オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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2.え? 僕だけ前線っすか?

 超大型巨人出現からすぐ。トロスト区の駐屯兵団本部補給室は兵士でごった返していた。

 じきに始まる作戦のために少しでも装備を整えようとガスの補給や立体機動装置の整備をしていたり、中には互いの健闘を祈って言葉をかわす者など。

 しかし全員に共通しているのは、明らかに動揺していることだった。先程アルミンがガスを補充しようも手が震えており、それをエレンがなだめているところをも見た。

 

 その空気に引っ張られないよう、オレはなるべく早く補給を済ませ誰とも会話をせずにいた。

 ただでさえ超大型巨人と接触し1戦交えた報告で遅れているのだ。準備を急ぐべき。

 ただその考えで要らぬ心配をかけていたようだ。

 

「お前たち、無事だったのか!」

 

 駐屯兵団からの指示を待つために本部の中庭で待機していると、ジャンとマルコが近づいてくる。

 2人ともほっとしたような顔をしてオレたち固定砲整備4班を見た後、ジャンはオレに近づいてそっと耳打ちしてくる。

 

「なぁ、フレディ。超大型巨人に壁が壊されたって、本当か......?」

「ああ。この目で確かに見た」

「ウソだろ......なんで今日なんだよ......!」

 

 膝をついて倒れるジャン。気持ちはわからなくもないが、戦う前からそれだとこの先が心配でしょうがないんですが。

 仕方ないのでジャンの両肩を手で持って強引に立ち上がらせる。顔が死んでるけど言うだけ言っておこう。

 

「ジャン、今は泣き言を言っても仕方ない。まずは生き残ることだけを考えて行動するんだ」

「オメェはいいよなぁ!? 普段から調査兵団に入るっつって死ぬ覚悟なんてとっくに出来てんだからよぉ! けどなぁ、俺は......俺たちゃそんな覚悟が出来てねえんだよ!!」

「それが普通だし、オレだって死ぬつもりはない。今はただ精一杯の努力をするしかないだろ」

 

 そう言うとジャンは黙り込む。が、ちょうどタイミング良く駐屯兵団からの集合がかかったため、また後でとだけ声をかけて整列する。

 そして作戦と状況説明。ガタイの割にはビビりまくってる心が弱そうな髭面のおっさんが言うことをまとめるとこうだ。

 

 まずオレたち訓練兵団の任務は、各班に別れ駐屯兵団式のもとに補給支援と情報伝達、そして巨人の掃討を行うこと。このあたりの役割は各自の能力に基づき振り分けられるとのことだ。

 やはり予想通り、トロスト区を3分割した時の前衛部は駐屯兵団の迎撃班が。真ん中の中衛部を同じく駐屯兵団の支援班とそれに率いられたオレたち訓練兵団が。そして後衛は駐屯兵団の精鋭班である。

 

 今回の作戦では精鋭を後衛に置くのはわかる。そこが最後の要だから、民間人の命を守るためには前と真ん中で可能な限り巨人を減らして、最後尾でしっかりと仕留めてもらおうということだろう。これは防衛戦であるから妥当だ。

 問題は前線の様子だ。まだ超大型巨人出現から数時間しかたっていないが、現状外の様子はどうなっているのだろうか。

 

「なお伝令によると、先遣班は既に全滅したとのことだ!」

 

 その言葉に104期生は全員が言葉を失う。

 全滅だって? 固定砲は守り抜いたし、駐屯兵団の練度だって上がっているはずだ。それでも全滅するなんてこと......なくはない、か。

 

 先遣班ということは、巨人をトロスト区に侵入させないように壁の向こう側で戦う。つまり立体機動装置の特性上建物が密集しているこのトロスト区よりも、構造物が少ない分機動性は低くなる。

 となると巨人の体にアンカーを刺さざるをえないわけだが、実際の巨人は何をしてくるかわからない。単純な数に押されてしまったと考えるのが妥当だろう。

 

「本防衛作戦の目的は1つ。住民の避難が完了するまでウォール・ローゼを死守することにある!!」

 

 ジャンにはああ言ったが、先遣班の全滅は嘘であってほしかった。

 だがそれが事実であることを、駐屯兵団所属兵士の表情が物語っている。

 

「なお! 承知しているであろうが、敵前逃亡は死罪に値する! みな心して命を捧げよ! 解散!」

 

