進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する 作:ダブドラ
更新が遅くなり申し訳ありません。
体調不良により本来決めていた更新予定に間に合いませんでした。
ちなみに今回は構成の都合で少し短いです。
また、今回からちょくちょく後書きにとある要素があったりしますのでお楽しみに。
三話 入団式
──847年某日・トロスト区近郊
遂に、この日が来た。
リコさんの特訓と筋トレ中心の自主鍛錬をこなす事一年。俺は前より更に身長が伸び、背中には交差した二本の剣を象った徽章を背負っている。
そう。訓練兵団の入団初日を迎えたのだ。
今俺は新品の兵服に身を包み、指示に従って訓練場に並んでいる。周りを見ると俺と同じ格好の男女が等間隔に並んでおり、中には面識はないが知っている顔が見えた。
あれは……アルミンか。コニーとサシャもいる。
振り向く事は出来ないが、おそらく他の面々は俺より後ろにいるんだろう。
それにしても、夢を見ているような気分だ。
漫画やアニメで何度も見たこの場に自分がいるなんて。
原作の登場人物というだけなら、リコさんやライナー達がいるし、およそ二年に渡って交流もした。
だが今、原作で描かれたこの場面に自分がいる事で、物語の一員になるのだと強く思える。
・・・・・・おっと、教官が来た。どうやら時間らしい。
「全員注目!!」
現れたのは勿論、キース・シャーディス教官だ。俺も周りも皆、教官の号令に合わせて休めの姿勢になる。
「これより、第104期訓練兵団入団式を行う! 私が運悪く貴様らを監督する事になった、キース・シャーディスだ!」
そして、家畜以下の俺たちを一端の兵士に鍛え上げる。と言ってシャーディス教官は挨拶を締めくくった。
次はいよいよ通過儀礼だ。
「おい、貴様は何者だ!」
シャーディス教官は予告もなく兵士の前に立つとそう力強く問う。確かそれまでの自分を否定し、真っさらな状態からやり直させる為だったか。
そうして兵士に適した人材の育成を行っていると何かの冊子で読んだ事がある。
それからアルミン含む殆どの兵士に罵詈雑言が浴びせられ、遂に俺のいる列へと差し掛かった。
一人、二人と儀礼を終えて後ろを向いていく。
やがて、俺の隣にいる男の番が終わりその時が来た。
「・・・・・・」
シャーディス教官は俺をじっと睨みつける。俺も何とか表情を保って目を合わせると、何と教官は俺の前を通り過ぎて行ったのだった。
やはり、原作で読んだ通りだ。
実は今期の通過儀礼は免除される場合がある。
と言っても原作読者なら知っているだろうが、二年前の地獄を見てきた者は儀礼をする必要なしと判断される。
巨人の恐怖を目の当たりにしても尚、戦う意志を持つ者達は“面構えが違う”という訳だ。
その後、原作で見た通りの流れで通過儀礼が行われ、入団式は幕を閉じた。
◇
──その日の夜
入団式を終え、訓練の内容や兵士寮の過ごし方などの基本的な説明を聞いた俺達は食堂で夕食を摂っていた。
ちなみに食事は開拓地にいた頃からお世話になっているパンとスープだ。味は据え置きだが量が増えているだけ感謝しないとな。
「あの、ここ良いかな?」
俺がスープを口に運ぶのと同時に、正面から誰かが話しかけてきた。
「ああ、どうぞ・・・って君は」
顔を上げた俺の前にいたのはアルミンだった。他に誰か連れがいる訳ではなく、一人のようだ。
「通過儀礼の時に聞こえてたかもしれないけど改めて、僕はアルミン・アルレルト。よろしく!」
「俺はグラント・ベルツァー。こちらこそよろしくな」
互いに自己紹介を済ませ、俺とアルミンは握手を交わす。
いつ話しかけるようかと考えていたが、まさか向こうから来てくれるとは。
「あのさ、グラントは何処の出身なの?今朝教官に何も聞かれてなかったよね」
「アルミンと同じだよ。俺もシガンシナ区だ」
「えっ、じゃあ君もあの日・・・」
「ああ。あの場にいた」
俺がそう答えると、アルミンは手に持ったスプーンを机上に落としながら慌て出した。
「っごめん!嫌な事思い出させてたら、その」
「気にしないでくれ。俺なら大丈夫だ」
そしてどうにかアルミンを落ち着かせると、俺達は一先ず食事を進めた。
それから数分後、残りのスープを啜ろうと椀を持ち上げた時。
「超大型巨人? ああ、皮膚が無くて口がでかかったぞ」
ふと耳に入った聞き覚えのある声に、全身が強張る。声のした方に視線を向けると何やら人集りが出来ていた。
その中心にいるのは原作の主人公であるエレン・イェーガーだ。
確かウォール・マリア陥落時に現れた巨人について質問攻めにあっているんだが、超大型の名前が出たことでつい反応してしまった。
何せ今は俺がその正体なのだから、過敏になるのも仕方がないだろう。
「じゃあ、普通の巨人は?」
それから問答が続き、今度は同期の一人がそうエレンに問いかける。
「いけない! エレンにそれを聞いちゃ・・・!」
直後、アルミンが青ざめた顔で呟く。
