぎこちなくバランスを崩しそうになり、慌ててハーマイオニーが腕を取って支えた。ロンは水に足を突っ込まないように、少し高く足をあげて桟橋に上がっていた。

 

 地面に立った瞬間、ハリーはあらためてホグワーツ城を見上げた。

 

 山の中腹にそびえ立つその姿は、真っ黒な空と湖に挟まれて、まるで別の世界の入口のようだった。高く積み上げられた石造りの塔は、どれも無数の窓に明かりが灯っており、それが夜空に浮かぶ星々と共鳴するようにきらめいている。風に揺れる旗や、どこかで鳴っている鐘のような低い音が、幻想のように静かに響いていた。

 

「こっちだ!」

 

 ハグリットのランタンの灯りが、暗がりのなかに浮かび上がる。彼の後について、小さな一年生たちは列を作って歩き出した。

 

 湖の岸から階段を上る小道を抜けると、やがて巨大な門が見えてきた。鉄でできた両開きの門の上には、獅子と蛇、鷲とアナグマがあしらわれた紋章が浮かび上がっている。

 

 ハグリットが門を押し開けると、その先には広大な石造りの中庭が広がっていた。夜の風が冷たく吹き抜け、どこか草の匂いを含んだ土と石の香りが鼻をかすめる。子供たちはハグリットに続いて城の正面玄関へと通じる石の階段を階段を昇り

、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 

 そしてちゃんと子供たちが付いてきていることを確認するとハグリットは大きな手を振り上げ城の扉を三回たたいた。




イズク(犬)について
 1990年代の日本の田舎の裕福な家って犬飼ってそうだよなという偏見から生まれました。勝己にハリー(デク)をハリーと呼ばせるか出久と呼ばせるか迷ったのでいっそ出久という名前を奪えばってしまえばいいというメタ的な都合でイズクという名前になりました。
 イズクは勝己の入学祝いとして貰われてきました。春生まれ。性格はデクには全然似てなくてどちらかといえばかっちゃん似なプライドの高い典型的な日本犬です。日本犬なので普通の立ち姿が洋犬にはガンを飛ばされているように感じます。そういうところもかっちゃんっぽいですね。
 
書き溜めが尽きたので今後は不定期になります。

本作の日本魔法界の設定みたいですか?

  • 設定だけでまとめて欲しい
  • 前書きで少しづつ明かしていく感じがいい
  • 後書きで少しづつ明かしていく感じがいい
  • いらない
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