オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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14.ドキ☆ドキ 雪山踏破訓練:1

 今日は待ちに待った雪山踏破訓練初日。

 暑がりなオレにとってはしっかり寒冷地仕様の装備をしていれば雪が降る山でも問題はないが、すでに何名かは教官を待つこの時間で凍え死にそうになっているので心配だ。立体機動装置をリュックに詰めると普段と感覚が変わるからな。

 そして肝心のオレたちの班なんだが、隣にアニは居るがミカサの姿が見当たらない。やはりあの日のあれはミカサなりの冗談だったんだろうか。まあとりあえずは最後の1人が誰になるかを楽しみにするか、ガハハ!

 

「おまたせ」

「ヒィッ!?」

「......驚いた。本当に来るんだ」

 

 後ろから声をかけられたことで驚き、一歩前に飛び出してしまう。振り返ってみればそこにはミカサの姿が。

 おっかねえよ。寒冷地仕様装備だからみんな格好は同じだけど、ミカサはなんか雪山に出てくるタイプのお化けみたい。しかも標準装備のネックウォーマーの上からマフラー巻いてるよこの娘。そこだけシュールだけどあまりにも声のトーンが一定だし無表情すぎるし、しかもぬっと現れたからアニもちょっとビビってたぞ。

 

「私は約束くらい守る」

「へえ。まあいいよ、訓練に支障がなければね」

「問題ない」

 

 2人の関係性がわからないわ。仲が悪いわけではない、というのは確定しているが互いに発する言葉に裏がありそうで聞いてるほうが緊張してくる。何この高等な会話。

 というかミカサが本当にオレとアニの班に加わるなら、エレンとアルミンはどうしたんだろう。2人が別々になることは考え難いが。

 

 周りに目をやってみると、案の定エレンとアルミンは一緒に居た。横にいるのはなるほど、トーマスか。随分とバランスが良さそうで。

 憲兵団目指してるジャンもマルコと参加しているが、一緒にいるのはコニーか。あとここから見えるのは、サシャにミーナとルースの女人世帯。いい匂いしそう、混ざりたい。そしてライナーとこっちをめちゃんこ睨んでるベルトルト・フーバーは後の1人が決まってなさそうで、クリスタとユミルのコンビも同じか。

 クリスタと組みたい人は多いだろうが、ユミルが近づくんじゃねえオーラを出してるからあえて1人になって神頼みするやつとか多そうだ。そんな不逞の輩はこの私が首を跳ね飛ばします。

 

「フレディ」

「え? イッテェ! 何すんのミカサ!?」

 

 ミカサに呼ばれて振り向くと、突然お尻に向かって強烈な蹴りが飛んできた。

 いつも通りちゃんと吹っ飛んで雪に顔面から突っ込んでしまい、顔を上げて抗議してみるとアニは知らないフリ、ミカサはため息を白くしていた。

 

「何度も呼んだけれど、あなたが反応しなかった。ので、強制的に意識を向けさせようと」

「ので。じゃねえよ、もっとやり方あったでしょ」

「私が思いつくフレディが喜び確実に気づく方法がこれだった」

「......ああ、うん。ありがとう。いやおかしくないか?」

 

 何だよその訳わからん優しさは。ていうか一番喜ぶ方法がケツキックとかおかしいだろ、そんな趣味無いって何度言えばわかるんだこの天然娘は。悪気が全くないのが尚更悪質だ、だからこそ見てる分には面白いから始祖様のお気に入りなんだろうけど。

 

「あんたら、ふざけ合うのもそろそろおしまいだよ」

 

 背中にトンと手を置かれ、アニの顔を見ると彼女が顎で指す場所にキース教官が。

 わかったかミカサ、こういうのでいいんだよ。『なるほど』とか呟いてるけど背中に蹴りじゃなくて背中に手だからな。それで気付けるからな。

 

「全員注目!」

 

 キース教官が叫ぶ。広場に集まるように言われただけで整列するようには言われていないが、それでもある程度はしっかりと列になっていてなおかつ皆がフード被っていないのは訓練兵団としてここまで訓練してきた成果だろう。なんだか血が疼く。

 そしてキース教官も雪が降っているにも関わらずコートだけでフードを被っていないのだが、頭に落ちた雪が即座に蒸発してる気がする。ていうか湯気出てるし、どんだけ熱い男なんだよ物理的に。

 

「この訓練に参加を志願した諸君らにはこれより、この雪山を踏破してもらう! だがこれはただ雪山を登るだけのお遊びではない、積雪下での巨人との戦闘、及び索敵力と対人を考慮したものである!」

 

 事前に先輩方から聞いた通りだが、対人が加わったのは先の窃盗団騒動があったからだろうか。最年長のイーリスさんとイルゼちゃんにリコちゃんとも同じ訓練を受けているんだなと考えると、なんだか感慨深い。

 しかし今回はそれだけじゃないはずだ。イルゼちゃんから聞いたぞ。

 

