進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 更新が少し遅くなり申し訳ありません。

 後書きにお知らせがありますのでお読み頂ければ幸いです。

 


十話 折れた刃

 

 

 

 

 

 アルミンが、死んだ・・・・・・?

 

 

 強まっていく雨の中、響き渡ったミーナの悲痛な叫びが、俺の思考を停止させた。

 

 何か言葉を掛けようとした事は覚えている。だがそれが何だったのか、俺はあまりの衝撃に思い出せなくなり、ただパクパクと口を動かしていた。

 

 

 待て、落ち着け、良く考えろ。

 

 

 現状はミーナの口で聞いただけ。まだ死体をこの目で見た訳じゃない。まだ、本当に死んだとは限らない。

 

 

 「よお、お前も聞いたみたいだな」

 

 「・・・・・・ユミルか」

  

 

 そんな時、ふと横からユミルが現れた。

 

 そうだ、忘れていたが屋根の上にはユミルを始め同期たちが集まっているんだった。全員ではない、が。

 

 「死に急ぎ野郎はともかく、まさかアルミンまで死んじまうとはな。まぁ全滅じゃないだけラッキーだろ」

 

 「まだ死んだとは決まってない」

 

 「あん?」

 

 「アルミン達が死んだ所をこの目で見てない俺達に、断言なんてできないだろ」

 

 

 何いってんだ?とでも言いたげな顔のユミルを無視して、俺はミーナの前で跪いた。

 

 

 「改めて聞かせて欲しい。何があったのか」

 

 

 俺が言うとミーナは弱々しくも頷き、ゆっくりと事情を話し始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 俺がミタビ班の一員として出撃する少し前、ミーナ達訓練兵三十四班も前線での戦闘を開始していた。

 

 始まって直ぐは討伐数を競おうとしたりと全員余裕があったそうだが、前線への移動中に状況は一変。

 

 

 トーマスが突如飛来した奇行種に捕食されたのだ。

 

 

 これによりエレンが激昂し、なりふり構わずその奇行種を殺そうと突進した。

 しかし、原作でもあった別の巨人の妨害により失敗。

 

 エレンは片足を失う深手を負ってしまう。

 

 それから、エレンの負傷に動揺したナックとミリウスも連鎖するように巨人共に食い殺されていった。

 

 残ったアルミンもエレンを助けに飛び出してしまった事で、遂にミーナは一人になってしまった。

 

 

 本人曰く、この時既に戦意を喪失していたらしく周りも何も見えていなかったらしい。

 

 

 だから気づけなかった。自身の背後に迫る、巨人にも。

 

 

 自分に向かって伸びてくる巨大なその手に、ミーナは動くこともせず、ただ死を待つだけだった。

 

 

 

 『ミーナっ!!』

 

 

 しかし、そんなミーナの身体が巨人の手に収まる寸前、彼女は大きく横へ突き飛ばされた。

 アルミンが割って入ったんだ。

 

 

 エレンを助けにいった筈なのに何で、とミーナは考えたが、体がここに留まることを拒絶していた為一目散に逃げ出したそうだ。

 

 

 そして道中でユミル、クリスタと合流した後に、同期たちが集まっている場所へ移動し今に至る。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 アルミン、一体何でそんな行動を・・・・・・?

 

 

 先程ミーナから話を聞き終えて、俺はその内容に引っかかりを覚えていた。

 とりあえずは本人にいくつか確認しなければ。話はそれからだ。

 

 

 「ミーナ、さっきの話で気になったんだが、アルミンが割って入った後振り向いたりは?」

 

 「してない。怖くて、ただただ逃げる事しか頭になくて・・・・・・。アルミンを助けに戻ろうなんて思いもしなかった」

 

  

 無理もない。同期たちの死を目の当たりにしたんだ。心だって、もう完全に折れてしまっていても何ら不思議じゃない。

 

 

 だが、これではっきりしたな。

 

 

 

 「てことは、直接確認した訳じゃないんだな?アルミンが死んだって」

 

 「で、でも叫び声が聞こえたし、あの状況じゃどう考えても・・・ッ!」

 

