進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 いつもお読み下さる皆様、本当にありがとうございます。
 
 今後の更新頻度について後書きにお知らせがありますのでご一読頂けますと幸いです。


十六話 特別兵法会議

 

 

 

 

 

 

 マルコの立体機動装置が無くなっていた。

 

 

 

 

 これだけ見れば原作通りじゃないか、と普通は思うだろう。だがマルコが死んでからここに運ばれるまでの過程を知ってればそうはならない。

 

 第一に、マルコは立体機動装置を身につけたまま死んだ。それは他でもない俺自身が見ている。

 

 何せ遺体に直接触れたんだから。

 

 であるならば、誰かが装置を持ち去ったとみて良いだろう。そしてその可能性が最も高いのはアニとライナーだ。

 

 二人は俺より先にあの場にいた。

 そして俺がマルコの遺体を移動させた所を見ていた可能性がある。加えて原作での事を踏まえると、一番疑わしいと言えるだろう。

 

 ただ、遺体から取り外すという手間を掛けてまで装置を手に入れたい理由が今の二人にはない。強いて言えば自由に使える立体機動装置があった方が二人にとって良いくらいか。

 

 

 

 もう一つあり得るとするならば別の第三者が回収したという可能性か。

 行われたタイミングは遺体の運搬時。医療班の人間が持ち去った・・・とか。

 

 これは正直根拠も何も無いただの推測だ。マルコの装置が持ち去られる瞬間を見ていない以上、俺に断定することは出来ないのだから。

 

 

 「・・・・・・よし」

 

 思考を終え、小さく呟きながら立ち上がる。

 

 

 ふと足音が隣で聞こえたので横を見ると、いつの間にか現れたアニがマルコの前で屈んでいた。

 

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 「アニ?」

 

 「私は動けなかった。マルコが巨人に食べられそうになった時、指の一本も動かせなかった。だから、ごめんなさい」

 

 

 アニはマルコから視線を動かさず、真っ直ぐに告げた。

 

 

 当たり前だ。

 立場がどうだろうが仲間が目の前で死んで何も思わない訳が無い。

 

 内心ではアニも後悔しているんだ。

 

 

 

 「本当に羨ましい。・・・アンタの強さが」

 

 

 突然、アニはそう呟きながらすくりと立ち上がって行ってしまった。

 

 

 俺は声を掛ける事も出来ず、どこか悲しげな彼女の背中をただ見つめていたのだった。

 

 

 

 そのままアニの姿が見えなくなると、入れ替わる様に誰かがこちらへ歩いてくる。

 

 あれは・・・ジャンか。

 確かに原作でここへ訪れていたが、どうやら俺の方が早く着けたらしい。

 

 どう説明するか迷っていたしこれは幸運だ。

 

 

 「グラント、お前も来てたのか」

  

 「・・・ああ。」

 

 

 俺に声を掛けた直後、ジャンは遂に俺の視線の先で座るマルコを目にする。

 その途端、両の目を見開きながらその場に膝をついて項垂れた。

 

 

 

 

 「オイ、まさか・・・・・・マルコ・・・なのか?」

 

 

 ゆっくりとこちらを向きながら聞いてくるジャンに、俺は黙って頷く。

 俺と同じく布を口に巻いているので表情は見えないが、目を見るだけで困惑が伝わってくる。

 

 

 「なぁグラント、何でマルコが死んでるんだよ・・・何で、マルコが・・・・・・」

 

 すると、マルコの遺体を見つめていたジャンは不意に立ち上がり、そのまま掴みかかってきた。

 

 

 「待て、お前がここにいるって事は何か知ってるんだろ!? 教えてくれ、マルコに何があったんだ!?

 

 「・・・俺にも分からない。何故マルコが死んだのかは」

 

 

 そう前置きをして、俺はジャンにアニとライナーの事は伏せて経緯を話した。

 

 そもそも原作のこの時点でジャンはマルコの死に二人が関わっている事を知らない。むしろ言う事で今後発生するデメリットの方が大きいのだ。

 

 当然二人の方から言い出すこともないだろうし、今は隠しておくべきだろう。

 

 

 

 

 

 「・・・・・・そう、か」

 

 

 俺が説明を終えると、ジャンはだらんと下がった両手をそのままに再びマルコを見つめて呟いた。

 

 

 「すまない。俺は間に合わなかった。マルコを、助けられなかった」

 

 「謝らないでくれ。グラント、お前は悪くねえよ。むしろ俺はお前に感謝してるんだ」

 

