進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する   作:ダブドラ

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 新作のプロットを練っていた結果更新が深夜になってしまい申し訳ありません。

 今回からトロスト区での戦いに入ります。

 面白いと思って頂けたら幸いです。


トロスト区の戦い編
八話 襲来


 

 

 

 

 

 「これより、104期訓練兵団解散式を行う!

 

 

 

 全員、心臓を捧げよ!!

 

 

 

 

 篝火に淡く照らされた広場に白髪の教官の声が響く。

 

 850年。三年に及ぶ訓練を乗り越えた俺達は、遂に卒業の時を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 「最初に成績上位者十名を発表する!」

 

 その声と同時に、集団の前に並ぶ俺を含めた十名の兵士たちの表情が強張る。

 

 

 俺たちの顔をチラリと見た後、白髪の教官は順に名前を読み上げていった。

 

 結果から言うと俺の順位は二位だ。勿論ミカサが首席で、本来二位だったライナーは三位。あとは原作通りで変動はなかった。

 

 正直に言うとアニが三位じゃないかと思ってたんだが、流石に覆るには至らなかったか。

 

 

 「今名前を呼ばれた十名が今期の成績上位者である!そして、上位者には憲兵団を志願する事が許される! 」

 

 

 憲兵団。

 

 現代で言う警察組織だ。基本的に内地での勤務になる為、俺が入るメリットは皆無。

 そもそも調査兵団に入らない事には巨人の力を活用する事が出来ないからな。

 

 

 「だが、上位に入れなかった者達にも選択肢はある!自分がどの兵団に入りたいのか良く考えるように!」

 

 

 それから教官のお話を聞きつつ、俺はこれからの事を考える。

 

 

 正式に訓練兵でなくなる日、即ち勧誘式が行われる日は調査兵団が戻って来た後。

 つまりまだ日数がある。原作と同じであればその間にあの一件が起こると予想されるが、超大型が俺に宿っている以上、壁を破壊するのは十中八九ヤツだ。

 

 だが本当にヤツが動くかどうか分からないし、場合によっては事件自体が起こらない事もあり得る。

 何れにしても、エレン・イェーガーの巨人化は必須だ。

 

 これがきっかけでアニは本格的に動き出したのだから。

 

 

 ちなみに俺自身は囮になっても大した効果は見込めない。何故なら俺が巨人化した時点で奴らは詰みだからだ。

 

 超大型の爆発は鎧以外では基本耐えられないだろうし、連中が巨人化する前であればその鎧も意味を成さなくなる。

 

 つまり敵からしてみれば、俺は歩く核爆弾という訳だ。無闇に傷つければ瞬く間に起爆してしまう為、むしろ近づくべきではないとすら思われているかもしれない。

 

 その反面、市民がいる街中なら巨人化できないと踏んでくるかもしれないが問題はない。

 爆風無しで巨人化する事は出来るし、もし事が起きれば兵士達が飛んでくる。巨人化については練習すらままならないのでぶっつけ本番に近い。でも、何でか出来る気がするんだ。

 

 

 

 「所属兵科は後日行われる勧誘式で決めてもらう!それでは解散式は以上だ!解散!」

 

 

 

 そうして考え事をしている内に、解散式は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「グラント、二位おめでとう!」

 

 

 解散式の後、食堂で俺はクリスタに誘われ一緒に夕食を摂っていた。

 

 ちなみにライナーとユミル、アニも一緒だ。

 前者二人については、理由は言うまでもないだろう。後者に至っては気づいたら隣に座っていた。

 

 ・・・正直驚いて声が出そうだった。

 

 

 

 「ありがとう、クリスタ。それと十位おめでとう!」

 

 「・・・・・・うん、ありがとう」

 

 

 それから俺はクリスタにお祝いの言葉を返すが、クリスタはあまり嬉しくなさそうに見える。

 

 無理もない、か。

 

 

 「どうした? 成績上位だってのに顔が暗いぞ?」

 

 すると、ライナーが声を上げる。

 ・・・ユミルに睨まれても一切気にしていない辺り、流石の図太さだ。

 

 

 「正直、私が十位以内に入る訳が無いってずっと思ってたの。今だってそう。私がユミルより上だなんて信じられる訳、ないじゃん・・・」

 

 「信じるも何も、それが結果なんだ。それに私は対人格闘なんざ真面目にやって無かったが、クリスタはどの科目も必死で取り組んでただろ?その差が出たんだよ、きっとな」

 

