夢を見る。どこまでも続く星空と砂の大地。
気がつけばいつも、そこでポツンと1人取り残されている。そしてある人を待っている。
「おまたせっ」
来た。長い黒髪に蒼い瞳、どことなくクリスタと似たような雰囲気だが、彼女をより男前にして活発にした感じのお姉さん。
クソコイツ、せっかくいい感じに疲れて気持ちよく寝てたってのに......!
「ひどくない? 昔はお姉さんと結婚する! とか言ってくれてたのに」
「やめろ恥ずかしい! ああ、あんたのことを清楚で優しいお姉さんだと思ってたオレが恥ずかしい」
オレが小さかった頃はすごく頼りになって抱きしめられるといい匂いがして。初恋だったことは間違いないし、認めよう。
口ではこう言いながらも、彼女と話していると自然と口角が上がってしまう。それはそれで良いとしても寝てるときに呼び出されると寝た気がしないからやめてほしいんだが。
「けどこういう私も~?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべてズイッと顔を近づけてくる。きめ細やかな白い肌、とくにセンター分け故に見えるおでことか最高です。
「好きです!」
「よろしい」
わははと豪快に笑う彼女はフリーダ・レイス。かつて内地で1人ぼっちだったオレの唯一の遊び相手。
実際には唯一ではないが、もう1人の彼女がオレのことを覚えていないのだから今は唯一と言えるだろう。
「で、今日普通に寝てたよね? 訓練兵団に入ったら話聞かせてねって約束だったのに」
「いやなに、特にコレといって特筆すべき事項がなかったといいますか」
「嘘つき。わかってるよ、もう死んだ女なんか興味ないんだ」
えんえんと嘘泣きを始めるフリーダ。
もう死んだ、と彼女自身は言うがやはり実感がわかない。確かに目の前にいて言葉を交わしたり触れあうこともできるのだから。
ただいつもこの訳が分からない場所に呼ばれて会っていることと見た目がずっと変わっていないこと。彼女がオレの見たものを大体知っていることから、少なくともオレが生きている世界では生きていないんだろうと思う。前に聞いたらアルくんに取り憑いてるとかおっかねえこと言ってたし。
「まさか。フリーダが一番!」
「どうだか、アルくん今日一日ずっと女の子相手に鼻の下伸ばしてたじゃん。ヒストリアに鼻の下伸ばすのは許すけど」
「あれは仕方ないよね、前々から可愛い子だと思ってたけどそれを更に超えてた。名前を変えて立ち振舞も変えてたのには驚いたけど、フリーダの記録通りだったからボロ出さずに済んだよ」
「どういたしまして。私もアルくんを通してヒストリアの成長が見れて嬉しいよ、ありがとう」
懐かしむように笑いながら言うフリーダ。
いや本当だよ、マジで感謝してほしい。フリーダの言う道とかいうやつの外側に居るらしいオレが加わるのにどんだけ苦しい思いしたか......思い出しただけでちょっと身震いしてくる。
人が巨人になる方法というのはフリーダから一部受け継いだ記録で知っている。そしてそれが、フリーダを含むユミルの民と呼ばれる人々だけということも。
すべてのユミルの民は道でつながっている、らしい。のだがオレはユミルの民ではないらしく、ヒストリアと違ってフリーダの記憶改竄を受けられなかった。そう、受けれなかったのだ。
フリーダはオレの中に何かを見出したらしく、会うたびに彼女自身をオレに接種させた。決して深い意味があるわけではなく、文字通り。オレはフリーダの血液や肉の一部を喰らい、彼女の一部を取り込めたらしい。
「ん? どうかした?」
じっとフリーダを見て考える。こんな美人で気立てが良さそうなのに、当時まだ7、8歳だったオレになにかを賭けて自分の体を食わせるほど追い込まれていたのかと。
本人はオレの記憶を消せているつもりだったようだが、実際は記憶を消されることはなくあの血の味と匂いも、肉の食感も覚えている。ただ最後にお姉さんがおでことおでこをくっつけてくれるから、という理由だけで我慢できるほどに当時からフリーダにゾッコンだった自分が恥ずかしい。
「いや、なんでも。いつかヒストリアも交えて3人でまた話したいなと思って」
「......そうだね、それが出来たら幸せだろうな。やろうと思えば出来ないこともないけど、それをすると1人の命を奪うことになるから。私と君の間にある道にヒストリアを呼ぶのって結構大変だし、来世に期待だ!」
「来世は2人と同い年だと嬉しいかな」
「それもアリだけど私はまた2人にお姉ちゃんって甘えてほしいし、逆に2人にお兄ちゃんお姉ちゃんって甘えたい気持ちもある」
