上空から見つけた小屋らしきものへ歩を進めて数十分。
吹雪の勢いは未だ収まらず、立体機動装置を装備したまま歩いているため疲労もそれなりに溜まってきた頃合いで、目的地に到達。
やはり上から見たとおり木は切り倒されており、こじんまりとした小屋が一軒。入山する際に渡された地図を見てみるが、記載されていないためもう使われなくなった設備か個人の所有物かのどちらかだろう。あまりにも手が加わっていないので前者だとは思うが。
「盗賊が根城にしている可能性もある。私とフレディで確認しよう」
「なら、私は外を見とくよ」
一応班長であるオレが言うまでもなく役割分担をし始めるミカサとアニ。
異論は無いのでそれに従うが、移動中全然2人の会話がなかったからてっきり仲悪くなったのかと思ったが、杞憂だったようでなにより。2人の関係性が尊いなと。
オレとミカサは小屋の扉に近づく。後ろではアニが首を振って周囲を警戒してくれており、隣のミカサは拳を握っていつでも準備ができているという様子。
2人と順に目を合わせたオレは、有事の際に備えて右手の柄にブレードを装備し鞘から抜く。オレたち3人が誰からともなく頷きあったタイミングで、小屋の扉をミカサが蹴り飛ばした。
バキッ! と金具ごともげて2つに分かれた扉は音を立てて飛んでいく。やり過ぎ。
薄暗い室内、ブレードを構えたまま一歩踏み出してみると、弱々しいランタンの光に映し出される3つの人影が。
輪郭だけでも誰かがすぐにわかった。オレたちが探していた2人と、個人的に会いたいと思っていた1人だ。
「クリスタにユミル、それにイルゼちゃんも」
ブレードを鞘に収めてからロックを解除して柄から外し、口をポカンと開けて固まっている3人の名前を呼ぶ。
仲良く談笑でもしていただろうに、急に凄い音と共に扉が吹っ飛んできたことで大層驚いたのか、未だに心ここにあらずといったご様子で。
クリスタとイルゼちゃんはともかく、ユミルまであんな顔になってるのは珍しい。
「......3人は生きているの?」
微動だにしない彼女たちを見て不審に思ったのか、ミカサがそっと耳打ちをしてくる。
いや、確かに死んでるんじゃねと思ってしまう気持ちはわかるけど。急に近づかれるとびっくりしちゃってオレも心臓が止まると思ったよ。でもクリスタが目を見開いて生きていることが確認できたので結果オーライか。
「生きてるけど、びっくりしすぎて意識は飛んでるかも」
「そう。それならよかった」
オレの手を引き、カツカツと音を立てながら室内へと入っていくミカサ。3人の前に立ったところで、クリスタがオロオロとしだし、イルゼちゃんは頭を抱え、ユミルは腹を抱えて笑い始める。
「な、なんでミカサが......」
「嘘、増えてるし......」
「コイツ、まじで傑作だろッ......クックックッ!」
盛大に勘違いされているようだが、ミカサはオレのことを都合の良いサンドバッグ程度にしか思ってないぞと言いたい。いや泣きたい。
というか、なんか忘れてる......あ、アニを外に放置してるじゃん。
「ねえ、見つけたんなら報告しなよ」
思い出して扉に向かって右足を伸ばした時、アニが扉があった枠組みに寄り掛かるようにしながら呆れ顔を向けてくる。
お怒りではないようなので何よりだが、申し訳ないことをしてしまったな。
「ごめんアニ、外はどうだった?」
「なにも。ざっと見て回ったけど、ただの廃墟だね。ていうか」
小屋の中に入ってきたアニは、両手で自分を抱きしめるようにしながら近づいてくる。そしてひゅうひゅうという音がする出入り口の方を見ながら呟く。
「......寒くない?」
「確かに」
「急に寒くなったな」
「同意します」
アニの言葉にクリスタたち3人は同意。
確かにピンポイントで風が吹き込み強くなっているからか、外よりも体感寒く感じる。気温で、というより吹き込む風が原因だと思うが、暑がりを自認しているオレですら寒く感じるんだ。女性陣は相当にしんどいだろう。
いや、でも筋肉量が多いミカサはそこまででも無いのかもしれないな。ってコイツ
「......」
「悪いのミカサだからね? なんで扉ぶっ壊した張本人がオレのことを咎めるような目で見てんのさ」
オレのことを半眼で見てきやがるが、あの風が入り込む原因を作ったのは紛れもなくミカサだろうに。そんな目で見るなよ照れるだろ。
だがこれは致命的だな。もともとボロだったから小さな隙間があったんだろうが、扉がぶち抜かれたことで風の通り道ができてしまった。もう雪でかまくら作ったほうがマシ、というよりかまくら自体が雪で濡れないようにだけ気をつければだいぶん温かいからな。
まあ体力のことを考えても得策ではないし、あの雪質と今の手持ちで固められるかは未知数なので止めておこう。ただ、頑張れば扉くらいなら。
「アルフレッドくん?」
ミカサに蹴破られた扉を手に、出入り口の方に向かうオレを不思議に思ったのかイルゼちゃんが立ち上がり後を追いかけてくる。
1人だけだと少し大変だし、余力があるなら手伝ってもらおうかな。
「とりあえずこの風をどうにかしないと行けないから、雪を固めて壁にしたいんだけど」
「そういうことなら私も手伝うよ」
「ありがとうイルゼちゃん。ヨッ、流石調査兵団の精鋭! 班長昇進おめでとう!」
最近の手紙の内容に、班長になったことが書かれていたので直接おめでとうと伝える。イルゼちゃんの年齢を考えればそれなりのスピード出世と言えるだろうし、今度お祝いの会でも開きたいところだ。
