進撃ロスのサラリーマン、転生し超大型巨人を継承する 作:ダブドラ
いよいよ本格的に独自展開に入ります。
ちなみにグラントの強さは、ベルトルト(潜在能力全解放)レベルを想定しています。
ずっと書きそびれていて申し訳ありません。
面白いと思って頂けたら幸いです。
───駐屯兵団本部・中庭
飛び出していったエレンを回収した後、俺は本部に到着した。
着いた直後に上官から説教を受けたが、どうやらコニー達が事情を伝えてくれていたそうで短い話で済んだ。
後で礼を言わないと。
補給室でガスと刃を補充してから中庭へ向かうと、既に同期達が集まっていた。
中には迫る巨人の恐怖に怯える者、互いを励まし合って動揺を誤魔化そうとする者などがちらほら見える。
「エレン!!」
中庭を見渡していると、ミカサが血相を変えて駆け寄って来た。
その勢いのままミカサはエレンの両肩を掴む。そして大きく息を吐いた。
「良かった・・・。サシャ達と一緒じゃなかったから、何かあったのかと思っ」
安堵の言葉を口にしようとしたミカサだったが、ふとエレンの顔を見つめて黙ってしまう。
そしてみるみる内にその表情は険しくなっていった。
「ミカサ? 何見てんだよ。俺の顔に何か着いてるか?」
「・・・エレン、頬にある傷は何?」
「あぁこれか。別に、ただの掠り傷だ」
「嘘、貴方は何か隠してる。さっきサシャがここへ来た時にエレンの事を聞こうとしたけど、はぐらかされた上に様子が変だった」
「・・・・・・何もねぇよ。つーか、お前が気にする必要無いだろうが」
エレンの頬についた切傷を見て、ミカサは案の定食い下がる。
「本当の事を教えて。貴方は私の家族、だからエレンに何かあったら私は心配する。とても心配する」
「心配するなら勝手にしとけよ。俺はお前の弟でも子供でもないんだぞ?」
「・・・教えてくれないなら良い。グラントに聞く」
・・・・・・え、俺?
突然自分の名前を呼ばれたことに困惑していると、ミカサは真っ黒に染まった瞳を俺に向けてくる。
話すか?ソレしかないのか?
「貴方は、何か知らない?」
「いや、俺は、えっと」
「教えて欲しい。ただ壁からここに来ただけなら傷なんて負わない筈。もし怪我したとしても切傷なのはおかしい」
おっと、これはマズいかもしれない。独断専行したエレンを見ていた人間がサシャ達以外にいるかも知れないし、バレるのも時間の問題な気がする。
そもそも隠蔽に加担する理由は無いし、ミカサを心配させた報いを受けさせるくらいは良いだろう。
「あー、実はな・・・」
「おい待て、グラントっうおっ!?」
俺はここに着くまでの経緯をミカサに話した。
その間、話を止めさせようとエレンは俺に迫ろうとするも、終始ミカサに羽交い締めにされ身動きを封じられていたので遠慮なく話した。
そして一通り話し終える頃にはミカサは両目を大きく見開き恐ろしい表情を浮かべていた。
加えてミカサの身体から放たれるただならぬ気配に俺のみならずエレンも萎縮してしまっている。
「エレン・・・・・・何故、そんな無茶をしたの」
「っし、仕方ないだろ!あのままにしてたら内門まで破壊されてたかもしれねえんだ!そうなったら、俺たち人類は今度こそ終わりなんだぞ!?」
「それは、そうかもしれない。けど、もしエレンが死んでしまったら私は一人になってしまう。私の手を取ってくれた貴方の方からいなくなるの・・・?」
ミカサがそう打ち明けると、エレンは下を向いて黙ってしまう。
自分がここにいて良いのかと疑いたくなる空気が充満しているが、俺も当事者なのだから見届けよう。
「・・・心配させた事は悪かったと思ってる。グラントもありがとうな。危ない所を助けられた」
「何だ、急に素直だな?」
いきなりエレンが謝罪と礼を口にしたので思わずそんな言葉が溢れる。少し嫌味っぽいか・・・?