 「ユミルの言う通りだ。それに、クリスタの努力を知っている俺からすれば何もおかしくないと思うぞ」

 

 「でも・・・・・・」

 

 

 俯いてしまったクリスタにライナーとユミルがフォローを入れるが、それでもクリスタは俯いたまま。

 

 どうやらまだ迷っているようだ。

 

 

 

 「今は、自分を褒めても良いんじゃないか?」

 

 「・・・えっ?」

 

 「納得がいかないのは分かるが、それじゃ自分自身の頑張りを否定することになるんだぞ? 足手まといになりたくないからって、変わろうとしたのはクリスタ自身じゃないか」

 

 「あ・・・・・・!」

 

 「俺もクリスタが頑張っている所を側で見てきたから、それが報われて嬉しいんだ」

 

 

 俺が言うと、クリスタは段々と両の目を見開く。

 

 そして、その澄んだ慧眼で俺達を見回すと、僅かに口元を緩めて言った。

 

 

 「ありがとう。やっぱりまだ納得は出来ないけど、せめて今は、今だけは胸を張ってみる」

 

 「それでこそ私のクリスタだ。下向いてるより、笑ったほうが何万倍も似合ってるぜ」

 

 「ああ、その意気だ! アニもそう思うだろ?」

 

 「え・・・わ、私は・・・」

 

 和やかな雰囲気になった事で、俺も釣られて笑みが溢れる。

 

 だが、ライナーの一言にまさか話題を振られると思っていなかったであろうアニは冷や汗をかき、明らかに動揺してしまっている。

 

 

 「その辺にしろよ。アニも困ってる」

 

 「いや、俺はただ、アニの奴が何も話して無かったからきっかけをと思ったんだが・・・」

 

 「というか、私たちの方こそごめんね。アニもいるのに無視して話しちゃってた」

 

 「謝らなくていいよ。それと、ライナーのは驚いただけだから」

 

 

 一貫して無表情のままアニはそう言った。

 

 そういえば、今日までの訓練でアニが表情を変えたのは対人格闘の時くらいらしい。アルミンから聞いたんだが・・・・・・何故知ってるのかは深追いしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 「そういえば、クリスタは所属兵科はもう決めたのか?」

 

 「それなんだけど、実はまだ迷ってて」

 

 「何だよ、憲兵団にしないのか?」

 

 

 クリスタの答えにユミルが驚いたように問う。

 

 当然の質問だ。上位に入ったなら大多数が憲兵団を選ぶだろう。原作でも主要メンバーの半分以上が、最初は憲兵団を志望していた。

 

 

 「うん。本当にそれでいいか、ギリギリまで考えてみようと思って」

 

 「そうかよ。ま、もし憲兵団以外を選ぶなら私も一緒にするからな」

 

 「え、ユミルはユミルが行きたい所を選べばいいのに」

 

 ユミルの言葉にクリスタは驚く。だがユミルはさも当然とばかりに笑みを浮かべている。

 

 

 「ああ。だから行きたい所を選んでるぜ。クリスタと同じ兵団をな」

 

 「・・・・・・そっか」

 

 

 笑い合う二人を前に、俺は少し考える。

 

 もしかしたら、ユミルが壁外へ行くことを阻止できるのではないかと。

 ユミルはほぼ間違いなく巨人の力を持っている。そしてそれを明かす日は、それまでの俺の行動によって原作とは全く違う流れになる筈だ。

 

 そうなると何が起きるかわからなくなるが、逆に言えば原作でユミルが辿った運命を変える事だって出来るだろう。

 

 全ては、俺次第なんだ。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 教官の指示で、俺たち104期訓練兵は班に分かれて整備任務にあたっていた。

 

 

 俺は資材運搬班に割り当てられ、今は駐屯兵団本部の倉庫で任務をこなしている。

 

 ちなみに俺の他には、ハンナとフランツのバカップルにナックが同じ班だ。

 ナックとは余り話した事はないが、俺は原作知識として知っていて、成績上位者の発表でナックの方も俺を認知していたらしい。

 

 そんな三人と俺は倉庫で保管されている砲弾の運搬を行っていた。

 

 何でもウォール・マリア陥落以降、不測の事態に備えて壁に近い場所に倉庫を増設したらしく、そこに砲弾を運び込んでほしいのだとか。

 