 

 そう言いながら振り向いたジャンは弱々しい笑みを浮かべており、僅かに顔色が良くなっているように見えた。

 

 

 「お前が巨人を倒してなきゃ今頃マルコの死体は残らなかった筈だ。だから礼を言う。お陰で俺はこうしてマルコに会えたんだからな」

 

 「礼を言うのは俺もだ。ジャンがそう言ってくれるなら、救われた気がするよ」

 

 「・・・そうかよ。つうか、そもそも俺は気づきもしなかったんだぞ。作戦が終わってここに来るまでな。だから、俺はお前を責められる立場じゃねえ」

 

 

 ジャンは両手を強く握り締め、表情も苦々しいものへ変わる。

 

 無理もない。ジャンは俺よりずっと悔しい筈なんだ。

 

 あの時、偶然悲鳴を聞いた俺と違ってジャンはそんな事知る由もなかった。

 マルコとの関係性を考えればその後悔は計り知れない程だろう。

 

 

 

 「悪い、一人にしてくれるか」

 

 

 すると、ジャンがか細い声で言った。

 

 今はもう俺から掛けられる言葉は無い。だからこの場は去ろう。最後の時間を邪魔するなんて無粋な真似は出来ない。

 

 

 まだ何も、伝えられていないだろうから。

 

 

 

 「・・・分かった。俺は行くよ」

 

 

 

 

 

 

 俺は短く返すと、そのままさらに先へ進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 「おい、そこの訓練兵」

 

 

 それから少しして、白衣に身を包んだ白髪の女性に声を掛けられた。

 

 確か彼女も兵士だ。遺体を回収する上で彼らの身元を記録している。確か原作でジャンにマルコの名前を聞いていた人だ。

 

 

 その目は感情を捨て去ったかの様に大きく見開かれている。

 

 

 「手が空いているなら奥を手伝ってくれ。死体を運ぶ人手が不足しているんだ」

 

 「はっ、了解しました」

 

 

 無感情と言っても差し支えない程の淡々とした態度に違和感を覚えながらも、俺は指示に従って奥を目指す。

 

 彼女は、本当はこんな人じゃないんだろう。自分の感情を押し殺してでも作業に徹しているんだ。犠牲者を惜しむのは今じゃないと、感染症等の二次災害を防ぐためだと言い聞かせて。

 

 

 そんな事を思いつつ、俺は目の前の折り重なった遺体を運び続けた。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

  

 

 結局、その日は遺体回収の手伝いだけで一日を終えた。ちなみにエレンは既に憲兵に身柄を預けられて地下牢に拘束されている。

 

 そして今日は、そんなエレン・イェーガーの裁判が行われる日。当然俺もミカサ達と共に審議所を訪れていた。

 

 リコさんは原作通り、既に審議所にいる。何せ報告書を書いた本人だからな。

 

 「ねぇグラント、調査兵団と憲兵団、どっちがエレンを手に入れられると思う?」

 

 

 ふと俺にそう聞いてきたのはアルミンだ。ちなみにミカサと俺は証人として呼ばれており、発熱などが落ち着いた事で外出許可が取れたアルミンは会議を傍聴するためにここへ来ていた。

 

 とはいえまだ完治はしておらず、後遺症のリスクもあるので俺は側に着くよう医師の先生から頼まれている。

 

 後はミカサだな。

 原作を知っていれば察しがつくだろうが、裁判中に起こる“例の演出”を目の当たりにして暴れた場合はこれを鎮圧しなくてはならない。

 

 その為、既に俺は少しばかり緊張していた。

 

 

 「エルヴィン団長には考えがある、俺にはそう見えた。どちらが、と言われれば調査兵団かな」

 

 「やっぱり、グラントもそう思う?」

 

 「“も”ってことはアルミンも?」

 

 「うん、僕も同じ意見だよ。そもそも、エレンを処刑しても人類は何も得られない。脅威の排除と引き換えに莫大な損失を被るだけだ。それと、エルヴィン団長はただ負け戦を挑む様な人じゃないと思うから」

 

 「同感だ。エレンの力があればウォール・マリア奪還も夢じゃない。力を使いこなせていない事に対する不安も分かるが、俺達人類の希望になり得る存在をみすみす手放すことが良い選択だとは思えないな」

 

 

 とは言うものの、問題はエレンを処刑すべきという保守派の意見が殆どだという事だ。駐屯兵団に民間人、調査兵団の中にだってその考えを持つ者は当然いる。

 エルヴィン団長の様に利用すべきという考えを持っている人間は極少数だろう。

 