もちろん手紙でも伝えたが、やはり言葉にして言われるほうが嬉しいだろう。現に今のイルゼちゃんは恥ずかしやら嬉しいやらなのか、前髪を何度か撫でつけながら口元のほころびと戦っているようだし。
「そ、そんな私だけの力じゃないから。それに班長とは言っても、私の班は偵察が主任務だし」
「だとしてもイルゼちゃんなら確実に情報を持って帰ってくれるっていう信頼があるからで。訓練兵団卒業して調査兵団に入団したら、オレもその恩恵を受けると思うよ」
「あー、そうか。アルフレッドくんは立体機動が上手だから、配属されるなら前線になるのか......」
少し寂しくなるね、と笑うイルゼちゃん。
確かに、せっかく同じ調査兵団に入団したとしても、役割が違うんだったら関わる機会は多くないだろう。なんならオレの配属先次第では休みが合わなくて顔を合わせることも無い、とかが普通に考えられる。
それでは勿体ない。手に持った扉を壁に立てかけ、イルゼちゃんと向き合う。
「何にしても、定期的に顔をあわせたいよね。せっかく同じ兵団の所属になるんだし、調査兵団にも休み位あるでしょ?」
「流石にあるよ。少なくとも壁外調査の後には必ず」
「じゃあ帰還するたびにささやかなお祝い会でも」
「いいねそれ。私たちが引退するまでずっと続けよう」
イルゼちゃんの顔に本来の笑顔が戻り、ほっとする。
オレは女性の悲しそうな顔にとても弱いので、元気が出たなら何よりです。なんかイルゼちゃんの奥でアニたち4人が面白い顔してるけど。
「ッチ......」
「アニ、そんなに悔しいなら調査兵団に入ったら?」
「なんだ、ミカサはこっち側じゃあないのか。流石にエレン一筋ねぇ」
「私じゃフレディと同じ班は難しいかな」
アニはクッソ睨んできてるし、ミカサはそれをいじってるっぽいし、ユミルとクリスタは凄い真剣な顔でなにかを考えてるようだけど。会話が聞こえないんじゃあどうしようもないし、まずは雪を押し固めるか。
小屋の外に出て、足で雪を踏みしめてみる。幸いにもそれだけで塊となってくれることがわかったので、あとはこれを量産していい具合に風を塞ぐ扉代わりのものを作るだけ。
イメージ的には、ミカサが蹴り飛ばした扉を突き立てるための土台を作って、あとは隙間を雪で押し固めるのを考えている。完全に雪が硬化しても、ミカサとアニが居れば多分壊せるでしょ。それか普通に窓から出るか。
「イルゼちゃんは中から調整してくれる? オレは外から雪を押し詰めてくから」
「わかった。この扉は使うよね」
「そうそう。多分イルゼちゃんが考えてることと同じだから、感覚でやってこ」
「了解」
雪を踏んで押し硬め、それを室内に居るイルゼちゃんと上手く調整して積み上げながら思う。流石現役調査兵団、理解が速いし手際が良い。オレ今日だけで何回イルゼちゃんを流石と思ったことか。
自分でいうのも何だけど、ここにいる訓練兵団の面子はトップ層だと思うがイルゼちゃんのたくましさは凄まじい。やはり実戦経験を積んでいる、しかも調査兵団でというのは大きいんだろう。
もともとイルゼちゃんは訓練兵団時代の成績は良くなかったと言っていたし、叩き上げ故のオーラ的なものを感じる。フランクに接してほしいって言われてるからちゃん付けだし敬語も使ってないけど、心のなかではしっかりと尊敬してますイルゼちゃんバンザイ!
「アルフレッドくん、もうちょっと高さ出そうか」
「はいイルゼさん!」
「なんで敬語?」
ちゃんとツッコミもしてくれるイルゼちゃん、マジリスペクトっす!
デートする人
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アニ
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クリスタ(ヒストリア)
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ミカサ
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サシャ
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ユミル
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ミーナ
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イルゼ
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リコ
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憲兵団のお姉さん
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フリーダ
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ルース
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キース教官
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ライナー