オレは強い。ので、色々頑張る   作:ばるす

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3.初陣、緊張感無し

 14班、前進し外門付近の巨人を討伐せよ。

 それがオレを班長にアニ、サシャ、ミーナ、ルースの5人で結成された、訓練兵唯一の前衛班に任された最初の任務。

 

 外門付近というのは前衛の中でも前衛、前線中の前線である。そこに配属された理由は推測でしかないが、おそらくはガスが切れそうな場合にすぐ壁上へと撤退出来るようにするため。そして建物に囲まれているわけではないため、比較的見晴らしが良く巨人の不意打ちによる被害を出す確率を下げる狙いもあっただろう。

 前衛に配属されたが、駐屯兵団の方々はあくまで現状は訓練兵団であるオレたちのことを気にかけてくれているというわけだ。その証拠に、オレたち14班へ幾度となく駐屯兵団からの視線が向けられる。

 

 表情を見ると心配の前に、アイツら一体なんなん? という困惑も入ってそうな気がしないでもない。そりゃ前進しろ! と言われ嬉々として突っ込んでいく新兵とか何だよって感じだろうけど。もう気持ちが高ぶっちゃってたら仕方ない。

 その証拠に、戦場であるにも関わらずオレも自分でわかるくらい興奮している。

 

「ホッホーィヤッフーゥ!!」

 

 風を切る感覚を受け、甲高い声を出しながら立体機動楽しむオレの前方およそ20メートルほどの位置に、建物の影から巨人が現れる。

 大きさはだいたい13メートル級といったところ。比較的大型の巨人だが、やはり体感ではコレくらいがやりやすいなと感じる。

 

 目標の巨人はオレのことを認識し、目と目が合う。

 残念ながら恋に堕ちることも無ければ好きだと気づくこともないが、一瞬だけガスを吹かして巨人に近づき、途中で速度を落として引き付ける。

 付近にいた駐屯兵団の人が『危ない!』と叫んだが、そんなことは百も承知。心配してくれている手前申し訳ないが、無視してなるべく近づく。

 

 距離およそ5メートル、巨人の伸ばした手がオレに触れそうになったところで体をひねり既のところで回避する。

 依然としてノロノロ動くオレのことを巨人は手頃な獲物と感じたのか、通り過ぎた後も手を伸ばして捕まえようとしてくる。しかし、その手がオレに触れることはあり得ない。

 

「やった! これで3体目!!」

「ナイス、ミーナ!」

 

 引き付けるだけ引き付けた巨人は、体をひねってオレに手を伸ばした瞬間にミーナによってうなじを削ぎ落とされる。

 取りこぼしていないか最後まで確認すると、崩れ落ちたその体は徐々に蒸発していった。これでミーナは文句無しの討伐数3だ。

 

 そして、オレの仕事はこの1体を引き付け討伐補佐をするだけではない。

 すぐに周囲を見渡す。顔を振り、眼球を動かし。視界がグルグルと動いても、しっかり全ての情報を処理出来るほどに今のオレは集中力している。

 

「アニ! サシャ!」

 

 近くに居た10メートル級ほどの巨人2体の間を通るよう移動しながら、2人の名前を呼ぶ。

 その巨人2体の間を通った後、すぐさま後方にアンカーを射出して前から後ろへと急激な進路変更。激しい負荷が体に掛かるし、一瞬だけ移動速度がゼロになるため巨人に補足される確率は上がるが、それで良い。

 

「今だ!」

「フッ!」

「てええええいッ!!」

 

 オレへかぶりつこうとした2体の巨人が顔と顔を激突させ、その隙にオレの目線の先から現れたアニとサシャがそれぞれうなじを削ぎ落とす。

 ミーナも上等だが、この2人は上位10名。流石の深さだ、アニの方なんてもううなじどころか巨人の首ごと跳ね飛ばしそうな勢いで削ぎ落とす。いや、肉を抉り取っている。

 

「やるぅ! さすが!」

「どうも」

「ナイスアシストです!」

 

 これは確実に討伐になっただろう。後ろ向きに移動しながらアニとサシャに向かって親指を立てる。

 アニはクールに返事し、サシャは両手を上げて笑顔で返事をしてくる。この状況下でも個性が出る返事をするくらいには余裕がある2人、可愛い最高。

 

 鼻の下を伸ばしながら少し高度を下げ、見上げる形でアニとサシャに、後から追いついてきたミーナへと目線を固定していると。足元にから背骨にかけてムズムズした感覚が襲う。