「そして今回は調査兵団も協力している! 貴様らはこの地点から入山し、雪山に潜伏した調査兵団員を見つけ出した数に応じて点数を加算する! 無様な姿を見せることのないようにッ!!」

 

 なんとあの調査兵団が訓練に協力してくれるというのだ。とても豪華。

 といっても、元壁内の壁外調査だってあるため有名な人たちというのは参加しないらしい。ただイルゼちゃんはこの訓練に協力することを志願したようで、手紙には『雪の中からアルフレッドくんを探します<●> <●>』とか書いてあった。いつも可愛らしい絵なのにちょっと不気味だったけどもちろん家宝です。もうオレの持ち物の半分近くはイルゼちゃんたちの手紙になってる。

 

「各自、3人1組の班が組めているものから入山だ! 班長は入山前に地図を受け取るように! 期限は事前に通達した通り3日間、それ以上掛かった場合は遭難とみなし評価は無しだ! 何事もなく帰還するか冷たいまま帰還するか、雪が溶けてから帰還するかは貴様ら次第、では解散!」

 

 解散の合図に『ハッ!』と気合の入った返事が湧き上がる。一気に広場の温度が2度くらい上がった気がするが、アニは普通に口パクだった。

 ていうかキース教官のユーモア面白いな。死体となって帰還するか、雪に埋もれて溶けるまで見つけてくれない状況になるかはオレたち次第と。いや全然笑えねえよふざけんな。

 

 オレたちの班のアニとミカサはまあ大丈夫だろう。2人が駄目ならみんな駄目だ。

 サシャたちのところも彼女が山のスペシャリストだし雰囲気作りの達人ミーナに地図を読ませたら負けないルースが居るから大丈夫、クリスタもユミルが居るから大丈夫。大きな心配事はないけども、何が起きるかはわからないからな。野郎は知らん。

 

「さて、それじゃあオレたちは入山しちゃおうか」

「うん」

「ええ」

「......ん? 君たち歩かないの?」

 

 返事はしたものの、動き出さないアニとミカサ。てっきり2人のどちらかが先行するものだと思っていたがその場に立ち尽くすため聞いてみると、彼女たちは顔を見合わせた後にオレの目を見つめながら言う。

 

「アルフレッドが班長だよ」

「私たちは班長について行く。状況に応じた決定は尊重しよう」

「班長オレかよ」

 

 歩き出してみれば、後ろにアニとミカサが横に並んでピッタリと着いてくる。

 確かにアニもミカサも素晴らしい能力を持っているが、班長というよりは右腕が性に合っているような感じがするな。特にアッカーマンなんて顕著だし。

 

 入山口まで向かい、教官から地図を貰って腹部のポーチに仕舞う。潜伏していた調査兵団員を見つけた場合は地図にその箇所の印をつけ、調査兵団員に気付いているぞというアピールをする必要があるらしい。

 見つけたら他の班に報告できてしまうのでは、と思ったが多分調査兵団員の人たちは一度見つかったら場所を変えるんだろうな。オレたち訓練兵団の訓練に協力、とキース教官は言っていたが、実際には調査兵団も訓練を兼ねているだろう。彼らには最前線で戦っているというプライドがあるだろうから相当に難しいものになりそうだ。

 

「2人とも大丈夫?」

 

 雪山に足を踏み入れてから10分ほど。時々後ろを振り返って2人の様子を確認し、一定のペースを保って進んでいるが念の為声をかける。

 

「平気」

「このくらいはなんともない」

「頼もしいな」

 

 顔色も声色も変わっていない返事に、思わず口角が上がる。自分のペースで進めないのは中々しんどいだろうに、オレに合わせてくれるんだから。

 オレは単純な筋力ではミカサに圧倒的に劣るだろうし、寝技に持ち込まれたらアニには勝てない。3人の中で一番身体能力に劣っている自信があるが、それに合わせてくれるお二人には頭が上がりません。

 一度だけミカサと腕相撲したら瞬殺されたし、対人訓練術で判断を誤りアニに押し倒された時には起き上がることもできなかった。女の子に負けた悔しさをバネに特訓を頑張っても、やはり付け焼き刃では2人に敵わない。ちょっとトラウマ。

 

「フレディ。あそこ」

 

 再び歩き始めてから少し。右隣に出てきたミカサが木の間を指差す。続くように左隣から出てきたアニも同じところを見ながら頷くので、よくよく見てみれば木の上で雪とは違う白い何かが。

 すごい、どうしてあれが見つけられたんだろう。白い服装に目元以外が隠れており、木に立体機動装置で張り付いているのか、普通に見たら木に積もった雪のようだ。呼吸するたびにかすかに上下することと目を凝らせばそれが雪とは異なる質感であるのはわかるが、それでもすぐに見つけられる集中力と視野の広さは一長一短で身につくものじゃあない。

 

