「ただいまより! 第104期訓練兵団、解散式を行う!」
850年、キース教官のそんな言葉で始まった解散式。卒業式という言い方も出来るこの式典のメインイベントは、成績上位10名の発表だろう。
一通り各科目の教官からお言葉を頂戴したところで、誰もが気になる成績上位10名発表の時間がやってきた。この104期訓練兵団を卒業するのは総勢219名。その中の10人ということは、決して高くない確率だ。
故に、みんなだいたいコイツが上位10名だろうなあというアテは着いているんだろう。3年間を過ごせば凄いやつくらいわかるというもの。
祈るような顔をしている人は誰一人として居なかった。オレはというとはなから調査兵団志望だし、なにより大人の事情で上位10名にはさせられないってキース教官から教えてもらったしであくびしか出ねぇよ。あ、ユミルに笑われちった。
「本日、諸君らは訓練兵を卒業する。その中でも最も成績の良かった上位10名を発表しよう。呼ばれた者は前へ出るように!」
キース教官とは別の教官が名簿を手にしながら告げる。やべぇ、誰だあの人。内勤の人かな? 見たことないや。
ぶっちゃけキース教官がインパクト強すぎてほかの教官の印象がうっすいです。ハゲで声デカくてガタイ良くてってキャラ立ちすぎだろキース教官。
「首席、ミカサ・アッカーマン!」
いろんな教官の顔と名前を最後に一致させようと苦戦していると、上位10名の発表が始まる。
まずは首席、つまりオレたちの中でトップの成績を残した最優秀者にはミカサが。
これには誰も異論はないだろう。というか、これに異を唱えるやつは逆張りがすぎる。
立体機動はもちろん、対人格闘も座学も上澄みという逸材だ。もうすごすぎて言葉が出せないよ、それもこれもエレンを守るためにって考えたらその一途さと健気さにお兄さん涙が止まりません。1人の人間としてのミカサに惚れちゃいました。
大丈夫だ、君たちも幸せに暮らせる世界を作るのが私のお仕事です。お兄さんに任せなさい。お尻をしばかれても構わない!
「2番、アニ・レオンハート!」
次席にはアニが選出されたのか。これは喜ばしいことだ。
おそらく、入団初年度から真面目にやっていればミカサとの首位争い筆頭候補はオレとライナーではなく、オレと彼女だっただろう。それほどに凄まじい勢いで成績を上げていった。
対人格闘は嫌と言うほど体でわからされたから知っていたが、座学。とくに戦術学があんなに出来るとは思わなんだ。クールビューティーウォーリアーアニちゃん、可愛いね。
しっかし、何があったのかわからないが真面目に訓練に取り組むようになった最後の1年間だけで次席に躍り出るポテンシャルは凄まじいな。えっ、もしかして僕のため!?
《でしょ》
......やめてフリーダ。退屈過ぎて頭の中でボケてるんだからそっとしておいて。ていうか座標からオレの考えてることわかんのかよ冷や汗が。
「3番、ライナー・ブラウン!」
さあここで最後の1年間でアニに良いところを持ってかれた残念な男、ライナーがランクインしました。
先程述べたように、2年目の途中まではミカサとオレ、そしてライナーが三つ巴で首位争いをしていると同期から言われていた。少なくとも上位10名は確定、重要なのはどの順番で1位、2位、3位になるのかと。
卒業のときに答え合わせだ! とか言って順位予想の賭け事やってるやつが一杯居たな。ちなみに首位の1番人気はオレとミカサが同率で、ライナーは次だったりもする。悪いな、オレは上位10名に入れんのだ。大人(王政)の事情で。
「4番、ベルトルト・フーバー!」
ここで少しのざわめきが起こる。ミカサ、アニ、ライナーと続いたのはわかる。ベルトルト・フーバーが上位10名なのもわかる。だがアルフレッド・ガイスギーチはどこに行った? とでも言いたいのだろう。特に賭け事してた奴、解散式後の豪華な食事を持ってかれちゃうからね。
現に左隣のミーナは大変驚いたような顔をしてオレのことをチラチラと見てきている。それでも日頃から調査兵団に行くと公言していたオレだからか、憐れむような視線ではなく単純な疑問といったところか。
ユミルはまるでオレが上位10名になれないことを知っていたような顔してるけど。
「5番、エレン・イェーガー!」
オレと同じように調査兵団に入ると公言していた奴といえばそう、エレンは外せないだろう。
結果は5位か。立体機動と座学はかろうじて平均以上、対人格闘はライナーという体格差があるやつを普段の相手にし、時折オレやミカサとやっていたことでそれなりに上位の成績だったとは思う。配点低いらしいけど。
とはいえ文字通りの努力で5位まで登り詰めたのは流石としか言いようがない。センスがあるのか、と言われればおそらくこの後に続くであろう面子よりは劣るだろう。しかしその精神力は素晴らしいものだと思います。なんて教官ぶってみたり。