だめだコイツ、キマっちゃってるわ。
オレが初めてここに来た数年前に涙と鼻水で顔面をグシャグシャにしながら抱きついてきて以来、フリーダの中で何かが崩れたようで。これが本来の彼女の姿なんだろうけどもヒストリアには見せられないわな。
「それよりほら、早くアルくんのお話を聞かせてよ。ヒストリアのことはもちろんだけど、私は特に女型の巨人を継承した女の子とおさげの子に芋女の話が聞きたいな」
「最後しれっと悪口混じってきたな。アニとミーナにサシャのことね、そんなに話せることないけど」
「あるよ、例えば3人の中で誰が一番タイプ~とかさ。アニって子は目の色が私と同じで、ミーナって子は髪色が私と同じ。サシャって子は元気なところとか私にそっくりでしょ? アルくん絶対に好きになるだろうなあって思いながら見てたよ」
「自分に対するオレからの好意に絶対的な自信がお有りなようで。間違ってはないけど、フリーダの要素を見出すなんてことはしないよ」
オレにとってはフリーダはフリーダしか居ないし、その影を追うことは失礼なことだ。
紳士とはそういうもの、とフリーダに教え込まれてきた。その証拠に、フリーダは唇を噛み締めて震えている。
「アルくん!」
「ほげぇッ」
溜めて溜めて大爆発、とてつもない勢いで突進してきたフリーダを抑えきれずに後ろへ吹き飛ぶ。
砂の上に背中を打ち付ければそれなりの衝撃となるだろうが、倒れる直前に世界が変わり柔らかな草原と上に敷かれたカーペットで軽く息が漏れる程度にとどまった。
「大好きだよもう! 昔から変わらないそういうとこ、ずっとそのままで居てね!」
「んぉ......いやフリーダの教えだから」
「英才教育大成功でお姉さんは鼻が高い!」
顔を抱きかかえられ頭をワシャワシャと撫でられる。
白状します。柔らかくていい匂いで最高です! もうここで死んでも悔いはありません!
もしオレが長生きできれば、いつかはフリーダの年齢を追い越してヨボヨボの爺さんになるだろう。ただそんなオレでも待つと言ってくれたフリーダには頭が上がらない。
「アルくんのことは、私が責任持って幸せにします! だからアルくんも誰かを幸せにしてあげてね」
「頑張るよ。夢の中でフリーダと笑えるなら頑張れる」
「それなら今世の浮気は許そう。あ、ヒストリアの場合は浮気じゃないからね。あの子の中にも私は居るから」
フリーダの言葉に思わず身が固まる。
ヒストリアの中にも、ってことはまさかオレにしたようなことを彼女にもしていたのか? と。そんな考えを見透かされていたようで、オレの頭をグリグリしながら訂正してくる。
「そんなことしてません。アルくんの時は必死で力の使い方もよくわかってなかったから乱暴になっちゃったけど、女の子のヒストリアにはちゃんとスムーズにやったよ」
「つまり男のオレはどれだけ雑に扱ってもいいと」
「意地悪言わないで。ヒストリアがヒストリアらしく生きられるようになれるまでは、私のことは秘密ね」
「もちろん。ていうか、多分だけどなんでもっと早く言わないのってオレ怒られるでしょ」
「確かに」
確かにじゃねえよ。けどヒストリアのことは見守って愛でて、彼女自身の意思で乗り越えなきゃいけないってことだしそれに従っておこう。
「じゃあ続き。アルくんのお話の」
「唐突だなぁ。じゃあまず入団式のときなんだけど------」
それからオレはフリーダを足の中で抱きながら草原の真ん中で沢山の話をした。子供の頃とは正反対の立ち位置で会話をしたが、フリーダは今日も変わらずニコニコと笑顔で聞いてくれる。
いいリアクションを取ってくれるしあの頃と何も変わらない。触れるし匂いも同じ、これが道につながったことによる特典であるなら全然オーケーです。
ちなみに目が覚めた時、やっぱり寝た感じがしなくてしんどかったです。
現在公開可能な情報
フリーダ・レイス
始祖の巨人継承者。本人曰くすでに死んでいる。
幼きアルフレッド・ガイスギーチ、ヒストリア・レイスの良き友人であり初恋の、憧れの人。
アルフレッド・ガイスギーチはアルくん、ヒストリア・レイスはヒストリアと呼び定期的にアルフレッド・ガイスギーチを迎えに行きヒストリア・レイスのもとを訪れていた。
2人との接触により不戦の契りを克服すると強く願い、個人の建てた仮説に基づき行動し、それが済んだために死を選んだという。
デートする人
-
アニ
-
クリスタ(ヒストリア)
-
ミカサ
-
サシャ
-
ユミル
-
ミーナ
-
イルゼ
-
リコ
-
憲兵団のお姉さん
-
フリーダ
-
ルース
-
キース教官
-
ライナー