 

 そして今、俺達は件の倉庫に到着した。

 

 

 「ここだな」

 

 「それじゃ、さっさと終わらせましょ。ね、フランツ」

 

 「そうだね、ハンナ」

 

 相変わらずイチャつくバカップル共を無視して、俺は倉庫の中へ足を踏み入れる。

 

 五年前に作られただけあって中はそこそこ綺麗だ。周りの建物に比べれば外観の劣化も少ない。

 

 「えーっと、上官が言ってたのはこの辺りだな」

 

 「うっし、じゃんじゃん運び込もうぜ」

 

 俺は上官の指示を思い出しつつ、一緒に入ってきたナックから受け取った砲弾入りの木箱を置く。

 

 その後はフランツが外に停めた台車から木箱を出し、ハンナとナックを経由して俺が倉庫に仕舞う、所謂バケツリレー方式でみるみる内に倉庫内は埋まっていくのだった。

 

 

 「ふうっ。これで全部だな」

 

 「ああ、お疲れナック」

 

 「グラントもな。所であのバカ夫婦共は・・・・・・」

 

 「外で休んでるぞ」

 

 「早いなオイ」

 

 

 

 作業を終えてナックと駄弁っていると、不意に倉庫の扉が開いた。現れたのは駐屯兵の上官だ。

 

 「よし、全員揃っているな」

 

 「「お疲れ様です!」」

 

 「まずは運搬作業ご苦労だった。これから次の指示を出すのでしっかり聞けよ?」

 

 「「はっ!」」

 

 

 俺達は敬礼から休めの姿勢になり、上官の指示を再び聞いた。

 

 まずハンナとフランツは本部で別の作業。ナックは内門側の固定砲整備班、俺は固定砲整備四班にそれぞれ合流しろとの事だった。

 

 

 固定砲整備四班といえば、エレンのいる班だ。丁度ここから直ぐ近く、外門開閉扉の上辺りで作業をしている。

 

 

 という訳で早速、俺はウォール・ローゼ壁上へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ゴンドラを降り、何と呼ぶべきか迷う材質の地面に足をつける。

 

 

 俺はウォール・ローゼ壁上にやってきた。

 

 

 左を向けばミニチュアのようなトロスト区の街並みが、右手には何処までも広がる大地が見える。

 

 

 「これが、壁の上から見た景色か・・・」

 

 

 思わず、そんな声が漏れてしまう。

 

 

 だが今はボーっとしている暇はない。俺は指示通り、エレン達がいる方へ歩を進めた。

 

 

 

 

 「ん? おーい、グラント!」

 

 ある程度近づくと、エレンが俺に気づいたようで手を振ってくる。

 

 「何でここに?確か別の場所で作業してたんじゃ」

 

 「こっちの仕事が終わったんで、上官の指示で来たんだよ」

 

 「そりゃ助かるぜ!まだ掃除できてない砲台があるから手を貸してくれ」

 

 「もちろん、お安い御用だ」

 

 

 そして俺は固定砲整備四班に助っ人として入り、残りの固定砲の清掃に取り掛かるのだった。

 

 

 数十分後。

 

 

 全ての砲台を清掃し終えた俺達は、束の間の休息を取っている。

 俺はエレンと話していたんだが、ふと気になるものが目に入った。

 

 

 「何だ、これ」

 

 「・・・あ! グラント、ちょっと待っ」

 

 

 それは蓋が若干開いた木箱。

 普通なら掃除用具か何かが入っているとしか思えないが、嫌な予感がした俺はエレンの静止を無視して中身を取り出し、絶句した。

 

 

 

 それは、紛れもない肉だった。

 

 

 薄ピンク色の身に、薄く茶色がかったサシ*1が映える見事な円柱状の獣肉。

 

 紐でしっかりと縛り付けられたソレは、見るだけで食欲を刺激してくる。

 

 

 「なぁ、何でここに肉があるんだ?」

 

 

 冷や汗をかきながら尋ねると、皆も一様に冷や汗を垂らし、ばつの悪そうな顔をする。

 

 「え、えっと・・・そのぉ・・・」

 

 「お、俺は知らねぇぞ! サシャが盗んできただけなんだからな!」

 

 

「おいバカ!言うな!」

 

 ミーナが惚ける横でうっかり口を滑らせたコニーを、エレンが慌てて咎める。

 