「6番、ジャン・キルシュタイン!」
そんなエレンとは真逆に、憲兵団を目指すぜ! 快適な生活のためにな! と言っていたジャンは6位。
ぶっちゃけ立体機動はエレンより上手い、というよりミカサとアニとかいうチートには及ばないにしろ、その下に続くライナーとベルトルト・フーバーよりも上手だ。
6番に甘んじた理由を適当に考察すると、教官が加味しているかわからないがやる気とかなのかもな。対人格闘を露骨に手抜いてたり、座学は平均レベルだったはずだし。でも成績加算が大きいテストの点数だけは高いっていうね。
「7番、マルコ・ボット!」
続いたのはあまり口出していうべきではない理由で憲兵団を志望していたジャンと異なり、王のもとで仕事がしたい。光栄なことだ。という根っからの真面目であるマルコ。
座学が確かマルコが一番なんだっけ、その次にミカサとアルミンが続いてたような。あれ、ミカサちょっと抜きん出すぎてない? みんなの得意分野全てにおいてミカサが上か少し下に居るんですけど。
改めてミカサのヤバさを認識した。アッカーマン怖い。
「8番、サシャ・ブラウス!」
上位10名も残るは僅かというところで、サシャの名前が呼ばれる。
確かに立体機動が上手い。というより、戦うということに関して彼女は非常に優れていると思う。巨人模型を用いての戦闘訓練では常に上位の成績を収めていたし、オレと同じ班になった時はミカサを抑えて1番の成績を取ったこともある。
かくいうオレも訓練の時は何度も彼女の直感等に助けられた。クリスタが窃盗団にさらわれた時も、彼女の狩人としての経験がなければあそこまでスムーズに発見することは出来なかっただろう。
痛かったのが最初のうちに座学がからっきしだったことと食料庫に忍びまくってたことか。それでも何人かと一緒に勉強会をしたりで平均近くの成績を取れるようになったが。
「9番、コニー・スプリンガー!」
9番には先程名前を呼ばれたサシャと揃い、2大バカと言われるコニーが選出。
コニーもサシャと同じように、直感が優れていることに加えて特有の小回りが効く立体機動技術が合わせってのこの順位だろう。正直サシャとコニーはどちらが入れ替わっても違和感がない、と思っていたが。サシャが改善されたのに対してコニーの頭は......あれなままだったからね。仕方ないね。
「10番、クリスタ・レンズ!」
そして最後の1人に選ばれたのはマイスウィート・エンジェルことヒストリアことクリスタたん。後ろ姿から驚いているのがわかるが、10位は妥当だと思うぞオレは。
確かにこれまで名前を呼ばれた人たちよりも体格で劣るし、立体機動が特段優れていたり戦いに関してのセンスがあったりするわけではない。言ってしまえば器用貧乏、というのが兵士としてのクリスタの評価だろうか。
しかしその勤勉さと向上心、努力を惜しまない姿勢は彼女の武器だと思う。加えてどんな場面でも明るく仲間を元気づける振る舞いが出来る、というのはクリスタならではだ。
とはいいつつも、横でユミルがしてやったりという表情をしているあたり彼女が何かしら細工したんだろう。ユミルも上位10位でおかしくないし、一部自分の成績をクリスタのものと置き換えるくらいならやりそうだ。
あれ、ってことはオレの成績とか見てるんじゃないかな。どうなってるんだろ、一応ちゃんと点数は付けてくれてるのかな。それとも圧力かけられてるから最初っから点数付けてないとか? う~気になるでござるよ。
「以上10名は前に出るように!」
教官の声に続いて成績上位10名が戦闘に横一列で並ぶ。
後ろからみた並び順は、左から首席のミカサ、そして次席のアニと順位通りに続いていった。
「心臓を捧げよ!」
「はッ!!」
抜けた10名に合わせて整列し直したところで、号令がかかったため心臓を捧げる敬礼を取る。ボケっとしてたから急な号令で強く胸を叩きすぎたのはココだけの話。
「本日を持って訓練兵を卒業する諸君らには、3つの選択肢がある!」
式も終盤なのだろう。改めてオレたちの進路についての説明が入る。
まず1つ目は、壁の強化に務め各街を守る駐屯兵団。リコちゃんが居る兵団だ。
2つ目が犠牲を覚悟し、巨人の巨人領域に挑む調査兵団。イルゼちゃんの居る兵団ね。
そして最後に、先程発表された成績上位10名のみが直接入団できる、王のもとで民を統制し秩序を守る憲兵団。イーリスさんの居る兵団。
あれ、何気に3つの兵団全てに知り合いが居るって凄いんじゃないか? しかも3人とも美人でしっかりした役割を与えられてる位のシゴデキさん。
いやぁ、どこ行っても楽しそうというか、先輩として愚痴を聞いてくれたり共感してくれる人が居るのは心強いですね。何度も言うようだけどオレは調査兵団一筋だけどさ。