 ありがたくない締めの言葉に心臓を捧げる敬礼をする。

 作戦は始まった、こうなればやるしかない。

 日陰で嫌だ嫌だと顔を覆い隠す同期や、泣いている同期、恐怖からか吐いてしまう同期もいる。今のオレが彼らのためにに出来ることは、気合を入れるくらいしかない。

 この場にいる他の同期にも聞こえるように、本作戦におけるオレたち第14班のメンバー。アニ、ミーナ、サシャ、トーマス、ダズに向かって声を掛ける。

 

「みんな。オレたちは今日ここで。3年間を耐え忍び学んだ術を出し尽くすんだ。必ず生きて帰るぞ!」

 

 オレの言葉に、ダズ以外の4人が頷く。

 あいにくダズには響かなかったようだが、周りを見れば俯いていた同期が顔を上げている。必要最低限の手伝いは出来たはずだ。

 

「おーい! フレディ!」

 

 そんなオレたちのもとに駆け寄ってくる同期が。エレン、ミカサ、アルミンのシガンシナ区組と、クリスタにユミルだった。

 

「フレディ、大丈夫か? 超大型巨人と戦ったんだろ?」

「心配ないぞエレン。いつも通り、とは言えないけど。落ち着いているつもりだ」

「あなたが取り乱してしまうなら、他はみんな駄目になる。私は後衛に回されてしまうけれど......私に、骨を拾わせないで」

「僕からも。必ず生きて帰って、まずはこの土地を奪還しよう」

「おうよ!」

 

 シガンシナ区組の3人と順番に手を合わせ、互いの健闘を祈る。

 にしてもミカサは後衛か、流石首席。エレンの側に居れなくて取り乱すのはあなたでは? と思ったけど、割と落ち着いてたな。

 

「調査兵団に入る前に、ここで活躍してスピード昇格だ! 討伐数をちょろまかすなよ!」

「ああ! オレが1番巨人を狩って、エレンのことを顎で使えるようになってやるからな! 痛ぇッ!?」

「なら私はフレディよりも多く討伐して、あなたを駒にしよう」

「あっはは......うん。その。色々頑張ってねフレディ!」

 

 いついかなる状況でも、オレの尻はミカサにしばかれる運命にあるらしい。

 尻を叩かれた痛みで飛び跳ねていると、エレンが『何やってんだ? 集中しろよな』と若干呆れたような目で言われる。ふざけんなよテメェ! お前の目は節穴か!?

 

 まあしかし、これで良い。これがオレたちらしさだ。シリアスなのは似合わない。

 最後にもう一度シガンシナ区組と目を合わせて頷き合うと、3人は各自の持ち場へと移っていく。

 空気を呼んで待っていてくれたクリスタとユミルと目を合わせると、クリスタが覚悟を決めたような顔で近づいてきた。

 

「死なないで、フレディ」

「もちろん。オレにはクリスタがついてるからな」

「それなら、私にはフレディがついてるね」

 

 互いにプレゼントとして送りあったループタイとリボンに触れながらそんな会話をする。やべぇ、クッソ恥ずかしい。なんだこれ、ちょっと照れちゃう。

 それを見破られたのか、ユミルがオレたちの間に入って強引に肩を組み円陣の体勢をとってきた。

 

「なぁフレディ、お前はそう簡単にくたばるやつじゃねえと思ってるけどよ。クリスタと私がこんだけお願いしてるんだ、わかってるよな?」

「もちもち。ユミルには貸しがあるからね」

「へっ、そうさ。お前にはまだまだやってもらいたい事がある」

「何でも言ってくれよ。だからユミル、クリスタは任せた」

「っ!......ああ、任せとけ」

 

 悪友であるユミルと目を合わせる。そのすぐ横で、クリスタが唇を尖らせていた。

 

「なんか私のこと忘れてない?」

「そんなわけないだろ。クリスタはいつもオレの胸の中にいる」

「私だって目を閉じればクリスタが居るぞ。心配いらない」

「そ、そう? それならいいけど」

 

 顔を赤らめジト目でこちらを捉えていたのが、落ち着かないようにキョロキョロと視線を動かす。

 それを見てしまったらオレとユミルが言う事は見事に一致した。『可愛い。おそろいの指輪をつけよう』とハモったオレたちの声に、クリスタは顔から湯気があがりそうになった。