俺も急いでエレンの方を見たが、既にエレンは手で鼻と口を抑え、吐き気を堪えているかの様だった。
「皆もうこの辺にしよう!エレンにも言いたくない事はあるだろうからさ!」
すると、人集りに混じっていたそばかすの少年、マルコが声を上げた事で周りが静かになる。
だがその静寂はほんの僅かな間しか保たなかった。何故ならエレンが机に自らの拳を叩き付けたからだ。
「え、エレンすまん。色々き」
「違うぞ、巨人なんざ大したことねえよ! 俺たちが立体機動装置を使いこなせるようになれば、あんな奴ら敵じゃねえ!!」
謝ろうとしたコニーを遮り、食べかけのパンを片手にエレンは威勢よく言い放つ。
「それにさっきのは感極まっただけだ! 俺は調査兵団に入って全ての巨人を駆逐してやるんだからな!!」
そして堂々と言い切ったエレンを遠目に、俺はスープを平らげる。
その一方でアルミンはというと、そんなエレンを見ながら安堵と心配が混ざったような表情をしていた。
「あ、今叫んでる彼はエレンといって僕の幼馴染なんだ」
「幼馴染ってことは、エレンも?」
「うん。シガンシナ区の出身だよ。」
「確かエレンも通過儀礼は免除されてた。つまりは二年前の地獄を見てきたって事だよな?」
俺が言うとアルミンは静かに頷く。
「詳しい事は僕の口からは言えないけど、エレンは何というか、思い立ったら飛び出していくタイプだから心配なんだ」
「・・・なんだか分かる気がする」
そんなこんなで駄弁っていると、食堂に鐘の音が鳴り響いた。教官が言うには、これが食堂が閉まる合図だ。
「そろそろ時間みたいだね」
「だな。俺達も行こうか」
少ししてから、俺達は食器を片付けて外へ出る。
そしてそのまま階段を降り、寮への道を辿ろうとした時だった。
「おーい、アルミン!」
後ろから聞こえてくる声に、アルミンは足を止める。俺も一緒になって振り返ると、声の主であるエレンともう一人、黒髪の少女がその隣に立っていた。
「エレン!ミカサも良い所に!」
「アルミン、隣にいるのは誰?」
黒髪の少女ことミカサが首を傾げながら言うと、アルミンが嬉々と俺の事を紹介する。
そして一通り説明が終わったと思ったら、露骨に嬉しそうな様子のエレンが近づいてきた。
「驚いたぜ!グラントも同じ出身だったなんてよ」
「それは俺もだ。二人とも通過儀礼を受けてないなと思ったら、まさか同郷だとは思わなかった」
「私も驚いた。アルミンが知らない人と楽しそうに食事をしていたから」
「どういう意味の驚きなのか気になるけど、聞かないでおこうかな・・・・・・」
蝋燭の火が照らす夜道を、俺達は喋りながら歩く。
それにしても出身をシガンシナ区に出来て良かった。そもそもこの世界に戸籍なんてないし、ライナー達が潜入出来てる時点でその辺りの緩さは想像できたが。
おかげでエレン達と知り合えたし、思ったより距離感も縮まったように感じる。
そして俺は、原作ファンからすれば夢のような一時を過ごすのだった。
◇
その後寮に戻った俺達は、入口前でミカサと別れ男子寮へ。
ちなみに部屋はエレン、アルミン、ライナーと同じで、簡単に言えば原作でベルトルトのいた所が俺にすり替わっているような形だ。
それから、何度目かの自己紹介を挟み、直ぐにエレン達は眠りについた。明日からは本格的に訓練が始まるし、しっかり寝て備えるんだそうだ。
俺はというと、便所に行くと言って部屋を出た。
寮の外に出ると、少し冷たい夜風が頬を撫でる。既に消灯時間を過ぎている為、街灯代わりの蝋燭は消されており、辺り一面真っ暗だ。
俺は真っ直ぐ便所に向かい用を済ませる。そして寮に戻ろうと思ったのだが、ふと足を止めて空を見上げてみる。
其処には、淡く輝く星が一面に広がっていた。
俺が継承の事を知った“あの場所”を連想するような、コンクリートジャングルとなった現代日本では先ず見られない光景に息を呑む。
リコさんとの特訓の後、丘の上に座って空をよく眺めていたが、今日は一段と美しい。
さて、教官に見つかる前にもど
「シャーッ!!」
・・・・・・何だ?
突如聞こえてきた獣の呻き声のような声。俺は思わず、声がした方へ向かっていた。
そして辿り着いたのは食堂前。壁から顔を出し、手洗い場のある小さなスペースを覗いてみると、三人の人影が見える。
その正体は四つん這いになりながらパンを貪り食うサシャと、それを引き気味に見守るクリスタとユミルだった。
サシャは原作通り芋を盗み食いした事で走らされていた筈だが、この時間まで走っていたのか。
原作じゃ食堂の場面から、どの程度時間が経っているのかが定かじゃないので失念していた。
とはいえこれは丁度良い機会ではあるか。だがここで三人と会話して教官にバレてしまうとマズい。さてどうしようか・・・・・・。
「オイ、誰だ」
「っ!?」
そんな風に考えていた俺だったが、現時点をもって選択肢が一つになった。
ユミルに気づかれたのだ。
その鋭い眼光がしっかりと俺に向けられている以上、出ない訳にはいかない。
というか何でバレた・・・?