「別にいいだろ。ただ助けられっぱなしは嫌ってだけだ」
後頭部を掻きながらエレンはそう俺に言う。
それからミカサの方に向き直ると、照れくさそうにエレンは再び口を開いた。
「お前は気にしすぎなんだよ。心配しなくても俺はいなくなったりしない。全ての巨人を駆逐するまで、俺は死ぬ訳にはいかないんだからな」
エレンの言葉に、ミカサはただゆっくりと頷くのだった。
「アッカーマン!ここにいたか!」
その直後、金髪をセンター分けにした駐屯兵が現れた。顔が少しやつれているように見える。
間違いない、イアン班長だ。
イアン・ディートリッヒ。
リコさんが所属する駐屯兵団第一師団精鋭部隊の一人にして後衛部班長。そんな彼はミカサを呼びに来たと言うが、その目は確かに俺の方を向いている。
「ベルツァーも一緒とは丁度いい。二人は精鋭班だ。俺に着いてきてくれ」
なっ・・・俺が、精鋭班に・・・!?
「ミカサはともかく俺も、ですか?」
「ああ。実力を考慮しての判断だ」
「そう、ですか・・・」
「待って下さい!私の実力では足手まといに──」
「お前の意見は聞いていない。後、その言い方ではベルツァーも足手まといになるぞ。発言には気をつけろ」
「っ!申し訳、ありません」
イアン班長に咎められ、ミカサは俯きながら謝罪をする。上官に言われれば食い下がるなんてできないだろうし、無理もないな。
「それではついて来い。時間がないので、諸々の説明は移動しながら行う」
「ハッ!」
俺は短く返事をしつつ、イアン班長に続いて歩き出した。だがミカサはというと、エレンの方を向いて立ち止まったままだ。
「・・・・・・早く行けよ。時間がないって上官も言ってるだろ」
「エレン、最後に言わせて欲しい。
───どうか、死なないで。」
「言っただろ。死なねえよ、俺は」
ミカサの心からの懇願に、エレンは堂々と返す。
それを聞いたミカサは、何も言わずエレンに背を向けてこちらへ駆け寄ってきた。
イアン班長に着いて歩く途中、俺はミカサと話してみる事にした。
「行こう、ミカサ」
「ええ。それと、ごめんなさい。貴方の事を悪く言うつもりはなかった」
「俺は気にしてない。ただまぁ、一つ言うならエレンの気持ちも汲んでやってほしい。家族を心配する気持ちは分かるが、ミカサのそれは一方的にワガママを強いているだけだ」
「・・・・・・分かった。この作戦が終わったら、ちゃんと話してみる。グラント、エレンを助けてくれてありがとう」
「ああ、上手くいく事を祈ってるよ」
ミカサがあれ程エレンを気にかけてしまう事も、エレンが疎ましそうにしてしまう事も理解できる。だからこそ上手くいってくれれば良いんだが・・・・・・。
それから俺達は建物内を移動し、正面入り口付近にやってくるとそこには武装した駐屯兵が七人、並んで立っていた。
「では、これから作戦を説明する」
列の中心に立ち、淡々と始まったイアン班長の説明を聞くべく俺とミカサは敬礼の姿勢を取る。
説明の内容はこうだ。
まず現在、破壊された外門からは数体の巨人が侵入しており、避難民が集まる内門の方向へ移動している。
外門では既に駐屯兵団の迎撃部隊が固定砲を用いて迎撃を試みているが、肝心のうなじを狙う突撃部隊が全滅した為に、固定砲だけでは大した足止めも出来ず侵入を許してしまっているのが現状である。
そこで俺達104期訓練兵団の新兵を中衛に、駐屯兵団の精鋭達を後衛に配置し巨人共を迎え撃つ。
最終的に避難民の移動が完了するまで持ち堪える事が成功目標である。
今の話を聞いて、俺はまずこう思った。
なぜ訓練兵を前に出した?と。
現状最前線の部隊が機能していない為、実質訓練兵が前線で戦う事になる。
まだ所属兵科を志願してすらいない訓練兵を危険な前衛に据える事は、若い芽をわざと摘み取る事と何ら変わらない。
たとえ死なずに済んだとしても、巨人の恐怖に心が折れてしまえばもう戦えないので兵士としては死んだと同義だ。
加えて有望な人材を悪戯に死なせてしまう可能性だってある。
巨人との戦いではいつ、何が起こるか分からない。
新兵だろうが熟練の兵士だろうが、誰もが今日を無事に生き延びられる保証はどこにも無い。
これはリコさんから聞いた話だが、訓練兵時代に成績上位に入るほど優秀だった同期が、調査兵団に入団して最初の壁外調査で殉職したそうだ。
