1 終焉から始めるプロローグ
幾度となく繰り返されてきた勇者と魔王の戦い。
魔王。
1つの時代に必ず1人いる、魔族を統べる者。
今代の魔王が倒されれば、魔族や魔物の中でも特に強い者が、次代の魔王として進化する。
それが世界の理。世界のルール。世界の法則。
そんな魔王に共通するのは、いずれも人族に敵対しており、とても強力であるということ。
勇者。
それは魔王と戦う、人族の最後の希望。魂の輝き。勇ましき光そのもの。
勇者と魔王の戦いは、まさに一進一退。
勇者が魔王を討ち滅ぼすこともあれば、魔王が勇者を退けることもあった。
しかし、魔王が絶えぬように、勇者もまた、絶えぬ存在だった。
2つの勢力は連綿と争いを続けている。
それがこの世界の宿命だから。
悲劇があるとするならば。
その代の勇者と魔王は、互いに相性が良すぎた。
双方ともに、希少な次元魔法の使い手。
次元と時空を操る、正に神にも匹敵するような魔法。
彼らは己の宿命に従い、その魔法を行使した。
二つの魔法がぶつかり合い、つんざく世界の悲鳴。
勇者と魔王は、己の魔法の力に耐えられずに滅びた。
その余波は、時空をも超えて別世界に届いてしまう。
その時空の大爆発は、地球という名の世界の、日本という国の、とある高校の教室で炸裂した。
教室内にいた、総勢26人の生徒と1人の教師は、魔法の直撃を受けた。
いとも容易く、まことにあっけなく、実に無惨に命を落とした。
しかし、それで終わりではない。
福音書に「おわり」とは記されていない。
何故なら、彼らの魂は時空を飛び越え、勇者と魔王が争うこの世界に逆流してしまったからだ。
彼らの魂は新たな世界で飛散し、新たな命として転生する。
これは、そんな彼らのうちの1人の物語。
その日は、何の変哲もない、至って普通の、在り来たりな日になるはずだった。
学校に到着、教室にはまだ数人しかいない。
窓から差し込む眩しい朝の光に目を細めながら席につく。
しばらくの時が過ぎ、教室には続々と生徒が集まってきた。
どんどんとグループが形成されていく。
夏目健吾くんと桜崎一成くんを中心に集まった元気いっぱいな男子たちのグループ。
騒々しく盛り上がる漆原美麗さんを筆頭にした明るい女子たちのグループ。
あとは、眠たげに、されど興奮気味にゲームの話をする山田俊輔くんや大島叶多くん、笹島京也くんのグループ、吸血鬼のような容姿のせいでいじめられ避けられているぼっちの根岸彰子さん、別次元の存在かと思うほどに美しく麗しく、滅多に口を開かないのも相まってかなり近寄りがたい雰囲気がある若葉姫色さん。そこに私を加え、このクラスは完成する。
しばしの時間が経過し......古文の時間。ついにそれはやってきた。
教壇に教師が立ち、教科書片手に古文の朗読をしている。
岡崎香奈美先生だ。小柄で親しみやすいキャラのため、皆には岡ちゃんの愛称で呼ばれている。
ふと周囲を見渡すと、眠たげに首を揺らしていた山田くんが何かを見つめている。
その顔は疑問に満ちていた。
なにを見ているのか疑問に思い、その視線を辿ると..................
亀裂があった。
ちょうど教室の真ん中の空間に、亀裂が走っていた。
しかも、徐々に拡大している。
驚きで声が出ない私たちを無視して、亀裂はどんどん膨張してゆき........................
亀裂が盛大に割れる。
凄まじい激痛が走る。
肉の器から、命の源が流れ出す。
これまで肉体を支えてきたものが、勤勉なるものが、力が、魂が。
失われて、離れて、消えて。
そうして私たちは、死んだ。
執筆が進まぬ、ぁああ、なんたる怠惰。
オリオン座α星の覚醒まで、深い慈悲と寛容を抱きしばしお待ちください。