進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 今回で訓練兵団編は最後となります。

 面白いと思って頂ければ幸いです。


七話 合同訓練、そして

 

 訓練兵になって半年。

 

 俺は今日、休暇にも関わらず兵服に立体機動装置のフル装備で訓練場の森にいる。

 

 

 

 「今日はよろしくね、グラント!」

 

 そして目の前には俺と同じくフル装備のクリスタが立っている。

 

 何故俺とクリスタが一緒にいるのか?

 

 

 

 その理由は二日前の夜に遡る。

 

 

 

 

 ◇

 

 対人格闘訓練でアニに敗れた俺は、エレンとアルミンに誘われ夕食を摂った後、三人外で訓練の話をしていた。

 

 兵站行進や崖登りなどの実技、兵法や巨人の生態などの座学に馬術。半年の間に一通りの事は行われたが、特に崖登りで死にかけた話は盛り上がったな。

 

 

 それから二人が寮に戻った後、ふと食堂の扉が開き、そこから姿を現したクリスタに呼び止められたんだ。

 

 

 「あのさ・・・・・・今、良いかな? グラントに話があって」

 

 

 クリスタは緊張気味にそう切り出してきた。

 

 

 「ああ、大丈夫だ。それで話って?」

 

 「うん、それなんだけど・・・・・・もし良かったら、私を、鍛えて欲しいの!」

 

 

 それから俺は事の詳細を聞いた。

 曰く、以前行われた立体機動の訓練で足を引っ張る結果になってしまった事が理由との事。

 

 その時はユミルが助けてくれた事で何とかなったが、何時までも助けられる自分でいたくない。むしろこれからの訓練でユミルや皆を驚かせられるくらいに強くなりたい。

 

 そこで女子寮の同室メンバー*1に相談した結果、俺に教えを請う事にしたそうだ。

 

 

 「なるほどな・・・・・・わかった。俺で良ければ引き受けるよ」

 

 「本当!? よろしくお願いします!」

 

 

 かくして俺はクリスタの特訓に付き合う事になった。          

 だが二人きりだとあらぬ誤解を産むリスクがあるし、ユミル辺りはまず良しとしないだろう。

 

 なので他にも誰か誘わないか、と俺は提案したのだ。

 

 するとクリスタは二つ返事で了承してくれ、加えて声掛けを手伝うと言ってくれた。

 

 俺も俺で男子勢に声を掛ける事の他、シャーディス教官に訓練場を使用する許可を取りに行った。

 

 「ほう、それは感心だな。許可しよう。となればベルツァー、当日は訓練場に行く前に私の元へ来い。整備室の鍵を渡しておく。するかは分からんがガスの補給等はお前達で行ってもらうぞ」

 

 と、シャーディス教官はあっさり許可をくれた上、鍵を貸すとまで言ってくれた。

 

 ・・・・・・何かやらかした場合は自己責任だと暗に示されてもいるが。

 

 

 

 

 

 そして当日となった今日。

  

 俺とクリスタは一足先に訓練場に来たという訳だ。ちなみに鍵もしっかり受け取ってある。

 

 

 

 

 「他の皆は?」

 

 「もうそろそろ来るんじゃないかな・・・あ!」

 

 

 手を額に当て、屋根のようにしながら辺りを見渡すクリスタ。その視線の先ではユミルがこちらへ向かってきていた。

 

 

 「よぉクリスタ! 今日もかわいいな!」

 

 「ちょっ、ふふっ、ユミル、くすぐったいよぉ」

 

 

 ユミルは到着するや否やクリスタの頭をワシャワシャと撫でている。

 

 前々から思っていたがまるで姉妹のようだ。横で見ていて俺も自然と口元が緩んでしまう。

 

 

 

 

 

 「待たせたな」

 

 「ゲッ」

 

 と、続いてやって来たのはライナーだ。ユミルは露骨に嫌そうな顔をしているが・・・・・・。

 

 

 そういえばあの日、クリスタと話した後に寮で滅茶苦茶詰め寄られたっけ。

 本人から用事があると言われて先に寮に戻っていたんだが、ライナーの奴、戻って来た途端に掴みかかってきたんだ。

 