後日リコさんが帰ってきた調査兵団の団員に話を聞いた所、その団員はこう言ったらしい。
アイツは誰か仲間を庇って犠牲になった訳でも、何か戦果を上げてから命を落とした訳でもない。
不意に現れた巨人に掴まれ、抵抗する間もなくあっさり食い殺された、と。
だから、どんなに強い兵士だって無駄死にすることがあるんだ。とリコさんは話を結んだ。
長くなったが、俺は今回の作戦に納得したくない。
だが守るべき市民の近くに戦力を回す事は兵士として至極当然だし、間違った判断とは言えない事を理解している。
・・・しているが、そうじゃないんだよ。
「納得出来ない、といった顔だな」
そうして考え事をしていた俺だったが、僅かに笑みを浮かべたイアン班長を前に慌てて顔を上げた。
「そう、ですね。すみません、イアン班長」
「謝る必要はないぞ。俺だって未来ある新兵を悪戯に死なせたくはないからな。だが、上官の決定に異を唱えた所で聞き届けられないのが現実だ。だからこそせめて、俺達は市民を全力で守らなければならない。前線で戦う兵士達を無駄死ににしない為に」
「っ・・・はい!」
イアン班長の言葉を聞いて、原作でアルミンが言っていた事が脳裏をよぎった。
この人は、確かに何かを変えられる人だ。ならば俺も全力で戦おう。
「では、アッカーマンは俺の班に入ってもらう。ベルツァーはミタビの班だ*1」
続いてそうイアン班長が言うと、彼の横に立っていた大柄な男性兵士が近づいてきた。
「ミタビだ。宜しくな、グラント」
「はっ、よろしくお願いします!」
ミタビ・ヤルナッハ。
イアン班長と同じく精鋭部隊の一人で、坊主頭に立派なアゴヒゲとベルトルト並の長身が特徴。
そして話が終わり、いざ作戦へ──と思った時だった。
「ミタビ、彼を死なせるなよ」
「当然だ。アイツの
ふと、そんな会話が耳に入った。
・・・・・・俺の事、意外と知られてるのか?
◇
立ち止まっている時間はないので、俺は屋根の上を飛び、所定位置へ向かいながらミタビ班長に話を聞いてみた。
「ミタビ班長、一つお聞きしたいのですが・・・」
「おう、何だ?」
「・・・・・・俺の事を知っていたんですか?」
「そりゃそうだろ。リコのやつが特定の一個人にここまで入れ込むなんざ初めてだからな」
そ、そうだったのか・・・。
まぁあれだけ長く一緒にいればそうもなるか。
「更に訓練兵を二位で卒業したとなりゃ、有名にもなるわな」
「リコさんのお陰です。あの人がいなければ、そもそも俺は此処にいませんから」
「そう考えるとアイツも大手柄だな。・・・よし、ここが俺達の持ち場だ」
そう言って立ち止まるミタビ班長に続いて俺達も屋根へ着地、所定の位置へ到着したのだった。
「イアンが言っていた通り、俺たちの任務は市民の避難が終わるまで巨人共を食い止めることだ!最前線で足止め役を買って出た仲間たちの為にも、兵士の意地見せるぞお前らぁ!!」
ブレードを持ったまま右手を突き上げ、ミタビ班長は俺達を鼓舞する。
正直リコさんの事が気がかりだが、今は任務に集中しよう。
と、その時。
「班長!」
一人の駐屯兵がミタビ班長を呼びながら現れたのだ。先に状況確認に行っていたのか。
「来たか! それでどうだった?」
「前衛は総崩れです! 訓練兵が犠牲を出しながら戦闘を行っていますが、取りこぼしが何体かこちらへ向かってきています!」
「アレか。薄々予感はしてたが、かなりマズいな・・・・・・」
報告を受けたミタビ班長は数秒思案を巡らせる。それから俺の顔を見てこう言った。
「グラント、やれるな?」
「・・・やってみせます、班長」
「よーし。ならお手並み拝見だ。迎え撃つぞ!」
「「ハッ!!」」
かくして、俺の初陣が幕を開けた。
すると早速、三体の巨人がこちらへ迫ってくる。五メートル級が一体と、九メートル級が二体だ。
「グラント、俺がヤツの足を削る!お前はうなじだ!思いっきりやっちまえ!」
「了解!」
俺はミタビさんの指示を聞いてから少し減速し、側の建物の屋根から生えた塔へアンカーを刺して飛び上がった。
「この野郎ッ!」
それと時を同じくして、ミタビ班長が九メートル級一体の足へ斬撃を喰らわせた。
よし、今だ!