 

 「ミカサはどう思う?」

 

 「結果がどうなろうと、エレンが殺される事だけは阻止する。たとえ何を敵に回そうとも」

 

 

 と、流れでミカサに話を振ったアルミンだったが、食い気味の答えに苦笑いを浮かべてしまっている。

 俺はというと、ミカサからどことなく圧を感じつつも辺りを見回していた。

 

 

 

 

 

 確かそろそろ時間の筈だ。

 

 審議書へ入ると、既に多くの傍聴人が集まっていた。そして証人席の端にはリコさんが立っている。

 

 

 「来たか」

 

 「お疲れ様です、リコさん」

 

 「ああ、そうしたら私の隣に並んでくれ。アルレルトは一応傍聴人だから後ろの列にな」

 

 

 そうして俺達が並んだ直後、扉が開きエレンが姿を現した。

 

 両脇に憲兵が着いた状態で室内の中央まで来ると、エレンは自らに嵌められた手錠の隙間に柱を通され、跪いた姿勢のまま再び拘束される。

 

 

 「それではこれより、エレン・イェーガー訓練兵の処遇に対する特別兵法会議を行う」

 

 

 そして、三兵団を束ねる事実上のトップであるダリス・ザックレー総統より開始が宣言された。

 

 

 裁判の流れは原作と同じだ。先ずは調査兵団と憲兵団、双方の主張の確認から。

 

 まず憲兵団師団長ナイル・ドークはエレンの身体を調べた後速やかに処刑する事を、エルヴィン団長は正式に調査兵団に入団させた上でウォール・マリアを奪還する事をそれぞれ提案した。

 

 シガンシナ区への移動ルート、門を封鎖すべきと言う市民とウォール教司祭ニックとの口論。審議は原作通りに進んでいく。

 

 ちなみにウォール教とは作中に登場する独自の宗教だ。三つの壁を神聖なものとして崇め、祈りを捧げている。リコさん曰く信者の数がおり、なまじ権力と発言力を持っている為に質が悪いとか。

 

 

 

 「ではエレン・イェーガー君。君は人類の為に兵士として戦い、その巨人の力を使う事ができるか」

 

 「はい、できます!」

 

 

 ザックレー総統の問いに、エレンは堂々と答える。

 エレン本人への質問が来たということは、もうすぐ演出が始まる頃だろう。

 

 

 「そうか。だが今回の報告書にはこう記されている」

 

 

 総統は机上に置いてある書類を手に取り読み上げ始めた。内容はご存知、巨人化したエレンがミカサに殴りかかった事だ。

 

 「ミカサ・アッカーマン並びにグラント・ベルツァー」

 

 すると、ミカサと俺の名前が呼ばれる。いよいよ証人としての出番だ。

 

 

 「君たちに問う、巨人になったエレン・イェーガーがアッカーマンへ拳を振るった。これは事実か?」

 

 「はい、間違いありません」

 

 「っ!?」

 

 

 俺が質問へ間髪入れずに答えると、ミカサは小さく声を出しながら驚く。

 報告書を書いた本人のリコさんも同じく驚いていた。

 

 

 「ミカサ、ここは正直に言うべきだ。俺達が嘘をついてもエレンは救えない」

 

 「グラントの言う通りだ。報告書を偽れば、逆にイェーガーの立場が危うくなるんだぞ」

 

 

 やや不服そうな表情のミカサだったが、僅かに聞こえる音量で舌打ちをして元の姿勢に戻る。

 

 

 原作より不満そうなのは・・・気のせいだと思おう。

 

 

 「アッカーマン、どうかね」

 

 

 「・・・・・・はい、事実です」

 

 ミカサの肯定に、傍聴人達がどよめく。エレン処刑派からすれば待ち望んだ展開だろうし騒がしくもなるだろう。

 

 

 「ですが、エレンは私達を助けてもくれました」

 

 

 と、続けて発されたミカサの言葉にピタリと所内が静かになった。

 

 そう。エレンが初めて巨人の力を覚醒させた時、アルミンを救出しようとしていた俺とミカサの前に現れてもう一体の巨人を殴り倒した。

 つまり、俺達は間接的に助けられた事になる。巨人になったエレンに。

 

 この事はエレンが敵か否かを判断する上で無視できない要素だ。

 だが少なからずミカサの私情が含まれているこの意見が考慮されるとは考えにくい。

 

 

 その証拠に原作通りナイル師団長は調書を読み上げ、

二人の過去を暴露した。

 これが引き金になり、幼少期に正当防衛とはいえ殺人をしている二人を疑う声がバラバラと聞こえ始める。

 

 やがて声は大きくなっていき、会議の進行を妨げているといっていいほどに騒がしくなってきた頃。

 

 

 

 

 「この腰抜け共め・・・!いいから黙って、全部俺に投資しろぉッ!!