 原作で勝負を決めようとした時ばりの剣幕だったから、正直ちょっと恐怖を覚えた。

 

 「おいゴリラ、クリスタに何かしようとしてんじゃねえだろうな?」

 

 「俺がそんな事する訳が無いだろう。第一今日はグラントの手伝いが主なんだ。立体機動のアドバイスはするが、下心なんて物は持ち合わせてない」

 

 「なぁライナー。だったら、お前の鼻の下が伸びてるのは何だっていうんだ?」

 

 「なッ!? ここここれはだなぁ・・・」

 

 

 俺が腕を組みながら指摘すると、ライナーは伸び切った鼻の下を隠して動揺を顕にする。これにはクリスタも引き気味でユミルの背に隠れてしまっている。

 

 

 

 「そ、そうだ。他の皆ももう来てるぞ。エレンはまだ寝ているから、ミカサが引き摺ってくると言っていた」

 

 

 

 すると、ライナーが言う通り続々と人が集まり出した。

 

 来たのはアニ、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、ミーナ、トーマスだ。

 

 

 ・・・・・・原作の主要メンバー揃い踏みだな。

 

 

 ちなみにミーナとトーマスはエレンとアニがそれぞれ仲良さそうにしている為、その繋がりで偶に話したりしている。

  

 

 「なあ、死に急ぎ野郎は来てないのか?」

 

 「みたいだ。ライナーが言うにはミカサが起こしに行ったらしいが」

 

 「はぁ!? アイツまた・・・あンの畜生め羨ましいッ!!」

 

 案の定、エレンの不在をジャンが突いてきたので正直に答えると、ジャンは心の声をダダ漏れさせながら荒れ始めた。

 

 というかまたって、前にも何かあったのか?

 

 

 

 

 

 「ごめんなさい、遅くなった」

 

 「っおいミカサ! もう離せって!」

 

 「ミカサ、皆見てるからそろそろ・・・・・・」

 

 

 それから間もなく、エレンの腕を摑んだミカサと苦笑いを浮かべたアルミンが到着。

 

 

「痛っつ、お前強く握り過ぎだ!」

 

 「エレンが寝坊したからでしょ。今日は皆で訓練すると言ったのに」

 

 「だからって寮まで起こしに来るかよ・・・・・・」

 

 「こうでもしないと起きないと思ったから」

 

 

 エレンは右腕を押さえながらミカサを睨みつける。するとジャンがそこに割って入り、エレンの胸ぐらを強く摑んで叫んだ。

 

 

 「おいテメェ! またミカサに御守りしてもらってんのか?あぁ゙!?」

 

 「何だよ、ジャン! やめろよ服が伸びちまうだろうが!?」

 

 「うるせえ! ふざけんなこの野郎羨ましい!!」

 

 

 原作で見たような喧嘩が繰り広げられ、周囲が静まり返る中、唯一声を上げた人物がいた。

 

 クリスタだ。

 

 

 

 「やめてよ!! 」

 

 

 その一声にジャンとエレンもたじろぎ、静かになる。

 

 

 「これから皆で訓練するんだから、喧嘩しないで!」

 

 「・・・・・・チッ」

 

 「っ悪い、クリスタ」

 

 

 

 

  

 クリスタの言葉によってジャンが渋々手を離した所で、続いて俺も全員に向けて呼びかける。

 

 諸々伝えておくことがあるからだ。

 

 

 「喧嘩も収まった所で・・・皆! まずは来てくれてありがとう! 訓練を始める前に話があるから、よく聞いてくれ」

 

 そして、俺は整備室の事を説明し、合同訓練が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 「それじゃあ、まずはグラントの動きを見せて貰ってもいいかな?」

 

 「え、俺?」

 

 「うん! お手本というか、皆が参考に出来たらなって」

 

 

 ・・・・・・弱ったな。ずっとやってる所を見てアドバイスするだけだと思っていた。

 

 しかも今の話を聞いた途端、エレンやアルミンが食いついてきたらしく俺に視線を送ってきているし、これはやるしか無さそうだ。

 

 

 「正直参考になるかは保証できないが、やれるだけやろう」

 

 

 

 俺は頷きながらグリップのみをそれぞれの手に持ち、深呼吸をする。

 

