進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 お久しぶりです。

 大変長らくお待たせいたしました。
 
 後書きの方に本編に関するお知らせがありますのでお読み頂けると幸いです。




十七話 分隊長

 

 

 

 

 

 「──という訳なんだ。それじゃあ、ここまで話したことを踏まえて次の実験の話に入ろう」

 

 

 

 

 俺に相槌を打つ暇も与えず、ハンジさんは目を輝かせて話を続ける。

 

 

 

 ・・・・・・あれから何時間経った?

 

 

 

 それは裁判が終わった後の事。

 審議所でハンジさんに声を掛けられ、俺はとある民家へとやって来ていた。

 

 原作においてエレンを監視するために使われた旧調査兵団本部。その付近にぽつんとある小屋だ。

 周辺に建物はあるが人はおらず、畑らしき盛り上がった地面には雑草が茂っていた。

 

 ハンジさんが言うには、いつからこの状態なのかも定かじゃないそうだ。

 

 

 何故この場所に、と思ったがどうやらエレンとリヴァイ兵長にも話がある様で、ついでに俺にも人のいない場所で話せという団長の指示があったらしい。

 

 確かにその点においては良い場所だ。

 

 

 そして本題であるエルヴィン団長からの伝言だが、聞かせて貰えたのはそれから数十分経ってからだった。

 何やら満足そうな表情でハンジさんが俺に告げた内容はこうだ。

 

 

 『もし調査兵団入団の意思が揺らがないのであれば、次の壁外調査で君に任せたい事がある』 

 

 

 

 “任せたい事”とやらが何なのかは不明だが、それを引き受けるならば同期と離れ離れになるともハンジさんは言っていた。

 

 

 分隊への配属か、はたまた荷馬車の護衛でもさせられるのか。まぁその時になれば分かるし今は考えなくてもいいな。

 

 

 

 問題は今の状況とその先だ。

 

 伝言の内容を聞いたので後はハンジさんの話を、と俺は言ったんだが、これが良くなかった。

 

 話とは前回の壁外調査で捕らえた二体の巨人についてで、近日中に実験を行うとの事。

 その為、良ければ見学しないかと誘われ俺はもちろん承諾した。

 

 すると、途端にハンジさんは豹変し俺に詰め寄ってきたのだ。見るからに興奮した様子で、見学するなら前知識があった方が良い!と。

 

 そして今に至るまでハンジさんの巨人に関する考察を聞かされていたという訳だ。

 

 

 ふと、外に目をやると既に日が昇り始めている。確か話しが始まった時は真っ暗だった。

 となるともう八時間近く経っていることになるか。

 

 

 

 俺は前世のサラリーマン時代に徹夜した経験があるのでまだまだ余裕だが、今後に障らない保証もない。

 とはいえ、眠りたくても本人が聞く耳を持ってくれそうにないのが問題だが・・・。

 

 加えてもし原作通りなら明日、件の二体の巨人が殺される。マルコの装置が持ち去られている以上そうなる事はほぼ間違いないだろう。

 

 

 取り敢えず、今はこのまま話を聞くしかないか・・・。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 それから更に数時間後。

 

 完全に日が昇り、部屋に朝日が差し込み始めた。

 外から小鳥のさえずりが聞こえてくる中、ハンジさんは尚も話し続けている。

 

 

 

 多分そろそろの筈なんだが、と思いながら話を聞いていると、突如入り口の戸が開け放たれた。

 

 

 「分隊長!!」

 

 

 

 現れたのは第四分隊副長のモブリットさんだ。その表情は酷く慌てており、額には大量の汗をかいている。

 

 

 

 「やぁモブリット、悪いけどまだ話のとちゅ─」

 

 

 

 

 「捕獲した実験体が二体共殺されました!!」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・やっぱりそうなるか。

 

 

 

 ゆっくりと机の方に目線を戻すと、既にハンジさんの姿は無かった。

 背後で響く足音に気づいた頃にはもう外へ走り出していたのだ。

 

 

 開いた戸の先から僅かに馬の駆ける音がするので、もうトロスト区へ向かったのだろう。

 

 

 小屋には呆気にとられた俺とモブリットさんだけが残った。

 

 

 「ハンジさん!! ・・・・・・もう見えないか」

 

 

 「ああ、なんて速さだ・・・ってはっ!?」

 

 

 俺がそう零すと、モブリットさんは驚きながらこちらを二度見する。

 

 

 「何故君がまだここに? まさか、分隊長・・・!」

 

 

 

 ん、俺がここにいるとおかしいのか?

