進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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まずは400UA並びにお気に入り20件突破ありがとうございます。

本作ですが毎週更新を目標にしていきますのでよろしくお願いいたします。

面白いと思って頂けたら幸いです。







二話 ウォール・マリア奪還作戦

 

 

 

 

 

───846年・トロスト区郊外

 

 

 

 

 俺がこの世界に転生してから早くも一年が経った。

 

 今は避難所を離れて、郊外にある開拓地にて農業に勤しんでいる。

 

 というのも、中央政府から避難民を開拓地に送るよう命令が出たのだ。

 

 大量の失業者や難民を抱えている現状、食糧の生産量を消費量が上回るのは火を見るよりも明らか。その為自分で食う飯は自分で作れ、という事らしい。

 

 

 

 「おっ、良い感じに育ってるな」

 

 

 そう呟く俺の眼前には、薄黄色のライ麦が程々に実をつけていた。

 

 実のところ、俺がいるこの場所は開拓地の名の通りほぼ手つかずで、土地は痩せて雑草が茂り、お世辞にも良い環境とは言えない場所だ。

 

 加えて追い打ちをかけるようにこの辺りは寒冷地でもある。 

 

 だが、こういった環境下でもライ麦は育つ為、それを使ったパンが主食というのも納得だ。

 

 巷では壁内の街並みや人名などでドイツをモデルにしていると言われる進撃の巨人だが、こういった所からもそれが実感できると思う。

 

 

 

 「・・・・・・ふぅっ、今日はこんな所か」

 

 

 俺は早速自身に割り当てられた畑でライ麦を収穫し、納品用の台車に乗せた。

 

 

 段々と昇る夕日を背に、一仕事終えて額の汗を拭っていると背後から誰かに話しかけられる。

 

 

 

 

 「よう、グラント」

 

 「・・・・・・」

 

 

 声の正体は微笑んでいるライナーと無表情のアニだ。

 

 

 この世界に転生したあの日、俺に声をかけてきた二人はやはりベルトルトを探していた。

 

 今では同年代の友達のような関係になったが、おそらく二人とも俺の事を疑っている。初めて顔を合わせた時の反応からすると最悪バレている可能性もあるか。

 

 定期的に話すようになってから、何度か探るような会話があった事も理由の一つだ。

 

 ちなみに基本的にライナーが良く話しかけてくるが、対照的にアニはそこまで喋らない。

 まぁ俺としては、敵とはいえ話せる知り合いが出来たことは素直に有り難く思う。

 

 二人は俺の原作知識の事なんぞ知る由もないし、そもそも俺が巨人の力を知らないと思ってるかもしれない。

 

 何にせよ極力言動に気をつけつつ、この関係を維持しないとな。

 

 ・・・・・・今後の為にも。

 

 

 「二人ともお疲れ、そっちはどうだった?」

 

 「ぼちぼちって感じだな。この環境じゃ豊作はまず期待できないし、収穫があるだけマシってもんだ」

 

 「そもそも、一年弱続けてるのに配給の量も内容も変わらない時点でお察しだけどね」

 

 俺達はそんな風に話しながら食糧配給の列に並ぶ。

 

 避難所にいた頃の食事はパンと飲み水くらいだったが、開拓地に来て以降は水がスープに変わった。

 

 ちなみにスープはシチューのようなとろみのある物で、小さいが刻んだ野菜と申し訳程度の肉が入っている。

 

 確か原作じゃ訓練兵団で似たようなスープが出されていた。

 

 とはいえ育ち盛りの俺みたいな子供には物足りなさがあるが、明日に障るので少しでも腹に入れておかなくては。

 

 

 「そういえば、グラントはこれからどうするんだ?」

 

 すると、食事も程々にライナーが話しかけてくる。

 

 「このまま開拓地で暮らすか、訓練兵団に入団して兵士になるか。どうするのかと思ってな」

 

 「そうだな・・・・・・」

 

 

 俺は少し俯いて考える。

 原作では来年、主人公であるエレン・イェーガーを初めとした104期が入団する頃だ。

 

 まず俺は今年で12歳(推定)、同い年のアニも年上のライナーも既に入団できる年齢だが、様子見もなしにという訳にはいかないだろう。

 

 対して、こっちは“目的”の為に104期にならなければいけない。

 よってそれまで待つしか無いのだ。

 

 

 「いや、別に答えなくても良いんだ。そもそも二択を迫ろうとした訳でもないしな。すまん」

 

 「謝らなくていいって。・・・・・・そうだな。俺は───

 

