進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する 作:ダブドラ
一月の間更新できず大変申し訳ございません。
また更新頻度を戻せるよう努力してまいります。
──勧誘式終了後・ウォール・ローゼ南側駐屯地
勧誘式が終わり、俺は食堂の裏手でアニを待っていた。
理由は当然、任務の事だ。
先のトロスト区奪還作戦で俺達は始祖の巨人に纏わる大きな手がかりを得た。その為ここからはより考えて動かなければならない。
理由は他にもある、が一旦話を始めよう。アニを待たせる訳にはいかない。
「いきなりだが、エレンの事をどう思う」
「・・・どうって?」
「お前も見ただろう?アイツは巨人の力を宿してる。それも、状況から考えて始祖かもしれない」
「確かにそうだけど、それなら行方知れずだった進撃の可能性もあるでしょ」
「ああ。だが、何れにしてもエレンを故郷に連れ帰る事が出来れば大きな成果になる」
とは言え、問題はどうやって連れ帰るかだ。
無闇に俺達の正体を明かせば抵抗される事は明らか。今のエレンなら強引にいけるだろうが、事を大きくしないに越したことはない。
「ライナー?」
「っ、すまん。少し考え事をしていた」
「エレンを連れ帰る作戦でも思いついた?」
「まあな。だがこれにはアニの力がいる」
「・・・取り敢えず聞かせて」
アニに促され、俺は頭に浮かんでいた作戦を話した。
内容はシンプルだ。
次の壁外調査でアニに奇襲を仕掛けてもらう。ウォール・マリアを破壊した時のように巨人を引き連れた上で。
奴らはまだ女型の巨人の存在を知らないし、アニは憲兵団に入るため巨人化のタイミングを気にする必要もない。
「へぇ。ライナーにしては考えたね」
「ただ問題があるとすれば、お前が憲兵団の公務を抜け出さなきゃならん事だ。下手をすれば正体もバレかねん」
「そこは何とかやってみる。もし無理そうならその時連絡するから」
「分かった。とはいえまだ時間はあるし、壁外調査についても分からない事が多い。その辺りはじっくり煮詰めるとしよう」
「それじゃ、話が終わりなら戻っていい? もう寝たいんだけど」
「ああ。・・・・・・そうだ、調査兵団とやり合うならアイツと戦う事にもなる。覚悟は、しておいてくれ」
最後にそれだけ言うが、アニは何も返さず背を向けて歩いていった。
信じるぞ・・・・・・アニ。
◇◇◇
覚悟なら、もうとっくに出来てるよ。
そうライナーに言わなかったのは、まだ迷っているからなんだろう。
宿舎に戻った私は一人眠れず、布団の上で蹲っていた。
あの日の事を思い出しながら。
三日前。
トロスト区奪還作戦の後処理が落ちついた頃の事。遺体の回収を手伝っていた私は、今日と同じくライナーから話があると呼び出された。
そこで告げられたのだ。調査兵団が捕獲した巨人を殺す事を。
・・・まるで意味が分からなかった。理由を聞いても俺達や故郷の事がバレるかもしれないから、と言ってはいたが歯切れが悪かった。
そもそも無垢の巨人を調べた所で得られる物なんてたかが知れているというのに。
加えてむしろ私達の立場を危うくする可能性がある以上、私はそれを断るつもりでいた。
けれど、ライナー一人にやらせて万が一しくじった場合、当然任務の続行は不可能。よって私は加担せざるを得なかった。
そしていざ計画を聞いてみると、流石にライナーも私が断る可能性を考えていた様で足元に置かれていたあるモノを見せてきた。
───それは、亡くなった兵士の立体機動装置だった。
いつ拾っていたのかという疑問こそあるが、これがあれば後々装置を調べられたとしても誤魔化せる。
ライナーはこれを使って犯行に及ぶつもりらしいが、元の持ち主が死んでからしばらく放置されていた以上、いきなり故障しないとも言い切れない。
持ち出すリスクはあってもしっかりと整備された自分の装置を使う方が安全だ。
と、ライナーにはもっともらしく話したけど、結局はバレた後のことが怖いだけ。・・・自分が助かりたいだけ。
この話をしている最中も、計画を実行した時も、ずっとそれが頭の中を反芻していた。
部屋で蹲っている今もそう。
私は、兵士なんかじゃない。
二体の巨人を殺した時から・・・いや、マルコを見殺しにした時から、私は裏切者なんだ。
そのくせ一丁前に迷って、後悔しているだなんて、私もライナーの事を言えないよ。
ふと、右手の人差し指で鈍く光る指輪を親指で撫でる。
「・・・・・・父さん」
それでも、私は帰らなければならない。待っている家族がいるから。
だからケリを付けよう。なにもかも全部。
────戦士として。
◇◇◇
調査兵団入団からもうすぐで一月が経とうとしている。
あと数日もすれば壁外調査当日。