 

 モブリットさんの言動と驚き様から察するにそうとし

か思えないが、となると・・・・・・。 

 

 

 「えっと、今の今までハンジさんから実験の話を聞いてましたが・・・」

 

 「それは夜通し、という事か?」

 

 「・・・はい」

 

 「最初から信用はしていなかったが、私も同行するべきだったか・・・。いや、それより身体は大丈夫かい?」

 

 「ええ、問題ありません」

 

 

 そう答えると、モブリットさんは申し訳なさを滲ませた表情で俺の顔を見た。

 

 「徹夜明けの君には酷だが一つ頼みたい。この事を旧調査兵団本部にいるリヴァイ兵士長に伝えてくれないか」

 

 「了解しました。直ぐに向かいます」

 

 「すまない。私は分隊長を追いかけるから、よろしく頼むぞ!」

 

 「はっ!」

 

 

 

 俺は敬礼をしてモブリットさんを見送ると、急いで兵服のジャケットを羽織り外へ。

 

 

 

 そのまま旧調査兵団本部へと馬を走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 「ここか」

 

  

 数十分後。

 森を抜けた俺の前には、自由の翼の紋章がある古びた城のような建物が。

 

 間違いない。ここが旧調査兵団本部だ。

 

 馬上から見渡した限り外には誰もいないし、さっさと中に入ってしまおう。

 俺は馬から降りると側の厩舎に繋ぎ、入り口の戸へ手をかけた。

 

 

 勢い良く戸を開け中に入ると、講堂には当然リヴァイ班の四人の姿が。

 

 原作でハンジさんはここに来てエレンと話していた為、被験体殺しが兵長達にも直ぐに伝わった。

 だがこの世界ではハンジさんが俺と少し離れた小屋にいた為にまだ伝わっていないのだ。

 

 

 

 「グラント!?」

 

 「お前、何でここに!?」

 

 いきなり現れた俺を見て真っ先に声を上げたのは、ペトラさんとオルオさんだった。

 トロスト区奪還作戦で顔だけは合わせていたからか、

エルドさんとグンタさんも驚きながら俺へ視線を向けている。

 

 

 「突然すみません!実はリヴァイ兵長に伝達事項がありまして・・・・・・兵長はどちらに?」

 

 「兵長なら二階の掃除中だけど・・・」

 

 

 

 「俺はここにいる。話があるならさっさとしろ」

 

 

 すると、ペトラさんが答えると同時に兵長が階段を降りて来ていた。

 手にしている雑巾とはたきから一目で掃除の途中だと分かる。

 

 

 ってそうじゃない。悠長に観察してる暇はないんだ。急いであの事を伝えなければ。

 

 

 

 「第四分隊のモブリットさんから報告です。調査兵団が捕獲していた巨人二体が、今朝殺されました」

 

 「「なっ!?」」

 

 「何だとっ!?」

 

 俺が言うと、リヴァイ班の四人が揃って驚きの声を上げ、唯一人兵長は僅かに目を見開いた。

 

 

 「ハンジの奴は」

 

 「既にトロスト区へ向かっています。モブリットさんも後を追って現場に」

 

 「そうか。お前はどうするつもりだ?」

 

 「現場に向かおうと思います。どのみちトロスト区には戻るので」

 

 

 まぁ、そりゃ心配にもなるだろう。現代社会に置き換えれば大事なペットが殺されたような物だ。スケールはまるで違うがそのショックの大きさは想像に難くない。

 