 「気持ちは分かる。が、決めつけるにはまだ早いと思う。少しでも可能性があるんだから、俺は賭けてみたい」

 

 

 俺が出来る限り微笑みながら言うと、ミーナは弱々しいながらも口元を緩めた。

 

 

 「凄いね、グラントは。・・・私はもう、戦えないよ。手も足も震えて止まらないの」

 

 「俺だって怖いさ。仲間が死んだと聞いて、今だって動揺してるんだ」

 

 

 気休めにもならないが励ましの言葉をかけ、俺は跪く体勢から立ち上がった。

 ミーナが生きていた衝撃で忘れかけていたが、本来の任務をこなさなくては。

 

 

 「あ、そうだ。良かったらコレを・・・私のまだ残ってるから」

 

 

 と思った矢先、ミーナに引き止められる。見ると彼女の両腕にはガスボンベが抱えられていた。

 

 託そうとしてくれているのか、俺に。だが・・・。

 

 

 「ありがとう。でも、気持ちだけ貰っておく」

 

 

 俺はそれを断った。俺だってまだガスはあるし、酷な話ではあるがミーナにはまだ、動いて貰わなければならないからな。

 

 「な、なんで」

 

 「これからジャンと話す。その流れ次第でミーナも動く必要があるかもしれないからだ」

 

 「そんな、無理だよ!周りには巨人がうじゃうじゃいるし、ここから動いたらどうなるか・・・・・・」

 

 「ミーナは一人じゃない。やるべき事が済んだら俺も合流する。だからもう一度だけ、一緒に戦って欲しい」

 

 

 真っ直ぐに目を見て、俺はミーナにそう告げる。すると彼女の瞳に一瞬、光が灯ったように見えた。

 だが直ぐ答えが出せるような状態じゃないし、今は一人にしておいた方が良いだろう。

 

 ミーナの肩に手を置き、軽く微笑みかけてから、俺は屋根の中心へ歩き出した。

 

 

 賭けてみたい、なんてカッコつけて言いはしたが、実際はただ信じたくないだけなんだ。原作と流れが変わることくらい分かってたのに。

 

 

 

 

 「よぉ、グラント」

 

 「ジャン、状況は? それとミカサを見てないか?」

 

 「ミカサならここにはいねぇぞ。ミーナの話を聞いてすっ飛んでいっちまった。言わなくても気づいてるだろうが、状況は最悪だ」

 

 

 これは・・・かなりマズいぞ。

 ジャンが言うには本部が巨人に占領されて補給が出来ない、と原作と同じ様な状況だが、ミカサがここにいない事でマズさに拍車がかかっている。

 

 原作ではミカサの不器用な鼓舞が、皆を奮い立たせるきっかけになった。だが肝心の本人がいないんじゃきっかけも何もない。

 

 俺が代わりにやるか? いや駄目だ。あの演説はミカサだからこそ意味がある。

 

 それに今は一刻を争う事態。そもそも俺の目的はミカサに追いつくことなんだぞ。会えませんでしたじゃ話にならない。

 

 

 ええい、悩むな。今は動くんだ。

 

 

 

 「おい。グラントお前、何処へ行く気だ?」

 

 「ミカサを追う。もともとその為にこっちに来たんだ」

 

 「正気か!? お前だって補給出来て無いはずだろ、そんな状態じゃガス切れで終わっちまうぞ!」

 

 「俺なら大丈夫だ。それより頼みがある」

 

 

 いつも以上に真剣な表情で、俺はジャンにとある事を伝えた。

 

 

 「皆をまとめた上で本部を目指すんだ。俺もミカサと合流したら急いで向かう」

 

 「待て待て待て、何で俺なんだよ!? 他に適任がいるだろ? 俺にそんな事・・・・・・」

 

 「俺はジャンにしか出来ないと思ってる。状況を誰よりも理解してるお前にしか、な」

 

 「は、はぁ!?」

 

 「じゃ後は任せるぞ。お互い、()()()()()をしよう」

 

 

 

 

 