「あ? ・・・・・・何だよ、教官じゃなかったのか。ったく驚かせやがって」
俺が姿を見せると、途端にユミルは眼光を納めてため息を吐く。
「えっと、貴方は・・・?」
「今日から入団したグラント・ベルツァーだ。今は便所から寮に戻る所だったんだが、妙な声が聞こえてここに来たんだよ。驚かせて悪かった」
「謝らなくて良いよ! 私はクリスタ・レンズ。宜しくね、グラント。・・・所で妙な声って」
「どうせあの芋女の声だろ。今も獣みてえな声出してるぜ」
そう言ってユミルが指差す先では、尚もサシャが革製の水筒を片手にパンを貪っている。
まぁ、死ぬ寸前まで走った直後だと考えればああなっても仕方ない・・・とは思う。
「もう、サシャってばあんなにがっついて・・・。もっとゆっくり食べて。喉に詰まらせちゃうよ」
「ングッ、ぷはぁっ! ・・・・・・ふうっ。すみません、今朝ぶりの食べ物だったので、つい」
すると、クリスタはパンを水で流し込む様にして食べ切ったサシャを優しく諭していた。
何故だろう、一瞬クリスタが天使に見えたような・・・・・・いや、気のせいだな。
「なぁ、一つ聞かせてくれ」
「何だ?」
ふと、先程まで静かにしていたユミルが口を開いた。
「お前も“良い事”をしに来たって訳じゃないよな? 実は便所ってのは嘘で、本当はそこの芋女が心配で来た、とか」
そんなユミルの質問に、サシャの表情がぱあっと明るくなる。多分パンを貰えると思っているんだろう。
「いや、本当に便所に行きたかっただけだ。サシャの事は心配してたけど、生憎パンは持ってないぞ」
正直心苦しいが、俺は事実を述べる。
するとサシャは肩を落とし、その表情はみるみる暗くなっていった。
「そう落ち込まないでくれ。今度の夕食で俺のパンを分けるからさ・・・・・・ってサシャ?」
見ると、サシャはクリスタの膝を枕にしてうつ伏せになっていた。
「疲れて寝ちゃったみたい」
「無理もない、か」
サシャの寝顔を眺めながら、俺とクリスタは笑みを浮かべる。おそらく、食べるだけ食べて体が限界を迎えたたんだろうな。
俺がそんな風に思っていると、突如ユミルがサシャに歩み寄り、その体を背負った。
「ユミル、何してるの?」
「何ってそりゃ、コイツをベッドに運ぶんだよ」
「じゃあ、貴方も“良い事”するの?」
クリスタの問いかけに対して、ユミルは僅かに口角を上げてこう返した。
「違うな。こうすることでコイツに貸しを作ってるんだ。バカだが使えそうだしな」
「なぁ、俺は手伝わなくて良いのか?」
ユミルがそのまま寮へ向かおうとしていたので、俺はあえて声を掛けてみる。
「何でそんな事を聞く?」
「さっきまでの話を聞いていて思ったんだよ。ユミルなら偶々居合わせた俺の事も利用しそうだなって」
「お前が“良い事”をしに来てたんなら、そうしてるかもな」
サシャを背負ったまま、ユミルは俺の横を通り過ぎようとする。
「そうそう、実はお前から私と似たような臭いを感じてな。まぁ詮索するつもりはないし、せいぜい仲良くやろうぜ、グラント」
そして顔と顔が真横に並ぶタイミングで、ユミルはニヤリと口元を緩めながら俺にそう言った。
そのまま去っていくユミルを追おうと、クリスタも立ち上がって歩き出す。
「それじゃおやすみなさい! また明日ね!」
「ああ、また明日」
途中で振り返り、手を軽く振ってみせるクリスタに俺も手を上げて応える。
こうして三人がいなくなり、静まり返った食堂前で俺はユミルの発言を思い返していた。
・・・・・・似たような臭い、か。
確かに、俺もユミルも巨人にされた人間で、運良く人に戻ることに成功し壁内に入った者同士だ。
だが、もしそれを感じとったのだとしたら警戒しておく必要が出てくるな。
加えてユミルがここにいるという事は、即ちライナー達が潜入する流れが概ね原作通りだという事でもある。となるとライナー達の動きも変わってくる筈。
明日からは一層気を引き締めないとな。
こうして、俺は入団初日を終えたのだった。
<現在公開可能な情報>
訓練兵グラント・ベルツァーの情報①
氏名:グラント・ベルツァー
性別:男
年齢:13歳(入団時点)
身長:178cm
体重:77kg
出身地:シガンシナ区(自称)