 次第に皆の視線が集まって、緊張が高まっていく。

 

 

 よし、行くか。

 

 

 

 奥にいる目標(模型)を真っ直ぐ見据え、俺は立体機動に移った。

 まずは手近な木の幹にアンカーを打ち込み、ガスを少し蒸して上昇。

 

 身体が落下し始めるまでの間に周囲を確認し、目標と木の位置関係を把握すると、直ぐに次の木へアンカーを射出し前へ突き進む。

 

 目標まで残り三分の一位まで近づいた所で刃を装着し鞘から抜き放つ。

 

 そこから一気に降下し、地面スレスレで右斜め前の木へアンカーを刺して加速。それから木にぶつかる手前でトリガーを引き、右側のみガスを噴射。

 

 多少無理やりだが方向転換すると、正面に見えた木にアンカーを再度刺し、今度は強めにガスを蒸かす。

 

 「っ、オオッ!」

 

 そして、目標の足元を横断する途中で刃を振るい、足首に当たるクッションを削り取った。

 

 

 直後、その勢いのまま進行方向上の木に突っ込むと、幹を蹴りながら上体を捻って後ろを向く。

 そうして振り返りながらうなじへアンカーを刺し、一直線に急所へ飛ぶと、再び刃を振るうのだった。

 

 

 

 

 「・・・・・・よっ、と」

 

 

 

 実演を終え、木の上から降りると同時に皆が駆け寄ってくる。

 

 「オイ、グラントお前また速くなったか?」

 

 「そうか? まぁ半年も経てば、少しは成長するさ」

 

 「この前の訓練でも思ったけど、やっぱり綺麗な動きだよね。無駄が無いっていうか・・・・・・」

 

 「この森だからこそって所もあるが、そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

 

 速くなった、か。

 それは多分、この肉体のお陰だろう。

 

 前にも言ったが、多少無茶な動きでもイメージした通りに動ける強さがある。

 

 前世の俺とはまるで出来が違う。

 

 だからこそもっともっと鍛えて、来る日に備えるんだ。

 

 

 

 「なぁグラント、どうやったらそんな風に動けるんだ?」

 

 「僕も気になる!見てて思ったんだけど、ガスの蒸し方が違うのかな?」

 

 「アルミンの言う通りだ。ガスをそこまで蒸かさなくても、案外充分な速度は出る。後は全身を目いっぱい使う事かな」

 

 

 これは自論だが、アンカーを巻き取って移動する際、下から上に向かって振り子のように動くと一度の跳躍でより長く移動ができる。

 

 後は片側だけガスを蒸かすことで回転を加え、急な方向転換に対応することで速度をある程度維持できる。 

 

 反面、加減は難しいが。

 

 

 「なるほど・・・・・・確かにそれならガスの消費も抑えられるね」

 

 「こうしちゃいられねぇ! アルミン、早速実践だ!」

 

 

 

 

 

 

 俺がエレンとアルミンの質問に答えた後、各自で訓練が行われた。

 その間、俺は自分でも訓練をしつつ、呼ばれたらその都度アドバイスをしていった。

 

 

 

 その後、何故かアニが目を合わせてくれなかったり、それを見ていたミーナが目を輝かせて詰め寄ってきたりという事はあったものの、問題なく訓練は進んだ。

 

 

 

 

 二時間弱が経った頃、クリスタに頼まれて体の使い方を見ることになった俺は、ライナーとユミルと共にそれを見守っていた。

 

 

 「ふーっ、よし!」

 

 

 と、クリスタは駆け出しアンカーを射出。木の枝を伝って移動していく。

 そして所々ぎこちないながらもしなやかな動きで、確実に目標へと迫る。

 

 

 「流石はクリスタだ。この短時間で見違えるほど良くなっている」

 

 「そりゃそうさ。私のクリスタだからな」

 

 

 隣の二人はうんうんと首を振って感心しているが、確かに良くなっている。

 クリスタは周囲より小柄である分、筋肉量などで不利が生じるが、今は並の兵士と同等以上だ。

 

 密かに身体づくりしていたんだろうか。

 

 

 

 ・・・・・・その時だ。

 

 

 

 「なっ!?」

 

 

 突如クリスタが落下し始めたのだ。一体何が起きた?

