オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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01.入団理由

 入団式は無事終えた。

 いや、正確にはコニー・スプリンガーの敬礼ミスからの頭鷲掴みで宙吊りや、ジャン・キルシュタインの内地行くため発言からのクソハゲによる頭突き、サシャ・ブラウスのクソハゲへ舌打ちしながら蒸した芋を半分と言う名の5分の1贈呈からの飯抜きで死ぬまで走れという刑罰等があったのだが。ともあれオレ自身には何も大きなハプニングはなかったので無事ではある。

 そして現在。流石に入団式からそうそうに激しい訓練ということはなく、夕飯までの暇な時間を潰すために未だ走らされているサシャ・ブラウスを後からやってきた数名の同期と眺めていた。

 

「あの芋女まだ走らされてるぞ」

 

 そう言ったのはてるてる坊主ことコニー・スプリンガー。呆れたような尊敬したような、絶妙な目線を倒れそうになるのをこらえるように走っているサシャ・ブラウスに向けている。

 

「すごいな、5時間ぶっ通しか」

 

 とはエレン・イェーガー。こちらはシンプルに感心しているようだな。まあある意味で一番純粋そうだから深い意味はないだろう。

 

「あ、居た!」

 

 柵に肘を置いて頬杖を付きつつ、サシャ・ブラウスの周回数をカウントしながら会話を盗み聞きしていると、女性の声がしてくる。

 誰を探しているのだろうか、と視線を右に向けると黒髪をお下げにした女性。ミーナ・カロライナがこちらに手を振りながら近づいてきた。

 

「お疲れ様」

「うん、お疲れ。君は確かミーナ・カロライナだよね?」

 

 年齢的にはオレのほうが一つ上だろうが、ここは軍隊。大事なのは年齢よりも階級、そしてオレたちは同期なのだ。彼女と同じようにフランクに挨拶を返すと、にっこり笑顔を見せてくれた。

 

「正解!」

「よく覚えてるよ。入団式から気の毒だなぁと」

「はは......それはできれば忘れてほしいんだけど」

 

 恥ずかしそうに笑うミーナ・カロライナ。

 おい何だコイツ、ポテンシャルが無限大すぎる......! やはり可愛いは正義、オレが元いた世界であれば『地味だけど誰とでも別け隔てなく接する、実はスタイルが良い美人なあの娘』ポジション間違いなしですね。しかもかなり小柄なのも良き。捗る。

 

「そいつは難しい頼み事だな。でも開拓地へ移動を志願せずここで会話ができて嬉しいよ。ミーナと呼ばせてもらっても?」

「もちろん。正直、最初で心が折れかけてたけどあなたのお陰で救われたよ。キース教官の前であんなに余裕だなんてすごいな......あ、そうだ私はなんて呼んだらいい?」

「アルフレッド、でもいいけど。長いからみんなオレのことはフレディって呼ぶんだ。だからそう呼んでほしい、他の皆も」

 

 言って周りを見る。ミーナはもちろんエレン・イェーガー、アルミン・アルレルト、コニー・スプリンガー、そしてマルコ・ボットというこの場にいるメンバーは頷き。加えてコニーとマルコからは名前で呼んでほしいとも。

 本当はもう一つ呼ばれ方があるけれど、それはあの人しか呼ばないから言う必要はないな。

 

「なあフレディ、ちょっといいか」

 

 今度はエレン・イェーガー。視線をそちらに固定すると、一幕置いてから悪いと前置きした。

 

「そういえば名乗ってなかったな。俺はエレン・イェーガー、好きに呼んでくれ」

「それならエレンと呼ばせてもらうよ。で、どうした?」

 

 エレンは一歩前に出て、オレの目をしっかりと見てきた。

 

「お前、内地出身なのに志願した理由は復讐のためって言ってたよな。それは、巨人に対してか?」

 

 いきなりぶっこんでくるなコイツ。ミーナたちがちょっと引いてるぞ。いや、これはオレでも引くわ。なにか訳アリっぽいこと言ってたやつにド直球で聞く勇気はオレにはないのだが......エレンの顔を見るに、自分と同類かどうかを知りたがっているような気がする。

 わざわざごまかす必要もないし、なによりエレンと仲良くなっておかなければ色々とマズイことになりそうだ。言っちゃおう。

 

「ああ。あの日、オレの家族。具体的には両親と祖父は用事があってシガンシナ区に出向いていたんだ。そこからは言うまでもないだろうけれど、母は飛んできた瓦礫の下敷きで、父と祖父は巨人に喰われて死んだと聞いたよ」

「......」

「幸いオレは家のツテで家族の最期を知ることが出来たし、いくつかの遺留品も戻ってきた。あの混乱で身近な人の死を目撃してしまった人や、まだ家族がどうなっているのかもわかっていない人たちの苦しみに比べればマシさ」

 

 聞いてきたエレンを初め、その場にいる全員の雰囲気が重くなる。オレも流石に重いと思うし、前世の記憶を持っていない無垢な少年だったら復讐のためにと内地を飛び出して訓練兵団に入団出来たとは思えない。目の前のエレンのように、己の強い意思で志願した人たちはすごいな、と思う。

 

「そんなことないよ!」

 

 ミーナが声を荒げる。

 なにか彼女の気に障ることを言ってしまっただろうか、とそちらを見ると、とても悲しそうな顔が目に写った。

 