 

  兵士になる

 

 

 

 「理由を聞いても良い?」

 

 俺がそう言うと、何と問いかけて来たのはアニの方だった。

 

 これにはライナーも驚きを隠せずにいる。

 

 

 「勿論。実は俺、シガンシナ区の出身でさ。あの日一人ぼっちになったんだ」

 

 「それで?」

 

 「お、おいアニ!? グラントも無理に話さなくていいんだぞ?」

 

 

 淡々と続きを促すアニ。そこに動揺しながらも、ライナーが間に割って入る。

 

 「俺なら大丈夫。それで続きだけど、俺は瓦礫に巻き込まれて気を失ってた。だから家族に何があったか知らないんだ。気がついたら避難所だったから」

 

 「・・・・・・」

 

 俺はボロが出ないよう慎重に言葉を紡ぐ。巨人の力に関して何も知らないと思わせるんだ。

 

 「だから、取り戻したいんだ。俺の故郷を。知らない内に巨人共に奪われてたなんて納得できないし、家族の仇だってある。これが理由、かな」

 

 俺が言い切ると、ライナーは立ち上がってこちらへ手を差し出してくる。

 

 「実はな、俺も兵士になろうと思ってるんだ。人類を救う、そして帰れなくなった故郷へ帰る為に」

 

 ライナーは先ほどよりも口角を上げて続ける。

 

「だから、言い方は違うが同じ故郷を取り戻したい者同士頑張ろうぜ」

 

「ああ、取り戻そう。俺達の故郷を」

 

 そして俺達は固い握手を交わす。いずれ敵対するとはいえ、今は友人でいたいと、そう思った。

 

 

 

 

「ねぇ、二人だけで盛り上がらないでくれる?私もいるんだけど」

 

 と、いつの間にか食事を終えたアニが立ち上がっていた。

 

「おっとすまん、つい」

 

「いつの間に・・・・・・あ、確かアニはライナーと同郷なんだよな」

 

「そう。それに私も、兵士になって果たさなきゃいけない目的があるから」

 

「目的か・・・。わかった。アニ、改めてよろしくな」

 

 俺はそう言いながら、ライナーがしたように手を差し出す。

 

「・・・聞かないんだ」

 

「ん?」

 

「目的が何かとか、気にならないの?」

 

 

 するとアニは僅かに驚いた顔で俺に詰め寄る。

 

 まぁ、身も蓋もない事をいえば俺は目的が何かを原作知識として既に知っている。

 

 だが、何でかこの時は聞くべきじゃない、そんな気がした。

 

 

「そりゃ気にはなるよ。でもアニがあえて言わなかったのなら、聞き出そうとするのも違うかなって」

 

「へぇ、案外優しいんだね」

 

 アニはそう言いながら俺の手を取ってくれた。

 

「よろしく。グラント」

 

「ああ、よろしく」

 

 その後、俺達はその場で別れ、それぞれのテントで一夜を明かすのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 翌日、俺はいつも通り作業に取り掛かろうとした。

 

 だが、突然馬に乗って現れた駐屯兵の姿を見た他の避難民は一斉に作業をやめ、トロスト区内へ移動し始めた。

 

 

 いきなり何が・・・・・・いや、待てよ。

 今は846年。ウォール・マリア陥落の一年後と言えば、あの出来事がまだ起きていない。

 

 

 ・・・・・・まさか、今日がその日なのか?

 

 

 後を追って広場に到着すると、早々に放たれた駐屯兵の声によってそのまさかだった事が決定付けられてしまった。

 

 

「これより、ウォール・マリア奪還作戦を開始する!」

 

 対巨人用兵器である立体機動装置を身に纏い、右手に持った刃を天に掲げながら駐屯兵は高らかに宣言する。

 

 その眼前には黒いフード付きマントを羽織り、先の尖った木の棒を持った避難民が二列に並んでいた。

 

 原作と同じ、ただただ絶望に染まった表情をして。

 

 

 

 

「本作戦の目標は、シガンシナ区外門から侵入した巨人を討伐し、ウォール・マリアを奪還する事である!」

 

 

 避難民の様子など見えていないかのように、駐屯兵は宣言を続ける。

 

 

「今回命を賭して集まってくれた諸君らには最大限の敬意を表する!しかし、この中にはまだ、巨人への恐怖を抱いている者がいるかもしれない」

 

 すると、そんな駐屯兵の言葉に合わせ列の各所にいる他の兵も刃を掲げる。

 

 