「はぁッ!!」
急降下する勢いを利用して接近し、俺は身体を回転させながらうなじを削り取った。
後二体、急いで倒さなければ。
「やるじゃねえか!いい動きだったぜ。残りもこの調子で行くぞ!」
「っ、はい!」
その後、俺達は二手に分かれて二体の巨人を討伐することになった。
俺はミタビ班長ともう一体の九メートル級を、五メートル級の方は先輩の班員二人が請け負ってくれた。
そして先程と同じくミタビ班長が足、俺がうなじを狙って飛び掛かる。
「喰らえオラァッ!!」
アキレス腱を切られたことで前方へ倒れ込む巨人。俺はすかさずうなじへ斬りかかり、二体目の討伐を成し遂げたのだった。
「よし、これで二体目!」
「気ぃ抜くな!まだまだ来てるぞ!」
◇
その後、五メートル級を討伐したらしい先輩方と合流し巨人共を迎え撃つ最中、雨が振り始めた。
「ハァ、ハァ・・・これで、七体目か」
「避難は、どうなってるんだ!?」
呼吸を荒くした先輩方が愚痴る中、俺とミタビ班長は内門の方をじっと見つめている。
「撤退命令も何も無いって事ぁ、終わってないんだろうよ」
「何を手こずってるんだ、一体・・・」
原作と同じなら大方リーブス商会のせいだろうが、それならもうそろそろ解消しててもおかしくない。
本当何が・・・・・・ッ!?
「おいグラント! 今通ってったの、アッカーマンじゃねえか?」
ミカサ、ってことは避難は進み始めた筈だ。じゃあ俺も続いた方が良い。多分今頃、アルミン達が・・・。
「ミタビ!」
すると、焦った様子のイアン班長が現れた。どうやら後を追ってきたらしい。
「イアン、一体何があった!?」
「まず避難は直に完了する。撤退命令もすぐ出る筈だ。そしてアッカーマンの事だが、彼女は前衛の撤退を支援すると単騎で行ってしまった」
「追わないのか? いくらアッカーマンでも危険過ぎる!」
「俺達じゃ追いつけないんだ!それに持ち場を離れる訳にはいかないだろう!?」
これは迷っている暇はないな。追いつくかどうかは重要じゃない。俺もあの場に行かなきゃならないんだから。
「俺に行かせて下さい」
「グラント、お前・・・」
「いや、しかし、それは」
「行かなきゃならないんです。何か、嫌な予感がして」
イアン班長は当然俺を行かせたくない様だが、ここで引く訳が無い。
「・・・・・・分かった。行ってくれるか?」
「良いのかよ、イアン!」
「ベルツァーの実力を信じよう。どのみち俺達は動けないんだ。可能性があるとすれば彼だと、俺は思う」
「ありがとうございます、イアン班長」
俺は二人に頭を下げた後、背を向けてグリップを握り直す。
「武運を、祈っている」
「死ぬんじゃねえぞ、グラント」
そんな二人の激励に対し、俺は敬礼で応えてその場を離れた。
マントもつけず、降りしきる雨に打たれながら、俺は皆の元を目指して一直線に進むのだった。
◇
雨足が強まり、打たれ続けた身体が冷え始めた頃。
屋根の上に集まる人影を見つけた俺は、節約していたガスを蒸して加速した。
それから程なくして、ガラガラと音を立てながら屋根の上へ着地するととある人物と目が合った。
だがその人物は原作では本来ここにいない筈の──
“彼女”だったのだ。
「ミーナ!?」
「グラ・・・ン・・・ト・・・?」
ミーナが、壁にもたれ蹲っていた。
原作ではここへ辿り着く前に戦死した筈の彼女が、生きていたんだ。
良かった、と内心僅かに安堵しながら、また本来いるべき人物の姿が見えないことに一抹の不安を抱えながら俺は、ミーナに話を聞くことにした。
「教えてくれ、何があったんだ?」
「う・・・あぁ・・・あああああ゙あ゙あ゙っ゙!!」
俺が声を掛けると、ミーナは嗚咽を漏らしながら、俺の足へ縋り付いてきた。
何が、本当に何があったんだ・・・?
「ごめんなざい゙! ごめんなざい゙い゙い゙っ!! 私だけ、何もでぎないわだじだけ生き延びでぇ・・・・・・! ひぐっ、トーマスも、ナックも、ミリウスも、エレンも、アルミンも!!!!皆、みんな!!みんな死んじゃったのに、私だけぇ!」
・・・・・・・・・は?
次回
第十話 「折れた刃」