 

 

 まさかこの現場に出くわすことになろうとは・・・・・・。

 

 

 

 「サシャ、盗ったのか?」

 

 「じょ、上官の食料庫に忍び込んだら目に入りまして、つい・・・」

 

 「そもそも忍び込んだ時点でアウトなんだけど、皆は知ってたのか?」

 

 俺が再度尋ねると、犯人であるサシャ以外の全員が静かに頷いた。

 

 

 

 

 「待って下さいッ!!」

 

 

 すると、俺が口を開こうとした直前にサシャが声を上げた。その表情は今まで以上に真剣だ。

 

 

 「あの・・・お願いですから上官には言わないで貰えませんか? グラントには少し多めにあげますから!」

 

 何とサシャは俺を肉で買収しようとしてきたのだ。流石にチクるつもりは無いがどうしようか・・・。

 

 「おいサシャ!俺達だってお前の盗みを黙ってる身なのにそれはズルいだろ!」

 

 「そうだ!不公平だぞ!」

 

 「嫌ですよ!私の分が少なくなるじゃないですか!」

 

 「お前どんだけ食うつもりなんだよ!?」

 

 と思っていたが、サシャの発言に異議を唱えたコニーとサムエルを筆頭に口論が勃発。下手をすれば上官に聞こえそうな声量で、この言い合いは続いた。

 

 

 

 「なぁ、別に上官に言ったりしないからその辺で・・・・・・っ!?」

 

 

 

 それから、流石に収拾がつかなくなりそうだったので俺が仲裁しようとした時だ。

 

 

 一瞬、空が光った。

 

 

 気の所為かも知れないくらいほんの僅かだが、パッと黄色い光がウォール・マリアの方向に見えた。

 

 まさか、遂に来るか?

 

 

 俺が慌てて視線を戻すとサシャ以外は俺の方を向いていて、サシャだけが空が光った方向を見つめていた。

 

 「なぁ、どうしたんだよ、グラント」

 

 「サシャも急に何見てんだ?」

 

 「・・・今、空が光らなかったか?」

 

 「はい、私も見えました」

 

 

 首を傾げるエレンとコニー。俺はサシャにも見えていた事を知って、益々嫌な予感がしていた。

 

 それを聞いていたミーナ達もざわつき始める中、俺とサシャで改めて光った方を見た、その時。

 

 

 

 「お、オイ、あれってまさか・・・・・・」

 

 

 

 

 「鎧の、巨人・・・!!」

 

 

 

 コニーとエレンがいち早く声を出し、全員が現状を理解する。

 

 

 ・・・・・・いよいよお出ましか。

 

 突如出現した鎧の巨人は、こちらへ向かって一直線に走ってきていた。

 

 

 「アイツまさか、また壁を破るつもりか!?」

 

 「やべえ、何とかしねぇと!」

 

 「コニー、何とかってどうするんだよ?」

 

 「とりあえずこの固定砲で・・・」

 

 「無駄だ。止めた方がいい」

 

 

 サムエル達が慌てる中、固定砲に手をつくコニーを俺は制止する。

 

 「何で止めるんだよ!?」

 

 「五年前の事を覚えてないのか? 鎧の巨人に対して固定砲は通じなかったんだぞ!」

 

 「でもよ、何もしない訳には・・・・・・うおっ!?」

 

 

 すると突然大きな震動が俺達を襲い、同時に凄まじい音が響き渡った。

 揺れが収まると俺はすぐさま姿勢を立て直し、コニーに続いて壁の下を見てみる。

 

 

 「おい見ろ! 壁が!」

 

 

 そう言ってコニーが指差す先では、トロスト区の外門が粉々に砕け散っていた。

 

 遂に、破られてしまったのだ。

 

 

 

 「ウォール・ローゼが、突破される・・・!」

 

 

 「・・・・・・チッ!!」

 

 

 そうトーマスが言うのとほぼ同時に、エレンが飛び出していった。

 いつの間にか引き抜いていたブレードを両手に、全てを焼き尽くさんばかりの怒りを露わにして。

 

 

 「おい、エレン!」

 

 「バカ! 本当に死に急いでどうするんだよ!」

 

 「とにかく私達も動かなきゃ!」

 

 

 そんなエレンの背に向けて言葉をぶつけるサムエルとコニー。対してミーナはこの場を離れようとするが、トーマスがそれに待ったをかける。

 