 クール可愛い女の子2人と雪山だひゃっほい! と浮かれていたがオレももっと集中しなくては。

 ポーチから地図を取り出し、ペンで発見した箇所に印をうつ。どうやってあの調査兵団員に気付いてもらおうかと悩んだが、やはり声をかけるのが一番だと判断し大きく息を吸う。

 

「おーい!」

 

 雪山によく響いた声に、潜伏していた調査兵団員は違うところを見ていたのか驚いて身体を震わせる。キョロキョロと見回す目とオレの目が合うと、やはり立体機動装置で張り付いていたようでワイヤーを伸ばしてゆっくり地面に降りると、自由の翼の腕章を見せて身分を表しながらこちらに近づいてくる。

 

「驚いたな。まさかこんなに早く見つかるとは」

「ええ、優秀な人たちと組めて何よりです」

「ハハッ! そうかそうか。班長の名前を教えてくれるか?」

「アルフレッド・ガイスギーチです」

 

 調査兵団員の男性はオレの名前を聞いた途端に手帳へ書く手を止め、まじまじとオレの顔を見てくる。

 そんなに見るほど面白い顔してないだろ、と言いたくなった頃に彼はオレの後ろにいるアニとミカサを見てから、またオレに視線を戻してから笑う。

 

「なるほど、君がイルゼが良く言っているアルフレッドくんか。確かに色男だが、競争が激しそうだ」

「そんな人を商品みたいに言わないでくださいよ」

「悪いな。よし、ガイスギーチ班か。ではここで失礼する、引き続き気を引き締めて頑張れよ。大声を出さなくても、雪玉を投げつけてやれば気がつくさ」

 

 それだけ言い残し、調査兵団員の男性は立体機動で飛び去っていく。さすが最前線で戦う現役というべきか、立体機動の動きに無駄が無い。

 すこし、立体機動で面白い動きを思いついた。その場で最高速を叩き出すための動きを。それを実現させるためには強い足腰が必要になるだろうが、この雪山踏破訓練で鍛えられるはずだ。こういうひらめきが出るだけで普段はやらない訓練に参加した意味があったというものだ。

 

「ありがとう、アニ、ミカサ。オレも見つけられるように気を張らないと」

「その必要はない。フレディが私たちに気を配ってくれているおかげで周りに意識を向けやすいのだから、あなたはそのままで私たちが索敵をする」

「ミカサの言う通りだね。班長のあんたにばかり負担をかけることはできないから、役割を分担すべき」

「......はあ」

 

 確かに気を配ってはいるけど、そのおかげで索敵しやすいなんてことがあるのだろうか。普通にしているだけだからあまり実感はわかないが、お世辞でも嬉しいのでここは黙って受け入れておこう。

 さて、今のところ2人も体力に余裕がありそうだし、元気があるうちに移動距離を稼ぐというのも1つの手段か。とりあえず休憩を挟む地点を考えるか。

 改めて地図に目を通す。およそ今のオレたちが居る場所から1キロないほどの地点に山小屋があるようなので、まずはそこを目標としよう。雪山踏破訓練というが、山のスケールの大きさたるや。自然とは壮大だ。

 

「よし。じゃあまずは近くにある山小屋を目的地にして、そこで休憩がてら状況を判断する。いいかな?」

「ん」

「了解した」

「ほな、いきますよー!」

 

 山の天気とは変わりやすいものだ。今は雪がパラパラと降っているが、急に晴れたり急に吹雪くこともある。イルゼちゃんは絶対に見つけたいので、彼女が潜伏してそうな場所を考えておこうか。

 視界の悪くなる夜の行動は避けたいので、少し多めに見積もって3日目の午前中に最終地点到達くらいのペースを目標とし、オレたちは足を進めた。




現在公開可能な情報

雪山踏破訓練

訓練兵団たちが厳しい環境下でも適切な判断を下し行動できるかを確認するための訓練。その過酷さから参加は自由だが、成績への大きな加点と終了後には豪華(訓練兵団比)な食事が出る。

本来は寒冷地での巨人との戦闘を考慮したものであり、寒冷地仕様の立体機動装置は凍える寒さでもガスを圧縮して放出できるように調整等がされている。
今回の訓練に関しては、長距離移動訓練でマルコ・ボットが班長として率いる班が窃盗団と遭遇するという事故があったため、対人訓練も兼ねている。

104期生たちは優秀な訓練兵が多い、と報告を受け当訓練に協力を申し出た調査兵団は、104期生に見つからないことを前提とするくらいに本気で潜伏する。
また、班によって潜伏する調査兵団員と遭遇する回数にバラツキが起きることを考慮し、加点には上限が設けられている。

デートする人

  • アニ
  • クリスタ(ヒストリア)
  • ミカサ
  • サシャ
  • ユミル
  • ミーナ
  • イルゼ
  • リコ
  • 憲兵団のお姉さん
  • フリーダ
  • ルース
  • キース教官
  • ライナー
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