 兵長からの質問に答えつつそう思っていると、いつの間にか掃除用具を片付けてジャケットを着直した兵長が目の前に立っていた。

 

 

 「俺はエルヴィンの元へ行く。お前らはグラントとエレンを連れてトロスト区へ行け」

 

 「「「了解!」」」

 

 

 

 そして、俺は兵長の指示でリヴァイ班と共にトロスト区へと移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「なぁグラント、お前本当に調査兵団に入るのか?」

 

 

 トロスト区への移動中、ふとエレンがそんな風に尋ねてきた。

 

 「どうした?何で急にそんな事を」

 

 「ああいや、お前が調査兵団を希望してるのは分かってる。俺と同じで譲れない目的がある事もさ。でも、あの瞬間を見ちまってから思うんだ。同期の仲間が、お前らが死ぬ所を見たくないって」

 

 「俺にも死ねない理由がある。それにここで調査兵団以外を選んだら、それこそ恩人を裏切る事になる。・・・それだけはしたくないんだよ」

 

 

 瞬間、俺の脳裏にはリコさんとエルヴィン団長の顔が浮かんだ。

 リコさんはこの世界に転生した俺を救ってくれた文字通りの恩人だし、エルヴィン団長には目の前で入団の意思を伝えた。

 

 理由は違えど俺は二人を絶対に裏切らない。裏切ってはいけないんだ。

 

 

 

 「悪い。変な事聞いちまって」

 

 「大丈夫だ。心配する気持ちは俺も理解できる」

 

 「・・・・・・ミカサやアルミン、皆はどうするんだろうな」

 

 「その二人は揺らがないと思うぞ。他の皆がどうするかだってすぐに分かるさ」

 

 「・・・だよな」

 

 

 

 そんな風に話していると、徐々に内門の開閉扉が見えてきた。

 

 どうやら思ったよりも話し込んでしまったらしい。

 

 

 「オイガキ共、もうすぐトロスト区に着くぞ。お喋りはその辺にしておけ」

 

 

 と、オルオさんがこちらを向いて言い放つ。

 

 

 ん? 最初に会った時と口調が少し違うような気が・・・。というか、旧本部では気にしなかったがよく見ると首元にクラバットをしており、髪型も整え方が少し変わっている。

 

 明らかに“あの人”を意識した服装だ。生で見るとより露骨だな・・・。

 

 

 

 「あ、グラントも気づいた? オルオったら兵長に選ばれた事がよっぽど嬉しかったみたい。全然似てないから止めて欲しいって言ったんだけどね・・・」

 

 「でも、憧れの人の真似をしたくなる気持ちは俺も分かります。・・・・・・似てるかは置いておいて」

 

 「まぁアイツの場合、兵長の真似というよりただの嫌味な奴なんだがな」

 

 「聞こえてるぞグンタ! ペトラも余計な事言ってんじゃnがふっ!!?

 

 

 ガリッという音と共に血が飛び散る。

 

 そりゃ馬上で後ろを向きながら喋れば舌も噛むだろう・・・。

 ペトラさん達が呆れの混じった顔をする中、俺は心の中でそう突っ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 やがて俺達は内門を潜りトロスト区へ到着。そのまま調査兵団支部を目指して進んでいた。

 

 

 「うああああああああああッ!」

 

 それは何度目かの角を曲がり、支部の建物が見えてきた時だ。突如、恐らくハンジさんのものであろう断末魔が聞こえてきた。

 

 

 「今の声、ハンジさん!?」

 

 「どうやら分隊長は酷くご乱心のようだな」

 

 「ちょっとオルオ!」

 

 

 そして、この状況でもブレないオルオさんにペトラさんの肘打ちが炸裂し落馬しかけるといった事が起きながらも、俺達は支部に到着するのだった。

 

 

 

 

 敷地内に入ると、捕らえた巨人を拘束していた広場には既に兵士たちが集まっていた。

 その奥では白骨体となったソニーとビーン、ハンジさんがそう名付けた二体の巨人の姿が。

 