時間の流れとはこんなにも早いものか、と思うくらいあっという間だったな。
この数週間、一度では話し切れない程に色々な事があった。例えばハンジさんの実験を手伝ったり、憲兵の手伝いをしたり。
それは良いとして、今日はミケ分隊長から調査兵団本部に呼び出されているのだが、約束まではまだ時間があった。
なので俺はミケ班の先輩二人と共にエルミハ区へ立ち寄っている所だ。
にしても流石はウォール・シーナの街だな。
エルミハ区は南方の突出区だが、内地にも見劣りしないレベルで発展している。
こうして歩いていみると、前世で上京したての頃を思い出すな。
人々の装いも正しく高貴そのもの。
所謂中世貴族のような服装で、派手な色のドレスや煌びやかな装飾のされたコート*1等が目を引く。
その影響で兵服を着ている俺の方が浮いていないか不安になるが、今は目的の店に行こう。
先輩はもう向かっているようだしな。
それから歩くこと二、三分。件の店までやってくると、既に店先には二人の兵士が立っていた。
「おっ、やっと来たな。途中で立ち止まってたが、何か気になるもんでもあったか?」
そう言いながら俺に手を振ってくるのはゲルガーさん。ご存知ミケ班の一員で先輩の一人だ。
「すみません、つい街並みに驚いてしまって・・・」
「無理もないさ。ウォール・シーナまで来る事なんてそう無いだろうしね」
「確かにな。新兵なら尚更か」
そしてもう一人は勿論ナナバさんだ。待たせた俺が悪いにも関わらずフォローしてくれる所から、その人の良さが滲み出ている。
ゲルガーさんも俺が前世で勤めていた会社の先輩に似てフレンドリーで接しやすいし、本当に良い人たちだ。
「そんじゃ、さっさと済ませちまおうぜ」
「急がなくてもまだ時間はあるよ、ゲルガー。たまの機会だしじっくり見て回ろう」
「・・・まぁ良いか。行くぞグラント」
そうして、俺は二人の後に続き店の中に入る。
この店は食器や雑貨等を主に取り扱っており、店先にはブローチやチャームのようなアクセサリーが並ぶ。
何故ここに来たのかというと、実はミケ分隊長から頼まれた事があるからなのだ。
遡ること二日前。ウォール・ローゼ内地での訓練を終えた後の事。
ミケ分隊長から本部へ集まるよう言われたのだが、この時に、ナナバさん達から息抜きにエルミハ区へ寄らないかと誘われた。
そしてそれを聞いたミケ分隊長から買ってきて欲しいものがある、と頼まれた訳だ。
何でも偶々寄った店で売られていた茶葉の香りが気に入ったらしく、その茶葉で淹れた紅茶をリヴァイ兵長にも勧めたいのだとか。
「・・・・・あった、多分これだ」
「ミケさんからのお使いってのはそれか」
「ええ。この店にしかない茶葉らしいですよ」
俺は店の隅に陳列された茶筒を手に取って、ゲルガーさんに説明する。
見た目は金属製のよくある茶筒だが、棚にはこれと後もう一つしかない辺り、実は人気なのか単に数が少ないのか。
壁内における紅茶はそれなりに高級な嗜好品なので、
どちらでも頷けるか。
「へぇ。・・・そういや入る前は気づかなかったが紅茶の匂いがするな」
そう言われ、嗅覚に集中してみるとほんのりと紅茶の香りがする。
明確に覚えているわけではないが、前世の日本で飲んだ物とは明らかに香り高さが違うな。
「良い香りだ」
「本当だ。それに売り物を見る限り、店主はよっぽどの紅茶好きみたいだね」
ナナバさんの言う様に、反対側にある棚の一角を紅茶に関する道具が占めていた。
金属製のポットや黄金の装飾が施されたティーカップなど、強いこだわりが見て取れる品々だ。
これは是非とも兵長を連れて来てみたい。
「それじゃ、買ってきますね」
「おう。外で待ってるぜ」
「私はもう少し見て回ろうかな」
そして物も見つかったので会計を済ませ、俺達は店を後にするのだった。
ちなみに外へ出た後、酒場に入ろうとしていたゲルガーさんを羽交い締めにしたのはまた別の話。
◇
「ったく、一杯くらい良いじゃねえか」
「兵士が昼間から酒を呑んで良い訳無いだろ。何より後輩が見てるんだよ?」
「昼間からやってるトコみりゃ飲みたくもなるぜ」
「いや駄目ですよ。これからミケさんと会うんですから」
一人不貞腐れるゲルガーさんの隣で、俺とナナバさんはため息を吐く。
良い人だといったが、一つ訂正だ。
ともあれ本部に着いたことだし、早速ミケさんの所へ向かおう。
「よし、これで揃ったな」
学校の教室のような部屋へ入ると、既にミケさんともう二人の兵士がいた。
リーネさんとヘニングさんだ。彼らとナナバさん、ゲルガーさんの四名がミケ班の全メンバーである。
「やぁグラント、ゲルガーは何もしなかった?」
「いきなり何だよ、リーネ」
「だって、二人の服装が乱れてるから揉み合いにでもなったのかなーって」
「何も起きてないですよ。・・・何も」
