オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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18.慰安デート:ミカサ

 鍛錬施設。話は聞いたことがあったが実際に訪れるのは初めてのここは、外も無骨な作りだったが中も相当。おいてあるのは筋トレに使う設備が主で、ライナーもといサンドバッグや、打撃訓練用なのか人形の模型に対人のためのリングまである。

 こりゃあ兵士以外に開放したら血の気の多い人たちの制圧を難しくするだけだし、訓練所の敷地内だったら訓練兵同士の喧嘩に利用されるだろうな、といった感じ。

 

 そんな鍛錬施設で、オレとミカサは運動用の服で絶賛筋トレ中。

 しかし驚いた。ミカサの腹筋、というよりも全身のムキムキさに。余計な脂肪が一切ない、といっても良いであろうほどに絞り上げられたその体は、そりゃあんだけ強いわなと納得させてくれる説得力がある。

 中でも特に、上はスポブラのようなもので下は短パンだからこそ見える腹筋とふくらはぎは圧巻の一言。

 

 お前が鎧の巨人か!? と言いたくなるほどの腹筋は見事なシックスパック。先程ミカサがクランチをした際には幻聴なのか腹筋がバキバキバキと音を立てていたし、本気だしたら野菜とかすりおろせそうと思ってしまった。

 そしてふくらはぎの筋肉も凄まじい。現在ミカサは打撃の訓練をしている最中だが、踏み込むたびに細く引き締まったそのふくらはぎには深い筋が入り、爆発的な力を生み出しているのが目に見てわかる。

 

 あ、これ勝てんわ。そう本能で思わせてくれるミカサの体に脱帽です。半袖短パンだから脱ぐ帽子もないけど。

 して、なにもミカサはただの筋トレにオレを誘ったわけではない。彼女いわく『何でもいいから強くなるために意見がほしい』とのこと。

 ついでに何でもありの対人訓練も、という裸足で逃げ出したくなる内容のデートでございますが、合法的に美少女の生肌を見れるのでイーブンだ。いや、美少女要素は腕を含めない胸から上だけか。ミカサって意外と......ハッ!? 頭が割れた!?

 

「フレディ」

 

 耐え難い頭痛に目をカッ開いて耐えていると、すぐ先にミカサの顔が。

 慌てずに軽く咳払いしてどうしたかと聞いてみると、ミカサは突然オレのシャツを捲りお腹に手を当ててきた。

 

「あら情熱的」

「......」

「グエッ、ちょっとオォウ」

 

 かと思えば無言でお腹を押され、息が漏れると同時に変な声が出てしまう。

 意図がわからないが、流石に絵面がまずいし自分の声がしんどすぎるのでお腹を固めてみる。内蔵を腹筋で守るようにしたことでミカサに押されてもお腹がへこむことはなく、代わりにコンコンと手の甲で扉をノックするように二度叩かれた。

 

「この柔軟性はどうやって?」

「どう、とは?」

「さっきまではサシャみたいだったのに、今は私と同じくらい硬い。私とフレディは何が違う」

 

 言うがいなや、ミカサはオレの手を取って自らの腹部に当ててくる。

 うん、たしかにコレはカッチカチやわ。石かなんか入ってる? と素で聞いてしまいそうになるくらいの腹筋だ。

 純粋な好奇心でそのまま手を動かし、横っ腹にも触れてみる。やはり硬い、鎧をまとっているような筋肉だ。だがこの違和感はなんだろうか、部位ごとにバラバラになっている気がする。

 

「んっ」

 

 ミカサの口から声が漏れた瞬間、オレはすぐに手を離す。そして遅れてやってくる冷や汗。

 これは完全に半殺し確定だ。見てくださいミカサさんの顔、目線をそらしておりますこれはお怒り確定です。

 

「申し訳ありません!」

 

 膝をつき、その前で両手を合わせて背中を地面と並行にし頭を垂れる。

 昔、東洋の一族出身の母から聞いたことがある。私のいた場所では最大級の謝罪として、こういった形を取ることがある、と。そしてそれを勢いよくされてしまえば不思議と許さざるを得ない雰囲気ができる、うまく使うように。

 それを真に受けて悪さするたびにこれをしていたら『男が軽々しく頭を下げるんじゃない!』と怒ってきたのもまた母だ。何たる理不尽、しかしそのおかげで今のオレがある。その名も土下座。

 

「......いや。少し、驚いただけ」

「本当にごめん、つい分析したくて......」

 

 フハハ、計画通り。

 弱々しい声を出しながらも地面にほど近いオレの顔は、きっと誰が見ても反省の色が見えないと言うだろう。自分でもわかるくらいに口角が上がっている。

 さすが東洋人の血と言うべきだろうか。以前にミカサから東洋の血が入っていると聞き、実はオレもと告白したことで同族意識的なものが芽生えたのはやはり間違いではないようだ。土下座は東洋人に効く! オレもこれやられたら許すしかない!

