進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 お久しぶりです。まずは2ヶ月近く空いてしまい申し訳ございません。

 相変わらずの多忙と、本編と番外編の執筆を並行していた為に中々更新が出来ずにおりました。
 その間も沢山の方が読んで下さった上、お気に入りや評価までして頂き感謝の言葉もありません。

 現在は4月以降の更新ペースを確保するために動いておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。




二十話 秘密

 

 

 

 

 あの後、調査兵団は無事カラネス区へと帰還した。

 

 

 殿を務めるべく残ったミケ班を始めとする兵士達も、犠牲を出しながらではあるが帰還する事に成功。

 

 結果として表面上は『調査を中断し引き返した』事になるものの、原作同様に敵の存在やエレンを狙っている事などの情報、という“成果”を持ち帰る事が出来たので成功と言っていいだろう。

 

 俺も女型と接触するという目標を果たせたしな。

 

 

 それに原作より明らかに少ない被害で済んでいる分、確実に良い方向に進んでいる。

 何せミケ班とハンジ班に加えて、本来全滅する筈のリヴァイ班の四人も生き残ったのだ。

 

 右翼側のみならず左翼側でもトラブルはあったようだが、原作における巨大樹の森に入って以降の犠牲者を最小限に抑えられた事で、結果的にマイナスはかなり抑えられた。

 

 ただ、実は左翼側で何があったかはまだ知らない。そこは後で聞いてみるか。

 

 丁度明日に女型と戦った件で団長から呼び出されているので都合も良い。左翼にいたハンジさんも同席しているだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・さて、壁外調査の話はこの辺りにして今の話をしよう。

 

 今、俺は調査兵団カラネス区支部の兵舎にいる。厳密に言えば真っ暗な会議室の中に。

 時間は夜中0時。もう先輩方も皆寝静まっている頃だろう。

 

 何故こんなにも遅い時間に会議室にいるのか。

 

 

 

 

 ───答えは簡単。ある人物と話す為だ。

 

 

 

 その“人物”が誰かは・・・・・・言う必要は無さそうだ。

 

 何故ならもう、既にこの場にいるから

 

 

 

 「・・・っ!」

 

 

 

 突如、背後から首に向かって伸びる彼女の手を寸前で抑える。

 そのまま腰を捻って左の裏拳を放つが、止められて逆に膝の裏への蹴りを喰らってしまった。

 

 所謂膝立ちの体勢にさせられ、首元へ何かを突きつけられる。

 

 それは、月明かりに照らされて煌めく銀色の指輪。だがただの指輪ではなく、指の側面に鋭利な棘が着いた仕込み指輪だ。

 

 

 「珍しいね。油断するなんて」

 

 「・・・そうだな。本当は掴んだ勢いで投げ飛ばしたかったんだが、そう上手くはいかなかったよ」

 

 「でも本気じゃなかったでしょ。アンタならか弱い私を投げるくらい簡単じゃないの?」

 

 「前にも思ったが、俺を何だと思ってるんだ?

 

 

 ・・・・・・アニ

 

 

 

 変装のつもりか、普段は結んでいる金髪を下ろしたままの彼女に顔を向ける。

 

 実は巨大樹の森で女型と戦った時、俺は『今夜、中にいる君と話したいことがある。場所は──』と囁いていたのだ。

 そしてここに来てくれたという事は、どうやら話をする気はあるらしい。

 

 

 「取り敢えず、離れてもいいか?」

 

 「どうぞ」

 

 できるものなら、という前置きが無いことを祈りつつ、床についた右足を動かす。

 すると何の妨害もされず、スムーズに立ち上がる事ができた。・・・・・・やはりそうか。

 

  

 「何だ。案外あっさり離してくれるんだな」

 

 「今アンタの口を塞いだとして、私に得があると思う?」

 

「無い。むしろアニの立場が悪くなるだけだ」

 

 

 俺が振り返りながら答えると、アニは真っ直ぐに俺の目を見て、しかしあくまで無表情のまま口を開く。

 

 

 「やっぱり、グラントだったんだ。・・・・・・トロスト区で現れた超大型の正体」

 

 「ああ。そうだ」

 

 

 アニの言葉を肯定しつつ、右手の平を顔の横に上げる。

 

 事前につけていた、一筋の切り傷を再生させながら。

 

 

 「その傷・・・・・・まさか」

 

 「勘違いしないでくれ。これは証拠を見せる為であって、巨人化するつもりはないよ」

 

 実際は半分本当で、半分は嘘だ。

 

 自分が継承者だと手っ取り早く示すためにつけた傷。それは事実だが、同時に場合によっては巨人化できるように備えていたのもまた事実。

 まあここで巨人化してもメリットは一切ない。意味のない犠牲を出して、自ら孤立するだけなのだから。

 

 それでも万が一を考えずにはいられない程に重要な局面なのだ。

 

 

 

 「…じゃ、聞かせてよ。ここに呼び出した理由とか色々」

 

 

 アニの言葉に対し、ただゆっくりと頷く。

 

 

 さあ、ここからが勝負だ。

 この“説得”の結果次第で、俺自身の運命はもちろん、これから先の流れも大きく変わる。

 

