オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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普通に夏バテしていました。
週に1話を維持できるように頑張りたいです。


14.ドキ☆ドキ 雪山踏破訓練:7

「......で、お前たちはどうしてわざわざここに?」

 

 イルゼちゃんと共同でミカサの破壊した扉を雪を用いてなんとか形にした後。

 オレたち6人は円になって身を寄せ合い、体温を下げないようにしながら今後についての作戦会議をしている。

 向かいにいるユミルが疑問をぶつけてくると、彼女の左隣のクリスタ、右隣のイルゼちゃんも頷く。そういやお前ら何しに来たんや、と言いたげな顔で。

 

「どうしてって、ねえ?」

 

 対してオレの左隣にはミカサ、右隣にはアニ。2人の顔を左右交互に見てみると、ミカサがユミルたちに『お前らは何を言っているんだ』とでも言うかのような顔でため息を残してから口を開く。

 

「当然、遭難した2人を助けに来た」

「助けに来た奴が避難中の小屋を破壊するわけねえだろ」

 

 出ましたユミルの鋭いツッコミ! 普段はクリスタやオレ相手にひたすらボケ倒している彼女、しかし天然で色々やらかしてくれるミカサとサシャ相手には優秀なツッコミ役になれます!

 実は104期生の中で2番目に常識人、とオレの中で言われているだけある。もちろん1番の常識人はオレだが。

 

 そんなユミルのツッコミが大層ツボにハマったのか、それとも初見ゆえかイルゼちゃんが『グッ!』と吹き出した後に口元を両手で隠しながら震えている。

 よほど面白かったのか目には涙まで浮かんでいるが、お笑いをわかっているユミルはここで変に追い打ちをかけようとはせずにミカサに向かってなんとも言えない視線を向けるだけ。その絶妙な空気の下での沈黙の中、ひゅうとどこからか隙間風が入り込みミカサが呟いた。

 

「人の住んでいない家は寒い」

「はぁ?」

「フハッ! 無理ッ!」

 

 それが決定打となったのか、イルゼちゃんがお腹を抱えて笑い転げる。

 なるほど、お前のせいだよ! とかの勢いあるツッコミはせずにあえての『はぁ?』ですか。それまでの盛大なフリをここでさらっと回収することで笑いを生み出すとは、流石だなユミル。

 そしてこの笑いは初見殺しではない。クリスタは途端にネックウォーマーとフードで目元以外を隠し始めたし、アニも俯いて目を閉じ真剣を装っているが不規則なリズムで頬が膨らんでいる。

 ユミルのツッコミセンスも中々だが、ミカサのボケも流石の一言。ちょっと不満そうな顔しているのがなんとも......いや、これボケとかじゃなくて普通に若干だけど機嫌悪くなってるわ。なんでそんな言い方するのって目が言ってる。

 

「非常に不本意」

「まあしゃーないよミカサ。ユミル、オレたちは本当に2人を助けに来たんだよ。ついでにコレ」

 

 アニに目配せをすると、彼女は咳払いの後に持っていたリュックをオレに押し付けてくる。

 今はそれどころじゃないから自分でやれ、ってことだろうけど。実はイルゼちゃんよりも深いツボに嵌ってそうだなこれ。

 

「なんだそれは?」

 

 ユミルが前かがみになって近づいてくる。この距離感の近さはもう慣れたので気にせずリュックを開けると、そこには食料が多数。といっても、保存がきいてそのままでも食べられるような、ジャンに言わせれば味気ないやつばかりだけども。

 

「これ、どこから集めてきたの?」

 

 それらを見たクリスタが率直な疑問をぶつけてくる。明らかに支給分以上の量だが、食料庫に潜り込んだりはせず、ちゃんと正当に入手したものだ。なので心配しないでほしい。

 

「教官に貰ったんだよ。お腹が空いて死にそうですぅ~! ってサシャと一緒に騒いだら仕方ないってくれた」

「ええ? それでもらえることあるの?」

「クリスタ、それ以上は追求しないで。せっかくアルフレッドの惨めな姿が記憶から薄れてきたところだから」

「失礼な。名演技だっただろ」

 

 せっかく頑張ってサシャと一緒に5歳くらいまで戻ったっていうのに、普通に引かれて悲しいぞ。もちろん協力報酬としてサシャにもちゃんと食料はあげています、苦笑してきたミーナとルースには何もあげてませんけどね。

 

「思ったよりも近くに居てくれたおかげで第一地点の小屋まで戻るルートは頭に入ってるから。吹雪が収まるまでここで待機かな」

 

 身体を伸ばしながら呟いてみる。

 この場にいる皆も同意見なのか、各々体勢を崩してリラックスし始める。

 本来ならば目上の存在であるイルゼちゃんに許可を得たほうがいいのかもしれないが。彼女の性格上そこにこだわりは無いようで穏やかな顔で手帳を開き、数回めくってから読み上げた。

 

「夕方には多少収まるはずって、今朝この付近出身の調査兵団員が言ってた」

「ほええ、凄いねイルゼちゃん。情報を逃さないように全部の会話を書いてるの?」

「ううん、有益そうだなと思ったやつだけ。それにこの吹雪を利用して調査兵団は耐久訓練をしてる最中だし」

 

 イルゼちゃんの言葉で、オレたち訓練兵は固まってしまった。

 ちょと待てよ、この天候で耐久訓練ってなんやねん。

 そう思ったのはオレだけではなかったようで、クリスタが問いかけた。

 