 

 だがあくまで土下座は奥の手だ、適切なタイミングで使わないと母のようにむしろ逆上する可能性がある。ミカサにガチギレされたら余裕で死ねる。

 顔を至って真面目なものに切り替えて立ち上がる。ミカサはスンとした表情だったが、先程のは僅かながらも動揺を生んだのか目が合ったときに一瞬だけ逸らされた。それでも目線が戻ってきたのだから、この娘の精神力は強い。

 

「それで、何かわかった?」

「んー、本当に直感的というかなんとなくだけど。ミカサって結構な頻度で負荷をかけてるよね」

 

 問うてみると、ミカサは目を斜め上に向けて一瞬考える素振りを見せる。

 おそらくは結構な頻度、という基準をオレに合わせて考えてくれたのだろう。素直に頷いた彼女は次の言葉を待つ。

 正直オレは身体操作の専門家でもなんでもない、論理に基づいてを心がけているがどちらかといえば感覚派の人間。そんな奴の言葉でもミカサは素直に聞き入れてくれる、そう思わせるほどに真剣な表情をしていた。

 

「オレが思うにミカサの体はうまく繋がっていない。潜在能力だけで戦ってる、的な」

「ここでの鍛錬が原因か」

「そうと決めつけるのは時期尚早だけど。言葉を選ばずに言わせてもらうと、運動音痴な人が最強の肉体を手に入れた、みたいな違和感が」

「......」

「ごめんって」

 

 ジト目を向けてくるミカサに対して素直に謝罪する。そりゃそうだ、トップクラスの成績を残しているやつに言うセリフじゃない。

 それにフリーダ曰く、アッカーマンは道を通じて歴代の戦闘経験を得ることができるらしいし。擬似的にだとしても数え切れないほどあるだろう戦闘を経験して運動音痴になるわけが無いのだが、ミカサの場合は少し中途半端な感じがする。

 

 どうしてそう感じるのかを言葉で説明できない自分の学のなさが非常にもどかしいが、血の濃さなのかまだアッカーマンの全力を開放出来ていないのか。どちらにしたってミカサに対して『いやアッカーマンはさ~』なんて言ったらお前はどうしてそんなこと知ってんだって言われて終わりだろうし。

 説明出来ないならもう、身体で理解ってもらうしかないじゃんね!

 

「自慢じゃないが、オレは自分の身体のことをよくわかっている。その方法が知りたい?」

「もちろん。少しでもフレディの強さが理解できるのなら」

「よ~し、じゃあ。やるぞ!」

 

 そう言って指差すのは簡易的なリング。実戦こそ最強の訓練、とはよく言ったものだ。聞いたこと無いけど。

 ミカサもその意図を理解したのか、自身が装着しているオープンフィンガーグローブをもう1セットカバンから取り出し、渡してくれるので装着。

 エレンよ、ミカサは準備も良くて気遣いのできる良い娘だぞ。不幸にしたら殺すからな。

 

 だんだんとミカサに対して愛着のようなものが湧いてきた気がする。娘を持った気分だ。ほら、子は親を超えると言うし。もう超えられてるとか言うなよ僕ちん頑張って強い人ぶってんだから。

 そんな可愛い娘には試練を与えるべきだ。オレが幼い時、ガイスギーチの父と東洋人の母の両方にシゴかれた経験をもとに。両親は別に王家の裏武家として再び活動するつもりは無かったようだが、やはり両家伝来の精神や技能を身に着けさせるというのは名前を続かせるために大切だから仕方ない。

 

「力以外で身体を動かすことを覚えるには、やっぱり全身を使うことが大切だから。ルールは無い、来いやァッ!」

「ならやる気を出してほしい。どうしてそんなにへっぴり腰なの」

「び、ビビッてねえし! ほら来いよ!」

 

 リングに上がったオレは声高らかに宣言するも、ミカサに痛いところを突かれてしまう。

 そりゃビビるだろ、あのミカサが覚悟決めて本気で立ちはだかってるんだぞ。何が可愛い娘だよこいつからしてみればオレを倒すことなんて赤子の手をひねるより簡単だろふざけんな! 可愛いことは可愛いけどよぉ!