 「ちょっと待てよ、エレンを放っておくのか!?」

 

 「私達が行ったってどうにもならないわ!」

 

 

 

 「皆! 聞いてくれ!」

 

 

 俺は皆を落ち着かせるべく、声を張り上げた。

 

 今冷静さを保っているのは俺だけなのだから。

 

 

 「皆は急いで本部に向かってくれ! 多分、上官がこっちに来てるだろうから合流出来る筈だ!」

 

 「グラントは、どうするんですか?」

 

 「俺はエレンを回収してから本部に向かう! あのままエレンを死なせるような事があったら、ミカサやアルミンに合わせる顔がないからな」

 

 「無茶だ! お前も殺されるぞ!?」

 

 「・・・・・・死なないさ。その為に訓練を乗り越えて来たんだ」

 

 

 俺はサムエルの制止する声を振り切って、壁を飛び降りた。 

 

 「っ、グラント!グラントーッ!!」

 

 

 

 再び聞こえてくるサムエルの声。段々と小さくなるその声を背に、俺は鞘からブレードを引き抜き鎧の巨人を見据える。

 

 

 丁度その時、エレンは鎧の周囲を飛び回って攻撃のチャンスを伺っているように見えた。

 対する鎧は鬱陶しそうな様子でエレンを振り払おうとしている。

 

 まだエレンの正体を知らないからこその反応だ。

 

 

 「鈍いッ!」

 

 すると、痺れを切らして鎧の動きが大きくなった事を、エレンは見逃さなかった。

 

 鎧の拳が家屋に突き刺さった直後、エレンはうなじへと狙いを定める。

 

 

 「殺った!」

 

 

 そのまま一直線に加速し、うなじ目掛けて斬りかかるエレン。普通の巨人が相手ならば、これで決着がついただろう。

 

 

 「なっ!?」

 

 エレンが振るったブレードは、鎧のうなじを削り取るどころか傷一つつけられず、逆に刃の方が砕け散ってしまった。

 

 その内の小さな破片が、エレンの右頬を掠める。

 

 

 「っ、ぐああっ!!」

 

 

 次の瞬間、横薙ぎに振るわれた鎧の裏拳が命中し、エレンの身体は屋根の上に叩きつけられる。

 そうして全身を強く打ち付けたエレンは、既に気を失っていた。

 

 

 よし、今だ。

 

 エレンの気絶を確認したと同時に、俺はガスを蒸して突っ込んでいった。

 

 

 

 「うおおおッ!!」

 

 最大限に加速した上で屋根まで接近し、エレンの身体を担ぐ。立体機動装置の分重いが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 

 そのままどうにかアンカーを射出し、ここからそれなりに離れた位置の屋根へ飛ぶと、自分の身体をエレンの下に滑り込ませてそのまま屋根の上へ落下した。

 

 

 「ぐぅ・・・ッ・・・」

 

 屋根に激突した衝撃で激痛が走るが、そんなものお構いなしに体を動かし鎧の方を見る。

 

 だが、既に鎧は姿を消していた。

 

 

 逃げられたか・・・・・・。

 

 

 

 「う、うぅっ・・・」

 

 「気が付いたか、エレン」

 

 「グラント・・・? はっ!鎧の巨人は!?」

 

 「逃げられた。もうここにはいない」

 

 「っ、クソォッ!!」

 

 

 鎧を仕留め損ねた悔しさからか、エレンは両手を握り締めて屋根を殴りつける。

 

 「急いで本部に戻るぞ。もうコニー達は着いてる筈だ」

 

 「っああ、分かった!」

 

 

 そして俺達は駐屯兵団本部を目指して移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 かくして、トロスト区攻防戦が幕を開けた。

 

 

 

*1
肉の赤身の間に入った脂肪の事





 <現在公開可能な情報>

 104期訓練兵団成績上位者リスト

 首席:ミカサ・アッカーマン
 二位:グラント・ベルツァー
 三位:ライナー・ブラウン
 四位:アニ・レオンハート
 五位:エレン・イェーガー
 六位:ジャン・キルシュタイン
 七位:マルコ・ボット
 八位:コニー・スプリンガー
 九位:サシャ・ブラウス
 十位:クリスタ・レンズ

 上記が104期の成績優秀者であるが、実は三位と四位はほとんど差が無かったらしい。

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