「誰かと比べてマシなんてことないよ。フレディも辛い思いをしたんだから、我慢することない。って、お前が何を言うんだって思うかもしれないけど......でも同期だし、私たちは仲間だもん。なにか力になれることがあるなら頼って!」

「ミーナ......」

 

 自分、泣いていいっすか。

 もちろんミーナだけでない。その場にいる全員が同じようにオレを心配してくれていることへの嬉しさと、誇張なしに割と精神的ダメージがなかったのに心配される罪悪感で涙が出そうです。

 決して強がりではなく、あの日にあれが起きることがわかっていたから十分に家族との時間を過ごしたんだ。突然の別れに比べれば覚悟が出来ていただけマシ、とは言えるだろう。だが彼女たちの気持ちを無下にするなんてことはできないな。

 

「ありがとうミーナ、ならこれからたくさん頼りにさせてもらうよ。もちろんミーナも、皆もなにかあったらオレに頼ってくれると嬉しい」

「うん!」

 

 しれっとミーナに右手を差し出して握手を求めると、彼女は両手で包み込むように握手をしてくれた。ああ、なんという軟さ。これはしばらく右手を洗いたくないですね、流石に汚れるから普通に洗うけども。

 

「フレディ、すまん」

 

 オレから出た言葉が想定していた以上だったのか、エレンは若干顔をしかめながら謝罪してくる。

 ミーナに比べるものではないと言われたばかりだが、オレなんかよりもよっぽど苦しい思いをしてきただろうに、それでも気を使ってくれるなんてやはり良くも悪くも純粋すぎるのかもしれないな。ここでミーナと握手できたからむしろありがたいくらいだぜ! なんて言ったらぶん殴られそうだから言わないけど。

 

「謝ることはないさ、エレン。そう言えば君の出身は? あのハゲ......んん、キース教官に突っ込まれていなかったけど」

「コイツと同じ。シガンシナ区だ」

「シガンシナ区......エレンとアルレルトは親しいのか?」

 

 爽やかな表情でアルミン・アルレルトの肩に手を置くエレン。シガンシナ区出身というのは知っているが、まるでいま始めて聞きましたと言わんばかりの顔をしたオレに、アルミン・アルレルトが説明してくれた。

 

「アルミンでいいよ。僕とエレンは幼馴染なんだ」

「へえ、幼馴染か。オレには同世代の友人が居なかったから羨ましいよ」

「そうなのかい? 僕の勝手なイメージだと、フレディはかなり交友関係が広そうだけど」

 

 その言葉にこの場にいる全員が頷いた。

 

「フレディは挨拶がちゃんとできるやつだろ? ミーナが来るまで喋ってなかったけど、お前はいい奴だって感じるぞ」

「そうだね。それにしっかりしてそうだし」

 

 コニーとマルコからの評価になんだかむず痒さを覚えていると、ミーナが肩に手を置いてきた。

 

「それに、意外とこうやって照れちゃう可愛い面もあるし?」

「からかわないでくれよ、皆して。けど本当に交友は狭かったよ、まず家があったのがヤルケル区の中でも辺鄙な場所だったし。遊びに来てくれてた人は居たけれど、年上だったから」

 

 このこのと小突いてくるミーナに待ったを掛けるようにしてさり気なく触っちまったぜぐへへ。やー最高! 女性に軽々しく触れるものではないが、先程の件で明るい雰囲気にしようとしてくれたミーナの優しさに甘えさせていただきます。

 

「なるほど、僕たちには未知の世界だね」

「壁に囲まれては居たけど、農業地帯なぶん開放感っていうのはあったかもね。けどやることと言えば木登りとか薪割りとか、草原を走ったりとかくらいだったからさ。密集した街を友人たちと駆け巡る、とかやってみたかったよ」

「僕たちは結構そういう遊びもやったよ。一緒に入団したミカサっていう女の子と3人で」

「けど、フレディが思ってるようなもんじゃないかもしれないぜ」

「それを言ったら内地での暮らしだって同じさ」

 

 そんな会話をしていると、続々と人が食堂の方へと集まっていくのが見える。

 もうこんな時間か。ここはサシャ・ブラウスに餌付けをしておくつもりなので、早めに向かって持ち帰りがバレないようにしておこう。うまくやれば自分の分を削らずとも彼女の支給分のパンを手に入れられるだろうからな。

 

「さて、そろそろ夕食だ。オレは先に向かうけれど、皆はどうする?」

「私はフレディと一緒に行こうかな」

「俺はもう少しここで駄弁ってるよ。人混みの中だと面倒だし、先に食うとミカサがうるさいからな」

 

 どうやらアルミンはもちろんコニーとマルコも残るようで、エレンの言葉に頷く。4人にまた後でと一言残してから食堂へ足を進めると、ミーナが横についてきた。

 

「改めてだけど、これからよろしくね。フレディ」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。ミーナ」

 

 名前を呼ぶと、彼女ははにかんだ。

 おいおいこりゃあ好感度アップしちまったなぁ。ミーナ・カロライナ、生きよ。そなたは美しい。

 いや、生かす。記録が正しければ彼女はそうそうにこの世を去ってしまうことになるのだから。

 って、記録ってなんだよ記憶だろ。よくわからないが紳士モードのまま脳内でミーナたんを愛でてると言葉がごっちゃになるなあ。

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