 

 

 「単刀直入に言う。アニ、調査兵団に来てくれないか

 

 

 

 

 「・・・・・・本気?」

 

 「ああ、もちろんさ」

 

 

 ます、俺の目的はアニをこちらへ引き込む事。

 これが叶えば、本来終盤まで眠っている筈の彼女を作戦に介入させられる。そうすれば間違いなく変化が起きる筈だ。

 

 直近の出来事でいえばストヘス区で戦わずに済む。これによって市民の犠牲がなくなる上、憲兵団との関係も原作程悪くは無くなるだろう。

 

 当然良い事ばかりとはいかないだろうが、交渉する価値は充分にある。

 

 

 

 

「それは私が・・・・・・女型の巨人だから?」 

 

「正直に言うとそれもある。でも一番は、救けたいと思ったからだ」

 

 

 本心を伝えながら、アニの目を真っ直ぐに見つめる。

 

 すると、彼女はゆっくり振り向いて顔だけをこちらに向け、口を開いた。

 

 

 「もし、断ったら」

  

 「何もしないよ。俺にアニを売る気はない」

 

 

 さっき言った様に俺は団長から呼び出されているので、断られた報復として女型の正体を告げ口する事は出来る。

 

 だが俺の目的は原作の流れを変えること。態々チクるメリットが無いのだ。

 

 悪い方向に自分で舵を切るつもりなんぞ毛頭ない。

 

 

 「でも、いずれ調査兵団は動く筈だ。エルヴィン団長は外から来た敵の存在を察知しているし、アルミンなら直に気づくと思う」

 

 「・・・アルミンか。確かに、このままお尋ね者にされるより、自分から名乗り出たほうがマシかもね」

 

 

 そう。このまま何もしなければ、アルミンの仮説に賭ける形でストヘス区での女型捕獲作戦が“おそらく”決行される。

 

 その場合、アニは原作通り自らを結晶の中に閉じ込めて、終盤まで口を閉ざしてしまう可能性が極めて高い。ちなみにこれが最悪のパターン。

 

 もしそうならずに拘束出来たとしても、ストヘス区で少しでも被害が出た時点で入団の希望は通らないだろう。

 

 その後の兵法会議で憲兵に処刑されるのがオチだ。

 

 

 「私も調査兵団と真っ向からやり合おう、なんて思ってない。争わずに済むなら、それに越した事はないよ。でも・・・」

 

 そう言いかけて口籠るアニを、俺は何も言わずに見つめる。

 

 

 「正直に名乗り出た所で、調査兵団に入れてもらえるとは思えない。私は既に何人も団員を殺してるから。むしろその場で殺される可能性の方が、高いと思う」

 

 

 アニの言う事はもっともだ。正体を聞いて取り乱した団員に襲われるかも、と考えるのは何ら不思議じゃない。

 

 特に俺だったら真っ先に殺しに来るだろうな。

 

 話をする時間さえ、与えられないかもしれない。

 

 

 「確かにそうだな。・・・・・・アニが一人、だったなら」

 

 「・・・どういう事?」

 

 「俺に考えがあるんだ。上手くいけば、これ以上隠し事をする必要が無くなる。その代わり今ほど自由には動けなくなるだろうけどな」

 

 「なら、その考えって奴を聞かせてよ。それからどうするかは決めさせて」

 

 「ああ。でも、話す前に一つだけ確認させてくれないか」

 

 

 「良いよ。何?」

 

 

 

 

 「ライナーを、故郷を裏切れるか?

 

 

 俺がそう口にした瞬間、アニは僅かに目を見開くも、直ぐに元の無表情へ戻る。

 

 

 「裏切れる。それで私の目的を果たせるならね。元々故郷に対して忠誠なんて無いから」

 

 「・・・そうか」

 

 

 まあ、そうだよな。父親の元に帰るというたった一つの目的を果たす為だけに、アニは今まで兵士を演じてきたんだ。

 

 仮に忠誠心が少しでもあるなら、今頃俺を拘束して連れ去りでもしてた筈。巨人化させずに身柄を抑えられる絶好の機会を逃す手はないだろう。

 

 

 「わかった。それじゃ順を追って話そう」

 

 

 

 俺はそう言って側にある椅子を二脚手繰り寄せ、片方をアニに渡す。

 

 「長くなるから、取り敢えず座ってくれ」

 

 「・・・ありがとう」

 

 

 そのまま互いに椅子へ腰掛ける。流石に立ち話もなんだし、これでゆっくり話せるようになった。

 

 それじゃ、始めようか。

 

 

 「まず、アニにやってもらいたい事は調査兵団に正体を名乗り出ること。

 

 

 ───俺と一緒にな

 

 

 

 

 「・・・ちょっと待って、アンタも?」

 

 「ああ。アニを一人で行かせやしないさ」

 

 「何でグラントが名乗り出るの。その必要なんて・・・」

 

 「ある。俺としても、このまま隠し続ける訳にはいかないんだよ」

 

 

 俺の正体を兵団に明かす。それは俺が転生してから最大の目標としていた事だ。

 超大型巨人というタイミング次第では自らを破滅させてしまう爆弾をどうするか、ずっと考えていた。

 