 

「そう。じゃあ、遠慮なく」

 

 と準備するまでもなく拳を構えたミカサが速度に乗って突進してくる。ゾワゾワ? ムズムズ? とした感覚が全身を襲い、オレから見て右に流れるようにしながら距離を取らずにあえて詰める。

 しかしミカサはそんなこと想定内とでも言わんばかりに、身体を捻って強烈な右フックを叩き込もうとしてくる。それを紙一重で躱し打ち込まれたミカサの前腕を右手で掴み、左手は彼女の少し汗ばんだ右の肩甲骨を押す。

 

 ふわり、とミカサの身体はいとも簡単に前のめりになって投げ出された。ふふ、驚いてるミカサちゃん可愛い左手に着いた汗ペロペロしちゃおっかなぁ!

 そんな邪な考えすら許されず、ミカサは右左とダダンという音を立てて体勢を立て直し、アニにも劣らない強烈な蹴りを右足で放ってくる。直撃したら骨の1本や2本くらい余裕で折れそうなそれを、オレはあえて右手の平だけで受け止めた。

 

 パァン! という乾いた音とともに、オレたちは互いに静止する。正直言います、めっちゃくっちゃ痛いなこれ! アニのも受けた事あるけど、ミカサのは彼女のピンポイントで芯を射抜く針のような痛みではなく、腕全体を壊しにくるような鈍い痛みだ。

 アニのときは衝撃が抜けて肘まで一直線にしびれたが、ミカサのは腕全体が痺れる。なんちゅうパワーしてんのよこの娘。

 

「なるほど」

 

 アッカーマンとミカサのデタラメすぎる力に心のなかで絶句していると、彼女は何か納得したような顔で足を下ろした。それでも不意打ちの可能性があるので緊張を緩めず、母の教えに習って残心をとる。

 そこまでをミカサは観察していたのか、オレの目をみてから言う。

 

「やはりあなたは強い。私よりも。ので、これからは積極的に襲おうと思う」

「やめろよ物騒な言い方。せめて奇襲は勘弁」

「真っ向からじゃ勝てる気がしない」

「いやいけるでしょ。あ、夜這いなら大歓ゲッ」

 

 ふざけたらしっかりとお尻をしばかれる。その速度に関してはいつものミカサを超越し、見たこと無いけど人類最強の兵長とやらと同等くらいな気がするんだが。なんでなん。

 あまりの振りの速さに音を超越でもしたのか、煙が上がっているオレの尻とミカサの手。ミカサは自分の右手の平を見ながらぼそっと呟いた。

 

「またつまらない理由で叩いてしまった」

「おめえは斬鉄剣でも持ってんのか」

 

 何故か反射的にそんな言葉が出た。意味がわからないとは自分でもわかっているが、ミカサがどことなく満足げな顔をしているので正解だったのだろう。これはあれか、オレたちの中にある東洋人の血がうずいちゃったのかな。しらんけど。

 

「でも、これでミカサが何か掴めたなら良かったよ。そろそろ卒業も近いし」

「ええ。ところで、エレンはまだ調査兵団に入るつもり?」

「あー、エレンはもう調査兵団に入る気満々だよ。それはそれはいい笑顔で楽しみだな! とか言ってくるし」

 

 調査兵団として壁の外の世界を見る、という志は立派なものだけども。あんなにウッキウキな感じで調査兵団入団を楽しみにしてると駐屯兵団に入るつもりの奴らがドン引きしちゃうからやめてほしい。

 飯食ってるときに突然『巨人をぶっ殺して、ウォール・マリアを奪還してやる! 壁の中に囚われたままでたまるか!』てきな演説を始めたときは流石におったまげた。もちろんその演説が効いたやつも居るが、まいどまいどジャンが絡んでるから騒がしく......ってそうだ。

 

「ミカサ、最近エレンとジャンが小競り合い始めたとき全部オレに投げてるだろ! ちょっとは仲裁手伝ってくれよ!」

 

 ふとした拍子に思い出し、今くらいしか言うタイミングが無いため軽く冗談めかしながら言ってみると、ミカサはそっぽを向いた。

 

「フレディが入ったほうが早く終わるから仕方ない」

「お前なぁ......エレン守るんじゃないんかよ」

「見守っている」

「ケッ! この屁理屈! このこの!」

 

 素直じゃない奴め! と右手の人差し指でミカサの肩やら腹筋やらをツンツンする。最初は無抵抗だったためオレとしても妹か娘にかまちょしている気分になり、空いている左手も動員して両手でツンツン攻撃。