 最後にそう言って、俺は間髪入れずに立体機動に移りその場を離れた。

 今のじゃ言葉が足りないのは重々承知してる。だが時間がないんだ。

 

 

 

 無事でいてくれよ、ミカサ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 「お、おい待て!グラント!」

 

 

 そんな俺の声は、既に飛び去ろうとしていたアイツには届かず、ただただ虚しく響き渡った。

 

 

 本当、おかしな野郎だ。

 

 急にやって来てミーナの話に動揺してると思ったら、いきなり俺に皆をまとめろと言ってきやがった。

 

 一番状況を理解してるって? ・・・・・・あぁしてるさ。今が絶望的にクソな状況だってな。

 

 今の俺にそんな役が務まる訳が無い。ここにいる奴らはとっくに怯えきってて、俺の声なんぞで動くとは到底思えねぇ。

 

 

 「ジャン、ちょっといいかな?」

 

 「・・・・・・何だよマルコ」

 

 「動くなら言ってくれ。僕も手伝うから」

 

 「手伝うってお前、今の状況分かるだろ。 無理だ。アイツらが動いてくれると思うか?」

 

 「僕だったら無理だと思う。でも君なら、ジャンなら出来ると思うんだ」

 

 

 ハッ、コイツは何を言ってるんだ? 俺に出来る?

 

 

 「何を根拠に?」

 

 「根拠、根拠か。うぅん・・・・・・君を見てそう思ったから、かな」

 

 「おいマルコ、お前ふざけてるのか?」

 

 「ふざけてなんかいないよ。多分なんだけどさ。ジャンはもう分かってると思うんだ。今何をするべきか」

 

 

 

 不意に、口に出てしまった一言。

 

 それに対するマルコの言葉が、俺の耳から離れなかった。

 

 今、何をするべきか。

 そういやグラントも言ってたな。互いに今すべき事をしようって。

 

 なら、俺だって・・・。

 

 

 

 

 「・・・なぁ、お前らこのままで良いのかよ?」

 

 

 気がつけば、俺はそう呟いていた。直ぐに同期たちの視線が、俺へと向けられる。

  

 それでも、俺の口は声を出すことを止めなかった。

 

 

 「本当に、このまま巨人に食われるのを待つつもりか? 俺は御免だぜ。ようやく憲兵になれるんだ。こんな所で死ねるかよ」

 

 俺は拳を固く握り締め、この場にいる全員に訴えかけるように叫んだ。

 

 

 

 

「なぁオイ、俺達は黙って巨人のエサになる為に兵士になったのか? 違うだろ!訓練兵団で何を学んだ!? このままじゃ本当に家畜以下だぞ!」

 

 

 

 

 シャーディス教官の言葉を借りた俺の叫びに、同期たちがザワついているのが分かる。さあ、どうなるか。

 

 と思ったその時。

 

 

 「や、やーい家畜!」

 

 「サシャ、それはただの罵倒なんだけど・・・・・・。っとにかく皆!ジャンの言う通りだ!僕達は何の為に兵士を志したんだ?もう一度考えてみてくれ!」

 

 「ああそうだ。お前らだって信念を持ってここに居るんだろ。理由はなんだって良い。だがその中に、巨人のエサになる為だなんて奴は居ないだろ!?」

 

 

 サシャにマルコ、ライナーが続けて声を上げた。その影響か、皆が顔を徐々に上げ始めている。

 

 後は、もう一押しだ。

 

 

 最後に俺は、ブレードを持った右手を掲げて呼びかけた。

 

 

 「これから俺達は本部を目指す!戦える奴は極力前に出ろ!俺達もやれるってとこを見せてやろうぜ!

 

 

 後ろも振り向かず、俺はそのまま屋根から飛んだ。

 

 

 

 俺の声は届いたか?俺の声でアイツらを動かせたのか?