 

「だ、駄目だよそんな。私とユミルでフレディと......」

「いいじゃねえか。3ぴ」

「それ以上は駄目だユミル。教育に悪い」

 

 急に危ない発言をしそうになったユミルをなんとか止めると。彼女は豪快に笑いながらオレとクリスタを解放する。

 改めて顔を合わせ、言いたいことは1つだけ。

 

「愛してる♡」

「うわぁ、台無しだ」

「流石の私も引くぜ、フレディ」

「な、なんだよもう......。生きよう。生きて、3人で自由を手に入れるんだ」

「うん」

「まあまあだな」

 

 しっかりユミルから手厳しい言葉を頂いて、2人とも解散する。

 振り返ってみると、14班の仲間が。特にミーナがニヤニヤしていた。

 

「見せつけてくれるね」

「そんなんだよ。おん」

「はははっ、認めるんだ」

「これでそんなんじゃないとか言う奴いたら嫌だろ。オレだったらちょっとイラッとするし」

 

 イチャついているという自覚はしっかりあります。みんな可愛いのが悪い。ぶっちゃけイチャコラだけして兵士なんて知ったことかと投げ出したくなっちゃうくらい幸せなときもあります。

 口に出したら最後、信頼を失うであろう言葉を飲み込むと。ルースが駐屯兵団の人を引き連れてやってきた。

 

「か、彼がアルフレッド・ガイスギーチです!」

「案内ご苦労。ガイスギーチ訓練兵、お前は前衛だ、着いてこい。詳しくはわからないが憲兵団からのご指名だ」

「はえ? 前衛ですか!?」

 

 憲兵団からのご指名ってそれもうパチモン王家からの命令じゃないっすかヤダー!!

 ほら見てよ、あまりの所業にみんなドン引きしてるよ。ルースなんて自分が案内したからってすっげぇ涙目だよ貴重だよ抱きしめたい。

 いや、でもオレが一応貴族っていうことは知ってても、パチモン王家がオレの存在を良く思っていないことを知ってはいないだろうから、単純に驚いているだけか。僕もすっごく驚きました。

 

 断れないからね、仕方ないね。大人しくついていこう。むしろ前衛であることは好都合だ、後ろの負担を限りなく減らせる。

 歩き出したオレの前にルースが立ちはだかり、横にアニ、サシャ、ミーナが並んだ。

 

「彼を前衛に配置するのであれば、私も行きます」

「なに? お前は......」

「アニ・レオンハートです。上位10名ではありませんが、彼との連携は問題なく出来ます」

 

 まさかの経歴詐称をしたアニ。いや君次席でしょ、とツッコミそうになったのを飲み込むと、駐屯兵は考え込んだ後に頷いた。

 

「......そうか。前衛は人手不足だ、悪いがそういうことなら手伝ってもらおう。君たちは?」

「サシャ・ブラウスです! 私も前衛に行きます!」

「ミーナ・カロライナです。私も可能であれば前衛を希望します!」

「る、ルース・D・クラインも! お願いします!」

 

 涙が出そうだ。前衛に駆り出されるオレのために、自分の身を危険にさらしてでも助け油としてくれる彼女たちに。

 ルースも昨晩は立体機動に自信がないから駐屯兵団に、と言っていたのに。巨人に対しての恐怖心はアニたちに比べて大きいはずなのに。

 

 先程声をかけてくれた人たちも含めて、オレはこんなにも愛されているのだなと思うと不思議と力が湧いてくる。文字通り今なら何でも出来そうな気分だ。

 

「わかった。ガイスギーチ、もとの班は何班だ?」

「はっ! 14班です!」

「ではガイスギーチを班長にし、君たち5人で前衛訓練兵第14班として活動するように。後ろの2人は引き続き中衛班として別の班に加わるよう指示を仰げ。14班、前衛も変わらず我々駐屯兵団が指示を出す。安心してくれ」

「はっ!」

 

 心強い言葉にオレたちはしっかり敬礼で返す。トーマスとダズは『頑張れよ』と応援の言葉をくれた後に別の班に加わるため移動を開始。

 残されたオレたち新14班も駐屯兵の指示に従って移動を開始する。

 