 

 

 

 遂にエレンの溜め込んでいたモノが爆発した。それに合わせ、原作での名台詞を生で聞けた喜びを密かに感じつつ俺もすぐ動けるように身構える。

 

 ほぼ同時、と言っていだろう。目にも止まらぬ速度で兵長がエレンの顔面へ蹴りを入れたのは。

 

 

 「エレンっ!!」

 

 突然の事にミカサもアルミンも口を開けて驚いているが、即座にエレンに暴力が振るわれた事実を認識したミカサはその身を前に乗り出そうとする。

 

 

 勿論俺はミカサを止める為に腕を掴み、呼び掛けた。

 

 「ミカサ、今は堪えてくれ」

 

 「手を離して」

 

 「悪いが断る。俺達が割って入れる余地はない」

 

 「ならこのままエレンが傷つけられる所を見ていろと言うの?」

 

 「ああそうだ。さっきも言ったが、俺達が介入する事はエレンを助ける為にならない」

 

 

 俺がミカサの説得を試みている間も兵長によるエレンへの暴力は続いており、何度も顔を蹴るグロテスクな音が響き渡る。

 

 

 「おい止めろ、恨みを買ってイェーガーが巨人化したらどうする!」

 

 「それならとっくにしてる筈だが。まぁ仮に巨人になったとして、俺ならコイツを殺せる。アンタらはもしコイツが暴れたとしてどうにか出来るのか?」

 

 「ぐっ・・・・・・」

 

 エレンが逆上する事を恐れたナイル師団長が止めるように言うも、逆に兵長の言う事に思う所があったのか黙ってしまう。

 

 

 

 「総統、私から改めてご提案があります」

 

 

 すると、一瞬の沈黙を破ったのはエルヴィン団長だた。

 

 提案とは次の壁外調査にリヴァイの監視付きでエレンを同行させ、その戦果次第でエレンを処刑するか判断するというもの。

 

 原作ではエレンの存在が敵を炙り出す事に繋がった為処刑は免れたが、この世界でも同様になる保証はない。

 

 

 まあ、俺の目的が達成されればエレンどころじゃ無くなるだろうけどな。

 

 

 

 等と考えている内にミカサは落ち着いた様で俺の手を振り解いていた。

 ・・・表情は相変わらず不機嫌そのものだが。

 

 

 

 そして、エルヴィン団長の提案が決め手となってエレンの身柄は調査兵団の預かりになる事が決定した。 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 会議が終わり、俺は一人で審議所の廊下に立っていた。

 

 

 ミカサは何も言わずアルミンと共に去ってしまい、リコさんも忙しいからとすぐに行ってしまったからだ。

 

 アルミンの事は俺が頼まれていたんだが、本人から一人で戻れると気を遣わせてしまったし、何とも申し訳なくなってくる。

 

 

 とはいえ残っている理由もないので俺も帰ろうか、と思ったその時。

 

 

 

 「おっ、いたいた!」

 

 「ハンジさん?」

 

 何と俺の前にハンジさんが現れたのだ。

 

 

 「実は君を探してたんだよ!エルヴィンからの伝言と、私から個人的に話したい事があってね」

 

 「団長から伝言、ですか?」

 

 「ああそうさ。ここで立ち話もなんだし、着いてきてくれ。ゆっくり話せる場所に行こう・・・!

 

 

 

 エルヴィン団長からの伝言とやらも気になるが、ハンジさんの個人的な話とは一体・・・・・・。

 俺は何やら様子のおかしいハンジさんに続き、審議所を後にするのだった。

 





 [お知らせ]

 いきなりで申し訳ございませんが、次回以降の更新を不定期とさせて頂きます。

 理由として、現在リアルの仕事が多忙でして今の頻度を維持しようとするとクオリティが下がってしまうと考えたからです。

 その為、より面白いと思って頂ける作品を書く為にも一度ゆっくりと執筆時間を取りたいと考えております。

 ご理解頂けますと幸いです。

 
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