 何度か経験してわかった。コレは命の危機やら殺意やらに対する虫の知らせ的なものなんだろう。もしかしてこれは我が家に受け継がれた固有能力なのでは!? と思ったが、単純にベルトルト・フーバーさんから殺意向けられすぎて身についたものなのかもしれない。それなら感謝だ。

 

 なんてことを考えながら目線を下に落とす。そこには5メートル級ほどの巨人が、しっかりと目でオレを捉えていた。

 その巨人は他の巨人よりも機動力があるのか、屈んで大口を開けて飛び上がってくる。このまま行けば丸呑みコースまっしぐらだが、心配ないさ。

 

「仕上げはルース、ってね」

「もー! 責任重いってええ!!」

 

 泣き言を叫びながら現れたルースが、通り過ぎざまにオレを丸呑みしようとした巨人のうなじを削ぐ。

 巨人は空中で力が抜けたように勢いをなくし、頭から落下してくたばる。これも討伐確実。

 

「むちゃくちゃなんだけど。私昨日言ったでしょ? 立体機動苦手だって。なにこれ」

「いいじゃん、ちゃんと討伐出来てるんだし。気にしない気にしない」

「するって! あれ私が取りこぼしてたらフレディが死んでたやつなんだけど!?」

「オレはルースたち皆のことを信じてるし、仮にそれで死んだとしても化けて出たりしないから安心しなって!」

 

 死ぬ気はさらさら無いが、彼女たちのことを信頼しているのは確かだ。言ってみると、4人は全員俯いて何かを我慢しているような顔。

 訓練兵団で深く長い付き合いをしてきたからわかります。これは皆さん喜びを我慢してらっしゃいますね。自分だけ喜ぶのはちょっと恥ずかしいから、誰かが先に反応するのを待ってる感じじゃん。

 

 思わぬ反応に少し嬉しくなるが、巨人は依然としてトロスト区に侵入している。

 前衛は特に悲惨だ。既に何班も壊滅状態となっているのを確認している。この目で壊滅する瞬間も見た。

 それでも戦線を維持しようと、未だに生き残っているオレたち14班に加え、中衛を務めていた駐屯兵団の班のいくつかが前線を上げて来ている。だがそれでもトロスト区内の巨人の数は増えていく一方だろう。

 

 既に作戦開始からそれなりの時間が経過しているわけだが、住民の避難はいまだ完了していないのか鐘が鳴らない。加えてどことなく天気も悪くなってきた。

 こりゃあ面倒なことになりそうだが......そういえばどれだけの巨人を狩っただろうか。

 

「なあ皆、討伐数ってどれくらいよ?」

「なにさ、急に。今はそんなことを話している場合じゃないと思うけど」

「いや、気になって。それで、いくつなの? アニ」

「......さっきので21かな」

「わーお、優秀」

 

 少し考えた後にアニが出した数字は21。確かにそれくらいで合ってるはずだ、一度の作戦でそれは熟練の兵士もびっくりじゃないですかね。多分やり過ぎよ。殺り過ぎか。

 そしてサシャに視線を向ける。彼女もまた少し考え、元気いっぱいに討伐数を教えてくれた。

 

「1、2、3......18になりました!」

「うんうん、確かにそんなもんだったね。良い感じだよ。ミーナとルースは?」

「私はさっきで3だよ」

「あれが唯一の1ですけど? そもそもミーナと私は引き付ける役割だったのに、ミーナってば急に飛び出してくから本当にヒヤヒヤした」

「ごめんって。なんだか見てたら熱くなっちゃって」

 

 ややお怒り気味のルース。確かに無茶振りが過ぎたかなとも思ったが、それもこれも君たちがオレの考えがわかってるかのように動くし、居てほしい時に居てほしいところに居るから悪い。エスパーかな。

 討伐数ではアニとサシャが頭3つほど抜けているが、討伐補佐数ではミーナとルースがかなりの数を稼いでいるはずだ。

 

「でも1番凄いのはフレディじゃないですか? 討伐数も討伐補佐も」

「そうだっけ?」

 

 サシャに言われて自分の討伐数を数えてみる。

 確かにそれなりに討伐したとは思う。低燃費を心がけてガスと刃を使ったが、刃は2組駄目にしてしまったし。あれ、いくつだっけ?