 そんな俺の不安が杞憂だったと、後ろから聞こえてくる音が教えてくれた。

 

 

 

 「うぉおおおおおお!!!」

 

 

 獣の様な叫び声と、連続して聞こえるワイヤーの音。

うるさい筈だってのに、俺は達成感に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 ジャン達の元を離れて数分、俺は覚えている範囲で前線を飛び回り、ミカサを探していた。

 

 

 道中で何度か巨人に出くわしたが何とか回避したのでガスは何とか残っている。

 今の内なら人一人担いで本部にギリギリ向かえるだろう。 その代わりに刃はもう大分ボロボロだが。

 

 

 それから探すこと更に数分。

 

 

 道中で見つけたあるモノを回収し、どの方角を探すか考えていた時だ。

 ふと目に入った巨人の視線が、明らかに下を向いていた。おそらく誰かが倒れているんだ。

 

 そして大急ぎで向かうと、俺の予想が正しかった事が直ぐにわかった。

 

 

 ミカサが屈んでいたんだ。その直ぐ側には見慣れた金髪が陽の光を反射し煌めいている。

 

 間違いない・・・・・・!

 

 

 「ミカサ!アルミン!

 

 

 直接巨人のうなじを削ぎながら叫ぶと、顔に擦り傷をつけたミカサが俺の方を向いてくれた。

 

 

 「グラント、ちょうど良かった。手を貸して!」

 

 「あ、ああ、分かった!」

 

 

 見ると片足が瓦礫に挟まれて気を失っているが、脈はあるのでアルミン自身は生きているようだ。

 

 

 良かった・・・・・・。無事とは言えないが生きていたんだから。

 

 

 

 「アルミン、今助けるからな・・・ッ!」

 

 俺は瓦礫の下に手を入れると、ミカサと一緒に持ち上げようと力を込めた。

 

 だが瓦礫は中々持ち上がらない。僅かな隙間を作ることさえままならない。

 

 

 

 

 「ぐうううああああッ!!」

 

 「ぐ・・・・・・ッ!」

 

 

 それから何度も渾身の力を込めていると、次第に瓦礫が動いたような感覚がしてくるが、それでもまだ足を引き抜けるほどの幅はない。

 

 

 「後、少し・・・!」

 

 

 

 

 

 

 この時、俺達は瓦礫を持ち上げる事に集中し過ぎて周りが見えていなかったのだ。

 

 だから気づかなかった。

 

 

 近くまで、巨人が迫っていた事に。

 

 

 

 ズシン、ズシンという足音が直ぐ側で響き、俺は慌てて後ろを振り向く。

 そこには十五メートル級の巨人が一体、ゆっくりとこちらに手を伸ばしていた。

 

 

 「まだ途中だってのに・・・・・・ッ!? クソッ!こんな時にガス切れか!」

 

 

 巨人を狩るべく飛び出そうとした俺だったが、いくらトリガーを引いてもガスが噴出される事はなく、スカした音が響くだけだった。

 

 もう手は直ぐそこに迫っている。もうミカサが出ても間に合わないだろう。

 掴まれたとしても脱出自体は可能だ。だがその前に握り潰される可能性だってある。

 

 奴らは殺すことに躊躇なんてありはしないんだから。

 

 

 だがまぁ、ここで引く選択肢はない。結果がどうあれせめてもの抵抗はしてやらないと気がすまないしな。

 

 

 ミカサとアルミンを庇う様に立ちはだかり、俺は右のブレードを手に取る。

 

 なまくらの、先が折れた刃。

 

 小さくなったソレと、まだそのままの形を保った左のブレードを構え、俺は一歩踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 ────次の瞬間。

 

 

 

 「ウオオオオオオ゙オ゙オ゙オ゙ッ゙!!!!」

 

 

 突如背後から現れた長髪の巨人が、襲いかかろうとした巨人を殴り飛ばしたのだ。

 

 

 その巨人もまた十五メートル級、怒りに染まった表情に頬の辺まで露出した歯と尖った耳。

 

 

 それは紛れもない、巨人化したエレンだった。

 

 

 

 

 

 




 
 
 [お知らせ]

 大変申し訳ないのですが、次回の更新が2週間以上先になります。
 
 理由としてはプロットの練り直しと他作品の執筆に時間を充てたいからです。

 今月中には更新しますのでどうぞよろしくお願いします。

 
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