「希望する兵団は後日問う。最後に、この3年間を耐え抜いた諸君らには、兵団からささやかな祝いとして特別な夕食が提供される! 明日は訓練兵として最後の任務である、固定砲整備がある。くれぐれも羽目を外さぬように! ではこれにて、第104期訓練兵団解散式を終了する!」
教官の言葉の後に、104期生全員で力強く返事を返す。
解散式が終わった後でも、1日だけ訓練兵団の時間がある。その間にオレたちがやるのはトロスト区の固定砲整備。
意図はわからないが、おそらくは立体機動装置も装備した兵士としての正装で実際に壁の上に立ち、ゆっくり考えて兵団を決めろ、ということなんだろう。
おそらく、運が良ければ。いや運が悪ければかもしれないが、トロスト区付近をうろつく巨人の姿も目にするだろうからな。今だオレを含め巨人の姿を実際に見た兵士は多くない。
そこで調査兵団志望から駐屯兵団に変わることもあるだろう。決してそれは悪いことじゃないし、死んでしまっては何も意味がないからな。
だがそれは置いておいて。まずは特別な夕食を楽しみにしよう! サシャとかよだれ垂らしてるし!
なお、雪山踏破訓練を乗り越えた兵士たちに提供された豪華な食事とやらはいつもの食事にパンが1枚と蒸した芋半分が追加されたものだったのでそんなに期待してない。いや、エネルギー補給にはなったけどさ。
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第104期訓練兵団が3年間の訓練を終えた。この間、訓練についていけなかったり事故による怪我、精神的な問題などで離脱した者は少なくはない。
そんな環境を耐え抜いた219名から選ばれた上位10名だが、誰しもが疑問に思ったことがある。アルフレッド・ガイスギーチはなぜ選ばれていないのか、ということである。
同時に上位10名は誰もが納得できる人選でもあった。そのため、誰が抜けてそこに入れるべきだ、という声が出てこなかったのはアルフレッド・ガイスギーチが『もしかしたらキース教官のことハゲハゲ言ってたのがバレたのかな?』という発言で場を和ませたからである。
それはアカン、という共通認識を持つ者が多かったためにうまく誤魔化せた。しかし工作のため教官室に忍び込み、実際に成績を覗き見たユミルは後に数少ない信頼できる人間にこう語った。『フレディの成績はほとんどミカサと同じだったぞ。体力項目は負けてたが、立体機動と戦術学は私らの中で1番だ』と。
ちなみに、各兵団からの注目が高いこの104期訓練兵団の成績上位者が発表されたことで、イーリス・ハイゼンベルクは大いに悲しんだ。『フレディくんとお仕事しだがっだぁ~!!』と両親とその妹に泣きついたが、ガイスギーチ家が貴族の割に王家からの扱いが雑であると気付いている領民たちは『うちのフレディが上位じゃない訳がないだろ』と怪しんでいたりする。
反対に、実際にアルフレッド・ガイスギーチの兵士としての素質を見てきた調査兵団と駐屯兵団は逆に喜んだとかなんとか。
デートする人
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アニ
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クリスタ(ヒストリア)
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ミカサ
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サシャ
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ユミル
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ミーナ
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イルゼ
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リコ
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憲兵団のお姉さん
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フリーダ
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ルース
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キース教官
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ライナー