 

「私が見た限りだと、30は確実だね」

「んー40くらいじゃないかな。少なくとも私が引き付けたのだけでも20は討伐してるでしょ?」

「基本フレディの側に居たけど必死だからあんま覚えてないや、50はいってそうな気がするけど。でもミーナと私が補佐したの合わせて40は超えてるはず」

「私の方は基本補佐役してもらってましたが、でもしれっと討伐してましたよね。結構な数」

「あらそんなに」

 

 バンバン討伐してやるぜ! と言ったような気がしなくもないが、正直こだわりがないのでしっかりカウントはしていなかった。

 どちらかと言えばオレはただ立体機動が好きみたいなので、討伐補佐の方が性に合っていると思う。それだけはしっかりカウントしたが、補佐数は20と言えるはず。

 それに加えてアニたちの話から考えるに、討伐数は30以上50未満なのが確実なラインか。

 

《残念惜しい! 討伐数47、討伐補佐22だね》

 

 おっとフリーダお姉様から訂正が。ちょっと飛ばしすぎかな? オレたちみんな気分が高揚しているし、基準がわからないのでなんとも言えないが。

 どちらにせよこの数字は正しいはずだ。フリーダはオレの視界を覗き見ているはずだし、何よりも道にいれば無垢の巨人が。ユミルの民の魂がどれだけ帰ったかがわかるだろうし。

 そういう意味では討伐というより、巨人の肉体に囚われた魂を解き放っているから解放の方が正しいのだろうか。

 

「あっ、そこ! 前衛訓練兵第14班か!?」

 

 なんてことを考えていると、駐屯兵団の方から声をかけられる。

 お呼びだと思うので、班のみんなとアイコンタクトを取って方向転換し、彼らが乗っている建物の屋根へ向かう。道中、10メートル級の巨人が走っているのが目に入ったので、邪魔にならないよう討伐数に加えておいた。

 

「挨拶代わりに強烈じゃないか......だがよかった、訓練兵が前衛に投入されると聞いて心配していたが。全員健在みたいだな」

「はっ! ご心配いただき、ありがとうございます! 第14班全5名、健在です!」

「ご苦労だったな、本当に。しかし、一時撤退の鐘はまだで天候が崩れてきた。ガスも刃も心もとないだろう、君たちで判断し、撤退しても構わない」

「了解しました。ですが、私たちはまだ戦えます。このまま前衛に残り、少しでも貢献いたします」

 

 オレの言葉に班の4人も頷く。それを見た駐屯兵団の方々の反応は驚いたり、不敵な笑みを浮かべたり、呆れたような顔をしたりと様々だったが。少なくともオレたち14班の覚悟は認めてくれたようで、止めることは無かった。

 

「わかった、君たちの判断を尊重しよう。引き続き作戦に従事してくれ!」

「はっ!!」

 

 敬礼をすると、駐屯兵団の班は飛び立っていく。

 残されたオレたちはあたりを見回す。まだ巨人はそれなりの数が残っているわけだし、埒が明かないといえばそうだが。それでも希望を捨てるのには早すぎる。

 一時撤退の鐘が鳴ったら、中衛の。同期たちの撤退支援に回ろう。そのためにガスは残しておかないとな。

 

「みんな、まだまだ余力はある?」

「もちろんです!」

「まだ余裕はあるかな」

「私も同じく」

「私も。だけどこのままひたすら討伐し続けるつもり?」

 

 アニの質問は最もだ。いつ終わるかわからない住民の避難の完了まで巨人討伐を続けるのは如何なものかと。

 というか、冷静に考えてみれば住民の避難が遅すぎる気がする。巨人によるものか、人的なものかはわからないが、後衛で何か問題が起きていると言ってよいだろう。であれば、最前線から少し下がるべきか?

 

「避難完了が遅い、後ろが気になる。住民の避難が完了するまで前線を維持するのが役割だけど、駐屯兵団の人たちも前線を押し上げてくれている。様子見にここらの巨人をあらかた片付けたら、徐々に後退していこうかと」

「......うん、賛成。補給がないのも気になるし」

 

 頷いたアニに続くようにして、3人も同意してくれる。

 再び立体機動を開始し、風を切る。何も言わずとも着いてきてくれる班のありがたさが身に染みる。

 

 だがこのまま続けてもジリ貧なのはわかりきっている。エレンが今どうなっているかわからないが、雨が降り出しそうにもなってきたし、いい加減何か場を一気に変える手が欲しいところだ。巨人ホイホイでもトロスト区の外に置けたらとりあえず良いんだけどさ。

 

「ちょ、フレディ前!」

「んえ? おっと!」

 

 ルースの声に顔を上げると、超大型巨人を除いて確認されている最大である15メートル級の巨人の手のひらが。

 そのまま進んでいたら激突していたであろうところを、アンカーを離してガスを噴射、回転しながら指を切り落とし反転しながらうなじを削ぐ。

 