「だが安心して欲しい!君達には我々兵士がついている!この立体機動装置で巨人を薙ぎ倒す為に、諸君らの力が必要なのだ!」

 

 そう避難民を鼓舞しつつ、駐屯兵は隣の部下らしき人物に『開門せよ』と指示を出す。

 

 それから徐々に、重々しい音を立てながら死地への入り口が開く中、駐屯兵は握り締めた刃を正面へ向け、こう叫んだ。

 

 

 

 

「今より巨人へ挑まんとする勇気ある者達よ

 

 

 

 

 

 ────心臓を捧げよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 そして、駐屯兵を先頭に避難民達は壁の向こうへと消えていった。

 

 

 やがて、集まっていた人は一人残らずいなくなり、静寂が広場を包み込む。

 

 

 

 俺はただ、その場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 あれからどれくらいの時間が経っただろう。

 

 そう思った時には、空は雲に覆われて淀み、僅かな隙間からは橙色が見える。

 

 どうやら夕方に近づいているようだ。

 

 

 今に至るまで、駐屯兵も避難民も誰一人戻っては来なかった。

 

 

 結局、こうなるのか。

 

 

 仮に作戦に参加できたとしても、巨人化すれば周りを巻き込んでしまう上に即標的にされる。

 

 というかそもそも巨人化を試した事がない上に後で逃げる手段もない為、十中八九死ぬのがオチだ。

 

 

 ・・・・・・分かっていた。分かってはいたがこんなにも辛いのか。

 

 

 

 何も出来ないって事は。

 

 

 

 

 

 

 その後、食事を摂る事もせずこの場に居続けたせいか身体の力が抜けてきた俺は、広場の噴水に座り込む。

 

 

 

 そういや作業、サボった事になるだろうな・・・。

 

 

 俺が空を見上げながら畑の事を思い浮かべていると、ふと足音が聞こえた。

 

 

 

 誰だろう・・・・・・?

 

 

 

 ゆっくりと立ち上がった俺の視線の先には、慌ただしく駆け寄ってくるリコさんの姿があった。

 

 

 

グラント!!

 

 

 

 そのまま俺は、リコさんに両肩を掴まれる。

 

 

「お前、此処にいたのか・・・!今朝方開拓地からいなくなったと聞いて心配したんだぞ!?」

 

 

 その後、俺はリコさんから今までの経緯を聞いた。

 

 どうやらライナーとアニが、リコさんに俺がいなくなったと伝えたらしい。

 加えてその時は昼頃だった為に食事もまだだろうと聞き、大慌てで周辺を見回ったものの見つからず。

 

 途方に暮れていたリコさんだったが、とある女性が避難民の列について行った俺を見ていたらしくトロスト区へ急行。

 

 そして座り込む俺を見つけたという訳らしい。

 

 

 リコさんは出会ってから今まで、ちょくちょく俺のことを気にかけてくれた事もあって、本当に申し訳が立たない。

 

 

「あの、俺のせいでご迷惑をおかけしました。それにまたパンを・・・本当にありがとうございます」

 

「全くだ。グラントがトロスト区に行ったと分かった時は、お前まで徴兵されたんじゃないかと気が気じゃなかったぞ」

 

 

 今、俺とリコさんは開拓地へ戻り、小さな丘の上に座っている。

 

 

「俺も、あの場にリコさんがいなくて正直良かったです」

 

「私は声が掛からなかったからな。だが、避難民の徴兵に関して私は何も知らなかったから、まさか子供も含まれるのかと本気で焦ったよ」

 

「そういえば、リコさんは奪還作戦の事知ってたんですね」

 

「ああ、勿論知ってるよ。駐屯兵は皆知ってる。それに他の兵団にも伝令がいってる筈だ。でも・・・・・・」

 

 

 リコさんはそこまで言うと、固く握った両の拳を自らの膝に叩き付け、声を荒げた。

 

 

アレの何処が奪還作戦だ!? 立体機動装置も持たない丸腰の市民を死にに行かせているだけじゃないか!! こんなの虐殺と何が違うって言うんだ!?