「そう?なら良いけど」
しまった、迂闊だった。咄嗟の誤魔化しも厳しかったようで、ヘニングさんどころかナナバさんまで笑みを堪えている。
「雑談は後だ。全員揃った事だし話を始めるぞ」
すると、ミケさんが少しの威圧感と共に場を締める。
「今回集まってもらったのは他でもない。数日後に控える壁外調査において、変更点も含めて今一度俺達の役割を確認する」
そう言ってミケさんは黒板に「長距離索敵陣形」を簡略化した図を描いていく。
そもそも、長距離索敵陣形とはエルヴィン団長が分隊長時代に考案した、「巨人との戦闘を極力避ける為の陣形」だ。
外側に広がった索敵班が信煙弾で巨人の位置を中央にいる団長へ知らせ、団長が進路を決める煙弾を撃てばそれに従って移動する。
要は外から中へ、中から外への煙弾リレーを繰り返す訳だ。
そんな陣形において俺達新兵は比較的安全な内側に配置される。そして、当然アルミン達の配置は原作通りだった。
肝心の俺が配属されたミケ班は次列二番、つまり団長のすぐ右斜め下の配置との事。
そんな第一分隊の役割は、他班と同じ煙弾による伝達と団長の護衛だ。
もし巨人が陣形の中に入り込んだ場合、俺達が最後の砦になる訳である。
・・・・・・正直言うと、個人的には運が良いとも悪いとも言える配置なんだよな。
実は、俺が原作に抗う上で特に大きな行動を起こそうと思っているのが今回の壁外調査なのだ。
何のためかはまだ秘密だが、一番の目標は女型の巨人と接触すること。それもライナーより先に。
これを達成する為には単独で動く大義名分が必要になる。
仮に原作と同じなら女型は右翼側から現れる。その場合、ミケ班も右翼側なので位置関係が近いという点で運が良い。
だが、勝手に持ち場を離れるなんぞ出来るわけがないし、そう上手く単独で動ける状況がやってくるとも思えない。
こればかりは当日の状況次第、だな。
一応巨人との交戦にかこつけて陣形から離れることは不可能ではないし、焦りは禁物だ。
「──と、ここまではお前達も知っているな」
「ああ、前に聞いた通りだね」
「では肝心の変更点についてだ」
そう言ってミケさんはチョークを置き、今度は机上に置いてある煙弾銃を手に取った。
「グラント、煙弾の色とその意味は知っているな?」
「はい。緑が進路の決定及び作戦続行、赤が巨人の出現、黒が奇行種の出現又は非常事態の発生です」
「その通りだ。俺達の班ではナナバとヘニングに煙弾を撃つ役割を任せている。だがエルヴィンと協議した結果、ヘニングと交代してグラントにその役割を担ってもらう事になった」
・・・・・・何だって?
ミケ分隊長の発言に俺は耳を疑った。
元々俺はゲルガーさん、リーネさんと共に戦闘要員になると知らされていたんだが、それが変更?
巨人との戦闘時に班から離れられると思ったばかりなのに、早速狂ってきたな。
「同期とは別の班に入ることを了承してもらったにも関わらず、勝手な事だとは重々承知している。だがエルヴィンは考えなしにこういった事を言う男ではない。・・・・・・どうか我儘を許して欲しい」
エルヴィン団長の考え・・・か。
まさか俺の正体に察しがついた、なんて言わないよな?そうなると目的達成がほぼ不可能に近づくんだが・・・・・・。
いやでも、団長ならあり得るか?
「一応、非常事態ともなれば戦って貰うこともあり得る。だがそれ以外では極力戦わないで欲しい、というのがエルヴィンの意見だ」
「・・・分かり、ました」
「すまない。感謝する」
◇
そうして話が終わった後、俺はミケ分隊長と二人になった所で買ってきた茶葉を手渡した。
「ありがとう。俺は分隊長の仕事で中々暇がなくてな。お陰で助かった」
「いえ。では失礼します」
それからミケ分隊長に返事させる隙も与えず、早歩きで部屋を出る。
マズいな・・・・・・。
廊下を歩く中で、俺は改めて考えを整理する。
先程言った通り結局は当日の状況次第なのだが、今回の変更は実質的に俺の拘束と同義だ。
新兵を守る為と言われれば理解は出来る。普通なら喜ぶべき所だろう。
だが俺の場合はそうじゃない。
・・・・・・不本意ではあるが抜け出す事も視野にいれるか。
罰される事は目に見えているが、目的が果たせればそれも関係なくなる。
過程に拘っている余裕は無いかもしれないな。
◇
────数日後。
遂に、壁外調査当日を迎えた。
作戦通りカラネス区の外門前に集められた調査兵達の中に混じり、俺も馬に跨る。
「開門!」
すると、静寂を破ったのはエルヴィン団長の声。
同時にギギギと音を立てながら外門が開いていく。
徐々に見えてくる巨人の領域を見据え、手綱を握る手へ無意識に力が入る。
「これより、第57回壁外調査を開始する!
────進め!!!!」
次回「女型の巨人」