 下手をすればウォールマリアを破壊した超大型巨人の正体が俺だったという事にされ、そのまま問答無用で処刑になるだろう。

 

 だからこそタイミングが重要なんだ。

 そして、その点に於いて今ほどの機会は無いと言える。

 

 逃す手はない。俺自身の為にも、アニの為にも。

 

 

 「丁度、明日エルヴィン団長から呼び出されていてな。そこで名乗り出ようと考えてる。アニには俺が呼ぶまで部屋の外で待機していて欲しいんだ」

 

 「なら顔は隠した方が良いね。 同期と出くわすかもしれないし」

 

 「そうだな。俺もあまり時間をかけない様にはするけど、用心するに越したことはないさ」

 

 

 重要といえば話をどう切り出すかもだな。

 

 正味本題を遮って話せば良いんだが、ここでしくじれば全てが水の泡だ。

 話を遮られた、と思わせないように上手く必要な事を伝えなければ。

 

 エルヴィン団長なら黙って聞いてくれそうな気もするが、その場にいるのは一人だけじゃない。細心の注意を払っておかないと。

 

 

 

 

 

「・・・あのさ」

 

「ん?」

 

 

 ふと、アニが呟いた。

 俯いてしまって顔は見えないが、金髪の隙間から覗く頬が、ほんのり赤らんでいる。

 

 

 

「・・・恨んでないの? 私の事」

 

「どうしてだ?」

 

「私は五年前の地獄を引き起こした一人で、あの日グラントに近づいたのはベルトルト、超大型巨人の行方を捜すため。アンタにアイツの顔が重なったから。

 

 ・・・・・・ずっと騙してたんだよ。グラントと避難所で初めて会った時から、ずっと」

 

 

 

 それは、ある意味当然の疑問だった。

 

 もし俺が壁内で生まれ育った一兵士なら、アニの事を恨んでいても何ら不思議じゃないからだ。

 

 でも、実際の俺はそうじゃない。

 

 

 

「恨んでないよ。むしろ、アニの方こそ俺の事を恨んでないのか?」

 

「超大型の事なら恨んでなんかない。あれは不運な事故だから。ベルトルトを喰った無垢の巨人が偶然グラントだった、ただそれだけの事故」

 

「不運な事故、か」

 

「そう。っていうか、やっぱり知ってたんだね。ベルトルトの事」

 

 

 ・・・やはり気づかれてたか。

 

 そりゃベルトルトの名前を出したのに無反応だったんだ。流石に勘付くだろうな。

 

 

 

「ああ。“見た”んだよ。あの日、ベルトルトが死んだ瞬間の記憶を」

 

「そこで、私とライナーの事も見たの?」

 

「一部だけだ。 三人で話している光景が、僅かに見えた位かな」

 

 事前に考えておいた嘘を交えつつ、質問に答える。継承者の記憶が見える、と言ってもそれは断片的なモノなので、事細かに知っているのは不自然だからだ。

 

 

 「だから、初対面の時点でアニ達三人の名前と壁の外から来たって事は知ってた」

 

 「そう、だったんだ」

 

 「・・・でもさ、嬉しかったんだよ」

 

 

 つい、そんな言葉が溢れた。それを聞いたアニが反応を示すよりも早く、俺は言葉を紡ぐ。

 

 

 「目が覚めたら一人ぼっちで、自分が誰かなんて分からない。あるのは見知らぬ誰かの記憶だけ。グラント・ベルツァーって名前も本名かは定かじゃないんだ。だからこそ嬉しかった。あの日、アニとライナーが見つけてくれた気がしたんだよ。俺の事を」

 

 

 それは、嘘偽りのない本心。

 

 アニとライナー、それとリコさんも。五年前、彼らが俺に話しかけてくれたから今の俺がある。

 

 「開拓地での暮らしも悪くなかった。一人じゃないってだけで、そう思えるくらいには俺は救われてたんだ」

 

 

 そう言いながらアニの方へ視線を移す。

 

 

 すると───

 

 

 

 アニが、泣いていた。

 

 

 

 

 彼女の頬を伝う一筋の涙。その表情には強い後悔が滲み出ている。

 

 

 「何で、何で私を恨んでないの」

 

 「俺だって意識がなかっただけの人殺しなんだ。自分の事を棚に上げて、アニを恨みなんかしないよ」

   

 「ねぇ、グラント」

 

 「何だ?」

 

 

 

 

 

「マルコを殺したのが私だとしても、恨んでない?」

 

 

 

 「・・・・・・今、何て」

 

 

 

 突然の告白に、俺は思わず立ち上がる。

 そして弱々しい笑みを浮かべるアニへ一歩、歩み寄ろうとした時だった。

 

 

 

 

 バチッ

 

 

 

 

 瞬間、部屋の中にいた筈の俺達の視界に広がっていたのは───何処までも続く砂漠と星空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ここまでお読み下さりありがとうございます。

 今後の更新ですが、次回本編を更新した後、番外編を二回に分けて投稿します。
 番外編は二日続けての投稿になりますので、楽しみにして頂ければ幸いです。
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