 ほっぺやら二の腕やら、何も考えずにつついた後に際どい所だなと思ってしまった場所でもミカサは表情一つ変えずに無反応だったのだが。ミカサの両頬を突き刺すように両手の指でつつき、唇がぷくっと出たのを見た瞬間だった。

 

「しつこい」

 

 冷たく短い一言の後に。パシイィィン! と乾いた炸裂音が鳴り響き、オレは両の目玉が飛び出るかのような圧迫感を顔に感じる。次いで鼓膜が破れたかと勘違いするほどのキーンという耳鳴り。

 状況を理解するのはすぐだった。ミカサが仕返しと言わんばかりに両手の平でオレの顔を左右から潰したのだ。最後にやってきたのは両頬のピリピリとした痛み。

 これで縦に顔が伸びてジャンみたいになったらどうしてくれるんだ、と言いたかったが。ミカサが右腕を引いて握りこぶしを作っているのが目に入り、発する言葉を変えざるを得なかった。

 

「しゅんません」

 

 あまりの衝撃に頬か唇が腫れたのか、若干言いづらく変になってしまったがミカサ様の怒れる右腕は収まったのか振り上げたそれをお降ろしになった。マジ怖えぇっすパイセン、パナイっす。オレのが一応1つ年上なんですけどね、やっぱり父性よりも恐怖心のが勝っちゃった。

 

「次はない。再開しよう」

「何を?」

「......」

「アッ......ッス......」

 

 無言で構え始めたミカサを見て察してしまう。これは確実に無傷で帰れないやつだ、と。

 いいぜミカサちゃん、このアルフレッドお兄さんが満足するまで付き合って上げよう! ちなみにお兄さんは歳だから色々身体にガタが来てるんだぜ。でもって年上を敬って手加減してくれよな!

 

「今度は、フレディの秘密を教えてもらう番」

「ッハ!? ねえよんなもん! もう色々オープンだもんオレ!」

「その筋肉の付き方は普通にしててできるものじゃない。何が、フレディをフレディに、しているのかッ」

「テメもしかして隠れ筋肉馬鹿だな!? オッイ、一旦止まれ、止まってくださいミカサさん!」

「馬鹿じゃない」

「じゃあアホだろお前、あっ待ってミカサちゃん! お兄さん転んじゃう! イヤァ! ヤメテェ!」

 

 その後、昼食で開放されたかと思いきやパンだけ食べて日が落ちるまでミカサに弄ばれた。ガイスギーチの威厳のために言わせてもらうが、単純な力はともかく対人格闘術の技量はオレの方が上。だと思いたい。ミカサの息が切れているところとか初めて見たし。

 にしても一瞬の爆発力だけでなく持続力まであるなんてたまげたものだ。アッカーマンしゅごい、巨人科学の副産物には勝てなかったよ......




現在公開可能な情報

 ミカサ・アッカーマンのアルフレッド・ガイスギーチに対しての評価はとても高い。
 特別な感情を抱いていることは確かだが、明らかにアルフレッド・ガイスギーチに傾倒している同期とは異なり彼女は男女間ではなく良き友人、良き戦友として彼のことを敬慕している。

 その最たる例がアルフレッド・ガイスギーチからのスキンシップもといダル絡みを許容していること、突然同期のクリスタ・レンズに向かって『フレディになら私とエレンが結婚するときの代表演説も任せられる』などと発言したことがあげられる。
 ミカサ・アッカーマンは知り得ないが、この発言によってクリスタ・レンズ含む一部の同期から確かな信頼を勝ち取ることが出来たのは言うまでもない。

 アルフレッド・ガイスギーチと交友が深まった理由としては、同じ黒髪黒目であること、母親が東洋人、また母方から受け継いだ刺青があることなど共通点がいくつかあったことが大きい。
 そして互いにその刺青を見せあったことがあるが、ミカサ・アッカーマンの右手首とアルフレッド・ガイスギーチの右肩にあるそれぞれの刺青は異なるものであった。

 また、アルフレッド・ガイスギーチはガイスギーチとして父親から受け継いだ刺青も母親から受け継いだものの近くに刻まれている。
 大きくすると偏見になるという彼の両親の考えからどちらも小さく刻まれ普段は隠れているため、それを知っているのはミカサ・アッカーマンだけ。そして自分だけが知っているということに対して、ミカサ・アッカーマンは一種の優越感のようなものを感じているために口外したことはない。

デートする人

  • アニ
  • クリスタ(ヒストリア)
  • ミカサ
  • サシャ
  • ユミル
  • ミーナ
  • イルゼ
  • リコ
  • 憲兵団のお姉さん
  • フリーダ
  • ルース
  • キース教官
  • ライナー
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