 方向転換したことで班員と顔を合わせる形になったその時、気付いた。

 あれ、アニどこ行ったよ。

 気にはなるが、なんとなく大丈夫だろうなという気がしている。それにサシャもミーナもルースもアニが居なくなったことには気付いていないみたいだし、変な心配をかけさせるのは良くないから黙っておこう。

 

 いまやるべきは周囲の巨人を討伐し、後ろの様子を確認すること。アニなら戻ってきてくれるはず。

 だからとにかく、彼女の安全のためにも討伐だ。考えるとさっきみたいにボケボケっとしちゃうし。

 

「ンッヒャーイ! ほらほら、飛ばしてくぞ!」

 

 いかんな、立体機動をしていると勝手にテンション上がって雄叫びが出ちゃう。フリーダが『地獄からの使者? みたいだね』とか訳わからんこと言ってるけど、こればっかりは止めようがないので許してほしい。

 そう言えばトロスト区襲撃想定訓練の時、リコちゃんに言われたな。決め顔のまま巨人の口に飛び込む姿は見たくないから、真面目にやれって。でもごめんよ、コレがオレにとっての

 

「真面目、みたいだ!」

 

 かなり小さい巨人に対して急降下し、左足を切断して方向転換、右足を切断する。

 このタイミングでトドメを、と考えていると、やっぱりサシャが来てくれて首ごと跳ね飛ばす。

 目線を合わせて歯を見せ合うと、こんどは10メートル級2体と14メートルほどが1体。ミーナとルースで10メートル級をそれぞれ引き付けて散開してもらいたいな、なんて考えながら彼女たちを見ると、その通りに動いてくれる。

 

 言わなくても目が合えばわかるというのは、まさにこういうことなんだろう。ミーナは左へ、ルースは右へと10メートル級の巨人を引き付け、14メートル級への一本道が出来る。

 その一本道をオレはサシャを引き連れて進んでいく。

 

「行けぇサシャ!」

「はい!」

「ルース! こっち来て!」

「わかってる!」

 

 周囲にこちらを狙っている巨人が居ないことを確認しながら進み、14メートル級の視界を奪う。

 両目を覆って悲鳴のような叫び声を上げたその巨人に対して、サシャは頭上から降りかかるようにうなじを縦一閃。オレたちはそのままの流れでミーナとルースが引き付けた10メートル級へと向かっていく。

 

「でやぁ!」

「これでどう!?」

 

 オレたちがうなじを狙いやすいように、2人は巨人の太ももあたりを斬りつけて注意を引き、若干前かがみの姿勢にさせる。

 凄いな、射出機を後方に回転させてして後ろ向きにアンカー刺すやつ、ミーナもルースも出来てるじゃん。あれ出来る人は多くはなかったと思うけど、2人も戦いの中で成長しているというわけか。

 もちろんオレとサシャも負けてないけど!

 

「アイヤー!」

「トォオーウ!」

「変わんないなぁもう」

「緊張感無し! それで良いのかな?」

 

 オレとサシャの、対人格闘術の訓練でふざけている時のような声でうなじを削ぎ落としたのを見て呆れ笑いのミーナとルース。

 確かに緊張感はないけど、でもそんくらい図太くやってかないと駄目だってお母さんが言ってました。嘘です言ってません、持論です。

 

「もう少し頑張ろう! みんな着いてきて!」

「もちろん! 私にも討伐させてよね!」

「終わったらパンを所望します!」

「ここまで来たんだから、信じるよフレディ!」

 

 まだまだオレたちの戦意は失われていない。なんなら高まっている。

 状況は絶望的かと思われたが、少なくとも前衛のこの周囲ではそんなことはない。オレたちには夢がある、だから戦える!




現在公開可能な情報

 アルフレッド・ガイスギーチの感じるムズムズは、フリーダ・レイスによって『危機的状況感知機能、略してカンキチだ!』と命名されることになる。そのネーミングセンスは始祖ユミルをも失笑させた。
 このカンキチはガイスギーチ一族が受け継ぐ、命を守るための本能的な危機察知能力であることは確かだ。しかしアルフレッド・ガイスギーチの場合は殺意に対してもこのカンキチが働くため、実際に身の危険が迫る前に気づくことができる。

 また同様にガイスギーチ一族の受け継ぐ力として、圧倒的な指揮能力がある。
 これは指揮を取るガイスギーチのことを理解している者であればあるほど、少ない言葉で意図を理解することができるとされている。
 特に、このトロスト区攻防戦でアルフレッド・ガイスギーチとともに戦った前衛訓練兵第14班は彼を深く理解しているため、その目線や表情、立体機動での動きで考えるよりも先に意図を理解した動きを取ることができている。

デートする人

  • アニ
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  • ミカサ
  • サシャ
  • ユミル
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