 

 

 

「リコさん・・・・・・」

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・すまない。取り乱してしまった。でも、お前も知っているだろう? 作戦が開始されてから未だ誰一人帰還していない事を」

 

「はい。見てました。全部、何もかも」

 

 

 俺が言うと、リコさんの表情がまた少し暗くなる。

 

 

「多分、多すぎる失業者と避難民を減らしたかったんだと思います。奪還作戦なんて建前に過ぎなかった」

 

「同感だ。本当に腹が立つ。でもそうしなければ、食糧難で人類が大きな被害を受ける事は分かる。・・・・・・分かるがそれとこれとは違うだろう? 人が人を殺していい理由なんてない筈なのに」

 

 

 体育座りをして、抱えた自身の膝に顔を埋めるリコさんに俺は続けて声を掛ける。

 

 

「俺、初めて知ったんです。何も出来ない事が、ただ見送る事がこんなにも辛いんだって。出来ることなら、俺だって戦いたかった」

 

「・・・・・・もしそんな事をしたら、私はお前を全力で止める。死にに行かせるワケがないだろう」

 

 そう言われ、俺は反射的に視線をリコさんへ向ける。

 リコさんは僅かに顔を上げて、話を続けた。

 

 

「だが、その勇敢さが羨ましいよ。私は臆病者だから。駐屯兵になったのもそれが理由なんだ。巨人に立ち向かう勇気が無かったから」

 

 

「そんな事ないですよ」

 

 

「え?」

 

 

 俺が突然そう言った事で、リコさんは埋めていた顔を上げてこちらを見る。

 

 

「リコさんは、勇敢な兵士です」

 

 

「止せ、お世辞なんか・・・・・・」

 

 

「お世辞じゃないですよ。だってリコさんが臆病者だったら、俺は今此処にいませんから」

 

 

 すると、リコさんは目を大きく見開き俺を見た。

 

 

「いつ巨人が現れてもおかしくない外門の側まで行って、倒れていた子供を助ける、なんて臆病者に出来ると思います?」

 

 俺は微笑みながら本心を言う。

 

 直後、リコさんは右手で自身の髪を撫でながらはにかんだ。

 

 

「そう・・・か。ありがとう。少し気が楽になった。でもまさか、グラントに励まされるとはな。いつの間にか上背も抜かれてしまったし、成長したという事か」

 

「出来てたらいいんですけどね、成長」

 

「安心しろ、出来てるさ。私が保証する」

 

 

 

 それから俺達は笑い合った。茜色の空に包まれながら、互いの目を合わせて。

 

 

 

 

 

「さて、暗い話は此処までにして、今後の事でも聞かせてもらおうか」

 

 リコさんは体育座りを解き、両手を後ろに突いて崩れた体勢を取る。

 

 

 

「兵士に、なるんだろ?」

 

「え、何でそれを」

 

「お前を探していた時に聞いたんだ。お友達からな」

 

 

 お友達って、あの二人か・・・・・・。自分から言おうと思ってたのにな。

 

 

「それで、所属兵科はどうするつもりなんだ?」

 

「えっと、それは・・・」

 

「駐屯兵団なら歓迎するが、そうではないんだろう?何となくだが分かるよ」

 

 リコさんが言い切るのとほぼ同時に、俺は思わず立ち上がっていた。

 

 伝えるんだ、俺の恩人に。

 

 

「俺、調査兵団に入ろうと思ってるんです。取り戻したい故郷の為に」

 

「・・・・・・やはりそうか。そう、なんだな」

 

 

 俺が明かすと、リコさんは俯いたまま立ち上がり、俺の左胸に拳を当てる。

 

 

「さっきまでの話とは矛盾するが、止めはしないよ。戦いに行く兵士の決意を邪魔するような真似はしない」

 

 

 リコさんは先程とは打って変わって不敵な笑みを浮かべて、こう告げた。

 

 

 

「だから、死ぬな。強くなれ。何だったら入団まで私が鍛えてやる。対人格闘や座学なら教えられるからな」

 

 これは願ってもない事だ。駐屯兵団屈指の実力者になるリコさんに答えてもらえるなんて。

 

 断る理由が見つからないというものだ。

 

 

「是非お願いします!リコさん」

 

「わかった。だが私は厳しいからな。覚悟しておけよ?」

 

 

 

「・・・・・・はい!」

 

 

 

 

 

 

 かくして、訓練兵団入団に向けての地獄の一年が、幕を開けた。

 

 

 

 

 





お読み下さりありがとうございました。

此処まで読んだ皆さんならもうお気づきかもしれませんが、作者はリコ推しです(エルヴィンとハンジも)

本当は別のキャラをヒロイン枠にしようとしているのですが、書いている内にリコルートに入りそうで
僕自身危機感を覚えています(自業自得)

後、作戦開始前の駐屯兵の演説が仲々浮かばず書くのに時間がかかりました(汗)

そして、次回から訓練兵団編です。
巨人の力に関しても触れていきますのでお楽しみに。

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