 本部から飛び出し、外門近くまで立体機動で移動する。道中も巨人を見かけたが、オレたちの仕事は巨人の掃討ではなく、新たに侵入してきた巨人の数を減らすこと。

 駐屯兵に従い素通りしていったが、しっかりと連携を取り討伐しているところが見えた。もちろん、その逆も見てしまったが。唇を噛み締めてこれ以上の犠牲を減らすために先へと進む。

 

 そしてたどり着いた前衛。指示を待つ中で、落ち着いて会話出来る最後のチャンスであろうタイミングで感謝の言葉を口にする。

 ありがとうは言える時に言っておくべきだからな。

 

「ありがとう、4人とも。助かるよ」

「あんたなら慣れない班でも生き残ると思ってるけど、五体満足で居てほしいからね」

「感謝されるほどのことではありません。これは私が選んだことですから!」

「今まで助けてもらった分、ちゃんと恩返しするから期待しててね」

「私も頑張るよ。足手まといになっちゃうかもしれないけど、絶対に迷惑はかけない」

 

 こいつらマジで結婚してくんねぇかなぁ。花嫁姿が見たくってしょうがない。

 聞いてくれよ、フリーダとかさっきからずっと脳内で騒いでるぞ。『ヒロイン多すぎだろコレェ! 燃えるゥ!』とか訳わかんねえこと言ってる。ユミルちゃんも何故かオレの名前の横のxに続けて彼女たちの名前を砂に書いてほくそ笑んでるのが見える。何してんすか始祖様あなたわ。

 

 もうあの残念なおふたりは放っておこう。今はオレについてくれた4人のために全力を尽くす。

 クリスタはいざという時のユミルが居るし、アニもいざという時の手段を持っているが。他の人はそうじゃないから、1人で前衛になると多分心配で仕方なかったと思う。ミカサのこと言えないくらいにはオレも過保護なんだなと。いやミカサが知らないだけでエレンは大丈夫なんだけどね。

 

「もうオレを止められるものは居ないぜ! ひゃっふぅ!!」

「盛り上がってるなーフレディ。けど、私もなんだか震えが止まった!」

「今なら壁内の食料全てを食べ尽くせそうな気がします!」

「それは冗談にならないからやめて。でも、わかる。不思議な気分」

「さっきからずっとワクワクが止まらないよ。高揚感っていうのかな」

 

 ひょっとしなくてもこの娘たちは戦闘狂なのかもしれない。やけに良い笑顔してるんだけど、オレは眠れる獅子を起こしてしまったのだろうか。

 だが、それくらいで良い。恐怖に、自分に打ち勝つことが出来る者こそが戦士だ!

 

「そうさ、オレたちは強い! 行くぞ!!」

「おお!!」

 

 4人から。班の全員からの大きな返事を背に受け、オレを先頭に14班は駐屯兵団の指示に従い前進した。

 トロスト区は落とさせない。




現在公開可能な情報

 ガイスギーチという名前には戦士とは別に英雄、勇気、王者という意味も含まれている。
 その由来は仲間を率いて大きな戦果を上げた者、どんなに困難な状況でも戦い続けた者。そして、全てにおいて勝利を収めた者たちがガイスギーチ一族の始まりであったから。

 そのような先祖が大地の悪魔を討ち取り女神からの祝福を受け、女神からガイスギーチに戦士という意味を与えられた、というのが一族の伝説。その神秘性は長い時を超えて受け継がれ続け、アルフレッド・ガイスギーチにも備わっている。

 居るだけで場が明るくなる、見ていると眠くなってくる、話すと苛立つ。というように、無意識のうちに周囲に影響を与える人が存在する。ガイスギーチ一族は戦士である前に居るだけで勇気を与える英雄であり、勝利へ導く王者。
 そこに始祖ユミルとフリーダ・レイスが一部のユミルの民の民との道を繋げればどうなるかは、至って単純。ガイスギーチの名のもとに恐れを知らない無敵の戦士。女性であればバン・ガイスギーチが誕生するのである。


 余談だが、アルフレッド・ガイスギーチを前衛に呼ぶよう指示された駐屯兵団は当初心苦しく思っていたが、次々と彼の女性同期が前衛に加わると意思表明をしたことで『これは死なせたら駄目な逸材だろう』と憲兵団への疑心を抱いた。
 と同時に『爆発しろ!』と独身故の恨み節も出た。

デートする人

  • アニ
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