 そして彼らから発された蒸気の中で膝立ちのまま頭を抱えるハンジさんがいた。

 

 見る限り茫然自失の状態ではあるが、幸いモブリットさんが側にいるので任せて大丈夫だろう。

 

 ちなみにリヴァイ班メンバーは監視役としてエレンの側を離れられない為、フードで顔を隠したエレンと共に人混みの端の方から現場を見ている。

 

 

 それにしても一体誰が・・・。

 

 原作と同じならマルコの立体機動装置が使われた事になるが、本当にあの二人がやったとは思えない。

 とはいえ現状考えられる可能性としてはそれが一番高いのも事実。

 

 覚悟は、しておかないとな。

 

 

 

 

 「グラント」

 

 「っ、エルヴィン団長!」

 

 と決意を新たにした直後、背後から名前を呼ばれたので振り返るとエルヴィン団長が立っていた。

 

 

 

「君には何が見える? 敵は、何だと思う?」

 

 

 瞬間、息が止まる。

 

 

 どうする、どう答えるべきだ?

 ・・・少なくとも直接的な言い方は避けるべきか。俺が見えてないだけでアイツに聞かれているかもしれないしな。

 

 だったら──

 

 

 

 「正直、そうだと思いたくはありません。俺に見えているモノが真実だと。ですが、覚悟はしています」

 

 「・・・そうか」

 

 俺の回答に、団長は短くそう返してその場を去っていった。

 

 

 正直、これが正解かなんてわからない。そもそも回答になっているかも怪しい。

 

 けれど、言いたいことは言えた。後悔はない。

 

 

 

 

 そんな風に思いながら、俺は団長が背負っている翼を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 翌日。原作通り巨人を殺した犯人探しが憲兵団主導の元で行われた。

 当然俺も立体機動装置の使用記録を調べられ、結果は問題なし。

 

 最終的に原作と同じく犯人は見つからなかった。誤魔化して逃れた人物がいる可能性を残して。

 

 

 その後は勧誘式に出席し、俺は正式に調査兵団へ入団を果たした。

 俺以外の同期はというと、原作で調査兵団に入った面々は同じく調査兵団に、アニは唯一人憲兵団に入った。そして本来戦死した筈のミーナは駐屯兵団にしたらしい。

 

 本人が、申し訳無さそうな顔をしてそう言っていた。

 

 

 そして今、俺はウォール・シーナ内の調査兵団本部にやって来ていた。

 ミカサ達と来る壁外調査に備えて「長距離索敵陣形」の説明を受けた後、上官からそう指示を受けた為だ。

 

 

 「来たか。お前がグラント・ベルツァーだな」

 

 それから中へ足を踏み入れた俺の前に現れたのは、金髪の大男だった。

 

 そういえば、まだ彼とは出会ってなかったな。

 

 

 「ミケ分隊長、ですか?」

 

 「ああ、そうだ」

 

 

 調査兵団第一分隊分隊長、ミケ・ザカリアス。

 

 リヴァイ兵長に次ぐ実力者でありながら人並み外れた嗅覚の持ち主で、原作では巨人の出現を匂いで察知するなどの活躍を見せたが早々に退場してしまった人物だ。

 

 この人が俺を知っているという事は、まさか・・・。

 

 

 

 「そうだな。先に呼び出しの理由を伝えておこう。

 

 

 ──次の壁外調査において、お前の配属は俺が率いる第一分隊に決定した。呼び出したのは諸々の説明をする為だ

 

 

 

 やはりそう来たか、エルヴィン団長。

 

 

 

 

 

 





 お読み下さりありがとうございました。

 まずお知らせですが、次回以降の何処かで番外編を投稿します。
 具体的にはアニが主人公のOAD「Wall Sina Goodbye」を元にオリ主を絡ませたストーリーとなりますので、楽しみにして頂ければと思います。

 また、次回はずっと触れていなかったライナー視点と、第57回壁外調査に突入していきますので引き続きよろしくお願いいたします。
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