「ら、ラングナーさん。耐久訓練って、どういう......」

「希望制で、この吹雪の中を夕方まで耐えられるかの訓練が急遽開催されたんだ。表向きでは単なる我慢比べだけど、多分訓練兵団の子たちの保護が主目的」

 

 絶句。

 問いかけたクリスタは口を小さく開いて放心、ユミルは苦笑し、アニは静かに目を見開いて驚き、ミカサは『エレンにそんなことはさせられない......』とかボヤいてるし。

 まさかこの天気の中で訓練やるぞとか思わなかったが、だからこその希望制なんだろう。それに訓練兵を保護しようと思ってくれているのは流石としか言えない。多分憲兵団とかならごく一部を除いて自分らは温かい部屋でヌクヌクしてそうだもん。

 

 けど冷静に考えたら、今この場にいるということはその超過酷な訓練にイルゼちゃんも参加してるということ。侠気あふれる女性、素敵です。

 まあ、おそらくは訓練兵の保護目的で参加したであろうイルゼちゃんとは違って、我慢比べを主目的で訓練兵はついでにって人も居そうだな。快楽主義者多そうだもん。

 といったようにオレの中での調査兵団像が脳筋集団になってきた頃、アニがそっと耳打ちしてきた。

 

「アルフレッド、あんたやっぱ憲兵団にしときなよ。下手したら壁内で死ぬよ」

「いや、オレもちょっとビビったけど。流石に自分で危険かどうかの判断くらい下せるよ」

「それは......全然信用ならないね」

「ちょっと」

 

 信頼はしてくれてても信用はしてくれない厳しさがなんともアニらしい。

 最近のアニはミカサみたいだな。調査兵団は危ないからダメ! って訓練兵団に入団したとき、よくミカサがエレンに言ってたし。あれは完全にお母さんからの目線だったけど、アニはオレのことを子供扱いはしていない、はず。

 

「私はひとまず、夕方までここで待機するべきだと思う。アルフレッドくんたちが食料を持ってきてくれたおかげでその心配は当分ないから」

「私もラングナーの姉貴に同意だ。で、そっちの班長はどうだ? フレディ」

「オレもそうするべきだと思うな。出発した時点で天気との相談になることは覚悟していたし」

 

 イルゼちゃんとユミルに同意する。姉貴呼びしていることに驚いたけど、ユミルの人見知りが減っているのならオーケーです。

 さて、方針としてはもうこの吹雪が収まるのを待つ、ということで一致したけども。問題はそれまでどうやってこの寒さを凌ぐかだ。風自体は隙間を雪で埋める等したのでマシだが、単純に気温が下がっているような気がする。

 

 特に小柄だからかクリスタは体温が下がっているようで、小刻みに筋肉を震わせて熱を生み出そうとする生理現象が見られる。

 オレはまだ余裕があって、ミカサとイルゼちゃんも平気そう。アニとユミルは風が吹くことがなければ余力はありそうだが、状況は芳しくない。ここで火を起こそうものならもれなくみんな酸欠であの世行きだし、どうにかして体温もしくは室温を上げなければ。

 

 カバンを開いてゴソゴソ漁り、何か役に立ちそうなものは無いかと下がる。

 ユミル様にお願いして身体をイジイジしてもらえばエエやん、というフリーダの声が聞こえた気がするけど無視だ無視。ユミルちゃんを信用してないわけじゃないけどちょっと怖いし、巨人継承者2人に勘付かれたら面倒です。

 これも座標の力とやらなのか、今朝から巨人保有者にはこう、気配が2つあるような独特な感覚がするようになってきた。説明が難しいけれどアニとユミル、女型と顎はお願いしたら聞いてくれるという謎の確信がある。これが掌握ですか。

 

「なんもねえなぁ」

 

 カバンの中に体温を上げるのに役立ちそうなものが見つからず、ぼそっと呟いてしまう。

 本当に何も無い。もともと立体機動装置が入っていたわけだから他のものを入れるスペースが少なく、そこに食料を詰めるだけぶち込んできたので当然だろう。

 火打ち石は一応持っているし、このあたりには広葉樹と針葉樹が生えているので最後の手段として焚き火をしよう。誰かが体力の限界を迎える前に、小屋に煙が充満しないよう工夫しないと。

 確か針葉樹は燃えやすいが火持ちが悪く、広葉樹は火持ちが良いんだっけ。マツとオークがどうのこうのとか生存術の講義で言ってた気がするな。加工はブレードで削って薪は柄で叩き割るか。

 

 おぼろげな記憶を頼りに最後の手段の段取りを考えているところに、ユミルがクリスタを投げつけてきた。

 慌てて受け取ると、クリスタが可愛らしい悲鳴を上げてオレの腕の中にすっぽり収まる。そばかすユミル様突然のご乱心に戸惑っていると、ユミルがニンマリと悪い笑みを浮かべた。

 

「私も寒くなってきたんでな。身体を温める方法の提案だ」

「......ズバリそれは?」

 

 オレ含め、全員が固唾をのんでユミルの顔を見る。アニとミカサは相変わらずノリがよろしいようで。

 そしてみんなからの注目を一身に浴びたユミルは、天高く突き上げた指をオレに向けて一言。

 

「抱けフレディ! 私たちのことを!」

「ユミル言い方ァッ!?」

 

 変人の皮を被った常識人のフリをしていた変人に対して、雪山にクリスタの悲鳴がこだました。

デートする人

  • アニ
  • クリスタ(ヒストリア)
  • ミカサ
  • サシャ
  • ユミル
  • ミーナ
  • イルゼ
  • リコ
  • 憲兵団のお姉さん
  • フリーダ
  • ルース
  • キース教官
  • ライナー
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