 いや、今は考えている場合じゃない。

 

 俺は誰よりも早く飛び出していた。

 

 普段より強くガスを蒸し、急加速してクリスタの下へ向かい、その身体を抱きかかえる。

 

 それから片手のグリップを操作し、片側のアンカーを枝に刺してぶら下がり、ゆっくりと地上に降り立った。

 

 

 

 「怪我はないか?」

 

 「うん、大丈夫。ありがとう、助けてくれて」

 

 「ああ、間に合って良かった」

 

 

 抱えていたクリスタを下ろすと、ユミルが血相を変えて走り寄って来たため俺は横に退いておく。

 

 「クリスタ!!」

 

 「ちょっ、ユミル!?」

 

 「何があった?いきなり落ちるなんてよ・・・・・・。本当焦ったぜ」

 

 「それが、分からないの。トリガーを引いた筈なのにアンカーが出なくて」

 

 

 その言葉を聞いて、俺はクリスタの装置を見回してみた。だが外観に大きな変化は見受けられない。

 

 恐らく内側に異常があるんだろう。だが俺に内部構造なんて分かるわけもないので、大人しくクリスタを整備室に連れて行きシャーディス教官を呼んだ。

 

 

 「そうか、レンズの装置に故障の疑いがあると」

 

 「はい。グリップの方は問題なく動作するので、恐らくですが装置本体に原因があるかと」

 

 「わかった。こちらで見てみるとしよう。ベルツァーは訓練に戻れ」

 

 「はっ!」

 

 

 

 俺は教官に事情を説明すると、敬礼をしてから訓練場へ戻るのだった。

 

 

 

 

  

 「グラント! クリスタは」

 

 「多分装置の故障だ。今シャーディス教官に見てもらってる」

 

 「そうか。あーそれとだな・・・・・・」

 

 「何だ?」

 

 

 戻って直ぐにライナーに事情を伝えていた俺だが、そのライナーの顔が段々引きつっていく。

 

 振り返ってみると、そこにはいつも以上にムスッとしたアニが。

 

 

 「えーっと、アニ・・・?」

 

 「私も、見てもらっていい?」

 

 尚も表情を崩さず、もうぶつかるくらい近くでアニはそう言ってきた。

 

 

 

 「いや、アニは見る必要無いと思うぅ゙っ!?」

 

 「見て」

 

 素直に褒めようとしたら、腹にアニの拳を貰った。気を抜いていたから本当に痛い・・・・・・。

 

 

 「わ、分かったよ」

 

 「それじゃ、やるから」

 

 

 あれ、今顔赤くなって・・・・・・いや、まさかな。ともかく見なければ。

 

 

 「全く、アニの奴素直じゃねえな」

 

 「え?」

 

 「何だよ。まさかお前、気付いてないのか?」

 

 横から現れたユミルの一言に、思わず目を向ける。いや、そんな事があり得るのか?

 確かにこの半年、対人格闘訓練じゃ毎回のように誘ってきたし、この前なんて夕食にも誘われたが・・・。

 

 

 「いやその、マジなのか?」

 

 「マジだろ。寮で話した時とかは結構分かりやすかったぜ。今もしっかり妬いてるみたいだしな」

 

 「あのアニが・・・・・・」

  

 

 

 知らなかった。まさかこうなるとは。普通であれば喜ぶ所だろうがそれはまだ駄目だ。

 

 時が来るまで触れないようにしなければ。俺の目的の為に。

 

 

 

 

 その後の訓練は、終始心が落ち着かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 850年。

 

 俺達は、104期訓練兵団を卒業した。

 

 

 

 

 

 

*1
ユミル、ミーナ、アニ





 <現在公開可能な情報>

 「巨人の模型」

 立体機動の訓練に用いられ、うなじと足の2箇所に斬撃練習用のクッション材が取り付けられている。

 他にも土台を回転させる事でより実戦に近い訓練を行うことができる。

 とある訓練兵の、「実際の巨人は二足歩行なのだから足の斬撃箇所は二箇所あるべきだ。」という発言が教官の耳に入った結果、調査兵団第四分隊協力の下改造が施された。

 これにより104期の兵士たちは例年より成績が向上したとか。
 


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